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冬の道具屋 閑話

冬の道具屋、の続きと言えなくもない。
パロディ気味にしたらただイチャイチャするだけの話になった。
……うん、いまははんせいしている。

封神演義ネタなんてどれくらいの人がわかるというのだろう。


幻想郷に再び冬が来た。
霖之助はどうしても気になっていたことを藍に尋ねる。

霖之助 藍









 今日も藍は香霖堂にやってきた。
 商品を見て、他愛のない話をするために。

 たまに妙な商品を買っていくが、それを彼女が欲しかったのかそれとも危険な道具だったのかは、霖之助にはわからなかった。

 藍は紫の使いで来ている。
 つまり霖之助がどうあがいたとしても持って行かれるものは持って行かれるわけで。
 ならば対価を受け取ったほうが利になるというもの。
 長いものには巻かれた方が得策なのだ。


 ……まあ、理由を尋ねようとすると藍が言いにくそうにするせいもある。
 あまり彼女の困った顔は見たくなかった。


 相変わらず他の客は来ない。
 それはちゃんと計算してそういう時間にやって来ているからなのだ、と種明かしをしてくれた。
 数字に強い藍らしい。

 あまりにも確率が低すぎて計算が楽すぎた、とは彼女の弁。
 全くひどい話である。





「……む? なんだ、ただの電池か……」
「…………」


 ――気になって仕方がない。


 霖之助は本を読む手を止め、じっと藍を見つめていた。

 霖之助の目の前で金色の尻尾が揺れている。
 去年正体を知って以来、隠さなくなった九つの尻尾。
 魅力的な毛並みで魅力的な動きをしている尻尾。


「藍」
「どうした、店主殿」


 藍は商品から目を話さず、背中で答える。
 ……実に都合のいいことに。


「ちょっと尻尾を触らせて貰ってもいいだろうか?」
「うん?」


 そこでようやく彼女は首だけで振り返った。


「ああいや、ダメならいいんだ。ちょっと気になっただけだから。
 その……手触りもよさそうだったし」
「なんだ、そんなことか。構わないぞ。私は作業を続けさせてもらうが」


 藍は商品に視線を戻し、言葉を続ける。


「髪を触るのとたいして変わらないからな。別に前置きすることでもあるまい」
「そんなものなのか」
「それに……貴方と私の仲だし……」


 最後の藍の言葉と表情は、よく聞き取れなかった。

 霖之助は一言断ると、藍の背後に移動。
 恐る恐る、といった様子で藍の尻尾に手を伸ばす。

 髪を触るようなもの、とはいえ。
 男女が隣り合って髪を撫でる。
 それがどういう仲を指すのかまでは、霖之助は考えていなかった。


「おお、これはなかなか……」
「店主殿、優しく頼むぞ……」
「もちろん、わかっているよ」


 ふさふさ。
 もふもふ。

 小一時間が経過したところで、作業の終わった藍が振り返る。
 ……霖之助は、まだ尻尾を触っていた。


「……店主殿?」
「ああ、すまなかった」


 声をかけられ、ようやく我に返ったらしい。
 彼は、これが九尾の狐の妖力か……と言っていたが、見当違いも甚だしい。


「汚れてしまったかもしれないな……何か拭くものを持ってこよう」
「……いや、構わない」


 藍は霖之助に向き直る。
 尻尾が遠くに行ったことに残念そうな表情を浮かべ……霖之助はいつもの定位置の椅子へと戻った。


「しかし九尾、か」
「うん?」
「よく古代の物語などに登場する妖怪だが、同時に絶世の美女の役柄も与えられている。
 これは女性の妖艶さを妖力と見なして……いや、今はそれより」


 自らの想像も大事だが、せっかく目の前にいるのだ。
 ひとつ尋ねてみたいことがあった。
 わからなかったら人に聞く。


「藍、君は姿とか変えられるのかい? 九尾と言えば傾国の美女が思い浮かぶのだが……」
「そうだな、できないことはないが」


 うーん、となにやら考える藍。


「当時ならともかく、果たして今の時代に……。
 よし、あれにしよう」


 彼女は目を瞑り、なにやら呟いた。
 次の瞬間、藍の姿がぼやけ……。


「……これでどぉ?」
「そんな、声まで変わるなんて」


 白いレオタードにショールを羽織り、桃色の髪に大きめの帽子。
 元の姿とは似ても似つかない、しかし美しい姿がそこにあった。


「……綺麗かしらぁ?」
「確かに、綺麗だよ」


 彼女はは霖之助の隣に腰掛ける。
 ひとり分のスペースしかない椅子にふたり分の密度。
 自然、いろいろと密着することになる。


「だがまあ、いつもの姿のほうがいいかな、僕は」
「そうか」


 そう言うと彼女は身を引き、同じように目を閉じる。
 再び姿が揺らめくと、元の藍がそこにいた。


「一国の皇帝を籠絡するほどの姿だったのだがな」
「僕だって一国一城の主さ。この香霖堂のね」


 胸を張って答える霖之助に、苦笑する藍。


「……それにさっきの姿では、ちょっと目のやりどころがね。
 いつもと体型は変わってないようだったけど……」
「店主殿……私をそんな目で見ていたのか……?」
「いや、商人だから自然と……なんだいその視線は」


 先ほどのレオタードとは違い、普段の藍の服では身体のラインがわかりにくい。
 それを瞬時に判断したということは、そう言うこと……かもしれない。


「ああ、まだお茶も出していなかったね。すぐに用意を……」
「いや、なんだ、その、私は店主殿になら……」


 慌てて立ち上がった霖之助の裾を掴み、藍が言いかけた瞬間。


「霖之助さん、いるかしら」
「!!」
「!?」


 ふたり飛び上がるようにして距離を置く。

 人が来ないという計算も確率は確率。0ではなかったようだ。
 それとも霊夢だから、だろうか。


「……どうしたの、そんなに慌てて」
「いや、なんでもないよ」


 今日は暑いな、と手で仰ぐ霖之助に怪訝な表情を向ける霊夢。
 外は雪が降っているというのに。

 次に、それと全く同じ動作をしていたもうひとりに目を向ける。


「あら、紫のところの狐じゃない」
「ああ。久しぶりだな」
「あんたの主人は……冬眠中か。冬は面倒がなくていいわ。寒いけど」


 勝手知ったる他人の家。
 霊夢はカウンターを素通りして、店の奥に入っていった。

 目的は明白。だが一応声をかけることにする。


「それで霊夢、今日はなんの用だい?」
「ええ、お茶を貰いに。
 ついでにここでも飲んでいくけど」


 ストーブもあるしね、という声が後に続く。
 ひとつため息をつくと、霖之助は藍に向き直った。


「全く、驚かせる……それで、何か言ったかい?」
「いや、何でもないんだ、何でも……」


 藍の顔が紅い。
 霖之助は首を傾げ……しかしその思考は再び霊夢の声によって遮られた。


「ちょっと霖之助さん。しばらく見ないうちに湯飲みがひとつ増えているんだけど、これ誰の?」
「ああ、それはね――」

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No title

妲己は藍しゃまだったんですね。わかります
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