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設定とか10

ウェブ拍手をFC拍手にしたついでに1-5まで更新しました。
改行とか少し変わってるかもしれません。


というわけで昔上げてた奴のまとめ。








『1.たまに病んだうどんげを書きたくなる衝動に駆られるよねと言う話』


「霊……」


 口を開きかけた霖之助は、慌てて言葉を切った。
 咳払いひとつ。

 ややあって、再び彼女に話しかける。


「鈴仙、そう言えば頼みたい薬があるんだが」
「はい?」


 メモ帳から顔を上げ、鈴仙は応えた。

 ……気付いていないようだ。
 霖之助は内心胸をなで下ろしながら、追加の薬を言づてる。
 霊夢から置いておくように頼まれた薬があったのを思い出したのだ。
 忘れたら、また文句を言われたことだろう。

 一通りのやりとりを終え、鈴仙が立ち上がる。


「じゃあ、お茶入れてきますね」
「ああ、頼むよ」


 台所へ歩く彼女の後ろ姿を見送り、霖之助は新聞を手に取った。
 客にお茶を入れさせるのはどうかと思うのだが、本人の希望もあって、最近はもっぱら彼女がお茶を入れていた。
 なんといっても、彼女の入れるお茶は不思議と美味いのだ。


「そう言えばですね、ひどいんですよ」


 お茶を飲み、一息ついたところでおもむろに鈴仙が口を開いた。
 たいていいつもは永遠亭の愚痴が始まるのだが……。


「……?」


 続く言葉もなく、しばらくじっと鈴仙は霖之助を見つめていた。


「……なにがひどいんだい?」
「そうなんです。ひどいですよね。女の子の名前を間違うなんて」
「……ああ……」


 気まずい沈黙。
 霖之助はお茶で渇いた喉を潤す。


「ねえ、霖之助さん」
「なんだい、鈴仙」
「さっき、誰の名前を呼ぼうとしたんですか?」
「…………」


 じっと、鈴仙は霖之助を見つめていた。


「ねえ、霖之助さん。
 私の名前、呼んでください」
「……鈴仙?」


 ふと、霖之助の視界が揺れた気がした。
 ……お茶をもう一口。


「そう、呼んでください、私の名前。
 ずっとずっと、私だけを……」




『2.天女の羽衣と言ったら桃太郎伝説が真っ先に出てきた僕はどうしたら』


「天女の羽衣。一度行った町に戻れる…?」
「はい。空を飛べますからね」


 霖之助は手の中にある緋色の布をしげしげと見つめた。
 総領娘様の相手がめんどくさいです、とやって来た衣玖から、なんとか頼み込んで借りたのだ。
 伝説を残すほどの道具、ぜひ一度調べてみたかった。

 意外とあっさり貸してくれたのが、少し気になったのだが……。


「使ってみます? 飛べますよ」
「あいにく、それほど飛ぶことに興味はなくてね」


 それにしても美しい品だった。
 手触り、色、艶、どれをとっても申し分ない。


「まあ、私はそれなしでも飛べるんですけど」
「じゃあ、なんでこれを纏っているんだい?」
「そうですねぇ~」


 衣玖は惚けた表情で視線を逸らした。

 実は大した理由がないのではないだろうか。
 霖之助がそう考えていたところ……彼女が口を開く。


「霖之助さんは、羽衣伝説についてどれくらいご存じですか?」
「そうだね……」


 その質問に、霖之助は記憶を呼び起こした。


「水浴びをしてた天女の羽衣を男が盗んで、帰れなくなった天女は男と結婚するんだったかな?
 そのあと羽衣を取り返した天女が天に帰る……」
「それ、全国にあるんですよね。同じような伝説が」
「誰かが吹聴して回ったんじゃないのかい?」
「そうですね、そうかもしれません」


 でも、と衣玖は続ける。
 霖之助に、顔を近づけながら。


「真実が捻れて伝わったとしたら、どう思います?
 天女の羽衣は結婚指輪のようなもので、取り返されたんじゃなくて別れた際に持って行かれただけだった、としたら」
「なるほど、自分の失敗談を脚色したわけか。
 でもそれだと……」


