鬼ルート
子育て搾乳シリーズ。
どうやったら搾乳できるかというウフフスレでの話題で、そういう病気と薬の話が出ました。
それに便乗した結果、一番最初に思いついたのは萃香という。
間違ってないよね、僕。
霖之助 萃香 勇儀
「どうやら時代が僕を恐れているらしい。
仕方ないから地獄に行って商いでもやることにしたよ」
「なにそれ、この前読んでた漫画の影響~?」
あはは、似合わないぞ~と萃香は笑う。
そんな彼女に、霖之助は首を振った。
「いや、本当なんだ。どうやら僕は病気みたいでね。余命幾ばくもないらしい」
「酒呑めば治るって」
ニャハハ、と萃香。
空いた盃になみなみと酒を注ぎ、一息に呷る。
酒臭い息で霖之助にもたれかかり、彼の杯にも酒を注いだ。
「そうだな。もってあと数年。試してみるのも悪くない」
「……本当なの?」
「残念ながらね」
「そっか。少しばかり寂しくなるねぇー」
「少し、か。そうだな」
「地獄なんて近所だからさ。また酒でも呑もうよ」
「まあ、その時僕の肉体はないだろうがね……」
霖之助は笑おうとして……ジャラリという鎖の音に首を傾げた。
いつの間にか、霖之助の身体は鎖で拘束されている。
次の瞬間には浮遊感、そして衝撃。
「なんて言うと……思ったかぁ-!」
鬼縛り、そして萃鬼『天手力男投げ』。
まともに食らったら無事では済まなかっただろう。
ただ身体を強くぶつけた程度で済んだのは、萃香が手加減したからに他ならない。
「なんだよそれ!
なんでそんなに諦めがいいんだよ!
もっとあがけよ、人間……生き物らしくさ!」
「萃香、苦しい……」
「りんのすけのことだから、解決策くらい用意してるんだろ?」
「一応ね……」
霖之助は懐からふたつの瓶を取り出した。
割れなかったのは僥倖だろう。
もっとも、割れたところでもう一度取りに行けば済むことだが。
「だが正直、あまり人に頼めた方法じゃなくてね、どうしたものかと考えていたところさ」
「なんでもいいよ。解決策があるならそれをやる。
それが正々堂々生きるってことだよ」
「そうか」
萃香の言葉に、ようやく霖之助は目が醒めた思いがした。
どうやら、悪い酔い方をしていたようだ。
「これは竹林の医者に貰った薬でね。
この薬を飲むと赤ん坊に戻り、こっちを飲むと母乳が出る。
治療というのは1年間の間子供に戻り、女性から乳をもらうということさ」
「ふーん」
なんでもない風を装っている萃香だが、わりと驚いているようだ。
まさかこういう方法だとは思いも寄らなかったのだろう。
……霖之助と同じように。
「では正々堂々、君に勝負を申し込むことにしよう。
僕が勝ったら、1年間僕に付き合ってもらう」
「ああ、いいよ。私に勝てればの話だけどね、りんのすけ」
「勝負はいつもの方法で」
つまり、呑み比べ。
腕力勝負では話にならない。
これでも勝てるとは到底思えないのだが、やらないよりはマシだろう。
……当然ながら、萃香は一切手を抜いたりしなかった。
「私の勝ちぃ~。まだまだだねぇ」
「ああ……僕が死ぬまでに勝てるよう頑張るよ」
酒の回った身体で霖之助は呟いた。
立っていられず、だらしなく床に寝転んだ状態で。
萃香はまだ元気らしく、さらに盃を呷っている。
当然の結果。
なのに今更……悔しさが滲みだしてきた。
「じゃあ、私が勝ったからりんのすけには私の言うことを聞いてもらおうかな~」
「……初耳だが」
寝耳に水とはこの事だろうか。
踏んだり蹴ったりかもしれない。
「当然だろー?
