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名前で呼んで 02

先代と言えば鳩さん。
せっかくだから俺もオマージュでもすることにします、傘妖怪を。

ただし幽香。


霖之助 先代巫女 幽香








「君はいつもボロボロだね」
「好きで傷だらけになってるわけじゃないんだけど」


 霧雨道具店へやって来た巫女を見るなり、霖之助はため息を吐いた。

 破れた服は、激しい戦闘があったことを如実に物語っている。
 店内にいたお客も驚いたようで、そそくさと店を出て行ってしまった。

 ……あとで霧雨の親父さんに怒られるかもしれない。
 変な噂が立ちはしないだろうか、と少し心配になる。


「今日も修行……というわけではないようだね」
「うん、ちょっと妖怪退治……しようとしたんだけどね」


 言って、巫女は店の奥に入っていった。

 向かったのは、親父さんから割り当てられた霖之助の個室だろう。
 巫女関係のものは霖之助の部屋に置くことになっていた。

 彼女は親父さんのお気に入りなので、上がりこんでも文句を言われることはない。
 むしろ歓迎されるくらいだ。

 そこまでするなら、彼女専用の道具入れくらい作ってやればいいのに、と霖之助は思う。

 どうせ巫女の服は霖之助の自室で作るので、手軽と言えば手軽なのだが。


「君にしては珍しく歯切れが悪いじゃないか」


 店内に戻ってきた巫女に、霖之助はそう返す。

 着替えてきた彼女の様子には異常が無く、傷を負っているようにも見えない。
 すべて紙一重でかわしたのだろう。

 まあ、紙一重だからこそ、服が破けてしまうのだろうが。


「いつもいっぱいいっぱいだよ。
 わたしは人間だからね」


 巫女はそう言うと、思い出すように天井を仰いだ。


「それにしても、今日の妖怪は強かったなぁ……。
 修行不足を感じたよ」


 霖之助のお茶菓子を奪いつつ、彼女はそう呟く。

 まだ強くなる気だろうか。
 いくら博麗の巫女とは言え、既に人間の範疇を超えている気がするが。


「傘を持った妖怪だったんだけどね。
 その傘に、符も針も全部防がれるのよ」
「傘……?」


 彼女の言葉に、首を傾げる霖之助。
 しかしそんな彼の様子に気付かないまま、巫女は言葉を続けた。


「埒があかないから接近戦を挑んだんだけど、これがまた強くて……。
 でも傘が壊れたらどこかに行っちゃった。
 あいつの力に耐えられなかったのかな?」
「もしかして、その傘というのは……」


 霖之助が口を開こうとした瞬間。
 霧雨道具店の玄関が、やや乱暴に開かれた。


「ちょっと霖之助。
 看板に偽りありじゃないかしら」


 緑の髪を、花のコサージュで纏めた女性が立っていた。
 チェック模様の洋服がよく似合っている。

 彼女は店内へと入ってくると、霖之助の前へと歩みを進めた。


「絶対折れないって言ったのに……って、あら、どこかで見た顔」
「ああっ! さっきの妖怪!」


 ふたり、驚いた声を上げた。

 ……巫女の話を聞いて、そんな気はしていた。
 こういう時の予感はよく当たるものだ。


「いらっしゃい、幽香。
 巫女、落ち着くといい、ここは町中……というより店の中だ」


 一触即発、といった様子のふたりを、とりあえずなだめる。
 もし店が吹き飛ばされることでもあれば、怒られるどころではすまないだろう。

 しかし霖之助が妖怪の味方をしたように思ったのか、巫女は不機嫌な声を上げる。


「……霖君、知り合いなの?」
「お客だよ、歴としたね。
 最初は、妖怪とは思わなかったけど」
「それはあなたが見る目が無いせいよ」
「妖怪がわざわざ人里で傘を買いに来るなんて思わないだろう、常識的に考えて」
「まぁ、そうかもね。
 でもだからこそ、傑作だったわ。あなたの顔」


 思い出したように、幽香は笑う。

 霖之助は肩を竦め……少し意外そうな表情を浮かべた。


「君こそ、巫女と知り合いだったとはね」
「知り合いっていうか、知り合ったっていうか。
 面白そうな人間がいたからちょっかい出してみようかなと思って。
 正解だったわ」
「わたしは迷惑だけどね」


