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はんぶんふたつ、えいえんひとつ-異聞-

アデニンさんの絵にSSを付けたくなる。
    ↓
ちんかゆさんのあの話が元なんだと気付く。
    ↓
二次創作の許可貰って書いて公開許可を貰う。

というわけでちんかゆことRTTさんの『はんぶんふたつ、えいえんひとつ』の二次創作になります。
詰まるところ三次創作ですが。


霖之助 妹紅 慧音








「私はもうダメだ……」
「そんな! しっかりしてよ母さん!」


 少女は力なく呟いた。
 その手を取り、涙ながらに慧音が叫ぶ。


「あの子が帰ってきたら、伝えてほしいんだ。
 姉さんは最期まで、心配していたよと……」


 そこでふと、思い出したように彼女……妹紅は目を開ける。


「あ、ついでにそろそろ干し柿作るから手伝って欲しいのと、
 納屋の扉がたてつけ悪いのと、それから……」
「ちょっと母さん、台本台本」


 慧音が耳打ちすると、妹紅は思い出したように姿勢を元に戻した。
 咳払いひとつ。


「……コホン。
 最期に一目でいいから、あの子に会いたかった……」
「ああ、そんな……」


 ガクリ、と力の抜けた妹紅の身体を抱き……。


「誰か、お客様の中に兄さん分を補給できる方はいらっしゃいませんか!?」


 慧音の叫びが店内に木霊した。


「……茶番は済んだかい、ふたりとも」


 白々しい空気の流れる中、霖之助は口を開く。
 香霖堂は劇場ではないのだが、とため息を吐きながら。


「茶番だって、慧音」
「やっぱり台本が悪かったんじゃないかな、母さん」
「エキストラが大根だったんじゃないかな、慧音」
「いやいや」
「いやいやいや」


 倒れていたのはどこへやら。
 ぱちりと目を開けた妹紅と責任を押しつけ合っている慧音に、霖之助は肩を竦めた。


「3つ、言いたいことがある。
 ひとつ。お客は僕じゃなくてふたりのほうだと言う事。
 ふたつ。うちの商品にそんなものは無い事。
 みっつ。姉さんは殺しても死なない事……」
「それは違うよ、兄さん!」


 慧音に遮られ、霖之助は鼻白んだ。
 いつにない剣幕だ。


「兄さん分の不足は生命活動に重大な障害が出るんだよ。
 主な症状は食欲不振、睡眠不足、動悸に目眩に神経衰弱」
「……重大だね」
「そう、重大なんだよ」
「うんうん」


 妹紅も頷いているが……さっぱりわからない。

 霊夢も似たような事を言っていた事を思いだした。
 彼女の場合は、お茶だったが。


「で、この凶行に及んだ原因はなんなんだい?」
「あれあれなんだか冷たくない?」
「店の中であんなことをされればこうもなるさ」
「だってさ、慧音。
 私は付き添いなんだけど。
 慧音がどうしても霖之助に会いたいからって。
 私は付き添いなんだけど」
「え? 母さん台本用意するほどノリノリだったじゃない?
 それに母さんも用事があるって……」
「……だいたいわかった」


