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愉快な命蓮寺一家03

本家の1時間SSがお休みだったので個人的に。
十四朗さんからお題を貰いました。

お題は
・楽器
・料理
・冬

ということでいつも通りの白霖。


霖之助 白蓮








「待ちくたびれたー、待ちくたびれたー」


 ちんちん、と陶器と箸のぶつかる音が香霖堂の居間に響く。


「ぬえ、食器は楽器じゃないわよ」
「でもお腹減ったよ。
 霖之助ー、ごはんまーだー」


 一輪にたしなめられるが、ぬえはどこ吹く風。
 彼女の呼び声に、霖之助は台所から顔を出した。


「もうちょっと待ってくれよ。
 今作ってるところだからね」
「はーい」


 返事だけは素直なのだが。

 いたずら好きなぬえの事だ。
 このまま大人しく待っているも思えない。


「やはり私も手伝いましょうか?」
「いや、いいよ。君たちはお客さんだ。
 それに……手伝いは足りてるからね」


 そう言って、霖之助は台所を振り返った。
 すると同じタイミングで、奥の方から声がかかる。


「霖之助さん、ちょっとよろしいですか?」
「ああ、今行くよ、白蓮。
 じゃあ一輪……」


 霖之助はぬえと一輪の顔を見比べ……苦笑を浮かべた。


「……ぬえの面倒を見ておいてくれないかな」
「了解しました」


 一輪は肩を竦めると、仕方なく頷く。
 その様子を見届け、霖之助は台所へと戻っていく。


 お裾分け、として白蓮たちが食材を持ってきたのが少し前。

 量が少々多かったので、いっそみんなで食べようと言う事になったのだ。
 白蓮の手伝いをしていた一輪と、何故かついてきたぬえと一緒に。


「すまないね、待たせて」
「いえ、こちらこそすみません。急かしてしまったようで」


 台所で、白蓮は申し訳なさそうに頭を下げた。

 黒い法衣に、白いエプロンを付けている
 香霖堂の商品だが、フリルの付いたそれはよく似合って見えた。


「ちょっと、この道具の仕舞う場所がわからなかったもので」
「ああ、これはここに……とはいえ適当に置いてくれれば僕が片付けるけどね」
「いえ、そう言うわけにもいきませんよ」


 霖之助は白蓮からすり鉢を受け取ると、棚に置いた。
 綺麗に洗ってあるのは彼女の性格だろう。


「ぬえが待ちくたびれていたよ。料理はまだかとね」
「もうすぐ完成しますよ。
 冬の料理と言ったら鍋ですから」


 大きめの土鍋に、豆乳鍋が出来上がっていた。
 前に魔理沙が持ってきたきのこが余っていたので、それを使ったのだ。


「しかしよかったのかな、手伝ってもらって」
「気にしないで下さい、私が好きでやってることですから」
「いつものお返しに料理を振る舞うはずだったんだけどね。
 まあ、助かってるよ」
「それこそ気にしないで下さらなくていいのですけど」


 言いながらも、手際よく料理が出来上がっていく。

 チキンナゲットもどきや、高野豆腐を使ったカツもどき。
 外の世界の精進料理のレシピを入手したので作ってみたのだ。

 妖怪の寺である命蓮寺では、それほどこだわっていないようだが。


「よし、これでいいかな」


 言った通り、それほど時間はかからなかった。
 どうせ鍋は向こうで火にかけるのだし。


「さっそく持って行こうか」
「ええ。あの子達が待ってますからね」


 白蓮はそう言って微笑んだ。


「そう言うと、子供を心配する母親みたいだね」
「そうですか?」


 つまりは、家族と言う事だろう。
 何となく微笑ましい気分になりながら……霖之助は鍋を抱え、居間へ。


「待たせたね……って、何をやっているんだい?」
「ん~、研究?」
「ほう」


 卓上のカセットコンロを覗き込みながら、ぬえは答えた。
 一輪も興味深そうに見つめている。


「調べるのはいいが、壊さないでくれよ」
「でも火が点かないよ、これ」
「ああ、これは押しながら回すんだよ」


 鍋を上に置き、火を付ける。


「こうやってね」
「へぇ、なるほど」
「お寺にひとつあると便利そうですね」
「そうだろう」


 答えながら、霖之助は満足げに頷いた。

 使い方を早苗に教えてもらった道具だが、燃料も本体も手に入りやすい部類のため、今ではすっかり重宝していた。


「一輪、この皿を配ってくれるかしら」
「はい、姐さん」


 白蓮に呼ばれ、一輪が席を立つ。
 その姿を見ながら、霖之助は口を開いた。


「随分手慣れているようだが、普段もみんなでやっているのかい?」
「うん、食事当番を持ち回りでね」


 ぬえは頷き……首を振る。


「今日は星の当番だったんだけど、たまにすごい味になるんだよねー」
「……すごい味?」


 そう言えば、先ほど一輪が寺に伝言を頼んでいたようだ。
 おそらく食事の人数を変更していたのだろう。


「うん、いつものうっかりミスでさー。塩とか砂糖とか」
「ぬえの正体不明の料理よりマシだと思うけど」
「味はいいじゃん、味は」
「味も正体不明な時があるでしょうに」
「そこがいいんじゃない」


 一輪とぬえはなにやら言い争いをしながらも、食事の準備を進めていく。


「賑やかだね。
 いつもこうなのかい?」
「ええ……おおむねこんな感じです」


 おそらく、これがいつもの光景なのだろう。
 何となく……霖之助は普段通りの彼女たちも見てみたい気がした。


 一通りの準備が終わると、一同揃って席に座った。


「いただきます」
「いただきまーす」


 手を合わせ、料理に手を伸ばす。


「あ、おいしい」
「本当ですね」
「白蓮のおかげだよ」
「ほとんど霖之助さんが作られたじゃないですか。
 私は手伝っただけですよ」


 謙遜する白蓮に、霖之助は肩を竦めた。
 近くで見ていても、彼女の手際は見事だったのだが。

 しかしぬえはどうやらその言葉を額面通りに受け取ったらしい。


「霖之助って料理上手いんだねー。ねぇ霖之助、寺の食事も作ってよ」
「僕は飯屋じゃないんだがね」


 肩を竦めるが、ぬえは尚も言葉を続ける。


「食事当番に書いておくからさ。
 あ、もう寺に住んじゃえばいいのに」
「そう言えばぬえはいつの間にか住み着いてたわね」


 一輪がため息を吐くが、ぬえは素知らぬ顔。


「……それは素敵な事ですね」


 ふと呟いた白蓮の言葉を……霖之助は聞き逃してしまった。


「何か言ったかい?」
「あ、いえ。
 なんでもありませんよ、霖之助さん」


 首を振る彼女は、思わず顔を赤らめる。

 聞こえていなかった事を、少しだけ残念に思いながら。

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ひじりぃぃん

父、霖之助
母、聖
長女、一輪
次女、鵺
という家族編成が浮かんだ後悔してはいない
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