東方女学園-異聞-
東方←うー太さん←吉野さん←僕(イマココ)
東方女学園の二次創作。
許可を貰ったので思わず。
あらすじ。
森近霖之助は国語の教師である。
詳しくはうしろの月さんへ。
森近霖之助は中等部で国語の教師をやっていた。
国語の授業というものには大きく分けてふたつのパターンがある。
ひとつ。純粋に日本語としての国語を教えること。
もうひとつは、いわゆる受験国語である。
「うにゅ~……」
「……残りは君だけだよ。
終わったら帰っていいと言ったけどね」
逆に言えば、終わらないと帰れないと言うことだ。
当初の予定では、10分ほどでこの補習は終了するはずだった。
それがもう30分経っている。
他に補習を受けていた数人の生徒は、既に答案を提出して帰宅した。
……答えが合っているか、確かめるのが怖くはあるが。
「仕方ないな。ヒントは教えてあげるからわからなかったら手を挙げなさい」
「じゃあおにーさん、ここー」
「……先生と呼びなさい」
「はーい、おにーさん」
いきなりの挙手に、霖之助は苦笑を漏らした。
それにいくら言っても、呼び方を改めようとしない、
空……お空と呼ばれるこの生徒は、なんとも個性的な生徒だった。
国語や社会など、記憶力を問う教科は軒並み赤点ライン。
その割には数学の藍先生からは好評かを得ていた。
一度見せて貰ったことがあるが、理数系の点数は軒並み高いのだ。
計算の仕方が神がかっている。
いわゆる式を感覚で解くタイプ、というやつだろうか。
根っからの文系人間である霖之助とは正反対の少女だった。
「……それで、どこがわからないんだい」
「えーとねー、ここー」
「最初の問題じゃないか」
「だってー。
わからないものはわからないよー」
言って、お空は机の上で伸びをする。
見た目はかなり大人びており、一見高校生にも見えるのだが……、
その子どもっぽい行動により、年相応に落ち着いている。
「ここは本文をよく読むといい。
20字以内で述べよと字数制限があるときは、たいていそのまま持ってこられるからね。
つまりこのときの心境は……」
「あ、わかった」
彼女は顔を輝かせ、答案用紙になにやら書き込む。
……しかし、すぐに顔を上げた。
「『おなかがすいたから』……?
半分しか行かないよ?」
本気で首を傾げている彼女に、霖之助はため息を吐き……聖職者としてあるまじき行動に反省。
ここは粘り強く相手をするところだ。
自らを戒め、気合いを入れ直す。
もっとも、当の本人は全く気にしていなかったが。
「……お空?」
ふと、廊下から声がした。
視線を向けると、紫の髪をした少女が教室を覗き込んでいる。
小等部だろうか。
あまり見ない顔だ。
「あ、さとりさまー」
お空は嬉しそうに足をばたつかせた。
その拍子に彼女のスカートがめくれがり……霖之助は素早く視線を逸らす。
危うきに近寄らないのが女子校で生きるコツだ。
「お空、行儀が悪いわよ」
「ごめんなさいー……」
さとりと呼ばれた彼女の一言で、お空はシュンとしょげてしまった。
年下とは思えない迫力だ。
霖之助は苦笑いで返しながら、少女に声をかける。
「すまないね。まだ補習なんだ。
……せっかくだから、中で待っておくといい」
「いいの?」
「やったー、さとりさまといっしょー」
先ほどの顔はどこへやら。
喜ぶお空の隣の席に、さとりは腰掛ける。
「あれ、さとりさま。そういえばお燐は?」
「買い物に行ったわ。今日は魚の特売日だからって……。
私はお空と帰るからって、待ってたんだけど」
「うぅ、ごめんなさいー」
仲良さそうに会話するふたりを、霖之助は微笑ましく見守っていた。
そういえば、養護教諭である永琳に聞いたことがある。
なんでも昔から仲のいい家族関係だとか。
……何故様付けなのかはわからなかったが。
「それで、お空は今何してるの?」
「ああ、彼女は見ての通り……」
「お腹空いたからおにーさんにお菓子もらうとこ」
「…………」
再び肩を竦めた。
彼女の思考の飛び具合は、やはり霖之助と次元が違うように思う。
ある意味神だと言えるだろう。
「間違っているところがふたつ。
今は補習の時間だ。
それにそもそも、僕はお菓子なんて……」
そこでふと思い出した。
そういえば、紫から貰ったお土産があった気がする。
「……鞄の中」
「!?」
言い当てられ、思わず霖之助は目を丸くした。
