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バレンタインSS19

魔理霖を書くのなんてものすごく久し振りな気がします。
というかこういう企画ものでしか書いたことないなw


霖之助 魔理沙









 雪が降っていた。
 店の外を、真っ白い結晶が埋め尽くしていた。


「寒いぜ、香霖」
「……そりゃ、雪が降ってるからね」


 カウベルを鳴らして入ってきた影に、霖之助は声をかける。
 香霖堂の常連……魔理沙は、ステレオタイプの魔女服が白く染まるほど雪まみれだった。


「いらっしゃい、魔理沙。
 こんな日にわざわざ来店とは、どんな用事だい?
 何か急ぎの入り用かな?」
「こんな日だから来たんじゃないか。
 ああ、買う気はないけど客だぜ」
「つまりいつもの魔理沙、と言うわけだね」


 霖之助は笑いながらため息を吐いた。
 自分の分と……魔理沙の分のお茶を、湯飲みに注ぐ。


「それにしても、今日はすごい天気だな」
「ああ、飛ぶのがやっとだったぜ。
 レティとチルノがはしゃいでたから無視してきた」
「賢明な判断だね」


 魔理沙の話を聞いて、頷く霖之助。
 こんな天気の中、氷精と雪女に出くわしたらどんな事態になるか想像に難くない。

 こういう日は家の中でストーブに当たりながら読書に限る。


「……ところで、今日の魔理沙は大人しいじゃないか。
 いつもなら真っ先にストーブに当たりに来るのに」
「魔理沙さんはいつも大人しいだろ。
 心配しなくても今行く……ぜ」


 言葉とは裏腹、魔理沙は帽子を押さえながらそろりそろりと移動していた。
 彼女の移動したあとには、溶けた雪で水たまりが出来ている。


「その前にまず雪を落としなさい。
 商品が濡れてしまうだろう」
「嫌だぜ」


 霖之助の言葉に……しかし魔理沙は首を振る。


「だって、溶けちゃうだろ」
「寒いと言っていたのは君だろう」
「寒いものは寒い。だけどそれは別問題だぜ」


 言いながら、魔理沙はストーブを迂回するように移動する。

 身体中についていた雪は、ストーブの熱に当てられほとんどが溶けていた。
 溶けた雪が水滴となり、服を塗らす。
 ……服が透けて見えてしまうほどに。

 いつもは何やかんやいいながら霖之助の言う事を聞くのに、今日の魔理沙はやけに頑固だった。

 このままでは風邪を引いてしまうかも知れない。
 そう思った霖之助は、少しだけ口調を強める。


「魔理沙。いいから……」
「そう慌てるなって、香霖」


 ようやく霖之助の前にやってきた魔理沙は、帽子を外し、カウンターの上に置く。
 そこには溶けずに残った白いものが乗っかっていた。


「ほら、魔理沙さんからのプレゼントだぜ」
「……これは……」


 溶けずに残った雪。
 それと……溶けずに残った、白いチョコレート。


「今日はバレンタインだからな」


 魔理沙はぶっきらぼうに言うと、そっぽを向いた。
 顔が赤いのは寒さのせいか、それとも……。


「……ありがとう、魔理沙。
 嬉しいよ」
「ああ、感謝しろよ。
 今日みたいな日に来るのは私くらいなものだろうからな」
「そうかもしれないね」


 確かにこの天気で外を歩く少女はほとんどいないだろう。
 もちろん、雪女たちはさておいて。


「しかし随分と数があるね、このチョコレートは」
「弾幕はパワーだからな。
 数もパワーだって萃香が言ってた」
「確かにあの鬼なら数もパワーもあるだろうけどね」


 さすがにチョコレートを乗せたまま飛んでは来られないはずだ。
 だとすると、わざわざ店の前で準備をしたのだろうか。

 その光景を想像して……霖之助は魔理沙の頭を撫でた。


「わっ、いきなりなにするんだよ」
「いや、なんとなくね。
 これだけあるなら、ふたりで食べようか。
 それでいいかい?」
「ああ。
 温まるものも頼むぜ」


 魔理沙はいつもの笑顔を浮かべると、カウンターの正面に腰掛けた。
 ひょっとしたら、こうなることを見越していたのかも知れない。


「……チョコと一緒に飲むなら、やはり紅茶かな」
「なんでもいいぜ」


 先ほど用意したお茶は緑茶だったが、既に空になっていた。
 どちらにしろそろそろ葉の替え時だ。
 新しいお茶を用意するにはいいタイミングだろう。

 霖之助は魔理沙を店に残し、居住区へと足を運ぶ。
 目的のものを取ると、すぐにまた店へ。


「その前に、魔理沙」
「香霖? 早かった……わわっ」


 霖之助が見てなくて安心していたのだろうか。
 身体を震わせていた魔理沙は、驚いた声を上げる。
 ……この天気にあれだけ濡れれば無理もない。

 彼女は、すぐに無茶をするから。


「僕の服で悪いが、濡れた服よりはマシだろう。
 しばらくそれでも羽織っているといい。
 ストーブで服が乾くまではね」
「……ああ」


 魔理沙は霖之助の服を大事そうにたぐり寄せる。


「なぁ、香霖」
「なんだい?」
「……最高のバレンタインだろ?」
「自分で言うかね」
「いいじゃないか」


 霖之助は苦笑すると……一緒に持ってきたタオルで魔理沙の頭を拭いた。
 艶やかな髪に水滴が垂れ、反射する。

 拗ねたように唇を尖らせる魔理沙に……霖之助はそっと囁いた。


「最高のバレンタインだよ、魔理沙」





魔理霖バレンタイン
魔理霖バレンタインのイメージをしゃもじさんに描いて貰いました。

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さ、最高のバレンタインじゃないか…
魔理沙が可愛すぎて生きるのが辛い
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