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12月も中旬なので、ウェブ拍手のお礼SSを更新しました。

お礼SSにもなぜかシリーズ物が増えてきた気がする。
カラオケ、ミスティア、子悪魔、病みさとり(?)
同時進行でお送りしております。


というわけで昔上げてた奴のまとめ。









『1.カラオケシリーズ06
   どこから来てどこへ行くのか』


「もうすぐ春ですねぇ
 ちょっと気取ってみませんか」


 楽しげな幽々子の歌声に誘われるように、太陽の日差しが差し込んできた。

 外はこれから冬支度と言ったところだ。
 しかし陽気な亡霊の周囲は暖かく、ここだけ春が来たのかと錯覚するほどだった。


「まだまだ春には遠いと思うが、春の歌というのもいいものだね」
「あら、そうかしら?
 春はすぐそこよー」


 くるくると回りながら、幽々子が歌う。

 霖之助は自分の椅子に腰掛けたまま、手元の本に目を落とした。
 編み物の教本だ。
 最近よく毛糸が手に入るので、冬用の商品として店に並べてみようと考えていたところだった。


「風が吹いて暖かさを運んできました
 どこかの子が隣の子を迎えにきました」


 何を考えているのかわからないところのある冥界の姫君は、歌いながら店内を回る。
 これでもちゃんと物色しているらしい。

 まあ商品を買ってくれるのなら、あまり細かいことを言うつもりはない。


「泣いてばかりいたって、幸せは来ないから
 重いコート脱いで、出かけませんか?」


 春になったら、花見に出かけるのもいいかもしれない。
 霖之助はふと、そんなことを考えた。


「うちにある桜もいいが、どこか出かけるのも悪くないな」
「あら、お花見?」
「ああ。騒がしいのは苦手だが、たまには悪くないなと思ってね。
 まだまだ先の話だが……」


 彼の言葉に、彼女はますます笑みを深める。


「それならとっておきのがあるわよー」
「ほう。それはぜひ案内して貰いたいね」
「ええ。貴方さえ良ければいつでも」


 都合をつけるのは霖之助ではなくて桜の方ではないかと思ったが、あえて考えないようにしておく。
 この少女の考えていることなど、少し考えたくらいではわかりそうにない。
 ……わからないことは、考えない。


「そういえば昔、ずいぶん長い冬があったね」
「そんな事あったかしら?」


 首を傾げる幽々子に、霖之助は違和感を覚えた。
 そこでふと、思い当たる。


「ああ、ひょっとしたら冥界とこっちでは季節が違うのかもしれないな。
 とにかく、冬が長いと大変なんだよ。燃料は減るし冬の妖怪は元気だし……」
「あらあら、大変ねぇ。
 今度そんなことがあったらうちに遊びに来るといいわよ」
「うちって……冥界かい?
 まあ、暖かいなら考えておくよ」
「ええ。いつでも待ってるわ」


 最近冥界との行き来がしやすくなったらしいので、それもありかもしれない。
 もっとも、歩いてホイホイ行ける場所ではないのだろうが。


「もうすぐ春ですねぇ
 恋をしてみませんか」


 陽気に歌う幽々子は、何か見つけたのか商品棚の一角で立ち止まる。
 その様子を確認して、霖之助は机の中から編み棒と毛糸を取り出した。
 こちらはこれから冬に備えなければならない。
 霖之助自身も、店の商品も。


「雪が解けて川になって流れて行きます
 つくしの子が恥ずかしげに顔を出します」


 幽々子の言葉で、霖之助の脳裏に情景が思い浮かぶ。
 春の風景というのは実にいいものだ。
 それがあるから、冬を乗り越えられる。

 ……とはいえ、そこまで冬が嫌いというわけではないのだが。
 寒いこと以外は。


「別れ話したのは、去年のことでしたね
 一つ大人になって、忘れませんか?」
「……別れ話か」


 そこになって、ようやく春という言葉の意味を思い出した。
 なるほど、それなら冬にだって春が来るかもしれない。


「どちらにしろ、まだまだ春は遠いね」
「いいえ。春は来るわよ。だって……」


 いつの間にか、幽々子の声が耳元から聞こえてきた。
 音もなく移動していたらしい。
 ……亡霊だから、それくらいのことは当たり前なのだろう。


「もうすぐ春ですねぇ
 恋をしてみませんか?」
「なっ……」


 頬に押しつけられた柔らかい感触、熱い吐息。
 霖之助は思わず驚愕の表情を浮かべる。


 春。


 幽々子の唇が、やけに紅く見えた。




『2.ネチョを書こうとしたのにネチョにならなくなって
   結局曖昧になったので諦めたという話』


「逃げてきました。匿ってください。
 何でもしますから」


 突然発せられた少女の言葉に、霖之助はため息を吐いた。
 荷物らしきものは小さな風呂敷がひとつだけ。
 持ち出す暇もなかったのか、それとも彼女の私物はそれだけなのか。

