鵺の呼び声ぷち 03
ぬえ霖強化週間。
このあたりを書いててぬえのイメージが固まってきた気がします。
おかしな方向に。
オススメぬえ霖の末席に載れるよう頑張りたいところ。
霖之助 ぬえ
扉の開く音で、誰が来たかわかるものだ。
魔理沙はやや乱暴に。
霊夢は自分の家のように。
紫はそもそも扉を開けない。
そして彼女の場合。
「正体不明がいると聞いて飛んできました!」
扉の開く音より、声のほうが速い。
どういう原理かは知らないが、幻想郷最速なのは移動速度だけではないようだった。
「この清く正しい射命丸が来たからには」
「なんかもういろいろとダメね」
すっかり自分の定位置となった机で、ぬえは突っ伏した。
先日の事件とは無関係の人物、それも新聞記者に知られてしまっては正体不明の妖怪が受けるショックは計り知れないものがあるだろう。
正体不明の種を見せて貰っていた霖之助は、苦笑しながらぬえの頭を撫でた。
「お客じゃないのなら出口はあちらだよ」
「固いこと言わないでくださいよ。私と霖之助さんの仲じゃないですか」
一瞬で零距離まで間合いを詰めてくる文に、突っ伏したままぬえがぴくりと反応する。
「だいたい、なんで君まで知ってるんだい?
これでも……一応は正体不明らしいんだけど」
「あれ? そこら中で魔理沙さんが喋ってましたよ」
へにゃり、とぬえの羽根が力なく垂れた。
余程ショックのようだ。
「それで最近出来たお寺に取材に行ったんですけど。
どうもここに入り浸っていると聞いて」
「……なるほどね」
居場所が割れてる時点で正体不明としては致命的なのではないか。
今更霖之助はそう思うが……あえて何も言わないでおく。
どうせ手遅れだし、来なくなるのは……なんだか少し困る、気がする。
「で、その子なんですか?
噂の鵺というのは」
「どんな噂か知らないが、まあ、ぬえだよ」
「ふむふむ」
早速文はぬえの周りをなにやら探り始めた。
凄まじい勢いで手帳になにやら書き込んでいく。
「……ところで、おふたりはどのような関係で?」
「こっ……」
突然ぬえが立ち上がり……言葉途中で、固まった。
それから力なく腰を下ろす。
「友人よ。
正体不明同士、気が合うの」
「なるほど。
確かに霖之助さんも正体不明ですからねぇ」
「僕はまったくそう思ってないんだがね」
一応主張してみるが、ふたりが聞く気配はない。
「じゃあ次は……」
「ちょっと待って」
文の言葉を手で制すぬえ。
ようやく立ち直ってきたのか、それともヤケになったのか。
鋭い目で、文を睨み返す。
「まだ誰も取材を受けるなんて言ってないわ」
「あら? そうでしたっけ?」
文は惚ける……が、既に臨戦態勢に入っているようだった。
「では改めて。
私の被写体になってみます?」
「望むところよ!」
わかりやすく言うと、一言。
表に出ろ。
スペルカード戦というのは遠くで見ると綺麗なものだ。
普段なら離れて景色のように楽しむそれを、思うところがあって霖之助はふたりと一緒に店の前に出ていた。
ぬえの使う正体不明の種を見てみたかったのだ。
……しかし。
「正体不明『忿怒のレッドUFO襲来』!」
思わず霖之助は顔を背けた。
「正体不明『哀愁のブルーUFO襲来』!」
思わず霖之助は肩を震わせた。
「正体不明『義心のグリーン……」
思わず霖之助は店に戻ろうとして……。
「……ねえ、ちょっと」
ぬえに呼び止められた。
「さっきから、気が散るんだけど。
何か言いたいことがあるわけ?」
「いや、済まない。
君のスペルカードの名前が、その……」
「ああ、確かに」
言いにくそうに口ごもる霖之助に、文が後を続けた。
「面白いですよね、その名前。
むしろよっぽど気が散るというか」
「がーん……」
「今、口で言いましたね」
ギギギ、と錆び付いたドアのような動きで、ぬえは再び霖之助に顔を向ける。
「霖之助もそう思ってるの……?」
「……まあ、個人個人の自由だから僕は尊重するよ。
ただ正体不明にしては名は体を表しすぎというか……」
というかそのまんま過ぎる。
ブルーUFO襲来でブルーUFOが襲来してきたら、正体不明の意味がないのではないか。
いや、正体不明であることには変わりないのだが。
「…………」
「あの、ぬえさん?」
「ぬえ?」
俯くぬえがちょっと心配になり、声をかける。
「霖之助の……」
キッと顔を上げるぬえ。
その目が潤んでいたのは……気のせいだろうか。
「バカー!」
ひとつ叫ぶと、ぬえはものすごい速度で飛んで行ってしまった。
「あやや、面白い記事が書けそうですね、これは」
楽しそうな文をよそに、霖之助はため息を吐いた。
あれくらいの名前はまあ、幻想郷では珍しくないのだが……。
ただ普段から正体不明を矜持にしてる彼女が使うとなんだかおかしかっただけで。
――しかしぬえは、一体どこに向かったというのだろう。
「それで、私のところに来たの?」
「そうよ。カリスマならあなたに聞けって言われたから。
名前考えるのに協力してちょうだい」
紅魔館の主に、ぬえは頼み込んでいた。
霖之助が認めるよくできたメイドが認める主ならきっと間違いないだろう。
……たぶん。
先日ぬえがお邪魔したことには気付いていないようだ。
レミリアは気分を良くした様子で頷く。
「……よくわかってるじゃない」
このあたりを書いててぬえのイメージが固まってきた気がします。
おかしな方向に。
オススメぬえ霖の末席に載れるよう頑張りたいところ。
霖之助 ぬえ
扉の開く音で、誰が来たかわかるものだ。
魔理沙はやや乱暴に。
霊夢は自分の家のように。
紫はそもそも扉を開けない。
そして彼女の場合。
「正体不明がいると聞いて飛んできました!」
扉の開く音より、声のほうが速い。
どういう原理かは知らないが、幻想郷最速なのは移動速度だけではないようだった。
「この清く正しい射命丸が来たからには」
「なんかもういろいろとダメね」
すっかり自分の定位置となった机で、ぬえは突っ伏した。
先日の事件とは無関係の人物、それも新聞記者に知られてしまっては正体不明の妖怪が受けるショックは計り知れないものがあるだろう。
正体不明の種を見せて貰っていた霖之助は、苦笑しながらぬえの頭を撫でた。
「お客じゃないのなら出口はあちらだよ」
「固いこと言わないでくださいよ。私と霖之助さんの仲じゃないですか」
一瞬で零距離まで間合いを詰めてくる文に、突っ伏したままぬえがぴくりと反応する。
「だいたい、なんで君まで知ってるんだい?