りんのすけが見返りを求めたんだから、私もそれ相応のものをいただかないとね」
「やれやれ」
まあ、店の商品を持って行かれたところで今更惜しくもない。
……剣だけは、困るけれど。
「りんのすけにはねぇ~、酒に強くなってもらうよ」
「……それは、負けた僕への嫌みかい?」
ちっちっち、と萃香は指を振った。
テーブルの上に置いてあった薬を手に取り、ニヤリと笑う。
「鬼の母乳で育てれば、嫌でも強くなるよ。酒」
「よう萃香、久し振り」
「おっす勇儀。元気してた?」
「当然。珍しいな、萃香がこっちに降りてくるなんて」
「うん。1年くらい過ごすつもり」
よっと、というかけ声とともに萃香は背負っていたものを抱え直す。
重さは大したことはない。
だがバランスが不安定なせいか、どうしてもずり落ちそうになってしまう。
「……なんだそれ」
「可愛いでしょ? 私の子供だよ」
「その『の』は所有物ってことか。どこから攫ってきたんだい?」
「地上の道具屋から。置いとくわけにも行かないからねー」
「地上の道具屋というと……あの人妖のいる……」
「そうそう。ふたりで酒を飲み干したところだよ」
言われて思い出し、勇儀は含み笑いを漏らした。
あの時の店主の顔は見物だった。
また機会があれば行こうと思っているが、ついつい行きそびれてしまっていた。
「で、なんでまた?」
「んーとねー」
萃香は今まであったことを勇儀に説明した。
たぶんこれからいろいろ世話になる相手だ。
協力者は多い方がいい。
「……面白そうだな……」
萃香の説明を聞き終わった勇儀は、そう呟いた。
もちろん、彼女ならそう返すだろうと思ったからこそ萃香は説明したのだ。
「ほら、ちょっと前の地上の物語にあっただろう」
「いつ頃?」
「前の前の山にいたときより前」
「ん~、なら千年くらい?」
「それくらいかな。でさ、理想の相手がいなければ自分で育てればいいって」
「うん、やっぱり勇儀もそう思うよね」
にやり、とふたりの鬼が笑う。
自分が負けるかもしれない相手を育てる。
何とも楽しい計画ではないか。
「ちょっと地上に行ってくる」
「何しに? って、聞くまでもないか」
「ああ。私も薬を貰いにさ」
「あう、あふれてたれてきちゃった。効き過ぎだよこの薬」
「おーい萃香ー」
「なーに勇儀。今日は私の番のはずだけど」
「そうなんだけどさ。私の胸もちょっと調子がよすぎちゃって……」
やって来た勇儀は、萃香の頭の上に乗せられていた霖之助(小)を抱き上げた。
「しかしあんまり泣きもしないし笑いもしないね、こいつ」
「ねー。中身そのままだったりして」
あはは、と笑い……次に訪れたのは無言の時間。
「じゃあ、今日の乳は萃香でいいから私がオムツ変えるよ」
「なんでそうなるんだよー! それも私に決まってるでしょ!」
どうやったら搾乳できるかというウフフスレでの話題で、そういう病気と薬の話が出ました。
それに便乗した結果、一番最初に思いついたのは萃香という。
間違ってないよね、僕。
霖之助 萃香 勇儀
「どうやら時代が僕を恐れているらしい。
仕方ないから地獄に行って商いでもやることにしたよ」
「なにそれ、この前読んでた漫画の影響~?」
あはは、似合わないぞ~と萃香は笑う。
そんな彼女に、霖之助は首を振った。
「いや、本当なんだ。どうやら僕は病気みたいでね。余命幾ばくもないらしい」
「酒呑めば治るって」
ニャハハ、と萃香。
空いた盃になみなみと酒を注ぎ、一息に呷る。
酒臭い息で霖之助にもたれかかり、彼の杯にも酒を注いだ。
「そうだな。もってあと数年。試してみるのも悪くない」
「……本当なの?」
「残念ながらね」
「そっか。少しばかり寂しくなるねぇー」
「少し、か。そうだな」
「地獄なんて近所だからさ。また酒でも呑もうよ」
「まあ、その時僕の肉体はないだろうがね……」
霖之助は笑おうとして……ジャラリという鎖の音に首を傾げた。
いつの間にか、霖之助の身体は鎖で拘束されている。
次の瞬間には浮遊感、そして衝撃。
「なんて言うと……思ったかぁ-!」
鬼縛り、そして萃鬼『天手力男投げ』。
まともに食らったら無事では済まなかっただろう。
ただ身体を強くぶつけた程度で済んだのは、萃香が手加減したからに他ならない。
「なんだよそれ!
なんでそんなに諦めがいいんだよ!
もっとあがけよ、人間……生き物らしくさ!」
「萃香、苦しい……」
「りんのすけのことだから、解決策くらい用意してるんだろ?」
「一応ね……」
霖之助は懐からふたつの瓶を取り出した。
割れなかったのは僥倖だろう。
もっとも、割れたところでもう一度取りに行けば済むことだが。
「だが正直、あまり人に頼めた方法じゃなくてね、どうしたものかと考えていたところさ」
「なんでもいいよ。解決策があるならそれをやる。
それが正々堂々生きるってことだよ」
「そうか」
萃香の言葉に、ようやく霖之助は目が醒めた思いがした。
どうやら、悪い酔い方をしていたようだ。
「これは竹林の医者に貰った薬でね。
この薬を飲むと赤ん坊に戻り、こっちを飲むと母乳が出る。
治療というのは1年間の間子供に戻り、女性から乳をもらうということさ」
「ふーん」
なんでもない風を装っている萃香だが、わりと驚いているようだ。
まさかこういう方法だとは思いも寄らなかったのだろう。
……霖之助と同じように。
「では正々堂々、君に勝負を申し込むことにしよう。
僕が勝ったら、1年間僕に付き合ってもらう」
「ああ、いいよ。私に勝てればの話だけどね、りんのすけ」
「勝負はいつもの方法で」
つまり、呑み比べ。
腕力勝負では話にならない。
これでも勝てるとは到底思えないのだが、やらないよりはマシだろう。
……当然ながら、萃香は一切手を抜いたりしなかった。
「私の勝ちぃ~。まだまだだねぇ」
「ああ……僕が死ぬまでに勝てるよう頑張るよ」
酒の回った身体で霖之助は呟いた。
立っていられず、だらしなく床に寝転んだ状態で。
萃香はまだ元気らしく、さらに盃を呷っている。
当然の結果。
なのに今更……悔しさが滲みだしてきた。
「じゃあ、私が勝ったからりんのすけには私の言うことを聞いてもらおうかな~」
「……初耳だが」
寝耳に水とはこの事だろうか。
踏んだり蹴ったりかもしれない。
「当然だろー?