 霖之助は口を開きかけ……ふと考える。

 ややあって、ひとつ頷いた。


「ああ、構わないよ。
 しばらくうちにいるといい」
「え……」


 断られると思っていたのだろう。
 その言葉に驚いた表情を浮かべたのは他ならぬ彼女だった。







「だってみんなひどいんですよ!
 師匠は無理難題ばかり言うしてゐはいじわるばかりするし姫様は何もしないし……」


 興奮したように少女……鈴仙が捲し立てる。


「ふむ、なるほどね」


 そして霖之助は、たまに相槌を打ちながらそれを聞いていた。


「みんな私のことなんてどうでもいいんです。
 昨日だって……」


 ひとしきり話を聞くと、少し落ち着いたようだった。


「飲むかい?」
「……ありがとうございます……」


 すっかり冷めてしまったお茶を、一息で呷る。


「おっと、もうこんな時間だね。
 夕飯の用意をしてこよう。食べるだろう?」
「え? そんな、私は……」


 首を振り、否定する。
 しかし同時にお腹が小さな音を立てた。

 顔を真っ赤にして、彼女は縮こまる。


「怒るとお腹が空くからね。
 しばらく待ってるといい」
「じゃあ、せめて私が……」
「いや、いいよ。
 そこにいるといい」


 霖之助は鈴仙の申し出を断り、台所へと向かう。
 その背中を見送りながら……彼女はひとり、呟いた。


「……どうして」







「布団は準備しておいたが、枕が変わると眠れなくなるなんてことはないね?」
「いえ、そんなことはないです……けど……」


 もう日付が変わろうかという時間。
 結局鈴仙は何もしていなかった。
 いや、霖之助がさせなかったのだ。
 まるでお客のような扱いに、困惑の表情を浮かべる。


「じゃあ、僕は隣の部屋で寝るから。
 何もないところだが、好きにくつろいでくれて構わないよ」


 言って、霖之助は彼女の返答を待たずに部屋を出て行く。


「さて……」


 後ろ手に襖を閉め、外を見る。
 丸い月が浮かんでいた。

 いつもならまだ起きている時間だが、仕方がない。
 霖之助は明かりを消し、布団に潜り込んだ。




「どうして……」


 近くで声がする。
 いつの間にか眠っていたらしい。


「どうして優しくするんですか?
 私、何でもするって言ったのに。
 私、罰を受けないといけないのに」


 鈴仙は早口で捲し立てる。
 何か思いと思ったら、寝ている霖之助の上に馬乗りになっているようだ。


「男の家に上がりこんで、好きなようにされるのが君の言う罰かい?」


 霖之助の言葉に、しかし彼女は応えない。


「それは単なる逃げだよ。
 ……それに本当にそれが罰なら、人里の適当な男の家にでも行っているはずだ。
 なのに僕のところに来た。君の事情を知っている僕のところにね」


 上体を起こす。
 彼女の顔がすぐ目の前にあった。

 ……目が赤い。


「結局君は、自分をわかってほしいだけなんだよ」
「でも!」


 鈴仙は叫ぶ……が、続く言葉は出ないようだ。


「これが僕が与える罰だよ」
「少しは自分のことを理解するといい。
 そして、自分の周りの人のこともね」


 言って、霖之助は窓を見る。

 白い兎が様子を窺うようにこちらを見ていた。


「君の友達の仲間かな。
 心配で見に来たんだろうね」


 鈴仙は答えない。
 流れる涙を拭おうともしない。


「君は愛されてるのさ」
「愛……?」


 霖之助の言葉に、しかし激しく首を振る。


「だって私、愛される資格なんて……!」




『3.久し振りにさと霖をとリクされたので。
   正直すまんかったと反省せざるをえない』


「なにかしら、これ」


 ドサリと……まるで放り投げられるかのように、カウンターの上へと数冊の本が置かれた。
 3つの瞳がじっと霖之助を見つめている。

 あくまで彼女の口調は静かだ。

 しかしその視線が何より如実に物語っていた。
 怒っている、と。


「どうしたんだい、さとり。君らしくもない。
 見てわかるだろう」
「ええ、見たらわかるわね」


 そう、見たらわかる。
 カウンターに置かれた本は、どれもなんというか、ピンクな表紙の本だった。


「ビニ本、裏本、18禁雑誌。呼び名はいろいろあるが、
 一般的に性的欲求を満たすための……」
「私が聞きたいのは、なぜそれがここにあるか、なんだけど」
「決まっているだろう、拾ってきたからだよ」


