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紅茶と団扇

咲夜さんは天然の入った乙女という訴えをry
カリスマのあるお嬢様が難しいです。


霖之助 咲夜









 香霖堂のカウンターに、白い湯気が立っていた。
 霖之助は手慣れた動作でカップを温め、紅茶を注ぐ。

 このお茶は拾ってきたものではない。
 里の店で買ってきたものだ。

 拾った食料品の中にもいい物はあるのだが、やはり抵抗を覚えざるを得ない。
 それ以前に、客にサービスとして出すにはあまりふさわしくはない。

 説明した上での売り物ならともかく。


「これでどうかな」
「……では、頂いてみます」


 こくり、と咲夜は喉を鳴らした。
 咲夜好みのティーカップ。咲夜好みの茶葉。咲夜好みの蒸らし時間。咲夜好みの味。

 咲夜好みの紅茶。

 霖之助は彼女がカップをテーブルに置くまで、じっと見守っていた。


「……60点、ってところかしら」
「辛口だな」
「ええ。そうそう簡単に高得点を取られてしまっては私が来られなくなってしまいますからね」
「別に君ならいつでも……いや、そうだな。もっと精進するとしよう」
「それがいいですわ。お茶の道は深いですからね、り……店主さん」


 そう言って、咲夜は完璧な笑顔を作った。
 完璧な、隙のない笑顔。

 香霖堂でのお茶会は不定期に、彼女がお客としてきたときに開催される。

 咲夜が香霖堂で好みのティーカップを見つけたのだが、
既に紅魔館で使っているお気に入りの茶器から乗り換えるのももったいない、
と考えていた咲夜に霖之助が提示したのがこれだった。

 つまり、香霖堂に咲夜専用ティーカップを置けばいい、と。

 最初はただの客と店員なのにそこまでしてもらうのは気が引ける、と辞退したのだが、
霖之助の好意によって結局置かせてもらうことになった。


「……それで、今日の捜し物はなんだい?」
「はい。実は……」









「だからですね、回りくどいんですよ」
「うんうん。そうね」


 レミリアは咲夜の買ってきた物体に首を傾げた。
 涼しくなる道具を、と頼んだはずなのだが……。

 どう見ても団扇だった。

 ただこれだけを買うためにあんなに時間をかけたのだろうか。
 ……わかって行かせた自分も自分なのだが。


「あれくらいのアピールじゃダメダメです。まだまだ気づいてあげられません」
「……パチェ、そのクッキーとって」
「ん」


 レミリアはパタパタと団扇で扇ぎながら、咲夜の話を聞き流していた。

 パチュリーとレミリアで、咲夜の話を聞き流す。
 これもいつものことだ。

 ……もっとも、この話に一番乗り気なのは目の前の友人かもしれないが。
 さっきから、本が1ページも進んでいない。


「私のカップを店に置いてくれるのは店主さんの好意なんですよ。好意ですよ好意。
 あの人ったらいつでも来ていいって言いかけてやめるんですもの。
 そこのところはっきり言ってもらわないと……。
 でもちゃんと言葉なり形にしてもらわないと私としてはですね……」
「店主……? 貴女、また呼べなかったの?」


 パチュリーの言葉に、咲夜は突然動きを止めた。
 本を閉じ、やれやれと肩を竦めるパチュリー。
 目が完全に楽しんでいる。


「今日こそは『霖之助さん』と呼ぶんだって気合い入れて書いてたのに……日記に」
「パ……パチュリー様、何故それを!?」
「私じゃないわ。小悪魔が見たのよ」


 ニヤリと口元をゆがめるパチュリーに、咲夜は青い顔で立ち尽くす。
 悪い趣味だ、とレミリアも思うものの。


「あら咲夜。紅魔館のメイドがそんなヘタレだと思われるのは心外よね。
 ……どうやって取り戻してもらおうかしら」


 やはり楽しいから仕方がない。

 これもひとつの愛情の形、ということで。
 咲夜には割り切ってもらうしかない。


「好意を言葉なり形に……ね。どの口でそんな事を言うのかしらね」
「勇気がないからこそ待ってるんでしょ」
「うううう……」
「じゃあ、勇気があるところを見せれば挽回できるのよね。じゃあ咲夜……」


 これでもくっついて……幸せになって欲しいと思ってるのだし。一応。
 これくらいのことは恋の障害物と思って、乗り切ってもらわなければ困る。

 ……乗り切られたら暇つぶしのネタがなくなって困るのだけど。


 レミリアはそんな事を考えながら、涙目でたじろぐ咲夜の頬をつついていた。

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