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大人のためのサンタクロース

クリスマスも過ぎたのでサニ霖。
サニーは背伸びしてる姿が似合うと思います。
ってyamotoさんが言ってたような気がしたのでつい。


霖之助 サニーミルク









「なんで受け取ってくれないのよ!」
「だから要らないよ、君の使用済みくつしたなんて」


 ストーブの熱で暖まった店内に、サニーミルクの声が響く。

 なんだか言葉にするといかがわしい感じに聞こえるのだが……。
 事実だから仕方がない。


「私ははいてないわよ。だから新品でしょ?」
「君がはいていないかどうかは関係ないんだよ。
 それはもう売ったものだからね」


 そう言って霖之助は首を振った。
 彼女が持っているのは赤と白の毛糸で出来たくつしただ。

 いわゆるクリスマスカラーというやつである。
 間違っても巫女色ではない。


「でも、私じゃこんなおっきなくつしたはけないもん。
 持ってても意味ないじゃない」
「だが君がそれで十分だと言ったんじゃないか」


 そのくつしたは大人がはくくらいの大きさがあった。
 サニーミルクがはいてもぶかぶかになって歩けないだろう。

 しかしそんなものを彼女が買ったのにはもちろん理由がある。


「だいたい霖之助が嘘を言うから……」
「それは違うよ、サニー。ちゃんと説明した上での取引だっただろう。
 だから正当な契約だ。返品は受け付けられないよ」
「むー」


 首を振る霖之助に、彼女は唇を尖らせる。

 そもそも事の発端は、サニーミルクがどこからか……十中八九山の神社の巫女から、
外の世界のクリスマスという行事についての知識を仕入れてきたことだった。

 いわゆる子供がプレゼントをもらう日、というやつである。

 そして彼女はクリスマスのために香霖堂にくつしたを買いにきた、というわけだ。


「……これ置いてたらサンタさんが来てくれるって信じてたのに」
「残念だったね」


 霖之助はそう言いながら、サンタクロースについて考えていた。

 元は遠方の司教の伝説によるもので、日本に伝わる際その有り様が変化したらしい。
 プレゼントが貰えるという側面を強く反映したようだが、地方によってはそもそもクリスマス……聖人の生誕祭にプレゼントを持ってくるとは限らないようだ。

 ひょっとしたら、外の世界のサンタクロースはひどく現実的な何かで、幻想的な存在ですらないのかもしれない。


「せっかく一晩中待ってたのになあ」
「……ん? なんだって?」


 そんな事を考えていると、サニーミルクの呟きで現実に引き戻される。


「まさか夜中ずっと起きて待っていたのかい?」
「うん。姿を消してずっとね」
「ああ……それでか」


 彼女の言葉に、霖之助はわざとらしくため息を吐いて見せた。


「いい子にしていた子のところにサンタクロースは来るという話だが……。
 徹夜で待っている子ははたしていい子なのか疑問が残るね」
「え? え? でも、ルナとスターは普通に寝てたけど来なかったよ?」
「君が起きていたから来なかった、と考えるのが妥当だろう。
 つまりそのふたりの分のプレゼントも君が台無しにしてしまった……のかもしれない」
「そんな……」


 霖之助の解説を聞き、思わず涙目になるサニーミルク。

 ……少し、脅かしすぎたかもしれないと反省する。


「まあ、そもそも幻想郷でサンタが来たなんて話は聞いてないからね。
 気にすることはないと思うが……」
「そ、そう?」


 彼女のあまりの驚きように、少し霖之助は首を傾げた。


「何か、欲しいものがあったのかい?
 それならうちで買っていけば……」
「え? ううん、なんでもないよ」
「そうかい?」
「そうそう。霖之助は気にしなくていいんだから」


 そう言いながらも、彼女はなんだか落ち着かなそうにしている。
 何か言いにくいことでもあったのだろうか。

 まあ、とりあえず。


「確かに道具屋として、客に不満を残したまま返らせるのは不本意ではあるね」
「え?」
「だが残念ながら小さいサイズのくつしたは在庫がなくてね。
 せっかくだから毛糸でくつしたを編んであげようか」
「いいの?」
「ああ。だからそのくつしたらはけるようになったら使うといい。
 道具は使ってこそだからね」


 確か同じ色の毛糸があったはずだ。
 編み物なら本読みながらでも出来るしそれほど手間ではないだろう。

 ……それに、交渉はある程度等価であるべきだ。
 霖之助は近くの棚に置いてあるものを見、少し笑みを浮かべた。

 サニーミルクからもらったのは、小型のソーラーパネルだった。
 もちろんこれ単体では意味のないものだが、これを利用することで電気エネルギーを得ることが出来る。
 河童や魔女に調べるのを手伝ってもらってもいいだろう。


