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草薙の剣擬人化2

『草薙の剣擬人化』の続き。
たまに変なものを書きたいと言うことで。
相変わらずオリキャラ注意です。

草薙つるぎ

霖之助 草薙の剣 神奈子






 ばれない嘘をつくコツは、少しだけ真実を混ぜることである。

 すべてを否定することは出来ない嘘。
 切り捨てることができない時点で、嘘は完成する。


「……で、説明してくれるんだろうな、香霖」
「説明と言ってもね……」


 だが、気のせいだろうか。
 余計状況は悪化しているように思えてならない。


「香霖、本当に……」


 魔理沙の声は震えていた。
 怒っているようで、泣いているようで。

 表せない感情を湛えたまま、その双眸は霖之助の膝の上に居座る少女を凝視する。
 今にも壊れてしまいそうな、そんな張り詰めた空気。


 その空気を壊したのは、他ならぬ草薙の剣だった。
 気怠そうに半目を開け、霖之助の膝の上で首を傾げる。


「なんじゃ、替わって欲しいのか?」
「そこは私のっ……!
 いや、そんなわけないだろ。
 でも……」


 だんだんと声が小さくなる彼女に、つるぎはため息を吐いた。

 それはそうと、どうも魔理沙はつるぎよりも霖之助を睨んでいる気がする。
 ……心当たりは、あんまり無いのだが。


「何を勘違いしているのか。
 大方、娘と言葉を言葉通りに受け取ったのであろう」
「……違うのか?」
「くっくっ、残念じゃがのぅ」


 つるぎは心底楽しそうに眼を細めた。
 ……そうしているとまるで蛇のようだ。


「こやつは我の……そうじゃな、養父のようなものじゃ。
 考えてもみぃ、母親にあたる蛇神がここに来たのはいつじゃ?
 計算も合わないじゃろ」
「な、なんだ、そうだったのか」


 安堵のため息を吐く魔理沙に、しかしつるぎは首を振る。


「もっとも、この男は我を自分のものにしたがっているようなのじゃが」
「なんだと! 香霖まさか……」
「落ち着きなさい、魔理沙」
「……そうか、そうだよな」


 その言葉で、魔理沙は冗談だと思ったようだ。

 ……いや、言葉自体はその通りなのだが。
 少女の姿で言われると別な問題を引き起こしかねないのでやめて欲しい。


「それで、お前はいつまでいるんだ?」


 どうとでも取れるその言葉を、つるぎは狭い意味で捉えたようだ。
 ……明らかにわざとだろう。

 つまり、いつまで霖之助の膝の上にいるのか、と。


「ん? 羨ましいのか?
 やっぱり替わって欲しいと」
「そ、そんなこと言ってないぜ。
 だいたい、いつもは私が……」
「言ってないならよいではないか」


 つるぎは魔理沙に見せつけるように、霖之助にもたれかかった。
 小柄なつるぎの身体は霖之助の膝にすっぽりと収まる。

 ……もっとも、霖之助からはため息しか出ないのだが。


「なかなかの居心地じゃな。
 ここだけは及第点である」
「……!
 香霖もなんで……!」
「なんで、と言われてもね」


 尋ねられても困る。
 道具に媚びるつもりはないのだが、こういう神器の類を粗末に扱うとどんな祟りがあるかわかったものではない。
 そんな事例など、歴史を紐解くまでもなくいくらでも挙げられる。


「……どうしようか、魔理沙」
「私に聞くのかよ!」


 正直、扱いを決めかねているというのが現状だった。

 ……決めるために質問しようにも、魔理沙の前ではいろいろとやりにくいわけで。


「あやや、仲間に先を越されたと思い急いで来てみれば。
 すごいことになってますね」


 割って入った声に、場の視線が集中する。
 最初に声を発したのは、膝の上の少女だった。


「……なんじゃ、天狗か。
 あまり埃を巻き上げるでない。この前も……」
「おお、怖い怖い。
 霖之助さんが管理してなかったら近づくことも出来そうにないですね」


 文は団扇で口元の笑みを隠しながら、店内を歩いてきた。
 霖之助の目の前、息がかかりそうな距離でようやく立ち止まる。


「どういう意味だい?」


 言って彼女はにこやかに微笑む。
 そしてそっと、耳元に唇を近づけた。


「言葉通りの意味です」
「もしかして文、君は……」
「まさか気付いてないとでも?
 あやや、甘く見られたものですね」


 大げさに肩を竦める文。
 そして見下ろすようにつるぎを見る。


「そんなのは人間くらいですよ。
 真に目覚めれば天下……気象を支配できるような道具の気配なんて、ちょっと力のある妖怪ならすぐにわかります。
 自然の象徴たる妖精も、知らず知らずよく集まってきたでしょう?」


 つまり、知っていて放置していたということか。
 香霖堂に剣がある限り安全だからと。
 ……いろいろな意味で。


「なにを話してるんだ?」
「この少女の姿を観察してたんです。
 いい記事にするには写真だけじゃ足りませんからね」


 魔理沙の問いに、文は流れるように答えた。
 天狗は鬼ほど嘘が嫌いではない。
 必要とあらば躊躇することもないのだろう。


「それに見たところ、状況を把握出来ていないようですね。
 でも魔理沙さんがいるから聞くに聞けない、と言ったところでしょうか。
 それに彼女は、納得するまで帰らないみたいですし」


