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子悪魔シリーズ05

このシリーズはあくまでパチュ霖だとry
全く関係ないけど素直クールはいい言葉だって誰かが言ってた。


霖之助 パチュリー 小悪魔







 パチュリーが大図書館にいない時は意外と多い。
 動かない図書館と称されるほどの彼女だが、少しは動くのである。

 そのほとんどはお茶の時間を大事にする親友……レミリアに呼ばれてテラスへ行くことだが。
 あとは魔法の実験のために実験室にこもったり、メイドに食事を振る舞われたり、宴会に出たり。

 ……結局、紅魔館にいることには変わりない。


 今回霖之助が図書館を訪れた時も、パチュリーはどこかに出かけている最中だった。
 だが主が居ないとは言え、図書館でやることといったらひとつしかない。

 ないはずなのだが……。


「謝ってください」


 何故だか霖之助は小悪魔から相談を受けていた。
 いや、これはむしろ脅迫である。


「断れば本の貸し出し期限を半分にするなど、正気の沙汰とは思えないね」
「そうですか? パチュリー様は喜ぶと思うんですけど。お父様が来る機会が増えますから。
 それとも、こまめに来るのは嫌ですか?」
「……この期間では借りた本を満足に堪能することは出来ない、と言ってるんだよ。
 別に来たくないと言ってるわけじゃなくてね……」


 言い訳ではないのだが、何となく言わずにはいられなかった。
 言い訳ではないのだが。


「じゃあやっぱり、お父様に謝ってもらうしかないですね」


 どうしてそうなるのか。
 先ほどから会話が堂々巡りのような気がする。

 いや、そもそも。


「話を整理するとだね……。
 要するに君がパチュリーに怒られたから、僕に代わりに謝って欲しいと、そう言うことかい?」
「そうですよ? さっきからそう言ってるじゃないですか」
「……とてもそうは思えなかったが」


 会話というのは、主語と目的語を明確にして初めて成立するものだ。
 特に頭の回転の速い者にありがちなのが、途中経過を省くことだ。
 これは自分はわかってるつもりでも、周りの者には理解できないということが往々にしてある。
 まあそれは幻想郷の少女のほとんどに言えるかもしれないが。


「君がパチュリーに怒られることなんていつものことじゃないか」
「今回はいつもと違うんですよ!
 あの目は本気でした……」


 よほど怖いのだろう。
 怯えた様子の小悪魔に、霖之助は肩を竦めた。

 あの目、と言われても。
 いつもの半分閉じたような、とろんとした眼差しが思い浮かぶ。


「……あまり想像できないんだが、そんなにわかりやすく怒るのかい?」
「はい、それはもう。目は口ほどにものを言うって言うでしょう?
 あの表情を見たのはお父様が来ると言った日をすっぽかして以来です」
「……ちょっと待て」


 いつの間にそんなことになっていたのか。
 いや、それはいつのことを言っているのか。

 ……心当たりが多すぎて特定できない。
 長い付き合いだ。
 そう言うことも一度や二度ではすまないわけで。


「そう考えてみればついこの間も見た気がします。
 ……だとすると余計に恐ろしいですよ」


 いつ、というか。
 ひょっとしたら毎回怒っていたのだろうか。

 余計恐ろしい、という評価がすごく気になった。

 そう言えば、そう言う時の次に紅魔館に顔を出すと、とてもパチュリーの機嫌が悪かった気がする。
 あれは今思うと……。


「僕も今更背筋が寒くなってきたんだが……」


 魔女にとって契約……約束は神聖なものである。
 いやもちろん、霖之助とて理由無く約束をすっぽかしたわけではない。

 霊夢がお茶をたかりに来て帰らなかったり。
 魔理沙が商品を持って行こうとして帰らなかったり。
 紫がいきなり来て帰らなかったり。


 ……なんだか、どう弁解しても余計怒られる気がしてきた。


「……いや、彼女だって鬼ではないよ。
 ちゃんと謝れば許してくれるさ」
「あらら、まるで願望のこもったような言葉ですね」
「そんなことはない」


 そう、そんなことはない。
 魔女にだって良心はある。
 きちんと話せばわかってくれる……と信じたい。


「でもお仕置きされちゃうじゃないですか」
「お仕置きは困るな……。
 ……いや、なんでもない。
 お仕置きされるだけのことをしたのなら、甘んじて受けるべきだ。
 それで許して貰えるのなら、ね」
「キモチイイお仕置きならいつでも歓迎なんですけどー」


 小悪魔はそう言ってなにやら身体をくねらせる。
 ちらりと何か言いたげに視線を送ってくるが、あえての無視。


「……もう。
 とにかく、お父様に謝ってもらえば万事解決すると思うんですよ」
「つまり僕に矢面に立て、ということかい?」
「大丈夫ですよ、お母様はお父様に甘いですから」
「そうかな……」


