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ただパチュリーさんが寝るだけの話

いろいろ混ざった結果のショートショート。
ちょうどリクも来ていた気がするよ。

甘え方は人それぞれ。
甘えるぱっちぇさんだけで1シリーズ作れそうな勢いです。


霖之助 パチュリー








「努力の結果だよ」
「楽をするために努力するのか……香霖らしいぜ」


 霖之助の言葉に、魔理沙は苦笑を浮かべた。
 最近やけに動かない道具屋が動いていると思ったら、これだ。


「外の道具が便利なのは暮らしを楽にするために最大の努力をした結果だ。
 僕はその精神に大いに敬意を払うね」
「結局は楽をしたいんだろう?」
「それについて否定する必要はないな」


 確かに霖之助は最近努力していたように思う。
 毎日遅くまで何か調べ物をしていたかと思うと遠くまで何かを探しに行ったり、たまに魔理沙や他の妖怪に質問しに行ったり。
 しかし。


「だからって、本を読むためにわざわざ図書館と店を繋げるなんて……」
「便利だろう?」
「どうしてこの努力を店のほうに向けないかが不思議でならないぜ」


 その方が香霖らしいけどな、と笑う魔理沙。


「僕としては、早速君に見つかる方が予想外なんだがね」
「いいじゃないか。私と香霖の仲なんだぜ」


 魔理沙の視線には、ようやく開通したという魔法の通路の入り口が開いていた。
 図書館からの帰り、追っ手を振り切るためあちらにある入り口へ試しに入ったところ香霖堂に出たのだ。

 突然現れた魔理沙に驚く霖之助の顔は見物だった。

 もっとも、驚いたのは双方同じだったが。
 それから説明を聞いて……今に至る。


「それにしても、よく作れたな」
「ああ……楽をしたいのは僕だけじゃないと言うことさ」


 この制作には、動かない図書館も動いていた。
 霖之助ひとりではこのような大がかりな仕掛けは無理だっただろう。

 どちらにしろ行き先が行き先である。
 彼女の協力なしには不可能だっただろうが。


「模倣は魔術・魔法の基本だよ。
 太陽を真似て火をおこし、雷を真似て電気を飛ばし、雨を真似て水球を操る。
 これはつまり自然の模倣に他ならず……」
「そんな事は聞いてないぜ」
「……つまり僕たちは、能力者の力を模倣することに着目したのさ」
「ふぅん」


 僕たち、と言う響きが少し引っかかったが、魔理沙はとりあえず話を聞くことにした。
 原理はどうでもいいのだが、説明を聞いておけば今後自分が使うときに役に立つかもしれないと思ったからだ。


「最初に目をつけたのは紫なんだが……」
「あのスキマか。確かに便利だな」
「だが魔術で再現するには彼女の能力は未知数でね。空間と空間を直に、しかも恒常的に繋げる……とてもじゃないが今の技術では不可能だと感じたよ」
「でもあの通路は繋がってたぜ?」
「まあ聞きたまえ。次に注目したのは咲夜や霊夢さ。
 咲夜は時を止めることで、霊夢は時空の束縛から解放されることで零時間移動を成し遂げている。
 つまり逆転の発想だよ。空間を繋げ……距離を短くできないなら速度を上げればいい。
 そこで僕たちは専用の魔力通路を造り、その中を高速で移動することにより……」
「あーわかったわかった」


 魔理沙はもういいと言わんばかりに手を振った。
 役に立つ情報を引き出せそうにないと判断したからだ。

 言葉を遮られた霖之助は、しかし機嫌が良さそうだった。


「つまりアレに入れば図書館まで一気に移動できるんだな?」
「そうだが……普段は鍵をかけさせてもらうよ。泥棒に使われたら迷惑だからね」
「そんな事をするとはふてぇやつがいたもんだな」


 他人事のように言う魔理沙。
 しかし彼女の鞄から図書館で見たことのある本が覗いていることを、霖之助は見逃さなかった。


「……君が何かしたらすぐに呼び出されるのは僕なんだから、ほどほどにしてくれよ」
「考えておくぜ」


 にっと笑い、魔理沙は踵を返す。
 長居は無用、ということだろう。


「やれやれ」


 魔理沙を見送り、肩を竦める。

 喋り続けたせいで喉が渇いていた。
 お茶の一杯でも飲みたいところではあるが……残念ながら、しばらく霖之助は動けそうにない。


「……どうして?」


 その動けない原因が声を発した。

 音とは振動である。
 背中越しに伝わるそれが、なんだかこそばゆい。


「起きたのかい」
「枕元で騒がれたら嫌でも起きるわ」
「やれやれ、僕は枕じゃないんだがね……」


 この通路が完成したのはつい先ほど、今朝方のことだった。
 つまり霖之助ともうひとり……パチュリーは、徹夜で作業をしていた。

 完成したあと少しばかり試運転して……力尽きて今に至る。
 通路が開けっぱなしだったのはそのせいだった。


「だって……寝やすいもの……」


 霖之助の広い背中に隠れて、正面に立っていた魔理沙はパチュリーに気づかなかったようだ。
 もし少しでも横に回ったら紫の影に気が付いたことだろう。


「それにしても……よくもまあ、失敗した方法の理論を偉そうに語れるわね」
「別に、あの失敗のおかげで新たな手段が見つかったからいいじゃないか。失敗は成功の母だよ」
「結局は私の理論のほうが正しかったじゃない」
「それは……まあ……」
「だからしばらくあなたはまくらなのよ……」


 言ってパチュリーは寝返りを打つように姿勢を変えた。
 例えるなら、仰向けから横寝へと。
 霖之助の背中に寄りかかったままのため、そう言っていいかは疑問ではあるが。


「……パチュリー?」
「…………」


 軽く霖之助に抱きつく形のまま、再び彼女は寝息を立て始めた
 背中に伝わるパチュリーの体温と規則正しい呼吸。

 抱き枕にされた霖之助は、苦笑して息を吐く。


「お疲れ様。君の努力の結果だよ」

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さあ、パチュ霖をもっと書くんだ!!

書いてください!!
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