 幽香は間違いなく幻想郷でも最強クラスの妖怪だ。
 その気になれば、幽香は一瞬で周囲一帯を塵へと変えることも出来るだろう。

 人里は妖怪の賢者に守られているというが、それもどこまで本当かはわからないのだし。

 強い妖怪ほど紳士的である。
 誰かがそう言っていた。

 そしてそんな妖怪が興味を持つのは、同じく強力な力を持った妖怪か……特別な能力を持った人間である。
 博麗の巫女はまさにその人間だった、と言うわけだろう。


「普通の人間が普通に使う分には、壊れることはないはずだよ。
 普通ならね」
「でも、嘘は嘘よね。
 それとも、この店は不良品を売ったのかしら」
「そんなことはない。
 ないが……」


 霧雨道具店の汚名になるわけにはいかない。
 霖之助は答えを返そうとして……。


「ねぇ、どういうこと?」


 のけ者にされていると感じたのだろうか。
 唇を尖らせ、巫女が口を挟んだ。


「先日客としてやって来た幽香に、店番をしていた僕が日傘を売り込んだんだよ」
「絶対に壊れない傘、って言ってたわよね」


 そう言って、幽香は手に持った傘をカウンターの上に置いた。
 見事に壊れている。
 戦闘の結果、だろう。


「なんで壊れない傘なの?」
「……巫女。君の妖怪用の道具を作ってるのは僕だね」
「うん。作らせてるのはわたし」
「その効き目とかは、一応自分でもチェックしてるんだよ。
 君に渡す前にね」
「そうなんだ。
 ……まあ、それもそうよね」
「でも、ただ威力の確認と言っても壁に向かって使えばいいってわけじゃないからね。
 毎回直すのも疲れるし。
 そこで僕が作ったのが、実験用の傘、というわけさ」
「昔は毎回直してたのね。壁を」


 幽香のツッコミに、あえてノーコメント。


「それで、作りすぎた試作品をこっそり商品に混ぜてたんだけど」
「こっそり……あとで言いつけよ。
 売上金を着服しようとしてたって」
「自分で作ったのは売っていいことになってるんだよ。
 ……それにその利益を、道具の研究費に回してるんだから……。
 まあ、それはともかく」


 そんな経緯があって、弾幕も防ぐ傘が出来たのだ。
 もちろん、そもそも傘である以上限界がある。

 それに防げるからと言って傘一本で弾幕の中に飛び込む真似はしないだろう。

 もしやるとしたら、道具に対しての絶対の信頼があるか……。
 傘が壊れ、相手の攻撃を食らっても平気かのどちらかだ。


「最強の矛のために生み出された最強の盾ってわけだね」
「でも壊れたわ」
「あの傘、霖君の道具じゃ破れなかったよ?」


 ふたりの視線が、霖之助を射貫く。

 しばしの沈黙。
 次に口を開いたのは、幽香が先だった。


「次は私の傘を作るのよね。
 専用の、壊れないやつを」
「何言ってるの?
 博麗の巫女のために決まってるでしょう」


 視線を外さず、言い合う巫女と幽香。
 霖之助はそんなふたりに、ゆっくりと首を振った。


「……いや、そもそも僕は武器商人じゃないんだがね」








幽香をしゅまさんに描いていただきました。
感謝感謝。
幽香ファッションショー
幽香ファッションショー。
幽香の服は毎回変わると思います。

旧作以前の話なので、夢幻館での豊富な在庫が(

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No title

どっちを先に作っても霖之助さんの明日が見えないのですが…
そしてゴスロリゆうかりんだと…!?
歳考えr(グシャッ

振るう人物の力が想定外だったと言うわけですか。
こうした経験が霖之助さんを最高の武器職人へと成長させたのですね(爆)。

No title

ここでは先代組はこんな感じですか、良いですねぇ。
そしてゆうかりん、その格好で人里あるいてたら違和感バリバリ(ry

No title

霖之助の修羅場で霧雨の店の危険が危ない

No title

霖之助に明日はくるのか(笑)
実際ありそう
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
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