「目、一瞬向いてた」
「……すごいな、君は」
淡々と言うさとりに、感嘆のため息を漏らす。
ずいぶん鋭い洞察力だ。
このあたりも、お空が敬意を払う要因だろうか。
「あるの? くれるの?」
「どうせひとりじゃ食べきれないと思ったところだから構わないけどね」
「ほんと!?」
その言葉に、お空は表情を輝かせた。
さとりの表情はあまり変わらないのでよくわからなかったが。
……どことなく、嬉しそうにも見える。
「じゃあこうしよう。
その問題が終わったら、分けてあげるよ」
食べ物で釣るというのはいささか反則のような気がしたが、彼女にはこれが一番効果的だろう。
もっとも、今までもサボっていたわけではないのだが。
やる気の方向性がずれまくっていただけで。
「ええー」
「それが条件だよ。
まあ、なんなら君の友達にでも手伝って貰うといい」
初等部とはいえ、先の勉強に触れるのはいい刺激になるだろう。
「あら、いいの?」
しかし返ってきたのは、予想外の答えだった。
さとりはお空に何事か囁くと、彼女の手が動き始める。
……数分も経たないうちに、すべての解答が正しい答えで埋まっていた。
「どうかしら」
「いやはや、君には驚かされっぱなしだな」
「……そう」
その言葉に……何故かさとりは表情を陰らせる。
……これだけの能力だ。
どうしても目立ってしまうのは仕方ないだろう。
だがそんなことより、霖之助が驚いているのは別のことだった。
「この問題の正しい答えを書いたのは君が初めてだよ」
最後の問題はサービス問題であり、何か書けば点数を与えることにしていた。
しかし一応正解は用意してある。
正しい答えを書いたと言うことはつまり、霖之助と同じ意見を持っていると言うことだ。
「よかったら、いつでも中等部に遊びにおいで。
君と話すと楽しそうだ。
お空も喜ぶみたいだしね」
「楽しい? 私と?」
驚きの表情を浮かべるさとりに、霖之助は頷く。
「ねーそれよりお菓子ー!」
「ああ、わかってるよ」
その後しばらく3人で談笑し……。
次々と鋭い言葉を放つさとりに、やはり自分の感は正しかったと確信する霖之助だった。
東方女学園の二次創作。
許可を貰ったので思わず。
あらすじ。
森近霖之助は国語の教師である。
詳しくはうしろの月さんへ。
森近霖之助は中等部で国語の教師をやっていた。
国語の授業というものには大きく分けてふたつのパターンがある。
ひとつ。純粋に日本語としての国語を教えること。
もうひとつは、いわゆる受験国語である。
「うにゅ~……」
「……残りは君だけだよ。
終わったら帰っていいと言ったけどね」
逆に言えば、終わらないと帰れないと言うことだ。
当初の予定では、10分ほどでこの補習は終了するはずだった。
それがもう30分経っている。
他に補習を受けていた数人の生徒は、既に答案を提出して帰宅した。
……答えが合っているか、確かめるのが怖くはあるが。
「仕方ないな。ヒントは教えてあげるからわからなかったら手を挙げなさい」
「じゃあおにーさん、ここー」
「……先生と呼びなさい」
「はーい、おにーさん」
いきなりの挙手に、霖之助は苦笑を漏らした。
それにいくら言っても、呼び方を改めようとしない、
空……お空と呼ばれるこの生徒は、なんとも個性的な生徒だった。
国語や社会など、記憶力を問う教科は軒並み赤点ライン。
その割には数学の藍先生からは好評かを得ていた。
一度見せて貰ったことがあるが、理数系の点数は軒並み高いのだ。
計算の仕方が神がかっている。
いわゆる式を感覚で解くタイプ、というやつだろうか。
根っからの文系人間である霖之助とは正反対の少女だった。
「……それで、どこがわからないんだい」
「えーとねー、ここー」
「最初の問題じゃないか」
「だってー。
わからないものはわからないよー」
言って、お空は机の上で伸びをする。
見た目はかなり大人びており、一見高校生にも見えるのだが……、
その子どもっぽい行動により、年相応に落ち着いている。
「ここは本文をよく読むといい。
20字以内で述べよと字数制限があるときは、たいていそのまま持ってこられるからね。
つまりこのときの心境は……」
「あ、わかった」
彼女は顔を輝かせ、答案用紙になにやら書き込む。
……しかし、すぐに顔を上げた。
「『おなかがすいたから』……?