りんのすけが見返りを求めたんだから、私もそれ相応のものをいただかないとね」
「やれやれ」
まあ、店の商品を持って行かれたところで今更惜しくもない。
……剣だけは、困るけれど。
「りんのすけにはねぇ~、酒に強くなってもらうよ」
「……それは、負けた僕への嫌みかい?」
ちっちっち、と萃香は指を振った。
テーブルの上に置いてあった薬を手に取り、ニヤリと笑う。
「鬼の母乳で育てれば、嫌でも強くなるよ。酒」
「よう萃香、久し振り」
「おっす勇儀。元気してた?」
「当然。珍しいな、萃香がこっちに降りてくるなんて」
「うん。1年くらい過ごすつもり」
よっと、というかけ声とともに萃香は背負っていたものを抱え直す。
重さは大したことはない。
だがバランスが不安定なせいか、どうしてもずり落ちそうになってしまう。
「……なんだそれ」
「可愛いでしょ? 私の子供だよ」
「その『の』は所有物ってことか。どこから攫ってきたんだい?」
「地上の道具屋から。置いとくわけにも行かないからねー」
「地上の道具屋というと……あの人妖のいる……」
「そうそう。ふたりで酒を飲み干したところだよ」
言われて思い出し、勇儀は含み笑いを漏らした。
あの時の店主の顔は見物だった。
また機会があれば行こうと思っているが、ついつい行きそびれてしまっていた。
「で、なんでまた?」
「んーとねー」
萃香は今まであったことを勇儀に説明した。
たぶんこれからいろいろ世話になる相手だ。
協力者は多い方がいい。
「……面白そうだな……」
萃香の説明を聞き終わった勇儀は、そう呟いた。
もちろん、彼女ならそう返すだろうと思ったからこそ萃香は説明したのだ。
「ほら、ちょっと前の地上の物語にあっただろう」
「いつ頃?」
「前の前の山にいたときより前」
「ん~、なら千年くらい?」
「それくらいかな。でさ、理想の相手がいなければ自分で育てればいいって」
「うん、やっぱり勇儀もそう思うよね」
にやり、とふたりの鬼が笑う。
自分が負けるかもしれない相手を育てる。
何とも楽しい計画ではないか。
「ちょっと地上に行ってくる」
「何しに? って、聞くまでもないか」
「ああ。私も薬を貰いにさ」
「あう、あふれてたれてきちゃった。効き過ぎだよこの薬」
「おーい萃香ー」
「なーに勇儀。今日は私の番のはずだけど」
「そうなんだけどさ。私の胸もちょっと調子がよすぎちゃって……」
やって来た勇儀は、萃香の頭の上に乗せられていた霖之助(小)を抱き上げた。
「しかしあんまり泣きもしないし笑いもしないね、こいつ」
「ねー。中身そのままだったりして」
あはは、と笑い……次に訪れたのは無言の時間。
「じゃあ、今日の乳は萃香でいいから私がオムツ変えるよ」
「なんでそうなるんだよー! それも私に決まってるでしょ!」
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No title
紫式部計画ですね?
これはいい勇儀
これはいい勇儀
No title
↑紫の上だよ、と半年前のレスに突っ込んでみる。
スイカ、俺と変わ(ry
スイカ、俺と変わ(ry
No title
↑逆に育てた側の人からとって「光源氏計画」とも言いますね、と一年以上前のレスに補足してみる。
りんのすけ、俺と変わ(ry
まぁ原作者の名前だから「紫式部計画」でもあながち間違いじゃないかもねw
りんのすけ、俺と変わ(ry
まぁ原作者の名前だから「紫式部計画」でもあながち間違いじゃないかもねw
No title
このシリーズは本当に妄想が広がるな
たまに読みたくなる
たまに読みたくなる