これでも……一応は正体不明らしいんだけど」
「あれ? そこら中で魔理沙さんが喋ってましたよ」
へにゃり、とぬえの羽根が力なく垂れた。
余程ショックのようだ。
「それで最近出来たお寺に取材に行ったんですけど。
どうもここに入り浸っていると聞いて」
「……なるほどね」
居場所が割れてる時点で正体不明としては致命的なのではないか。
今更霖之助はそう思うが……あえて何も言わないでおく。
どうせ手遅れだし、来なくなるのは……なんだか少し困る、気がする。
「で、その子なんですか?
噂の鵺というのは」
「どんな噂か知らないが、まあ、ぬえだよ」
「ふむふむ」
早速文はぬえの周りをなにやら探り始めた。
凄まじい勢いで手帳になにやら書き込んでいく。
「……ところで、おふたりはどのような関係で?」
「こっ……」
突然ぬえが立ち上がり……言葉途中で、固まった。
それから力なく腰を下ろす。
「友人よ。
正体不明同士、気が合うの」
「なるほど。
確かに霖之助さんも正体不明ですからねぇ」
「僕はまったくそう思ってないんだがね」
一応主張してみるが、ふたりが聞く気配はない。
「じゃあ次は……」
「ちょっと待って」
文の言葉を手で制すぬえ。
ようやく立ち直ってきたのか、それともヤケになったのか。
鋭い目で、文を睨み返す。
「まだ誰も取材を受けるなんて言ってないわ」
「あら? そうでしたっけ?」
文は惚ける……が、既に臨戦態勢に入っているようだった。
「では改めて。
私の被写体になってみます?」
「望むところよ!」
わかりやすく言うと、一言。
表に出ろ。
スペルカード戦というのは遠くで見ると綺麗なものだ。
普段なら離れて景色のように楽しむそれを、思うところがあって霖之助はふたりと一緒に店の前に出ていた。
ぬえの使う正体不明の種を見てみたかったのだ。
……しかし。
「正体不明『忿怒のレッドUFO襲来』!」
思わず霖之助は顔を背けた。
「正体不明『哀愁のブルーUFO襲来』!」
思わず霖之助は肩を震わせた。
「正体不明『義心のグリーン……」
思わず霖之助は店に戻ろうとして……。
「……ねえ、ちょっと」
ぬえに呼び止められた。
「さっきから、気が散るんだけど。
何か言いたいことがあるわけ?」
「いや、済まない。
君のスペルカードの名前が、その……」
「ああ、確かに」
言いにくそうに口ごもる霖之助に、文が後を続けた。
「面白いですよね、その名前。
むしろよっぽど気が散るというか」
「がーん……」
「今、口で言いましたね」
ギギギ、と錆び付いたドアのような動きで、ぬえは再び霖之助に顔を向ける。
「霖之助もそう思ってるの……?」
「……まあ、個人個人の自由だから僕は尊重するよ。
ただ正体不明にしては名は体を表しすぎというか……」
というかそのまんま過ぎる。
ブルーUFO襲来でブルーUFOが襲来してきたら、正体不明の意味がないのではないか。
いや、正体不明であることには変わりないのだが。
「…………」
「あの、ぬえさん?」
「ぬえ?」
俯くぬえがちょっと心配になり、声をかける。
「霖之助の……」
キッと顔を上げるぬえ。
その目が潤んでいたのは……気のせいだろうか。
「バカー!」
ひとつ叫ぶと、ぬえはものすごい速度で飛んで行ってしまった。
「あやや、面白い記事が書けそうですね、これは」
楽しそうな文をよそに、霖之助はため息を吐いた。
あれくらいの名前はまあ、幻想郷では珍しくないのだが……。
ただ普段から正体不明を矜持にしてる彼女が使うとなんだかおかしかっただけで。
――しかしぬえは、一体どこに向かったというのだろう。
「それで、私のところに来たの?」
「そうよ。カリスマならあなたに聞けって言われたから。
名前考えるのに協力してちょうだい」
紅魔館の主に、ぬえは頼み込んでいた。
霖之助が認めるよくできたメイドが認める主ならきっと間違いないだろう。
……たぶん。
先日ぬえがお邪魔したことには気付いていないようだ。
レミリアは気分を良くした様子で頷く。
「……よくわかってるじゃない」
コメントの投稿
レミリアに聞いちゃだめだよぬえ。考え直すんだww
No title
末席だなんて……、主席としか考えられない!
ぬえ霖……コレは良いものだ。
ぬえ霖……コレは良いものだ。
No title
カリスマもネーミングセンスも両方参考にならんぞww