半分しか行かないよ?」
本気で首を傾げている彼女に、霖之助はため息を吐き……聖職者としてあるまじき行動に反省。
ここは粘り強く相手をするところだ。
自らを戒め、気合いを入れ直す。
もっとも、当の本人は全く気にしていなかったが。
「……お空?」
ふと、廊下から声がした。
視線を向けると、紫の髪をした少女が教室を覗き込んでいる。
小等部だろうか。
あまり見ない顔だ。
「あ、さとりさまー」
お空は嬉しそうに足をばたつかせた。
その拍子に彼女のスカートがめくれがり……霖之助は素早く視線を逸らす。
危うきに近寄らないのが女子校で生きるコツだ。
「お空、行儀が悪いわよ」
「ごめんなさいー……」
さとりと呼ばれた彼女の一言で、お空はシュンとしょげてしまった。
年下とは思えない迫力だ。
霖之助は苦笑いで返しながら、少女に声をかける。
「すまないね。まだ補習なんだ。
……せっかくだから、中で待っておくといい」
「いいの?」
「やったー、さとりさまといっしょー」
先ほどの顔はどこへやら。
喜ぶお空の隣の席に、さとりは腰掛ける。
「あれ、さとりさま。そういえばお燐は?」
「買い物に行ったわ。今日は魚の特売日だからって……。
私はお空と帰るからって、待ってたんだけど」
「うぅ、ごめんなさいー」
仲良さそうに会話するふたりを、霖之助は微笑ましく見守っていた。
そういえば、養護教諭である永琳に聞いたことがある。
なんでも昔から仲のいい家族関係だとか。
……何故様付けなのかはわからなかったが。
「それで、お空は今何してるの?」
「ああ、彼女は見ての通り……」
「お腹空いたからおにーさんにお菓子もらうとこ」
「…………」
再び肩を竦めた。
彼女の思考の飛び具合は、やはり霖之助と次元が違うように思う。
ある意味神だと言えるだろう。
「間違っているところがふたつ。
今は補習の時間だ。
それにそもそも、僕はお菓子なんて……」
そこでふと思い出した。
そういえば、紫から貰ったお土産があった気がする。
「……鞄の中」
「!?」
言い当てられ、思わず霖之助は目を丸くした。
「目、一瞬向いてた」
「……すごいな、君は」
淡々と言うさとりに、感嘆のため息を漏らす。
ずいぶん鋭い洞察力だ。
このあたりも、お空が敬意を払う要因だろうか。
「あるの? くれるの?」
「どうせひとりじゃ食べきれないと思ったところだから構わないけどね」
「ほんと!?」
その言葉に、お空は表情を輝かせた。
さとりの表情はあまり変わらないのでよくわからなかったが。
……どことなく、嬉しそうにも見える。
「じゃあこうしよう。
その問題が終わったら、分けてあげるよ」
食べ物で釣るというのはいささか反則のような気がしたが、彼女にはこれが一番効果的だろう。
もっとも、今までもサボっていたわけではないのだが。
やる気の方向性がずれまくっていただけで。
「ええー」
「それが条件だよ。
まあ、なんなら君の友達にでも手伝って貰うといい」
初等部とはいえ、先の勉強に触れるのはいい刺激になるだろう。
「あら、いいの?」
しかし返ってきたのは、予想外の答えだった。
さとりはお空に何事か囁くと、彼女の手が動き始める。
……数分も経たないうちに、すべての解答が正しい答えで埋まっていた。
「どうかしら」
「いやはや、君には驚かされっぱなしだな」
「……そう」
その言葉に……何故かさとりは表情を陰らせる。
……これだけの能力だ。
どうしても目立ってしまうのは仕方ないだろう。
だがそんなことより、霖之助が驚いているのは別のことだった。
「この問題の正しい答えを書いたのは君が初めてだよ」
最後の問題はサービス問題であり、何か書けば点数を与えることにしていた。
しかし一応正解は用意してある。
正しい答えを書いたと言うことはつまり、霖之助と同じ意見を持っていると言うことだ。
「よかったら、いつでも中等部に遊びにおいで。
君と話すと楽しそうだ。
お空も喜ぶみたいだしね」
「楽しい? 私と?」
驚きの表情を浮かべるさとりに、霖之助は頷く。
「ねーそれよりお菓子ー!」
「ああ、わかってるよ」
その後しばらく3人で談笑し……。
次々と鋭い言葉を放つさとりに、やはり自分の感は正しかったと確信する霖之助だった。