 衣玖の唇が霖之助の耳元にあった。
 霖之助が振り返ると同時、赤い蕾が霖之助の唇に当たる。


「……そう。結婚指輪なんですよ。霖之助さん」




『3.相手を壊したくないのなら、自分が壊れるしかない』


「あら、お帰りなさい霖之助さん。勝手に頂いてるわよ。ツケで」
「……君は何をしているんだい?」
「なに? なにって見ての通りよ」


 いつものように勝手に上がって、勝手にお茶を飲んでいたその少女に、霖之助はまるで奇妙なものを見るかのような視線を送る。

 おかしな話だ。
 彼の記憶の中で彼女は、いつもこうやっているというのに。


「……見ての通り、か。まるで博麗霊夢に見えるね」
「そう。よくわかってるじゃない」


 頷く彼女に、霖之助は首を振った。

 博麗霊夢。
 彼の心の中に居座り続ける少女の名前。


「でも君は霊夢じゃない。
 ……どうしたんだい、さとり」
「さとり?」


 その言葉に、少女は首を傾げる。

 どうしてその名で呼ぶのだろう。
 振り向いてくれなかったくせに。

 だから、彼女は彼女になることにした。


「いいえ、わたしのなまえはね……」


 博麗霊夢。
 霖之助が好きな、女の子。




『4.SBRの新刊が出たので』


 咲夜と早苗。
 ふたりの少女が睨み合っていた。

 目的は同じもの。
 機を窺うように、霖之助へと視線を送ってくる。


「……やれやれ」


 霖之助はため息を吐いた。
 このふたりがぶつかるのはもう恒例行事だが……今回はいつもより激しいようだ。
 このままエスカレートして行けば、いつか店が壊されるのではないかと心配してしまう。


「霖之助さんとは長い付き合いだもの。
 私の先に予約してたわよね?」
「私のほうが頻繁に通ってますよね、霖之助さん。
 ここは常連を優先してくれるところですよ」


 ふたりの主張は真っ向から対立していた。
 しかしそう言われても、対象はひとつしかないわけで。


「それは貴女が暇なだけでしょう?
 どこの神社も巫女はほっつき歩いてていいのかしら」
「現人神ともなると歩いているだけで信仰が集まるというものです。
 妖怪も退治できますし」


 お互い一歩も引かないまま、時間は過ぎていく。
 やがてその矛先は、霖之助へと向かった。


「……それで霖之助さん」
「一体どっちを選ぶんですか?」
「いや、そもそもだね」


 大きくため息。
 このふたりが来るといつものことだ。


「僕は一言も、この本を売るとは言ってないわけだが」


 カウンターの上には、一冊の単行本が置いてあった。
 外の世界でも発売されたばかりの漫画の新刊だ。

 人気のある漫画であればあるほど、新刊が幻想郷に流れ着くのは珍しい。
 2ヶ月も待てば、少しは入ってくるのだが……。
 しかしあとになればなるほど、本の状態がいいものは少なくなっていく。

 そして咲夜も早苗も、この漫画の作者のファンだった。


「だいたい咲夜さんは第3部が一番だって言ってたじゃないですか。
 だからここは私が……」
「それは100点と101点で点数をつけた場合よ。
 貴女だって第5部って……」


 ふたりとも、基本的に仲はいいのである。
 というか一応、雑誌連載分は読んでいるはずなのだが。
 それはそれ、これはこれらしい。


「いや、だからね。売るとは言って……。
 第一、僕もまだ読んでないんだが」
「あら、そうなの?」
「そうなんですか?」


 霖之助の言葉に、ようやくふたりの雰囲気が緩和された。
 しかし、一安心できたのも束の間。

 早苗の提案に、霖之助は思わず耳を疑う。


「じゃあ一緒に読みましょうか」
「そうね」





 左右から挟まれ、霖之助は大変居心地の悪い思いをしていた。


「この技、諏訪子様あたりできるかしら。
 こう呼び出して……」
「そんな事考えるのは5周目くらいからでいいわ。
 あ、霖之助さん、ページめくるのが早いわよ」
「ああ……」


