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2周目はじめました

病みさとりを書くとどうしてこんなに心が落ち着くんだろう。
でも痛い話は苦手なのでほのぼのヤンデレあたりがマイベスト。
ちょっとばかり愛が重いくらいの。


霖之助 さとり









「もしかしたら、あなたは覚妖怪かもしれない」
「僕がかい?」


 さとりの言葉に、霖之助はしばし考え……首を傾げた。

 覚妖怪というのは人や妖の心を読み取る妖怪だ。
 そしてその能力が故、他の者から嫌われやすい。
 ……彼女のように。


「考えたこともなかったな」
「だって、道具の記憶を読み取るのでしょう?
 てっきり私たちの、変わった同類だと思ったんだけど」
「あいにくながら道具専門の覚妖怪なんて僕は聞いたことがないね」


 ひょっとしたらそう言う妖怪もいるのかもしれないが、少なくとも霖之助は知らなかった。
 自分の能力は道具を愛するが故にあるものだと思っていたのだが、他に理由があるのだろうか。

 ……あったところで、大した意味はない。
 どのみち必然だったのだから。


「だから言ったじゃない、変わった同類だって。
 まさしくあなたのことでしょう?」
「……不思議とよく変わり者扱いされるんだが、
 その変わり者の店に入り浸る君もまた変わり者だと、僕はそう思うね」
「あら。私、霖之助さんとお揃いかしら」
「喜ぶところでもないだろうに」


 彼女なりの冗談だと言うことはわかっている。
 そして、彼女もまた答えを知らないだろう、と言うことも。


「そうね。あなたと私は決定的に違うところがあるわ。
 ……私は嫌われ者だから」


 先ほどの思考が聞こえていたらしい。
 しかし、予想に反して彼女の声は明るかった。


「……でも、そんな私を好きでいてくれる人がいる。
 変わり者でなかったら、なんなのかしらね」
「なんなんだろうな。
 少なくとも、どうしても君が僕を変わり者にしたいことはよくわかったよ」
「あら、私はそんなこと一言も言ってないのだけど」


 さとりは楽しそうに微笑んだ。

 彼女が身じろぎするたび、椅子がギシギシと揺れる。
 足が床に付いていないため、不安定なのだ。


「でも……」


 さとりはため息を吐き、霖之助の顔を見上げた。
 3つの瞳からじっと凝視されると、どこか落ち着かない気分がする。


「自分のことなのに、わからないのかしら。
 あなたが真っ先に考えそうなことなのに」
「自分が人間じゃないことがわかればそれでよかったからね。
 わからないことは考えない。それが僕の答えだから」
「そう、残念ね……」


 そう言って、さとりは肩を竦めた。


 同類が欲しかったのだろうか。
 覚妖怪の心を汲む、同種の妖怪が。

 彼女の妹は瞳を閉ざしてしまっているわけだし……。

 霖之助はそんなことをふと考え、苦笑を浮かべた。
 彼女の頭に手を置き、口を開く。


「例えばもし僕が覚妖怪なら、君は姉さんなのかな?
 さとり姉さん……さとりお姉ちゃん?」
「ふふ、悪くないわね。
 でも妹はもういるから、せっかくならお兄様が欲しいわ」


 そう言ってさとりは、霖之助の身体へと体重を預けてきた。

 と言っても小柄な彼女は軽い。
 本来、霖之助の体格なら苦にもならないのだが……。


「ところでさとり」
「なに?」


 聞きたいことも、言いたいこともわかっているはずだ。
 なのに彼女は、まるで聞こえないかのように首を傾げる。


「さっきからページがめくりにくいんだが」


 霖之助はため息を吐いた。
 聞いても無駄なことはわかっている。
 だけど言わずにはいられなかった。

 例えこれが、本日4度目のやりとりだとしても。


「いつまで僕の膝の上にいるつもりだい?」
「さぁ、いつまでかしらね」


 霖之助の言葉に、さとりは笑顔を浮かべる。
 その瞳は深く、底が見えない。
 彼女の顔は、霖之助のすぐ側にあるというのに。


「この前はスカートが破けたからと言って僕の服を着てたし、
 その次は突然鍋を作りに来たね。
 ああ、夜中に買い物に来たこともあったっけ」
「そうね。今度また、あなたのいう一番美味しい鍋の食べ方を試してみましょうか」
「いや、聞きたいことはそいうことではなく……」

 霖之助が彼女の顔を見ると、わかっていると言わんばかりに頷いた。


「だって、羨ましいじゃない?
 だって、体験したいじゃない?」


 さとりの3つの瞳が、霖之助を捉えて離さない。
 過去、未来、現在。霖之助のすべてを、捉えて。


「妖精だって退治するし、ちらし寿司だって作るわ。
 そうそう、星空も見に行きましょうか」


 さとりの表情はとても楽しそうだ。
 とても……嬉しそうだ。


「だから、あなたが他の女にしたこと、されたこと」


 まるで、他に何も要らないと。
 そう、言わんばかりに。


「全部私がしてあげる。
 もう一度、なんだってしてあげるから」


 さとりの小さなお尻が、霖之助の身体に押し当てられた。

 彼女は霖之助のすべてを知っている。
 どこが弱いのか、すべて知っている。


「そう、霖之助さんの初めても……何もかも……」





病みさとり
くるみさんに挿絵を描いていただきました。
感謝感謝。

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No title

俺が霖之助の代わりに全てを受け入れたいwww 
今日はパソからなので霖が打てることに喜びを噛み締めてます(笑
by読む程度の能力
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