鵺の呼び声ぷち 02
ぬえ霖強化週間。
まだまだ続くよどこまでも。
霖之助 ぬえ
「紅魔館に行ってきたわ!」
「大声を出さないでくれないか。魚が逃げてしまうだろう」
紅魔館のほど近くにある、湖の畔。
霖之助は釣り竿を手に、ぬえに振り返る。
「いいかい? 釣りとは魚と命を賭けた真剣勝負なんだ。
こちらも真摯な態度で臨まなくては失礼というものだよ」
「ふ~ん」
ぬえは霖之助の隣に腰掛けた。
水面に、ふたり並んだ姿が映し出される。
彼女は横に置いてある、いまだ空のクーラーボックスを覗き込み……。
「あんまり関係ないみたいね。
それとも、ひとりの時も大声で喋ってたの?」
「…………」
その言葉に、霖之助は顔を背けた。
ちょうど視界に紅魔館が入ったので、思い出したように口を開く。
……話題を切り変えるように。
「紅魔館か。広かっただろう?」
「ええ。きちんと驚かせてきたわよ」
ぬえの言葉に、霖之助は驚きの表情を浮かべた。
「あそこにはよくできたメイドがいるからね。
すぐに見つかったんじゃないか?」
「平気よ。だって私だもの。
それに正体不明の侵入者なんて、いかにも私にぴったりでしょ?」
「君の能力かい?」
正体を判らなくする程度の能力。
それでどうやってやり過ごしたのだろう、と霖之助は首を傾げる。
「あそこの屋敷ってよく侵入者がいるみたいね」
「……ああ、そうだね」
その言葉に、よく見知った普通の魔法使いの顔が頭に浮かんだ。
あと幻想郷最速の烏天狗も。
「だから、そのふたりのせいにしてきただけよ」
正体不明、というより侵入者の先入観を逆手に取ったということだろう。
あとであのふたりにお茶でもサービスするべきかもしれない。
……理由は伝えないけれど。
「いろいろできるんだな」
「そうでしょう?」
「他にどんなことが可能なんだい?」
「それが判ったら正体不明じゃなくなっちゃうじゃない。
ひ・み・つ♪」
唇を指で押さえ、ぬえは微笑む。
「勝手に考える分にはかまわないけど」
「そうか」
言われなくても勝手に考えるわけだが。
そんな霖之助の考えを知ってか知らずか、ぬえは楽しそうな表情を浮かべた。
そして改めて、釣り竿に視線を送る。
「……釣れないわね」
「騒いでるからだよ」
「騒いでても釣れるときは釣れると思うの」
彼女はそう言うと、霖之助の道具を調べ始めた。
練り餌を手に取る。
確か外の世界のエサだ。
今日はこれを試してみる、と自信たっぷりだったはずだが。
「エサが悪いんじゃない?」
「いや、そんなはずは……」
「それ」
かけ声とともに、ぬえは何かを放り投げた。
それは霖之助の持つ釣り竿を伝い、糸の先へと留まる。
……ややあって、急に竿が動いた。
「ほら、かかった」
「……すごいな」
力強い引きに負けないよう、大きくしなった釣り竿を引く。
外の世界から流れ着いたカーボンロッドは軽く、そしてしなやかだ。
霖之助は水面に上がってきた魚を、今日初めて網ですくった。
「エサに正体不明の種をつけたの。
魚にはきっと素晴らしいエサっぽいものに見えたはずよ」
「ほう……」
改めて、感嘆のため息を漏らす。
エサだ、という認識があればもっとも近いものに見えるらしい。
「面白いな」
「でしょう」
なにやら考察し始めた霖之助に、ぬえは満足げに頷く。
「もっともっと、考えるといいわよ。
……私のことを」
まだまだ続くよどこまでも。
霖之助 ぬえ
「紅魔館に行ってきたわ!」
「大声を出さないでくれないか。魚が逃げてしまうだろう」
紅魔館のほど近くにある、湖の畔。
霖之助は釣り竿を手に、ぬえに振り返る。
「いいかい? 釣りとは魚と命を賭けた真剣勝負なんだ。
こちらも真摯な態度で臨まなくては失礼というものだよ」
「ふ~ん」
ぬえは霖之助の隣に腰掛けた。
水面に、ふたり並んだ姿が映し出される。
彼女は横に置いてある、いまだ空のクーラーボックスを覗き込み……。
「あんまり関係ないみたいね。
それとも、ひとりの時も大声で喋ってたの?」
「…………」
その言葉に、霖之助は顔を背けた。
ちょうど視界に紅魔館が入ったので、思い出したように口を開く。
……話題を切り変えるように。
「紅魔館か。広かっただろう?」
「ええ。きちんと驚かせてきたわよ」
ぬえの言葉に、霖之助は驚きの表情を浮かべた。
「あそこにはよくできたメイドがいるからね。
すぐに見つかったんじゃないか?」
「平気よ。だって私だもの。
それに正体不明の侵入者なんて、いかにも私にぴったりでしょ?」
「君の能力かい?」
正体を判らなくする程度の能力。
それでどうやってやり過ごしたのだろう、と霖之助は首を傾げる。
「あそこの屋敷ってよく侵入者がいるみたいね」
「……ああ、そうだね」
その言葉に、よく見知った普通の魔法使いの顔が頭に浮かんだ。
あと幻想郷最速の烏天狗も。
「だから、そのふたりのせいにしてきただけよ」
正体不明、というより侵入者の先入観を逆手に取ったということだろう。
あとであのふたりにお茶でもサービスするべきかもしれない。
……理由は伝えないけれど。
「いろいろできるんだな」
「そうでしょう?」
「他にどんなことが可能なんだい?」
「それが判ったら正体不明じゃなくなっちゃうじゃない。
ひ・み・つ♪」
唇を指で押さえ、ぬえは微笑む。
「勝手に考える分にはかまわないけど」
「そうか」
言われなくても勝手に考えるわけだが。
そんな霖之助の考えを知ってか知らずか、ぬえは楽しそうな表情を浮かべた。
そして改めて、釣り竿に視線を送る。
「……釣れないわね」
「騒いでるからだよ」
「騒いでても釣れるときは釣れると思うの」
彼女はそう言うと、霖之助の道具を調べ始めた。
練り餌を手に取る。
確か外の世界のエサだ。
今日はこれを試してみる、と自信たっぷりだったはずだが。
「エサが悪いんじゃない?」
「いや、そんなはずは……」
「それ」
かけ声とともに、ぬえは何かを放り投げた。
それは霖之助の持つ釣り竿を伝い、糸の先へと留まる。
……ややあって、急に竿が動いた。
「ほら、かかった」
「……すごいな」
力強い引きに負けないよう、大きくしなった釣り竿を引く。
外の世界から流れ着いたカーボンロッドは軽く、そしてしなやかだ。
霖之助は水面に上がってきた魚を、今日初めて網ですくった。
「エサに正体不明の種をつけたの。
魚にはきっと素晴らしいエサっぽいものに見えたはずよ」
「ほう……」
改めて、感嘆のため息を漏らす。
エサだ、という認識があればもっとも近いものに見えるらしい。
「面白いな」
「でしょう」
なにやら考察し始めた霖之助に、ぬえは満足げに頷く。
「もっともっと、考えるといいわよ。
……私のことを」