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一歩、外へ 01

姫海棠はたて、ダブルスポイラーより。
引きこもりの携帯依存の烏天狗とかやばい。いろいろと。

引きこもりの新聞記者
by相方

能力は、はたての持っているカメラにキーワードを入れるとそれにちなんだ写真が見つかる。
つまり『キーワード入れた写真』の写真を念写するでいいのかな。


霖之助 はたて







「これが水煙草?
 ふぅん、やっぱり写真と実物は違うわね。
 ああ、そう言えば龍の写真機はどこにあるの?
 写真機と聞いてずっと気になってたのよね」
「それだったらだったらそこに……」


 香霖堂に見慣れぬ客が来ていた。

 紫を基調としたシャツにチェックのスカート、それにツインテールの少女。
 手には一見携帯電話らしきものをもっているが、どうやらカメラらしい。
 結構大きな筆のストラップが付いていた。
 まるで本物の筆のようだ。

 一本歯下駄に頭巾といういでたちのせいで、知り合いの新聞記者を彷彿とさせる。


「……なるほど。
 でも写真が撮れるわけじゃないのね。
 まあいいわ。渾天儀、ってある?」
「あれは倉庫にしまっていてね。
 取り出してくるのには時間がかかるな」
「それは残念。また今度でいいか。
 そうだ、じゃあ……」


 彼女は思い出したように、手を叩いた。
 あるいは、待ちかねたように。


「あなたの持っている剣を見せてくれるかしら。
 ヒヒイロカネで出来ているやつなんだけど」
「……ちょっと待ってくれ」


 その言葉に、霖之助は警戒の色を浮かべた。
 改めて、少女の姿を確認する。


「君は何者なんだい?
 あの剣を知っているものなんてほとんどいないはずだし……
 それに何より、僕の知る限り紫の服を着るのは大妖怪と相場が決まっていてね。
 例えば紫やさとりのような……」
「いやいや、あんな胡散臭い連中と一緒にしないでよ。
 紫は単に好きだから着てるの。
 ほら、隠者みたいでいいでしょ?」


 そう言って彼女は、くるりと一回転を決めた。
 スカートがふわりと広がる。
 ギリギリのラインだ。


「私は姫海棠はたて。
 見ての通り、新聞記者をやってるわ」
「……その新聞記者が、この香霖堂に何の用かな。
 単なる買い物、ではないようだが」


 ますます霖之助は眉根を寄せた。
 あの剣のことが山の妖怪に知られたらきっと面倒なことになる。

 ……そもそも、見てわからなかったから聞いたのだが。


「別にー。
 ただ私の取材に協力してもらいたいと思っただけよ」
「協力? 僕がかい?」


 霧雨の剣のことまで知っている彼女が、どうして協力を請うのか。


「どうやら君は新聞記者……烏天狗のようだがね。
 僕も何度も妖怪の山に入ったことがある。
 しかし君には一度も会ったことがないよ」
「それは……その……」


 霖之助の言葉に、はたては言いづらそうに俯いた。


「私のカメラは念写が出来てね。
 外へ取材に出かける必要がなかったから……」
「……念写?」
「うん、そう。ついでに家から出る必要もなくてね……」
「それで、会わなかったと」


 気まずそうに頷くはたてに、ようやく霖之助は安堵のため息を漏らす。

 つまり……引きこもっていたが念写することで知ったのだろう。
 すると渾天儀などの道具の名前については、魔理沙あたりに聞いたのだろうか。

 ……霧雨の剣の写真を魔理沙に見せてないかが心配だったが……。


「私の新聞……花果子念報はあんまり人気がなくてね。
 それで、不思議と魅力がある文の新聞を参考にしようと……」
「なるほどね」


 頷く。
 どうやら烏天狗同士、顔見知りであるようだ。


「文の新聞のネタが被らないのは、自分で事件を起こしてるからってわかったんだけど。
 でも、魅力があることに変わりないのよね」


 文の名前に、はたては悔しそうな表情を浮かべる。
 友人と言うよりはライバルなのだろう。


「それで、私のカメラにキーワードを入れると写真が出てくるから、
 まずは文の関係者を片っ端から調べてみようと思って……」
「ちょっと待ってくれ」
「なに?」


 話の途中で遮られ、はたては不機嫌そうな声を上げた。
 その心境はよくわかる。

 わかるが、それ以上に霖之助には気になっていることがあった。


「キーワードを入れると写真が……本当かい?」
「そうよ。
 このカメラにキーワードを入れるとそれにちなんだ写真が出てくるの。
 便利でしょ? 家から出たくなくなるでしょ?」


 家から出たくなくなるかどうかはともかく、とても気になる能力だった。

 ……だが交渉の条件はフィフティフィフティ。
 決して気取られてはならない。


「どうしたの? ニヤニヤして」
「……そんなことはない。
 それより上達の基本は模倣。その考え方は正しいと思う。
 だが、その先のビジョンは見えているのかい?
 文の真似をしたところで文になれるわけじゃないんだよ」
「それはもちろんよ。
 っていうか、文になんかなりたいわけないでしょ」


 憤慨したように、彼女は言う。


「推敲を重ねた写真に似合った記事は写真の魅力を何倍にも引き上げるわ。
 そして魅力ある写真は、記事を読まずにはいられなくなる。
 私は私は写真や見出しだけで満足されない、人間が記事まで読むような新聞を作りたいの」

 胸を張って宣言するはたてに、霖之助は満足そうに頷いた。


「ああ、わかった。
 そう言うことなら、取材に協力しようじゃないか」
「いいの?」


 しかし霖之助の返事に、はたては驚きの表情を浮かべる。
 ……自分から持ちかけてきた話題なのに、それはないのではないだろうか。


「……そんなに意外かい?」
「だって、文の新聞だともっと偏屈そうな感じだったし……」
「さっき自分で言ってただろう。
 写真と実物は違う、とね。
 もっとも、あながち間違いではないが」


