さよなら蒼き日々よ
蒼穹のうどんげ。何故か病んでしまった。不思議。
蒼穹のファフナーのパロ……なんだけど、原作知らないとわかりにくいだろうなぁ、と反省。
まあまったく懲りずに次は幽遊白書のパロを書いてたりするんですが。
霖之助 うどんげ
「あなたはそこにいますか?」
夜の香霖堂で、霖之助は鈴仙の言葉に首を傾げた。
さて、何の話からこうなったんだろうか。
確か――。
「外の世界の怪談だったかな?」
「違いますよ。
姫様から教えてもらったんです。外の世界の創作物語に出てくる……。
う~んと、童話じゃないけど……とにかくお話に出てくる人間じゃない生物の事です」
「つまり妖怪みたいなものかい?」
「なんか違いますね……。
どっちかというと宇宙から来た……私たちみたいな感じかも」
鈴仙は頭を悩ましながら、なんとか説明しようと言葉を探した。
しかしどうもこう、上手く言葉が出てこない。
「えっと、その生物は人間とは別の物質で構成されてて……。
その問いかけに答えると同化されちゃうんです。
同化ってのは、石みたいになっちゃうんですけど。
その生物と同じようになっちゃうんですね」
「ふむ。答えないとどうなるんだい?」
「攻撃されてましたね」
「ほう……」
霖之助はなにやら興味深げに頷くと、思考を開始した。
ひとたび深い思考に陥ると、少々の事には気づかない。
……ずっと鈴仙が霖之助の顔を見つめていたとしても。
ややあって、戻ってきた霖之助は口を開く。
「それはずいぶん……ロマンチックな話だね」
「ロマンチック?」
今度は鈴仙が首を傾げた。
「かなりの確率で死んじゃうのにですか?」
目の前の男にロマンチックなどという言葉が似合わない……というのもあるが、
鈴仙の話からどうやったらその結論に行くのか、過程が全く見えなかったからだ。
「君の話からすると、一概にその同化=死とは考えにくい。
相手を知りたいあまりに自らと同じ存在にしてしまうんだ。
単に人間の身ではそれに耐えられないだけの話なのだろう。
実に一途な思いじゃないか」
……まあ、霖之助はその物語を見た事がなく、
ましてや幻想郷にいるような人間に近い形の妖怪だったら一途とも思えなくもない。
しかしそこで鈴仙は考え直す。、
いや、彼だったら例え姿形がどうであれその思考に行き着いたかもしれない。
「僕はその言葉を遠回しな愛の告白と考えるね。
……ヤマアラシのジレンマという言葉がある。
これはお互いを知りたくて近づけば近づくほど相手を傷つけてしまうという皮肉じみた話なんだが、
これもその一種なのではないかな。
相手の事を理解したい、しかしそうしようとすると相手を石にしてしまう。
そう言えば昆虫の世界には産卵後の雌が雄を食べてしまうといった事があるが、これもひとつの……」
「はぁ……そうかもしれませんね」
鈴仙は納得したようなしてないような曖昧な返事を返した。
もう元の話題がなんだったのかあまり関係ない気がする。
「霖之助さんって面白いですね」
「そうかい?」
「そうですよ。あと変わり者です」
「それはよく言われるよ。自覚はあまり無いんだがね」
「やっぱり、面白いですね」
鈴仙はそう言って微笑んだ。
少なくとも、人里で気味悪がられている妖怪兎とちゃんと向き合ってくれる存在という時点で変わっている。
「……もうこんな時間か」
見ると、既に日付が変わりそうな時刻だった。
とはいえ、ハーフの霖之助と妖怪の鈴仙にはあまり重要な事ではないのかもしれないが。
「ずいぶん長居してしまいましたね」
「別に構わないよ。興味深い話も聞けた事だしね。
しかし、結局何をしに来たんだったかな?」
「……ただ会いに来たじゃダメですか?」
「いや……」
霖之助は鈴仙の視線に思わずたじろいだ。
こんなにはっきりと言う子じゃなかったはずなのだが。
……何かが狂っているのかもしれない。
「冗談ですよ。帰る前にちょっとご挨拶に伺っただけです」
「ああ、そうか」
しかし霖之助は疑問をぬぐい去る事が出来なかった。
竹林に帰るだけなのにわざわざ彼女が来た理由は。
帰る前に、わざわざ来た理由。
「では、私はこれで」
そう言って鈴仙が玄関のドアに手をかける。
……開くドアに、霖之助は違和感を覚えた。
いつもよりずっと重い調子で開く。
まるで知らない世界へと繋がるように。
「ああ、そうそう。霖之助さん――」
鈴仙が赤い瞳で振り返った
彼女の後ろに見える景色が一変する。
ドアの外に広がるのは一面の月面世界と、遙かに見える蒼い星。
錯覚。
そうわかっていても、霖之助はそこから目を逸らす事が出来なかった。
月の狂気を孕んだ、兎の目を。
「――あなたはそこにいますか?」
蒼穹のファフナーのパロ……なんだけど、原作知らないとわかりにくいだろうなぁ、と反省。
まあまったく懲りずに次は幽遊白書のパロを書いてたりするんですが。
霖之助 うどんげ
「あなたはそこにいますか?」
夜の香霖堂で、霖之助は鈴仙の言葉に首を傾げた。
さて、何の話からこうなったんだろうか。
確か――。
「外の世界の怪談だったかな?」
「違いますよ。
