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7月も終わりに近づいたので、ウェブはくしゅのお礼画面1-5を更新しました。
短編は勢いとノリだけで書いてます。
この短編って幽香と文の出番が多いような気がするよ。


というわけで昔上げてた奴のまとめ。










『1.無題』


「あやや……」


 香霖堂に入ろうとした文は、店内から聞こえてきた声にふと悪戯心が芽生えた。
 いつもなら割って入るところだが、たまにはふたりの会話を聞いてみるのもいいかもしれない。
 窓の外に身を寄せ、耳を澄ます。


「……ちゃんと答えてくれよ」
「そうだね……」


 なにやら魔理沙が霖之助に質問しているようだ。
 隠れているせいで姿は見ることが出来なかったが。


「それで、どうなんだ?」
「ああ、好きだよ」


 はっきりと聞こえた。聞こえてしまった。
 文は素早く身を翻し、今の出来事を号外にすべく自分の作業場へと戻る。





 幻想郷最速を誇る彼女なら香霖堂からの距離など大した問題ではない。
 早速新聞のレイアウトを取り出し、記事を作成し始める。

 見出しは『熱愛発覚!?』でいいだろう。
 『今日未明、香霖堂店主に普通の魔法使いが告……』


「あや、あやや?」


 突然文字が歪んでしまった。
 仕方なく、新しく書き直そうとして……。

 歪んでいるのは自分の視界だと言うことに気づく。


「あは、涙が……やだ、止まらない……ひっく……」





「霖之助さん、お茶貰いに来たわよ……あら、魔理沙。なにしてるの?」
「霊夢、ちょうどいいところに。今夏の涼み方について聞いてたんだ。やっぱり香霖もかき氷は好きらしいぜ」
「ああ、昔は氷は貴重だったからね。今は便利になったと思うよ」




『2.無題』


「霖之助、引っ越す気にはなったか?」
「いや、全く」


 慧音のいつも通りの言葉に、いつも通り首を振る。
 最近顔を合わすたびにこの話題ばかりだ。


「人里はいいぞ、霖之助」
「例えばどんなのだい?」


 本から目を話さず、霖之助は尋ねる。
 そんな彼にもめげず、慧音はピンと指を立てて説明を開始した。
 説得とも言う。


「人が多い」
「人混みは苦手だ」


 人間と妖怪のハーフは人が多いところでは目立ってしまう。
 ……とはいえ、半獣の慧音にしてみれば些細な問題なのかもしれない。


「店が多い」
「食事があまり必要無い僕にはそんなに買い物する予定はないね」


 むしろライバル店が増えてしまっては意味がないではないか。
 それに食材を揃えたところで、持って行かれるのが関の山だ。


「泥棒が減るかもしれない」
「本人はあくまで借りているだとかツケだと言っているよ」


 そもそも人里では十分な店舗スペースが確保できない可能性もある。


「子供が多い」
「また寺小屋の手伝いをさせる気かい?」
「……人が多い」
「さっきも聞いたよ。客になってくれる人が多いかは別問題だな」


 本当の客なら店の場所など大した問題ではないはずだ。
 それだけの魅力がないのかもしれない、といった疑問は黙殺しておく。


「うぅ」


 だんだん慧音の声に力がなくなってきた。
 少し、かわいそうかもしれない。

 だからといって霖之助はここを動くわけにはいかないのだが。


「道路が整備されてる」
「無縁塚に遠くなるな」
「人力車もある……」
「そんな金は使えないよ」
「ぐすっ……ごはんが美味しい……」
「ああ、君のご飯は美味しいだろうね」
「美人が多い……」
「間に合ってるよ」
「私の家が……近い……」
「なら慧音がここに住……」
「……え?」


 言いかけて、慌てて口を閉じた。
 見ると、今まで涙目になっていた慧音が驚いた表情を浮かべていた。

 そして次に浮かぶのは……喜びの笑顔。


「いや、違うぞ、今のは口が滑っただけで」
「何も言うな、霖之助。そうかそうか」


 したり顔で頷く慧音に、霖之助はすごく負けた気分になった。






『3.涙目で霖之助の首を絞めるというシチュエーション』


「さあ霖之助さん、今日も一緒に紅魔館に行きましょうか」


 執事のバイトをしてからというもの、霖之助はレミリアのお気に入りになったらしく、
ことあるごとに呼ばれるようになった。
 そして決まって迎えに来るのは完璧なメイド。

 彼女は勘違いしている。
 そもそも何故、霖之助が紅魔館にまで足を運ぶようになったかを。


「咲夜」
「なんですか?」


 お嬢様のために働けるのが嬉しい。
 彼女はそう言った。

 それは表情を見ればわかる。
 ……痛いほどに。


「君が好きだ」


 言った瞬間、時が止まった気がした。
 ……あるいは比喩ではなかったかもしれない

 気が付いたときには、頬に鋭い痛みが走っていた。
 咲夜に叩かれたのだ、と理解したときには胸ぐらを掴まれていた。


「どうして……」


 顔が赤い。
 彼女の目には涙が浮かんでいた。


「お嬢様のお気持ちくらい、いくら鈍感な貴方でもわかっているでしょう」
「鈍感なのは君だよ、咲夜」


 改めて、至近距離から告白。


「君が好きだ」
「くっ……」


 霖之助の言葉に、再び手を振り上げる。
 しかし彼女は……途中で動きを止めた。


「どうして私……なの……」


 苦しむように、声を絞り出す。


「お嬢様の好意を無駄にするような……いっそ殺してしまえるようなら……」
「殺されるのは困るな。だが君になら……」
「そんなこと……出来るわけ無いじゃない……」




   (僕にシリアスは無理、と言うことで口直しにひとつ)




