夏の風物詩
暑い。
ということで水辺の霖之助を書いたら何故かパチュリールートに入った。不思議。
魔理沙に誘われて湖までやって来た霖之助。
暑い中本を読んでいると、同じ趣味の魔女がやってきた。
霖之助 パチュリー
――だまされた。
霖之助は憮然とした表情で湖を見つめていた。
紅魔館近くの霧の湖。
思えば、この場所を聞いたときにこの事態を想定すべきだった。
視線の先には、水着姿ではしゃぐ魔理沙や霊夢、咲夜や美鈴たち。
――香霖、夏の風流を体験したくないか?
そう誘われてついてきたのが運の尽き。
確かに風物詩ではあるかもしれないが風流ではない。
そもそも魔理沙に風流を期待したことが間違いだったのだろうか。
帰ろうにも霖之助の上着は霊夢に取られてしまい、上半身裸で香霖堂までの道のりを歩くわけにもいかない。
仕方なく、紅魔館のメイド長が用意したパラソルの下で持参した本を読んでいるのだが……。
「本、濡れるわよ」
「……気をつけてはいるよ」
近くで声がした。
顔を上げると、七曜の魔法使い……パチュリーが歩いてくるところだった。
「全く、暑いわね……はい」
「うん?」
「防水魔法」
霖之助の手にした本がうっすらと光に包まれた。
見ると、彼女も同じ光をした分厚い本を抱えている。
水辺に来たからといって水遊びをする気はないということだろう。
パチュリーはいつものパジャマのようなローブではなく、淡い紫の水着の上に薄いピンクのパーカーを羽織っていた。
ついでに防水の光を纏っているのは本だけだ。
本人は濡れても、本だけは濡らさない心構えらしい。
「君が出てくるとはね。驚いたよ」
「出てきたくて出てきたんじゃないわ。来ないと魔理沙が本を返さないって言うから……」
パチュリーは気怠そうに頭を振る。
そんな彼女に、霖之助は大きく頷いた。
「ああ、僕もそうさ。だいたい、わざわざこんな水遊びをするなんてナンセンス極まりない。
他に涼む方法はいくらでもあるというのに」
「私は別に、水が嫌いじゃないけど……」
水に入りたければ魔法で召喚すればいい。
しかし、当たり前だがそんな状態では本が読みづらい。それだけのことだ。
「他に涼み方がある、というのは同意するわ。
これじゃ暑くて眩しくて本も読めないもの」
ふたりとも本を読むことしか考えていない。
パチュリーは霖之助の前で立ち止まると、思い出したように手を叩いた。
「ねえ、貴方」
「なんだい、パチュリー」
「古代エジプトの納涼法って知ってるかしら」
「ああ、もちろんさ。確か……」
外気が体温より高い国では人肌で涼を取っていた、という話がある。
「主に対象となったのは奴隷の少女らしいのだが、しかし僕が考えるに……」
パチュリーは霖之助が喋っている間に、彼の後ろに腰を下ろした。
背中を霖之助に預け、本を開く。
「背中、借りるわよ」
「……あ、ああ」
霖之助はパチュリーから伝わってくる体温に戸惑っていた。
魔理沙や霊夢とは違う、少女の体温。
「ねえ」
「うん?」
パチュリーの声に、霖之助は振り向かず応える。
存在は感じる。
しかし強く干渉することはない。
慣れてしまえば居心地のいい距離感。
「背中、大きいのね」
「そうかい?」
「ええ。これなら太陽が傾いても日よけになりそうだわ」
「その時は移動すればいいさ。ふたりで」
「……そうね。ふたりで」
言って、無言に……本の世界に戻る。
触れ合っているせいか、お互いのほんの世界すら共有できてしまいそうな錯覚。
周囲にはページをめくる音と虫の声、少女たちのざわめき。
「パチュリー」
「なに」
思い出したように交わされる会話も、読書のアクセントにこそなれ妨げるものではない。
「魔理沙に、注意しておこうか?」
それが最初の会話の続きだと思い当たり……パチュリーは首を振った。
「別にいいわ。
……たまにいいこともあるし……。
それに、本当に戻ってこないわけじゃないわ。魔理沙の言うとおり、ね」
その言葉の意味を理解して……霖之助は顔を顰めた。
――死ぬまで借りているだけだぜ。
魔理沙はなんだかんだで自分の言ったことに対して責任を持とうとする。
努力が必ず報われるわけではないのと同じように、保証するものではないが。
「ねえ」
「なんだい」
「もっと図書館に来なさいよ。
そしたら、魔理沙は大人しくなるかもしれないわ」
果たしてそうだろうか。
霖之助の脳裏に、これ幸いにと本領を発揮する魔理沙の姿がよぎる。
「そうだね……」
とてもそうは思えないのだが……と考え、ようやく霖之助は理解した。
それだからいいのだろう。
なんだかんだでこの魔法使いは、友人の元気な姿を見たいのだ。
「考えておくよ」
湖のほうでひときわ大きな歓声が上がった。
……あの声は魔理沙だ。
こちらに向かって手を振っているのが見えた。
なにやら呼んでいるようだが……気づかないふりをしておくとしよう。
どうせそのうち痺れを切らして、実力行使に出るに違いない。
「……ふふっ」
同じことを考えたのか、背中でパチュリーが笑ったのも伝わってきた。
全く、風流にはほど遠い。
だがそんな夏の風物詩も実に……。
「悪くないわね」
「ああ、悪くない」
ということで水辺の霖之助を書いたら何故かパチュリールートに入った。不思議。
魔理沙に誘われて湖までやって来た霖之助。
暑い中本を読んでいると、同じ趣味の魔女がやってきた。
霖之助 パチュリー
――だまされた。
霖之助は憮然とした表情で湖を見つめていた。
紅魔館近くの霧の湖。
思えば、この場所を聞いたときにこの事態を想定すべきだった。
視線の先には、水着姿ではしゃぐ魔理沙や霊夢、咲夜や美鈴たち。
――香霖、夏の風流を体験したくないか?
