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名前で呼んで 03

「いやあ、君の趣味に合わないと思っていたのでそのままにしておいたんだが、
 それは僕のお気に入りなんだよ。
 というのも、まずは服の生地には様々な希少金属の合金を編みこんでいてね、
 これまで君の着ていた服と比較して、強度がざっと30倍になっているんだ。
 なお、その模様は魔除けの文字になっていて、大陸から伝わったと言われている梵字、
 サンスクリット文字を参考にさせてもらった。
 次に、その飾り紐だが、その紐は以前君の髪の毛を整髪した時に
 残しておいた髪の毛を一緒に編みこんであるんだ。
 それによって、君とその服の親和性を高め、よりその服の力を発揮できるというわけだ。
 さて、前置きが長くなってしまったが……」
 と言うやりとりの後の話。


 先代巫女にはジェノサイドカッターが似合う。そんな気がする。


霖之助 先代巫女 幽香








霖之助の趣味


 傘の一撃を、身を捻って避ける。
 音と衝撃が、少し遅れてやって来た。

 まともに食らえばただではすまないだろう。
 だがもちろん……こういうときの対処法も、身につけている。


「避けるだけじゃ妖怪退治は出来ないわよ」
「じゃあ、いつかそう言うルールを考えておくよ」


 戦闘の最中でも笑顔の幽香に、巫女は苦々しく答えた。
 いつもと違ってどうも調子が出ない。
 これもそれも、あの店主のせいなのだ。

 ――普段と違う服で戦うことが、こんなに厳しいとは。


「余計なことを考えてる暇、あるのかしら」


 幽香が笑う。
 最強の妖怪としての笑顔。

 ……霖之助の前では見せない笑顔。

 彼は彼女を、何を考えているのかわからない、といった。
 巫女にもそれはわからない。

 妖怪の考えなんて、わかりたくもない。

 だけど……自分も同じだ。


 ――戦っているときの自分の表情は、あまり見せたくない。


「あなたを倒すことなら、考えてるよ」


 一瞬の隙を突いて飛んできた幽香の一撃を、巫女はすんでの所で受け止める。

 ダメージがあまり無かったのは服のおかげだろうか。
 しかし差し引きで考えると……やはりマイナスだと思う。


「これでっ……」


 巫女はそのまま攻撃をいなし、勢いを利用して幽香を上へと投げ飛ばした。
 そんな彼女を追って自らも跳ぶ。

 大きく弧を描いた蹴りの軌跡は、刃物のように鋭く幽香に迫り……。









「全! 然! ダメ!」


 巫女は怒りながら、着ていた服を霖之助の前に投げ捨てた。
 服は破れ、ところどころ焦げてすらいる。

 巫女本人には、傷ひとつ無いようだが。

 先日霖之助が試作してみた服を着たいというので渡したのだが、
彼女のスタイルには合わなかったらしい。


「動きにくいったらないよ。
 危なく負けるところだったし」
「そうね、全然ダメね」


 幽香はため息を吐きながら、折れた傘を霖之助の前に投げ捨てる。
 傘は骨が砕け、無残な姿を晒していた。

 まるで、内部から強力な負荷がかかったかのように。


「強度も不十分。妖力伝達もいまいち。
 マスタースパークの10発も耐えられないようじゃ話にならないわよ。
 危うく負けるところだったわ」


 巫女と幽香はそれぞれ霖之助の前で文句を言っているようだ。

 ちなみに現在営業時間中なのだが、全く気にした素振りも無し。
 他に客がいないからよかったようなものの……。


「……結局、どっちが勝ったんだい?」


 言って、後悔した。

 口は災いの元。
 今更ながら、その意味を噛みしめる。


「あら、霖君はわたしが負けたと思ってるのかな?」
「私が人間に負けると、そう言いたいのかしら、霖之助?」


 ふたりの視線が、霖之助を射貫く。

 絶対答えてはいけない。
 そう直感が告げていた。


「……巫女、僕は君の趣味じゃない、とちゃんと忠告したはずだがね」
「そうだけど……」


 霖之助が作ったのは、どちらかというと防御重視の装束だ。
 紙一重での回避を信条とする巫女に合わないのも無理はない。

 ……まあ、それでもいつか巫女に着せてみようと思っていたのは事実だが。
 思っていた以上に不評なので、別のプランを検討する必要があるだろう。

 巫女が着たいと言ったのは、霖之助にとって僥倖だった。


「幽香、未完成品だと念を押していただろう。
 そうでなくても君の力に合わせるのは難しいんだ。
 そもそも、傘でなくても撃てるだろう。君の技は」
「……ええ、そうね」
「こっちも努力はしているからね。
 満足のいくものができるまで、付き合ってくれると嬉しいんだが」
「わかったわ」
「むぅ」