 コホン、と咳払いし……霖之助は続けた。


「ひとつ……いや、ふたつ条件がある」









 それから数日後。
 彼女は毎日のように香霖堂にやってきた。

 ひとつ目の条件とは、香霖堂関係の写真を無闇に他人に見せないこと。
 これで霧雨の剣が人目に付く危険性は少なくなるだろう。


 そしてふたつ目。


「次はこれを頼めるかな」


 霖之助が取り出したのは、無縁塚から拾ったばかりの大きな箱だった。
 大きいくせに壊れやすいとあって、運ぶのに毎回苦労する。

 いまだ使い方がわからない道具のひとつだ。


「名称は液晶ディスプレイ。
 用途は映像を見る、かな」
「ふぅん、液晶……っと」


 はたては霖之助の言葉通りに、カメラにキーワードを打ち込んだ。
 その様子を見ながら……霖之助は言葉を続ける。


「どうやらテレビジョンの一種らしいんだが、霊の容れ物にしては薄すぎることが気になってね。
 あるいは霊も省スペースの時代かと思ったんだが、幽々子に聞いてもそんな話は知らないという。
 僕の考えでは……」
「ちょっと静かにしてよ、もう」


 念写に集中できなかったのだろう。
 彼女に言われ、肩を竦める。


「出たわよ」


 はたての言葉通り、彼女のカメラに映像が映し出されていた。
 この数日で何度も見た念写のやり方。

 その場で画像が出るのは随分便利に思えた。
 ……そのせいか、文のカメラよりかなり高性能に思える気がする。

 もちろん、あちらはあちらの良さがあるのだろうが……。


「えーっと……この写真では、映像が映ってるわね。
 液晶ディスプレイから」
「……ふむ?
 テレビジョンの一種であることには間違いないようだが……」


 はたてのカメラは小さいため、必然的によく見るには身を寄せる必要がある。

 写真には、どこかの家族が映っていた。
 食事をしながら、液晶ディスプレイに映った映像を見ているようだ。


「でもここ、線みたいなのが出てるわよ。
 やっぱり何かと繋ぐんじゃない?」
「繋ぐ……か。
 しかし複数の線が見えるね」


 そう言ってふたり、額を付き合わせながら頭を捻る。


「ひとつは動力だろうけど。
 他のは何だろう」
「……それはこれから考えることにするよ。
 つまり、この液晶ディスプレイは単体では不完全と言うことだ」


 霖之助はそう結論づけると、ため息を吐いた。
 このままでは使えない、ということだ。

 わかってはいたが……少しだけ、残念だ。


「ありがとう、参考になったよ」
「どういたしまして」


 はたては華麗に一礼を決める。
 その仕草も念写で見たのだろうか。

 その割には、随分堂に入ったものだった。


「しかしいいのかい?
 協力するとは言ったが、取材を受けた記憶がないね」
「ん? ああ、それならご心配なく」


 霖之助の言葉に、はたては笑顔で返す。


「あなたと話してて、どんな話なら聞き手の興味が出るか、をちゃんと研究してるし。
 どんな話なら聞く気がなくなるか、もね」
「やれやれ、手厳しいね」


 肩を竦め、ため息を吐いた。
 その向上心があるなら大丈夫だろう。


「ところで、どうして僕だったんだい?
 文の取材相手ならもっとたくさんいたと思うが」
「理由?
 そうね……面白そうだったから、かな」


 彼女は文の記事と念写で香霖堂を知った、と言っていた。
 その写真には、いろいろな人間、そして妖怪がやってくる光景が写っていたのだと。


「それに私、文の対抗新聞記者になるって決めたから」
「ん? それはどういう……」


 霖之助の疑問を遮るかのように、玄関のカウベルが音を立てた。


「霖之助さん、文々。新聞をお届けに……って」
「やあ、いらっしゃい。文」
「あら、文じゃない」


 元気よく店内に飛び込んできた文の声。
 その声が、一瞬にして剣呑なものに変わる。


「なんであなたがここにいるのかしら、はたて」
「なんでって……言ったでしょ?
 新聞のテリトリーは本来自由であるべきだって。
 最高の被写体は、最高の記事にしなくちゃダメよね。
 だから、私が取材することにしたんだけど」
「そんなこと、私が許すはずないでしょう」
「あなたの許しなんて必要ないわ」
「……何を言ってるんだい?」


 火花散らす烏天狗ふたりに、霖之助は首を傾げた。

 そんな彼を見て……文はますます目の光を強める。


「はたて。
 ひとつ聞きたかったことがあるんだけど」
「ん? なにかしら」
「私の被写体を念写してたって言ったわよね。
 ……いつから?」
「いつから……いつからかしらね」


 言って、はたてはカメラをなにやら操作した。
 中に入っているメモリーを呼び出しているのだろう。

 それらを見ながら……彼女は熱を帯びたため息を吐く。


「本当に文は、不思議な魅力の写真を撮るのね。
 それに……香霖堂の写真ばかり。
 私はいつも、嬉しかったけど」


 カメラをしまい、はたては文に向き直った。


「それにね、これも言ったはずだけど。
 私は、文の対抗新聞記者になる」

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ダブスポまだ持ってないけど

写真を見て一目惚れ、実際に会って惚れ直す…だと!?
初めて香霖堂に来るときどんな心境だったのだろうか?

No title

今クーリエにはたてを投下すればもれなく一番乗りっすよ!?
プロフィール

道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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