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二人羽織

動物だもの。服を着なくたっていいじゃない。
そしてお燐とお空は巨乳。
だってさとりのペットだもの?


霖之助 お燐








「猫を飼い始めたの」


 そう言って、霊夢はお茶を啜った。
 例のごとく勝手に使用した高級な茶葉だ。


「間欠泉の近くで拾ってきたのよ。紫が」


 彼女の言葉の通り、視線の先には黒い猫が伸びをしている。
 霖之助の視線に気付いてか、にゃあと鳴いた。


「エサはまだかしら? ってこの子が」
「猫の言葉がわかるなんて初耳だね、霊夢」
「私にはおまんじゅうでいいわ。台所にあったやつ。
 あれはこのお茶に合うから」


 霖之助の言葉を華麗に無視して、霊夢は断言した。

 先ほどお茶を持ってきたとき、勝手に取らなかったのは彼女なりの礼儀なのだろうか。
 ……単に手がふさがっていただけかもしれない。


「そもそも君の猫だろう? 君がエサを用意すればいいじゃないか」
「神社の猫は香霖堂の猫でしょ。
 つまり霖之助さんがエサをあげてもいいのよ」


 霊夢の言っている言葉の意味がわからない。

 しかしそんなことはお構いなしに、彼女は足下に寝そべっていた黒猫を掴み上げた。


「それに私の猫ってわけでもないしね。
 地上に出てきたときエサをあげてるだけだし。
 地霊殿の猫だし」


 それは飼っていると言えるのだろうか。

 持ち上げられた猫と目が合う。
 首を傾げたような気がした。


「……まあ、猫のほうは拾った缶詰でいいなら。
 味のほうはわからないけどね」


 ひとつため息を吐くと、霖之助は台所に向かった。

 このままにしていてもどうせ霊夢が帰るときにまんじゅうは持って行かれてしまう。
 なら一緒に食べた方がいくらかマシというものだ。

 それに猫のエサを試すいいチャンスだった。
 プレミアムとか書かれていて、無駄に高級そうな感じの缶詰。
 猫が食べるから猫缶。なんともわかりやすい。


「猫は缶詰を開けられない。
 つまり勝手に食べられないと言うことだ。
 この保存方法は実に理にかなっていると思うね」
「……猫は、ねぇ」


 霊夢にまんじゅうを、猫に缶詰を振る舞いながら喋る霖之助に、
なぜか微妙に可笑しそうな表情を浮かべる霊夢。


「……しかし……ふむ。
 猫缶か……」


 これでも道具屋だ。畑が違うとはいえ、ある程度の値段はわかる。
 ……少なくとも、この缶詰は霊夢が食べているまんじゅうの数倍の値段はするだろうと思われた。


「……なによ」
「いいや、なんでもない」
「そう」


 まんじゅうをじっと見ていたのが気になったのか、霊夢が不思議そうな表情を浮かべた。

 にゃあ、と黒猫が満足そうな鳴き声を上げる。
 足下にすり寄ってきた猫に、霖之助は猫缶の成功を確信するのだった。









「猫を飼い始めたんだよ」
「黒猫なら私のほうが似合うぜ」


 魔理沙はそう言って、トレードマークの帽子を手でいじった。
 いつもの壺に腰掛け、他愛無いおしゃべり。
 特に用事はないのだろう。いつも通り。


「で、どういう風の吹き回しだ?
 客に相手されなくなって動物に逃げたのか?」
「君が僕のことをどう思ってるかは知らないが……。
 僕の猫ってわけでもないんだけどね。
 たまにエサをやってる程度なんだが」


 エサをやっているだけで、猫を飼っている気分になるから不思議だ。

 地霊殿の猫という黒猫は、あれからよくやってくるようになった。

 どうやら先日やった缶詰がずいぶん気に入ったらしい。
 エサ目的らしく、霊夢の話では最近神社には来ていないそうだ。


「エサなんてここなら売るほどあるんだろ?」
「売るほどあっても売れないんだよ」


 人間の里でも猫は飼っているのだが、そもそも里では飼い猫のエサは残飯が基本だ。
 量の割に高価な缶詰など売れるはずもない。

 そもそも余り物で済むのに、猫のためのエサを飼うという発想自体が無いのだろう。

 安くしたところで効果は現れなかった。
 というわけで売れる当てのない缶詰は、腐らせるのももったいないので小さな来客のお腹の中、と言うわけだ。


「しかし猫が狭いところが好きというのは本当だな。
 よく袖の中とかに入り込んでくるよ」
「袖の下か。香霖もなかなか商人みたいな事を言うじゃないか」
「……君は商人というものを誤解しているようだ」


 そもそも魔理沙の家も道具屋だろう、と言いかけてやめた。
 実家の話をすると魔理沙の機嫌が悪くなる。


「猫のエサは余らせていたからね。
 ちょうどよかったんだよ」
「あいつらが聞いたら喜びそうな話だぜ」


 あいつら、というのはよくわからなかったが、ひとつは霖之助にも心当たりがあった。


「ああ、紫の式の式という猫又かい?」
「いや、もう一匹猫が居てさ。
 地霊殿の……」


 魔理沙の言葉に応えるように、にゃ~ん、という鳴き声が響き渡る。
 聞き覚えのあるその声に、魔理沙は思わず固まった。


「……香霖。
 その猫、どこから拾ってきたんだ?」
「ああ、言ってなかったかい?
 紫が拾ってきたと霊夢が言ってたな」


 だから僕が拾ってきたわけじゃないよ、と言う霖之助の言葉にも無反応。

 魔理沙はひとつ首を振り、恐る恐る口を開く。
 まるで間違いであって欲しい、と言うように。


「……それで、そいつはどこにいるんだ?」
「ん? さっき言わなかったかな?」
「いや、聞いてないぜ。
 まさか近くにいるのか?」
「ああ。言っただろう、袖の中とかが好きみたいだ、と」


 そう言って、霖之助は軽く腕を上げた。
 影の中、光る瞳が魔理沙とぶつかる


「なっ……」


 その黒猫は、魔理沙の視線から逃れるように奥の方へ逃げ出した。
 奥、つまり霖之助の服の中へと。


「魔理沙、何をそんなに慌てているんだい」
「だ、だって……」


 言っている間に、再び黒猫が顔を出した。
 霖之助の服の、胸元から。

 思わず魔理沙は叫ぶ。
 叫んでしまう。


「……この泥棒猫!」









「……人型になれるとは聞いてないよ」
「あはは、うかつなお兄さん。
 缶詰美味しかったよ。
 でもまさか、尻尾が2本あるのに気付かないなんて……」
「……どうでもいいが、その場所で人型にならないでくれるかな。
 正直狭いんだが」
「えー。いいじゃん。今までもずっと服の中にいたんだからさ」
「だからと言って……」


 霖之助はため息を吐いた。
 さっきから魔理沙が黙ったままなのがすごく気になる。
 気になると言えばこの猫……いや、猫娘か。


 ……どうして、服を着ていないのだろうか。


「え? 着てるじゃん、お兄さんの服を、お兄さんと」

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