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膝枕シリーズ

またの名を寸止めシリーズ膝枕編。


霖之助 藍
霖之助 萃香
霖之助 サニー









『藍』
※僕が書くと藍のほうがよっぽどスキマ妖怪。主の居ない間に的な意味で。


「それではごきげんよう、霖之助さん。また来るわ」
「その時は客で頼むよ」
「ふふ、それは霖之助さん次第ね」


 紫は胡散臭い笑みを残してスキマに消えた。
 ひとりになった店内で、霖之助は椅子に深く座り直し、大きく息を吐き出す。


「……疲れた……」


 今日はいつもより紫が長居したため、一日中相手をしていた気がする。
 彼女との会話は英知に富んでいて楽しいのだが、いかんせん精神的にひどく疲れる。
 精神の疲れは肉体の疲れ。
 霖之助は椅子に座ったまま、身体の力が抜けていくのを感じていた。







 目を開けて、最初に見たのは金色だった。
 次に認識したのは少女の顔。


「あら? おはようございます」
「ああ……おはよう……」


 いつの間にか眠っていたらしい。
 寝起きのせいか、頭がはっきりしない。

 確か椅子に座っていたはずだが……目の端に映るのは見慣れた光景である香霖堂の居間。


「君は……」
「はい、紫様を探しに来たのですが、どうやら入れ違いになったようですね」


 主の帰りが遅かったので心配していたのだろう。
 実によく人間……いや、妖怪のできた式神だ。

 それがどうして、霖之助を膝枕しているのか。


「橙を置いて来ましたし。紫様も子供ではありませんから」
「……そうか」


 それより、どうして喋ってないのに藍は答えているのか。


「顔に出ますからね、店主殿は」
「…………」


 霖之助はふて腐れたように寝返りを打った。
 図らずとも藍の太股を堪能してしまう形になってしまうがあくまでも不可抗力だ。


「……お疲れのようですね」
「ああ……どこかの賢者のおかげでね」
「それはそれは。何でしたら、マッサージなどいかがですか?」
「できるのかい?」
「ええ、結構得意なんですよ。いつも紫様に……」


 霖之助は藍の話を聞きながら、目の前で揺れる尻尾を見つめていた。

 ふさふさ、ゆらゆら。


「紫様もああ見えて結構な……」
「…………」


 それは無意識だった。
 伸ばした手が触れたのは、一番近い尻尾。
 柔らかなその手触りに、もふもふと手を動かす。


「ひぁぅっ……!」
「ああ、すまん!」


 慌てて飛び起きる霖之助。
 寝ぼけていたとは言え、自分はなんてことをしてしまったのだろう。


「いいえ、こちらこそはしたない声を出してしまい……」
「いや、全然そんなことは……」


 お互いが頭を下げ、気まずい沈黙が流れる。


「えっと……マッサージだったか。お願いして良いかな?」
「は、はい……」


 何故か顔を赤らめ、藍はおずおずと頷いた。


「……今なら、特別なマッサージをして差し上げますよ……」





『萃香』
※またヘソなんだ。すまない。


「膝枕をしたい! されたい!」


 突然の叫び声に、霖之助はため息を吐いた。
 突拍子もない行動はいつものことだ。

 そもそも縁側で月を見上げているだけだというのに、どうして膝枕の話になるというのか。


「酒は静かに呑むものだよ、萃香」


 たしなめてみるが、酔っぱらいが聞いてくれるとは思えない。


「えー、いいだろ-、りんのすけぇ~。
 ……ってい」


 萃香は返事も待たずに、滑り込むように霖之助の膝へと頭を乗せた。
 思わずお猪口を取り落としそうになってしまい、慌てて中身を空にする。


「……危ないじゃないか。角が」
「鬼がそんなヘマをするわけ無いだろ~」


 カラカラと笑う萃香。
 寝転んだ姿勢のまま、器用に酒を口へと運ぶ。


「あー……意外といいかも、これ」
「意外と言うことは、期待していなかったということだな」
「言葉のアヤだってば」


 そう言うと、萃香は猫のように霖之助の足に頬をすり寄せた。


「どうでもいいが零さないでくれよ。かなりみっともないことになるからね」
「その時は私が綺麗にしてあげるよ~」


 本気とも冗談とも付かぬ言葉を最後に、萃香は大人しくなった。


「……やれやれ」


 安らかな寝息を立てる彼女に、霖之助は苦笑を漏らす。
 無造作に広がった髪を束ね、萃香の頭に軽く手を置き……。


 ――まったく、黙っていればかわい……。


「……何を考えているんだ、僕は」
「んあ?」


 霖之助の言葉に反応するかのように、萃香が目を覚ました。


「まだ5分も経ってないよ」
「それだけ寝ればじゅーぶん。それより今、なんか言った?」
「いいやなにも」
「そーお? 鬼の前で嘘はいけないよー?」
「隠し事なら問題ないはずだが」
「私の前で隠し事は良くない!」