そう誘われてついてきたのが運の尽き。
確かに風物詩ではあるかもしれないが風流ではない。
そもそも魔理沙に風流を期待したことが間違いだったのだろうか。
帰ろうにも霖之助の上着は霊夢に取られてしまい、上半身裸で香霖堂までの道のりを歩くわけにもいかない。
仕方なく、紅魔館のメイド長が用意したパラソルの下で持参した本を読んでいるのだが……。
「本、濡れるわよ」
「……気をつけてはいるよ」
近くで声がした。
顔を上げると、七曜の魔法使い……パチュリーが歩いてくるところだった。
「全く、暑いわね……はい」
「うん?」
「防水魔法」
霖之助の手にした本がうっすらと光に包まれた。
見ると、彼女も同じ光をした分厚い本を抱えている。
水辺に来たからといって水遊びをする気はないということだろう。
パチュリーはいつものパジャマのようなローブではなく、淡い紫の水着の上に薄いピンクのパーカーを羽織っていた。
ついでに防水の光を纏っているのは本だけだ。
本人は濡れても、本だけは濡らさない心構えらしい。
「君が出てくるとはね。驚いたよ」
「出てきたくて出てきたんじゃないわ。来ないと魔理沙が本を返さないって言うから……」
パチュリーは気怠そうに頭を振る。
そんな彼女に、霖之助は大きく頷いた。
「ああ、僕もそうさ。だいたい、わざわざこんな水遊びをするなんてナンセンス極まりない。
他に涼む方法はいくらでもあるというのに」
「私は別に、水が嫌いじゃないけど……」
水に入りたければ魔法で召喚すればいい。
しかし、当たり前だがそんな状態では本が読みづらい。それだけのことだ。
「他に涼み方がある、というのは同意するわ。
これじゃ暑くて眩しくて本も読めないもの」
ふたりとも本を読むことしか考えていない。
パチュリーは霖之助の前で立ち止まると、思い出したように手を叩いた。
「ねえ、貴方」
「なんだい、パチュリー」
「古代エジプトの納涼法って知ってるかしら」
「ああ、もちろんさ。確か……」
外気が体温より高い国では人肌で涼を取っていた、という話がある。
「主に対象となったのは奴隷の少女らしいのだが、しかし僕が考えるに……」
パチュリーは霖之助が喋っている間に、彼の後ろに腰を下ろした。
背中を霖之助に預け、本を開く。
「背中、借りるわよ」
「……あ、ああ」
霖之助はパチュリーから伝わってくる体温に戸惑っていた。
魔理沙や霊夢とは違う、少女の体温。
「ねえ」
「うん?」
パチュリーの声に、霖之助は振り向かず応える。
存在は感じる。
しかし強く干渉することはない。
慣れてしまえば居心地のいい距離感。
「背中、大きいのね」
「そうかい?」
「ええ。これなら太陽が傾いても日よけになりそうだわ」
「その時は移動すればいいさ。ふたりで」
「……そうね。ふたりで」
言って、無言に……本の世界に戻る。
触れ合っているせいか、お互いのほんの世界すら共有できてしまいそうな錯覚。
周囲にはページをめくる音と虫の声、少女たちのざわめき。
「パチュリー」
「なに」
思い出したように交わされる会話も、読書のアクセントにこそなれ妨げるものではない。
「魔理沙に、注意しておこうか?」
それが最初の会話の続きだと思い当たり……パチュリーは首を振った。
「別にいいわ。
……たまにいいこともあるし……。
それに、本当に戻ってこないわけじゃないわ。魔理沙の言うとおり、ね」
その言葉の意味を理解して……霖之助は顔を顰めた。
――死ぬまで借りているだけだぜ。
魔理沙はなんだかんだで自分の言ったことに対して責任を持とうとする。
努力が必ず報われるわけではないのと同じように、保証するものではないが。
「ねえ」
「なんだい」
「もっと図書館に来なさいよ。
そしたら、魔理沙は大人しくなるかもしれないわ」
果たしてそうだろうか。
霖之助の脳裏に、これ幸いにと本領を発揮する魔理沙の姿がよぎる。
「そうだね……」
とてもそうは思えないのだが……と考え、ようやく霖之助は理解した。
それだからいいのだろう。
なんだかんだでこの魔法使いは、友人の元気な姿を見たいのだ。
「考えておくよ」
湖のほうでひときわ大きな歓声が上がった。
……あの声は魔理沙だ。
こちらに向かって手を振っているのが見えた。
なにやら呼んでいるようだが……気づかないふりをしておくとしよう。
どうせそのうち痺れを切らして、実力行使に出るに違いない。
「……ふふっ」
同じことを考えたのか、背中でパチュリーが笑ったのも伝わってきた。
全く、風流にはほど遠い。
だがそんな夏の風物詩も実に……。
「悪くないわね」
「ああ、悪くない」
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No title
やべ、パチュリーかあいい
やはりパチュ霖最高!!
やはりパチュ霖最高!!
こっちもか…ありがとう道草慧音……
紫の水着という簡単な表現に俺の脳フル活動が出した答えは紫のスク水でしたwww
なんでなんだろう
紫の水着という簡単な表現に俺の脳フル活動が出した答えは紫のスク水でしたwww
なんでなんだろう