 数十分後、誰がこの本を保管するのかでまた揉めることになるのだった。




『5.カラオケシリーズ02
    ゆゆこさまとゆかりんには昭和アイドルが似合うと思うよ』


「くたばっちまえ、ア~メン♪」
「……物騒な事を言うね」


 スキマから上半身を出した少女の言葉……いや、歌詞だろうか。
 戸惑う霖之助に、紫は胡散臭い笑みを浮かべる。


「コンニチワ、霖之助さん」
「お客だったらいらっしゃい。
 そうでないのなら邪魔しないでくれないか。今いいところなんだ」
「つれないのね」


 つまり客ではないということか。
 霖之助はため息を吐き、視線を本に移そうとして……ふと、視線を紫に戻す。


「……またカラオケ、というやつかい?
 ずいぶん剣呑な言葉だったが」
「ええ、そうなのよ。
 ちょっと前の曲なんだけどね」


 紫のちょっと前がどれほどのものかわからなかったが、ちょっと前と言うからにはちょっと前なのだろう。
 彼女は思い出すように眼を細め、歌詞を口ずさみ始めた。


「愛の誓いは耳をふさいでるの」


 紫の声はよく通り、さほど大きい声でもないのに耳に届く。
 しかし可愛らしい曲調と対比するような歌詞に、霖之助は思わず首を傾げた。


「指輪の交換は瞳をとじてるの」


 ……ずいぶん歌い慣れているのだろう。
 伴奏などなくてもきちんと歌になっていた。


「あなたから指輪を受ける日を鏡に向い夢見てたわ」
「紫」


 だんだんと危険な情念がこもってきた気がするので、霖之助は慌てて紫を呼び止める。
 彼女の瞳に危険な光が宿ったままなのが気になったが。


「最近幽々子が私に歌えってやけに勧めてくるの。
 霖之助さん、もしかして幽々子と何かあったのかしら」
「……何かもなにも、僕はその曲を知らないからなんとも言えないな」


 どこからともなく取り出した扇子で口元を隠し、紫はじっと霖之助を見つめる。
 ……やがて諦めたのか、ゆっくりと息を吐いた。


「……まあいいわ」


 霖之助は内心胸をなで下ろす。
 そして話題のカラオケというものが気になり始めていた。


「カラオケというものは楽しいものだと聞いたのだが」
「そうよ。カラオケはね、歌を歌うのよ」
「ほう。それは……風流だね」


 納得したように頷く霖之助に、紫は苦笑して首を振った。


「たぶん、いえ間違いなく霖之助さんの想像してるのとは違うわ」
「そうなのかい?
 そう言えば、幽々子もそんな事を……」
「幽々子が来たの?」
「ああ……部下のためにのど飴を買いにね」


 それだけだよ、言う霖之助。


「……あの子、そんなこと一言も言わなかったわね……」


 すいっと紫がスキマごと移動してきた。
 紫の瞳が目と鼻の先で光る。


「……まあいいわ」


 今度のその言葉は諦めではなく、継続の意を示していた。
 逃がさないから、と物語っている。


「霖之助さんは、歌は上手かしら?」
「どうだろうね。人前で歌ったことなどないし。
 君の歌う歌のようなものはわからないからね」
「あら、じゃあ試しに聞いてみたらどうかしら」


 そう言って紫は懐から小さな箱を取り出した。
 香霖堂にあった音楽プレイヤーと似たようなもののようだ。

 本体からケーブルが伸びていて、紫はその片方を自らの耳に入れた。
 そしてなにやら操作する。

 やがて彼女は、本体から伸びたケーブルのもう片方を霖之助の耳へと入れてきた。
 イヤホンというらしい。
 用途は音楽を聴くもの。


「ほら、こういう歌を歌ってるのよ」
「ほう……」


 音楽プレイヤーから聞こえてきたのは確かに音楽だった。
 こうやって使うのか、と感心してみたところで残念ながら香霖堂にあるものとタイプが違うため、同じようには動かせないだろう。
 見たところ、パーツも足りないようだし……。


「上手く真似ればいいのかい?」
「いえ。楽しめれば上手い下手はいいのだけど。
 そうそう、こういう歌もあってね」


 紫と霖之助は身体をくっつけるようにして、イヤホンから流れてくる音楽を楽しんだ。

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