 言われたところで全く実感が湧かない。
 厳しくはない、とは思うが。


「だってパチュリー様はお父様にぞっこんラヴですから」


 ラヴと言われても反応に困る。
 霖之助に出来るのは、聞かなかったことにして本でも読むことだけだ。


「あ、信じてませんね」
「だいたい女性のプラスの言葉は話半分……いや、8割は誇張だと思えと霧雨の親父さんに言われててね。
 僕はそれを忠実に守ってるだけだよ」
「マイナスのことは?」
「倍にして考えろ。
 事態はより深刻な方に向かってるそうだ」
「八割聞き流すならパチュリー様の言葉の大半無意味じゃないですか」
「聞き流すとまでは言ってないがね」


 確かに、それほど口数の多いわけではないパチュリーの言葉を2割にしたらほとんど残らないだろう。
 というか、パチュリーが1喋る間に小悪魔が10喋っているだけのような気もするが。


「それに場合に寄りけり、だよ。
 沈黙は金なり。彼女は無駄に言葉を発しないからね。
 同じ一言でも重みが全然違うのさ」
「無意識ではもっと喋りたいと思ってるかもしれませんよ」
「パチュリーがかい?」


 試しに、小悪魔のように喋るパチュリーを想像してみた。
 ……合体失敗。


「……想像できないな。
 それに想いを伝える手段は言葉だけじゃないよ。
 きっと彼女はそれがわかっていると思うね」
「そうですか。
 とりあえずお父様がお母様の無口なところに惚れているってことはよくわかりました」
「どうしてそうなるんだ」
「あら、魅力的だってことじゃないんですか?」
「確かに、それもあるがね……」


 否定するのも違うと思い、言葉を濁す霖之助。
 しかし小悪魔は突如として目を輝かせる。


「それもあるってことは他にあるんですよね?
 教えてくださいよ、お父様。お母様のどの辺が好きなのか。
 どの辺が魅力的なのか。性感帯はどこなのか」
「……そんなこと、君に言っても仕方ないだろう」
「え? いえいえそんなことはありませんよ」


 霖之助の言葉に、彼女は首を振る。


「ちゃんと本人も聞いてますから」


 小悪魔の視線は、霖之助の後ろ……図書館の入り口に向いていた。
 そこにいたのは、紫色の魔女。


「…………」
「パ、パチュリー……?」


 いつも通り、いらっしゃいの一言もなく。
 パチュリーは彼女の本を手に、テーブルへと腰掛ける。

 ……気まずい。


「お母様ったら、お父様の本心が聞けて照れてるみたいですよ」
「いや、それはどうだろう」


 相変わらず彼女の表情はなかなか読めない。
 しかもさっきのを聞かれてたということなら、どういう顔でいればいいのか。


「これでパチュリー様の機嫌も直ったし、一石二鳥ですよね」
「……謝る以上の恥をかいた気がするんだが」
「細かいことは気にしちゃダメです」


 つまり小悪魔にハメられたのだと。
 霖之助は思わず苦笑した。

 それに今日は、いつもよりパチュリーの座る席が霖之助に近い気がする。
 1座席分ほど。

 ……まあ、これはこれで良かったのだろう。


「……そもそも君は、どうしてパチュリーに怒られたんだい」
「あれ、言いませんでしたっけ」


 首を傾げる小悪魔。
 肝心なところは何一つ聞いた覚えがない。


「パチュリー様がお風呂に入ってる間、ちょっと感覚共有魔法の強化を試してましてね。
 私が魔法をかけたまま調子に乗って机の角で……」


 なるほど、と霖之助は思った。
 自分の蘊蓄をスルーしている時の魔理沙はこんな心境なのだろう、と。

 まあなんにせよ。


「パチュリー」
「……何?」


 気怠げな色の、彼女の瞳。
 霖之助に見つめられ、微かに揺れる。


「また明日も、来ていいかな?」
「えっ……」


 ……なるほど確かに。


「……もちろん、よ……」


 目は口ほどに、物を言うのかもしれない。

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非公開コメント

道草さんのパチュ霖が可愛すぎて生きていくのが辛い。
助けて霖之助さん。

No title

おかしい。俺の中でパチュ霖が一番になっている。
さと霖はどうしたんだ、俺!!

   

パチュ霖+こぁを書くのが楽しくてしょうがない道草さんを幻視した。
いいぞもっとやれ!

No title

GJと言わざるを得ない
ここのパチェ霖は最高すぎて悶え死ぬ

イイ!!
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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