姫様から教えてもらったんです。外の世界の創作物語に出てくる……。
う~んと、童話じゃないけど……とにかくお話に出てくる人間じゃない生物の事です」
「つまり妖怪みたいなものかい?」
「なんか違いますね……。
どっちかというと宇宙から来た……私たちみたいな感じかも」
鈴仙は頭を悩ましながら、なんとか説明しようと言葉を探した。
しかしどうもこう、上手く言葉が出てこない。
「えっと、その生物は人間とは別の物質で構成されてて……。
その問いかけに答えると同化されちゃうんです。
同化ってのは、石みたいになっちゃうんですけど。
その生物と同じようになっちゃうんですね」
「ふむ。答えないとどうなるんだい?」
「攻撃されてましたね」
「ほう……」
霖之助はなにやら興味深げに頷くと、思考を開始した。
ひとたび深い思考に陥ると、少々の事には気づかない。
……ずっと鈴仙が霖之助の顔を見つめていたとしても。
ややあって、戻ってきた霖之助は口を開く。
「それはずいぶん……ロマンチックな話だね」
「ロマンチック?」
今度は鈴仙が首を傾げた。
「かなりの確率で死んじゃうのにですか?」
目の前の男にロマンチックなどという言葉が似合わない……というのもあるが、
鈴仙の話からどうやったらその結論に行くのか、過程が全く見えなかったからだ。
「君の話からすると、一概にその同化=死とは考えにくい。
相手を知りたいあまりに自らと同じ存在にしてしまうんだ。
単に人間の身ではそれに耐えられないだけの話なのだろう。
実に一途な思いじゃないか」
……まあ、霖之助はその物語を見た事がなく、
ましてや幻想郷にいるような人間に近い形の妖怪だったら一途とも思えなくもない。
しかしそこで鈴仙は考え直す。、
いや、彼だったら例え姿形がどうであれその思考に行き着いたかもしれない。
「僕はその言葉を遠回しな愛の告白と考えるね。
……ヤマアラシのジレンマという言葉がある。
これはお互いを知りたくて近づけば近づくほど相手を傷つけてしまうという皮肉じみた話なんだが、
これもその一種なのではないかな。
相手の事を理解したい、しかしそうしようとすると相手を石にしてしまう。
そう言えば昆虫の世界には産卵後の雌が雄を食べてしまうといった事があるが、これもひとつの……」
「はぁ……そうかもしれませんね」
鈴仙は納得したようなしてないような曖昧な返事を返した。
もう元の話題がなんだったのかあまり関係ない気がする。
「霖之助さんって面白いですね」
「そうかい?」
「そうですよ。あと変わり者です」
「それはよく言われるよ。自覚はあまり無いんだがね」
「やっぱり、面白いですね」
鈴仙はそう言って微笑んだ。
少なくとも、人里で気味悪がられている妖怪兎とちゃんと向き合ってくれる存在という時点で変わっている。
「……もうこんな時間か」
見ると、既に日付が変わりそうな時刻だった。
とはいえ、ハーフの霖之助と妖怪の鈴仙にはあまり重要な事ではないのかもしれないが。
「ずいぶん長居してしまいましたね」
「別に構わないよ。興味深い話も聞けた事だしね。
しかし、結局何をしに来たんだったかな?」
「……ただ会いに来たじゃダメですか?」
「いや……」
霖之助は鈴仙の視線に思わずたじろいだ。
こんなにはっきりと言う子じゃなかったはずなのだが。
……何かが狂っているのかもしれない。
「冗談ですよ。帰る前にちょっとご挨拶に伺っただけです」
「ああ、そうか」
しかし霖之助は疑問をぬぐい去る事が出来なかった。
竹林に帰るだけなのにわざわざ彼女が来た理由は。
帰る前に、わざわざ来た理由。
「では、私はこれで」
そう言って鈴仙が玄関のドアに手をかける。
……開くドアに、霖之助は違和感を覚えた。
いつもよりずっと重い調子で開く。
まるで知らない世界へと繋がるように。
「ああ、そうそう。霖之助さん――」
鈴仙が赤い瞳で振り返った
彼女の後ろに見える景色が一変する。
ドアの外に広がるのは一面の月面世界と、遙かに見える蒼い星。
錯覚。
そうわかっていても、霖之助はそこから目を逸らす事が出来なかった。
月の狂気を孕んだ、兎の目を。
「――あなたはそこにいますか?」
コメントの投稿
フェストゥムは泣かない
霖之助さんの解釈が分かり易いです。まあ、原作を知ってるからかもしれないけれど
うん。あの娘ら健気だよね。殴られても嫌われてもめげないし。
とはいうものの、彼らが「痛み」を知るのは終盤だから、
痛がりながら泣きそうになりながら頑張ったのは人の方だけど
涙を流せない化け物みたいになっている妖怪兎、
けれどその目は泣きはらした後のように紅い。それがなんか面白かったです。では
オ レ ハ コ コ ニ イ ル
うん。あの娘ら健気だよね。殴られても嫌われてもめげないし。
とはいうものの、彼らが「痛み」を知るのは終盤だから、
痛がりながら泣きそうになりながら頑張ったのは人の方だけど
涙を流せない化け物みたいになっている妖怪兎、
けれどその目は泣きはらした後のように紅い。それがなんか面白かったです。では
オ レ ハ コ コ ニ イ ル