 霖之助の答えに、しかしさとりはますます不機嫌な表情を浮かべる。


「拾ってきた? どうして?」
「どうしてって、それは」
「商品としてかしら。おかしいわね、並んでいるところ見たことないけど」
「本は一通り拾うようにはしているんだよ。
 濡れたりしたら片付けるのも大変なんだ」
「ふうん、そして一通り読むのかしら」
「……それは、一応」
「一応、ね」


 霖之助ももういい歳の大人である。
 たかだかエロ本の一冊や二冊読んだところで咎められる筋合いはない。

 ……無いはずなのだが、さとりの女としてのプライドはそうはいかなかったようだ。


「その割には、随分鮮明に覚えているのね」
「いや、それはまあ。僕も男だからね」


 彼女に対して隠し事は出来ない。
 どうやらああいう本を読んだこと自体に怒っているらしい……と言うことを、霖之助は何となく理解した。


「……いつもさせてあげてるのに、どうして」
「させてもらっているというか、君が……」


 言いかけて、やめる。
 さとりの眉根がさらにつり上がったからだ。

 ……まあこの際、どちらから求めているかはたいした問題ではない。
 たぶん。


「読んだのよね? 何度も」


 さとりはあくまで口に出して尋ねる。

 答えはわかっているはずだ。
 なのにわざわざ聞くということは。

 ……本気で怒っている、ということか。


「ねえ、この本のタイトルなんだけど。
 言ってみて」
「今かい?」
「もちろんよ」


 これが羞恥プレイと言うやつだろうか。
 そんなことを考えてみるが、さとりの表情は真剣だった。

 霖之助は仕方なく、彼女が突きつけてきた本の表題を読み上げる。


「巨乳大全。
 Gカップ超女優特集。
 ドキッ、爆乳だらけの……」


 ギリギリと、さとりの方から妙な音が聞こえてきた。
 妖怪としての身体能力か、はたまた別の力か。

 数秒も経たないうちに、手に持っていた本はあっさりと圧力に負け、破れ、塵と化す。


「ねえ。
 私に何か言いたいことでもあるの?」
「いいや、僕は現状に満足しているつもりだが?」


 嘘偽りのない本心だった。
 そしてそれは誤解無くさとりに伝わる。

 ……だからこそ余計に、事態は深刻なのかもしれない。


「そう、無意識なのね」


 さとりの身体は震えていた。

 ……怒りで。
 心が読めなくてもわかる。


「無意識に、大きなおっぱいを望んでいるのね」
「……いや、さとり。少し落ち着いたらどうだい?
 もっと冷静にだね……」
「私は冷静よ。これ以上なく」


 完全に目が据わっている。
 やがて彼女はなにやら思いついたのか、壮絶な笑みを浮かべた。


「そうだ。ねえ、霖之助さん。
 今想起の力を使ったら、誰の姿が浮かび上がるのかしら」


 ……それは冷静ではなく、冷酷というのだ。




『4.門番sを書こうとしたのにみすちーものになった不思議。
   羽根キャラ大好きです。ええそれはもう』


 げに恐ろしきはコタツの魔力。
 入るは易し、出るは難し。

 そして人は、きっかけがなければなかなか行動に移せないのである。


「……それで、誰が用意するんですか?」


 右隣から、文が問いかけてきた。


「うぅ、お腹空いたよぅ」


 コタツに突っ伏すように、左隣に座る朱鷺子が呪詛めいた言葉を発する。


「用意も何も、肝心の材料がまだ来てないからね……」


 霖之助の対面はいまだ空席のままだった。

 妖怪の賢者に見事な鱈を分けて貰ったのがつい先日のこと。
 ミスティアの屋台でその話をしたところ、いつの間にか皆で鍋をすることになっていた。

 メンバーはミスティア、文、朱鷺子。
 偶然その場に居合わせた顔ぶれだ。

 屋台の余りもあるし、と言うことでミスティアが鍋の材料を持ってきてくれることになったのだが。
 約束の時間より、少々遅れていた。


「遅くなりました」
「にゅ~、あったかーい」
「わひゃっ」


 空いていた対面の席に、黒い影が飛び込む。
 朱鷺子が驚いた声を上げるが……よく見ると、見知った顔だった。


「……お空?」
「おにーさん、こんばんわー」
「あやや。こんなところで会うとは」
「途中で会って、せっかくだから誘ったんです。
 食材を足してたら、少し遅れてしまいました」
「はぁ……ぬくぬく」