 渋々ではあるが、頷くふたり。
 ……いや、幽香は妙に嬉しそうだった気がするが。

 霖之助は彼女たちの道具……いや、相手を親父さんから一任されていた。

 霧雨道具店では基本的に魔法の品を扱わない。
 霧雨の親父さんはそういう道具にも精通してはいるのだが、客がそうとは限らないからだ。
 素人では扱いきらないし、いちいちサポートするわけにもいかず……とのことらしい。

 霖之助が個人的に売っているのは、誰にでも使える傘のような物か、扱える人物を選んでのことだった。

 ……まあ、霖之助としては、霧雨の親父さんが過去に魔法の道具がらみで何かあったのではないか、と見ているのだが。


「ちょっと、聞いてる?」
「霖君? ぼーっとしてるよ?」
「……ああ、すまない」


 咳払いして、ふたりに向き直る。
 視線はまず、巫女に。
 それから、幽香。


「巫女、いいから着替えてきたまえ。
 幽香は傘の感想を紙に書いてまとめてくれると助かるんだがね」
「うん、わかった」
「仕方ないわね」


 巫女が奥へと入っていくのを見送って、霖之助は幽香にメモ用紙を渡した。
 紙はまだまだ貴重なので、帳簿の書き損じなどをまとめたやつの裏紙だ。

 幽香がペンを走らせるのを眺めていると……。


「ちょっと霖君、霖君、霖君」
「一体何事だい?」


 ドタドタと、奥から足音が響いてきた。
 ……まあ、犯人など巫女しかいないわけだが。


「机の上にこんなものがあったんだけど」
「ああ、そう言えば出しっぱなしにしておいたな……」


 勝手に見るんじゃない、と思ったものの。
 そう言えば、そもそも見えるところに置いておいたのは霖之助だった。

 昨日机に向かっていて、確かそのまま……。


「……で、なにこれ」
「わからないで持ってきたのかい?」
「ううん」


 巫女は首を振る。

 ……やけに疲れた表情で。


「わかりたくないから、持ってきたのよ」
「どれどれ……あらら」


 幽香が覗き込み、同じく疲れた表情を浮かべた。

 彼女たちが見ているのは、おそらくあのページだろう。
 霖之助はひとつ咳払いすると、大きく頷く。


「決まってるじゃないか、装備案だよ」
「……これが? 誰の?」
「巫女に決まっているじゃないか」


 やっぱり、と言った顔で彼女はため息を吐く。
 ご愁傷様、というのは幽香の弁。


「ああ。
 これは先日巫女に渡した装備とは別プランでね。
 機動性を失わずいかに防御性、また各部に仕込んだ収納によって攻撃性を確保できるかというコンセプトを追求したものがこれさ。
 そもそも仕込み武器には長い歴史があってね、暗器と言って……」


 霖之助の説明は止まらない。
 それはよくわかっていた。
 巫女も、幽香も。


「はぁ……」
「やれやれね」


 ふたりは顔を見合わせ、改めてため息を吐いた。

 端から見ると……とても、仲良さそうに。








幽香をしゅまさんに描いていただきました。
感謝感謝。
幽香ファッションショー
幽香ファッションショーその2。
幽香はフリフリの服でもきっと戦闘は余裕。
しかし念のため、服を汚さないため傘を(


零の距離
ジェノサイド
そしてアクティブな巫女さんを相方に描いてもらいました。
うちの先代巫女はわりと何でもできる人です。

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No title

ジェノってやっぱルガールかw

ぽにー

互いに張り合う巫女と幽香が可愛い。あのスカートに隠れてしまうハイサイはカッターの時に魅せる為にあったのか!

No title

ジェノサ~イドカッターー!!!
兄貴の使うあいつに勝てないのは博麗パワーとつながってたからなのかーー
納得です!

No title

どう見てもラブコメです…本当にありがとうございましたw
わき巫女服に落ち着くまでどれだけの紆余曲折を経るのやらw
あと幽香みたいな超低機動キャラには動きやすさもへったくれもないんじゃw

No title

このルガ符は94だったら最強ですねっ!(
烈風拳とか使うはずが・・・いやいや・・・(汗
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