 文の言葉に、頷く。

 彼女の言葉は少しも魔理沙に届いていないようだった。
 風を操る能力だろうか。
 声に指向性を持たせているのだろう。


「わかりました。
 貸しひとつ、ですよ」


 そう言うと、文は魔理沙の隣に歩み寄る。
 懐から手帳を取り出し、魔理沙に何事か囁いた。


「そうか、わかったぜ」


 彼女が頷くのを確認して、口を開く。


「コホン、それではよりよい新聞作りのため、質問に答えていただきたいと思います。
 協力していただけますか?」
「む? 我のことか?」
「ええ、その通りですよ。
 草薙さんちのつるぎさん」


 よほど膝の上がしっくりきていたのか、うとうとしていたつるぎは目を擦りながら起き上がる。


「ご存じかもしれませんが、私はしがない新聞記者をやっておりましてね。
 同じようにしがない道具屋の主人の周りには興味津々なんですよ」
「誰がしがないんだ、誰が」
「お主のことなど知っておる」
「あやや、そうですか」


 彼女の言葉に、しかし文は笑みを浮かべる。
 営業スマイルというやつだろうか。


「でも私はあなたのことを知らないわけです。
 というわけで、私たちの質問に答えて貰えますか?」
「……なるほどのぅ」


 その言葉に、つるぎは霖之助を見上げた。
 ニヤリと笑いを浮かべ……ひとつ頷く。


「よかろう、答えてやる」
「そうですか、ありがとうございます。
 では……」
「できたぜ」


 そこで文は言葉を切ると、魔理沙からメモを受け取った。
 なるほど、どうやら魔理沙の知りたいこともまとめて聞くつもりらしい。

 ついでに新聞に載せる、人間の知りたい事象も調査出来て一石二鳥と言うわけか。
 さすがというかなんというか、抜け目のない少女だった。


「えええええ」


 しかし文がそれを読み上げようとした瞬間、店内に絶叫が響き渡る。


「えっ、あの、なんでこの子が?
 えええ、ええ?」


 いつの間にか、香霖堂の入り口から顔を覗かせている人物がいた。
 山の上のフランクな神、神奈子だ。


「いらっしゃい……と言いたいところだが、今立て込んでてね。
 ……どうやらお互いに、のようだが」
「うるさいのぅ。
 もう少し威厳があってしかるべきだと思うのじゃが……。
 なあ、我が母親よ」
「……ちょっと神奈子様、静かにして貰えますか?」
「うるさいぜ、神奈子」
「うぅ、ごめんよぅ」


 言葉の集中砲火を浴びた神奈子は、シュンと肩を下ろす。
 しかし気を取り直すように背筋を伸ばすと、ツカツカと霖之助の元へ歩を進める。


「だっていきなりこの子を見たら……」
「神奈子」


 余計なことを言われる前に、霖之助は彼女の口元に手を置いた。
 そして耳元で一言。


「頼むから、しばらく口裏を合わせてくれないか」
「う、うん。わかったからその……」


 何故だか神奈子は顔を真っ赤にしていた。


「うぅ、ひどいではないか」
「おっと、すまないね」


 霖之助が立ち上がった拍子に膝の上から転がり落ちたつるぎが、恨みがましい声を上げる。
 ……少しだけ悪いとは思ったが、ちょうど身体を伸ばしたかったところだ。
 少し離れたところで、魔理沙がなにやら胸をなで下ろしていた。


「質問、いいですか?」
「うむ」


 これ以上先延ばしにしても事態が好転しないと判断したのだろう。
 文はメモ帳片手に、身を乗り出した。


「まず最初に、霖之助さんとはどういう関係ですか?」
「うむ。転々としていた我を拾ったのがこやつだな。
 直前までいた場所はひどい扱いでのぅ。
 比べるとここが天国のようじゃ」
「なんだ、ひどいやつもいるもんだぜ」
「……ああ、そうだね魔理沙」


 そのひどいやつが誰なのか、魔理沙はわからないだろう。

 しかしあれほどの大量の鉄クズをどこで手に入れたのか、霖之助はいまだに気になっていた。


「神奈子様の娘だというのは本当ですか?」
「えっ、私?
 いや、だって私まだそんなこと……」


 驚きの声を上げる神奈子に、霖之助はため息。
 落ち着けるつもりで、彼女の肩に手を起いた瞬間。


「ひぅ」


 なぜか彼女は真っ赤になって硬直してしまった。
 理由はわからなかったが、都合がいいのでこのままにしておくことにする。


「娘というか一族というか……。
 親戚みたいなもの……?
 いやでも、あんまりそう思いたくないのぅ」
「うぅ、ひどい」


 神奈子の様相に、つるぎはため息を吐いた。


「……じゃあ次です。
 動きにくそうな服ですね?」


 文の質問は言葉通りの意味ではない。
 どうやって動けるようになったかを尋ねているのだ。

 つるぎもわかっているのだろう。
 改めて、神奈子の顔を見る。


「不本意ながらそこの親代わりの神が最近調子が良くてのぅ。
 まあ近くにいたのでせっかくだから、とな」
「つまり、ええと、神奈子様の活躍を見に来たってことですね」
「なんだ、そうなのか」
「……なるほどね」


 文は魔理沙に説明するように言い直した。
 ばつが悪そうに頭をかいている。

 天狗たち……妖怪の山の信仰を受けて高まった神奈子の力で、つるぎは動けるようになったということだ。


「これは何度か魔理沙さんが聞いたようですが……」


 チラリ、と魔理沙を見る文。
 彼女はわざとらしく視線を逸らす。


「いつまで香霖堂に?
 もちろん、今の貴方が、ですが」


 霖之助としてはずっといてくれても構わないのだが。
 ……もちろん、剣の状態で。


「特に決めておらぬのぅ。
 強いて言うなら飽きるまで、かの」

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