 これに比べたら、くつしたを編むくらい安いものだ。


「少し、足を見せてくれるかい?」
「うん。はい」
「……ふむ、なるほどね」


 サニーミルクの足にメジャーを当てながら、霖之助はいくつかメモを取る。
 とはいえ毛糸は融通の利くので、あまり厳密に寸法をとる必要はない。


「じゃあ完成したら渡すから、数日待ってくれるかい?
 出来たら教えるから……」
「それくらいで出来るの?」
「この類のものは作り慣れていてね。
 昔よく魔理沙に編んで上げたものだよ」
「ふぅん」


 頷きながら、毛糸と編み棒を操る霖之助。

 しばらく集中していたのだが……ふと、サニーミルクの姿が見えないのに気が付いた。


「サニー、何をしているんだい」
「え? なんかおモチがたくさんあるからもらおうかと」
「せめて家主に断ってから……」
「いいじゃない、こんなにあるんだし」
「まあ、ひとりで食べきれる量ではないがね」


 サニーミルクが来る少し前、白蓮が来て大量のモチを分けてもらったのだ。

 クリスマスに対抗しようと思って命蓮寺でイベントを行ったのだが……。
 幻想郷ではクリスマス自体が根付いていなかったため肩すかしを食らったと愚痴を零していた。

 彼女もまた、早苗の情報に踊らされたひとりなのかもしれない。
 こっちとしてはありがたいが。


「焼いて食べるのは構わないが、僕の分も頼むよ」
「うん。何個?」
「そうだね……って、何個乗せてるんだい」
「うん? 食べるでしょ?」
「聞いた意味ないじゃないか……」


 苦笑する霖之助に笑顔で返しつつ、サニーミルクはストーブの上に置かれた網にモチを並べる。
 焼けて膨らみ、食べ頃になるまでしばらくかかるだろう。


「霖之助はおモチには何を付けて食べるのが一番好き?」
「好きな物は多いが……そうだな。
 何が一番か、と言う問いには一考の余地があるね」


 霖之助は手を動かしながら、サニーミルクの問いに答える。


「私はあんこがいいと思うんだけど。だって甘いし」
「きなこも好きだよ。ああ、納豆も合うね。
 甘いのが好きなら砂糖醤油という手段もある」


 基本的にご飯に合う物はおモチにも合うのよ、と霊夢が言っていた。
 あれは去年のことだったか。当然のようにモチを食いに来ていたのだが。


「先日ストーブの火力の調節方がわかったから、いきなり焦げることはないと思うが、一応見ていてくれよ」
「うん……」


 ストーブのゆらゆら揺れる炎を見ながら、なんだかサニーミルクもゆらゆら揺れていた。


「サニー?」


 声をかけるが、返事がない。
 代わりによくわからない声と、寝息が聞こえてきた。


「なんだ、寝てしまったのか」


 そう言えば、徹夜したと言っていた気がする。
 やはりいい子というものは夜更かしすべきではないと思う。

 そんな時、サニーミルクの持ってきたくつしたからなにやら白い紙のようなものが出ていることに気が付いた。
 どうしようか迷ったが……霖之助はそれを手に取り、広げてみる。


「……メモ?」


 どうやらサンタに対しての手紙のようだ。
 つまりはまあ、欲しいものということだろう。


「むー」


 サニーミルクのうなり声に、霖之助は思わず振り返る。
 ……どうやら寝返りを打っただけらしい。

 霖之助は苦笑を漏らしながら、紙とくつしたと元通りに戻した。
 近くにあったタオルケットをサニーミルクにかける。


「化粧品が欲しい、ね」


 まだ化粧が必要には見えないが……。
 いや、少女は自分が考えているより大人なのかもしれない。


「むにゃ……おモチ……」


 やっぱりまだまだ子供にしか見えないのだが。

 直接店で買わなかったのは……恥ずかしかったのだろう。


「まあ、このくつしたはプレゼント込みで売ったものだし、ね」


 ひとり呟きながら、網の上のモチをひっくり返す霖之助。

 とりあえず、モチが焼けた頃にサニーミルクを起こすとしよう。
 あとはまあ……。


 遅めのサンタクロースが来てもいいかもしれない。
 彼女の寝顔を見ながら、そんな事を考えていた。

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No title

「もう寸止めはしないって約束したじゃないですかぁーーっ」
でもまぁ寝ているサニーの頬にキスするような霖之助さんじゃないからなぁw
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道草

Author:道草
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