 これ以上考えてもわからない事がわかった。
 考えることを放棄した霖之助に、妹紅は満足そうに頷いた。


「わかってくれてなによりだよ」
「わかりたくないけどね」


 どのみちわからないのだけど。
 ……言わなければわからないだろう。

 ため息を吐く霖之助に、慧音が首を傾げる。


「ところで兄さんは何やってたの?」
「見ての通り、繕い物さ」
「……その服、霊夢の?」
「ああ。弾幕勝負で服を姉さんに燃やされたからって、霊夢が」


 霖之助に見られ、ついっと妹紅は視線を逸らした。


「いいなー」


 彼の手元を、羨ましそうに見る慧音。


「兄さん、私も兄さん分の補充できるような道具が欲しい」
「……ん?
 いろいろあげたじゃないか、今まで」
「私のために作られたようなのがいいな」


 そう言って、彼女は妹紅に視線を移す。


「例えば母さんみたいに、兄さんの初めてを貰ったりとか」
「試作型ミニ八卦炉を渡しただけだよ。
 紛らわしい言い方をするんじゃない」


 大きくため息。
 他の誰かに聞かれたら……大変な事になりそうだ。


「まあ、そのうち考えておくよ」
「絶対だからね、兄さん」


 約束、と小指を出してきた慧音と、指切りをする。
 子供っぽいその行為に、しかし何故か安心を覚えていた。


「で、姉さんの用事はなんなんだい?」
「ああそうそう。
 ねえ、藤原霖之助君?」
「森近だよ、姉さん」
「せめて魂の名前に。
 もしくは藤原・森近・霖之助でもいいよ」
「長いよ」
「そうだよ。それなら藤原・上白沢・森近・霖之助のほうが」
「もっと長いよ」
「じゃあ、森近って名乗る前に心の中で呟いてくれれば」
「呟かない」
「……ひどい」
「大丈夫だよ、母さん。兄さんはきっと照れてるだけだから」
「じゃあ慧音は上白沢って名乗る前に藤原って」
「呟いてないけど」
「がーん」


 ショックを受けながら、尚も諦めきれない様子の妹紅は、とりあえず気を取り直して再び口を開く。


「それで、どうなの? 霖之助」
「どう、とは」
「さっき質問してたじゃない。
 年末いつ実家に帰ってくるの?」
「あれって質問だったの?」
「あれ? 当然でしょ?」
「いや、当たり前のように聞かれても困るよ」


 あの寸劇は妹紅なりの質問だったらしい。
 ……誰が気付くというのだろう。


「そろそろお餅の個数とか決めないとだからさ。
 何日いるか教えてよ、霖之助」
「帰ることは前提なのか」
「え?」
「え?」
「え?」


 慧音と妹紅、双方に不思議そうな瞳で見られ、霖之助は首を傾げた。
 年末はひとりで過ごそうかと考えていたのだが、そういうわけにもいかないらしい。


「あ、次帰ってくるときには納屋の掃除したいからよろしくね」
「次って、年末より前の話かい?」
「うん、そうだよ?」
「当然だよね、兄さん」


 さも当然そうに尋ねてくるふたり。
 追い打ちをかけるように、妹紅が口を開く。


「だって、この前永遠亭に泊まったんでしょ?」
「……まあ、そうだけど」
「輝夜が言ってたよ。
 楽しそうに。勝ち誇ったように」
「あの、姉さん?」
「帰りにうちに泊まってくれると信じてたのに」
「そんなに何日も店を空けられないよ」
「通えばいいじゃない」
「僕の店だよ、ここは」


 ……とはいえ、その日は店に誰も来なかったのだが。
 言うと面倒な事になりそうなので、黙っておく。


「それにしばらくは帰る予定無いんだけど」
「え? ハロウィンとかもあるのに?」
「イベント全部実家で過ごせと?」
「当然だよね」
「当然だよ」


 頷くふたりに、霖之助はため息を吐いた。


「次に顔出すのは正月かな?」
「それじゃ霖之助分が枯渇しちゃうよ」
「兄さん分が枯渇しちゃうよ」
「知らないよ、そんな事は」


 正体不明の栄養素は、ふたりにとってまさに死活問題らしい。


「どうにかして耐えてくれ」
「どうにか……」
「う~ん……」


 霖之助の言葉に、顔を見合わせる妹紅と慧音。
 先に動いたのは妹紅のほうだった。


妹紅と慧音と霖之助

「甘えさせれ」
「あっ、ずるい!」


 抱きついてきた妹紅の頭を、苦笑しながら撫でる。


「……やれやれ」


 付き添いと言っていたはずなのだが。
 それに慧音は……泣くほどのことなのだろうか。


「兄さん、次私だからね」
「……仕方ないな」


 とりあえず。
 霖之助も家族成分をたっぷりと補給する事にしたのだった。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

三人の家族っぷりが余りにも自然でニヤリニヤリ。
絵にもSSにもニヤニヤが止まりませんぬ。

No title

この絵かw
まさかここで「はんぶんふたつ、えいえんひとつ」が読めるとは!
…こうなったら、2人が香霖堂に泊まればいいじゃない!
当然、たまたまやってきたアリスちゃんを巻き込んで…ねw

No title

二人がここで年末年始過ごせばいいんじゃないかな

No title

はんぶんふたつはいいですねー。
でも家族成分を一度に補給すると、ぺたんとぼいんの差が凄いことに。そして妹紅が泣く(笑)

あ、遅ればせながら紅楼夢でSS本入手させていただきました。
子持ち通い妻の幽々霖美味しく頂きましたヨヨヨ。

No title

家族なもこ霖慧いいよとてもいいよ^q^ なにこれまじなごむ。
やはり「はんぶんふたつ、えいえんひとつ」はすばらすぃ!

あと妹紅さんなにしてんのwww
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