 この世の春とばかりに幸せそうな表情のお空に苦笑し、霖之助はミスティアに席を勧める。


「寒かったろう、しばらくゆっくりするといい」
「いえ、一度入ると……出られなくなりそうですし」


 ミスティアは一同を見渡し、そう言って笑う。
 ……確かに、賢明な判断だ。


「このまま料理の準備しちゃいますね」
「ああ、じゃあ僕も手伝うよ。
 と言ってもだいたいは終わってるんだがね……」


 そう言って、霖之助は重い腰を上げた。
 寒いことには寒いが、このままでは一向に事態が進展しない。

 何より、待ちに待ったきっかけだ。


「文、朱鷺子。
 すまないが食卓の準備を頼むよ。
 食器とカセットコンロの場所は知ってるね?」
「はいはい。わかってますよ。
 取材の準備もばっちりです」
「うぅ。出たくないよぅ」
「うにゅ~」


 お空は……この調子では役に立たないだろう。








 鍋の方もあらかたの下ごしらえは済んでいるので、あとはミスティアが持ってきた食材を切って入れるだけだ。
 5分とかからず、準備が完了する。


「なるほど、こうやって使うんですか」
「取材するのはいいが、吹きこぼれないように見ていてくれよ」
「もちろんですよ」
「おなかすいたー」
「まだかなー、まだかなー」


 まるで雛鳥の中に突っ込んでしまったような錯覚を覚えてしまう。

 とにかくあとはしばらく煮込むだけだ。
 文明の利器たる、カセットコンロを使って……。


「……ああ、すっかり忘れてたな」
「なにがです?」


 鍋を火にかけ、あとは待つだけなのだが。
 そこで霖之助は頭を悩ませた。


「いや、席をどうしようかと」


 本来4人掛けのコタツだ。
 既に文、お空、朱鷺子が座っている。

 ……飛び入りのお空に我慢してもらうとしようか。
 しかし、いかんせん彼女は少女の中でも体つきといい羽根といい規格外な方だ。
 相席する少女の方が窮屈になってしまうだろう。

 幻想郷の中でも最強クラスの文と一緒に座るのは……。
 きっと萎縮してしまうに違いない。

 となると、ミスティアと朱鷺子が相席を……。


「いいじゃないですか、狭くても」


 そう言って、ミスティアは霖之助の手を引いた。


「それにこのほうが、あったかいですよ」
「あー!」
「あああ!」


 霖之助とくっつくようにして座るミスティアに、朱鷺子と文は大声を上げた。


「うにゅ?」




『5.先日立ち読みしたので』


「ですからあの技は私と雲山の方が完璧に再現できると思うんですよ」
「いいえ、私と神奈子様です」
「時間も止められないくせに何を言うの」


 咲夜と早苗と一輪。
 3人の少女が言い争っていた。

 きっかけはなんだったか覚えてないが……。
 どうせきっと大したことではない。


「君たち、漫画は静かに読むものだよ」
「だって一輪さんが変なこと言うから……」
「そうよ。十年早いわ」
「まさか人間にその言葉を言われる日が来るとは思いませんでした。
 ていうか、それを言うならそもそも……」
「やれやれ」


 霖之助は苦笑しながら、手元の本に目を落とす。
 外の世界の漫画は、たまに総集編のようにして分厚くまとめた本が出る。
 今回一区切りまとめて手に入ったので、読んでいたのだが……。


「霖之助さん、私に無理矢理キスしてください。
 泥水で洗いますから」
「そう言われてすると思うかい?
 いや、言われなくてもするつもりはないが」
「だいたい逆ですよ、咲夜さん」
「あら? そうだったかしら」
「そうですね、だって」


 早苗は本を開きながら、霖之助に視線を送る。


「そうなると霖之助さんがヒロインに」


 そこで彼女は、言葉を切った。


「……まあ、アリですかね」
「アリね」
「アリよね」

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