 膝の上で暴れる萃香。
 霖之助は惚けるように視線を逸らし、酒を一口。


「もう十分だろう、降りてくれ」
「ああ、わかった。で、次は私の番だね」
「うん?」


 言うが早いが、萃香は霖之助の頭に抱きつくようにして床に倒す。
 衝撃で手に持っていた湯飲みを手放してしまうが、萃香が受け止め、綺麗に飲み干した。


「はい、ひざまくらー」
「……やはり、この体格差で膝枕は無理があると思うんだ」
「むー」


 膝枕とは太股の事であって膝小僧のことではない。
 ついでに言うと、今のままでは枕にすらなりはしない。


「じゃあこれでどうだ!」


 萃香はごろんと横になり、霖之助の頭を抱きかかえた。


「……さしずめ腹枕だな」
「あはは、くすぐったいよ」


 霖之助の目の前には萃香のヘソ。
 喋るたびに息がかかるらしく、身をよじる彼女。


「これでは酒を呑むことも出来ないんだが」
「なんなら代わりのものを呑む?」


 相変わらず身をよじらせる萃香だが、霖之助の頭を離そうとしない。
 絶妙な力加減なので苦しくはないのだが……。


「酒以上に美味いものがあるならね」
「だからくすぐったいって。あはは……は……あん……」


 だんだんと萃香の声が変わってきたような気がする。

 しかしそれより、霖之助の胸中にふとした悪戯心が芽生えた、
 ひょっとしたら、酒に酔っているのかもしれない。


「そうだな、君のヘソの味をみてみようか」
「あぅ……ん」




『サニーミルク』
※妖精シリーズ?


「はい、あげる」
「……なんだいこれは」


 聞くまでもなく、どう見ても妖精だった。
 気を失っているようで、ぴくりとも動かない。


「あら、喜ぶと思ったのだけど」
「君は僕をなんだと思ってるんだい」
「冗談よ」


 咲夜はそう言って、小脇に抱えていた妖精を床に下ろした。


「道を歩いていたらちょっかいをかけてきたのよ」
「それで返り討ち、か。やりすぎじゃないのかい?」
「妖精だもの」


 しばらくしたら何食わぬ顔で復活するだろう。
 しかしこの妖精……どこかで見覚えがある気がした。


「幻想郷縁起で見たことがある気がするな……確か……」
「気をつけてね。光の屈折を操るそうよ」
「……ほう」
「時間を止めてしまえば問題ないですけど」


 どんなに強力なレンズも、横から見てしまえば関係ないということか。


「それで、貴方が喜ぶのはこっちね」
「……なんだいこれは」


 再び霖之助は尋ねた。
 霧吹き……だろうか。
 赤い水が入っているようだが。


「パチュリー様の占いで出たんだけど……」
「占い? なんの占いだい?」
「そ、それは……」


 咲夜はなにやら答えにくそうにしているので、それ以上の追求はしないことにした。
 ……何故か残念そうな彼女の表情が気になったが。


「うん? 屈折……霧……」


 頭の中で、いくつかの単語が駆け巡る。
 それはある結果をとり、霖之助の好奇心を刺激した。


「そうだね、ありがたく頂いておくことにするよ」





「はっ」
「おはよう」


 霖之助の膝の上で、彼女……サニーミルクは目を覚ました。
 そのまま逃げるように、近くの障子の裏に隠れる。

 幻想郷縁起に太陽光に当てると回復が早いと書いてあったため、霖之助は縁側で本を読みながら待っていたのだ。


「……あなたが助けてくれたの?」
「いや……ああ、近い……かな?」
「ほんと?」


 サニーは顔を輝かせ、恐る恐る……といった様子で霖之助の元へ近づいていく。
 少なくとも、嘘は言っていない。


「ねぇ、なに読んでるの?」
「ああ、これは外の世界の本でね、漫画と言うんだ」
「ふーん……ねぇ、次のページめくってよ!」


 好奇心を刺激されたのか、サニーは再び霖之助の膝に乗り、本を覗き込んだ。
 人間の子供くらいの体躯しかない彼女は、すっぽりと霖之助の上に収まる。


「ああ、わかってるよ……」


 本を読みながら……霖之助は首を傾げた。

 ――おかしい。


 本来なら驚いて消えたサニーの周囲に赤い霧を吹きかけ、どう屈折するか観察する。
 ただそれだけのはずだったのだが……。


「ねー、次、次!」
「はいはい」


 ――まあ、いいか。


 霖之助はひとつ笑うと、サニーの頭を撫でながら一緒に読書にふけることにした。

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