「あら? 貴方の襟、ほつれてるわよ」
「うん? ……よく見えないな」
「ちょっと待って。縫ってあげるわ」
「別に自分でも出来るんだがね」
「人の好意は素直に受け取るものよ」


 咲夜は針と糸を取り出し、霖之助の襟に手を添えた。
 針がこちらを向いているというのに危機感を感じないのは、信頼のなせる業か。


「じゃ、ちょっと動かないでね」
「お任せするよ」


 ちくちく、ちくちく。


「……僕はてっきり」
「なにかしら?」
「時を止めて一瞬で終わらせるものかと思っていた」
「あら、もったいないじゃない。せっかくこんなに近くに……」
「香霖、邪魔するぜ……おや?」
「うわっ」


 突然現れた魔理沙の声。
 と同時に、霖之助は息苦しさを覚える。

「なんで香霖の首を絞めてるんだ? 咲夜」
「え? あ、あの……なんでもありませんわ」






『4.無題』


「いらっしゃい、霖之助さん」
「……まずは説明して貰おうか」


 小川に佇む水着姿の紫を前に、霖之助はこめかみを押さえた。

 先ほどまで香霖堂でゆっくりと本を読んでいたはずだ。
 なのに気が付いたらここにいた。
 こんなことができる人物を、霖之助は数人しか知らない。


「あら、せっかく女の子ばかりの水浴びに誘ってあげたのにご不満?」
「来たいときは僕の意志で来る。
 無闇に干渉されると迷惑だ」


 霖之助は首を振りながら、紫に反論した。
 しかしそんな言葉にも、ただ紫は微笑むのみ。

 ……川上の方から声がする。
 彼女の言う女の子ばかりの水浴び、というものだろうか。

 だいたいそんな中に男の霖之助ひとりでなにをしろというのか。

 改めて紫を見ると、いそいそと準備を始めていた。
 スキマから取り出したのは男物の水着、タオル、花火、バーベキューセット……。
 まさかふたりで遊ぼうと言い出すつもりなのではないだろうか。

 そんな中、視界の端に白いものが映る。


「すみません、ボールが流されちゃって……あれ、霖之助さん?」
「早苗……君も来てたのか」
「はい。ここ、うちの近くですから」


 なるほど、言われてみれば見覚えのある景色だった。
 となるとここは妖怪の山ということか。
 先ほどから声がするのは、大方にとりや文ではないだろうか。


「霖之助さん」
「……なんだい?」


 周囲に意識を向けていた霖之助は、早苗の声で引き戻された。
 彼女はフリルの付いた白のワンピースの水着で、幻想郷の少女とはまた違う健康的な身体を彩っている。


「これ、外の世界で一世を風靡した、水に濡れても透けない白水着なんですよ?」
「ほう……それは実に興味があるね。ちょっと試していいかい?」


 外の水着と聞いてあっという間に機嫌を直した霖之助は、手で水をすくうと早苗めがけて2度、3度と放つ。


「きゃっ、冷たいですっ」
「ちょちょちょちょっと霖之助さん、そういうことは私としましょうよ!」


 紫が気づき、慌てて抗議の声を上げる。
 しかし霖之助はそんな声が聞こえなかったかのように、うーんと考え込んだ。


「ふむ、よく考えたらそもそも僕は透ける水着というものを知らない。
 これでは比べようがないな」
「もう! そんなこと知りたいなんて霖之助さん……」


 早苗は顔を真っ赤に染めて、霖之助に詰め寄った。
 そのまま顔を寄せ……囁くように呟く。


「見たいなら、あとでこっそり見せてあげますから……ふたりだけのときに」






『5.ライダーと遊戯王』


「りんのすけぇ~お酒~……お?」
「……萃香か」


 香霖堂に足を踏み入れた萃香は、珍しく素早い霖之助の行動に興味を示した。
 あの動き……やや泳がせている視線。間違いない。


「いま、何か隠したかぁ~?」
「気のせいだ」


 ニンマリと笑う萃香に、あくまで仏頂面で答える霖之助。


「嘘はよくないぞ。嘘つきは鬼に食べられちゃうからな~」
「隠し事とは己に恥ずべき心がある者のすることだ。
 従って僕は隠し事などしていない」


 そう言いながらも、霖之助はどこか落ち着かない様子だった。


「ふ~ん」


 萃香は適当に相槌を打ちながら、気づかれないように手を動かす。
 そもそも霖之助は隠し事の出来るような性分ではない、と萃香はそう評価する。


「そうかそうか、りんのすけはこんなの集めてたのか~……で、これなに? 人形?」
「なっ……!?」


 霖之助は驚いて後ろに置いておいた箱に視線を送る……が、そこにはチビ萃香が寝ているだけ。
 目的の品はやはり、萃香の手に握られていた。


「……フィギュアだよ。
 たまに流れ着くからね……集めてるんだ。
 大事にしてるんだから壊さないでくれよ」
「信用無いなあ。あ、だから隠したのか」
「隠したんじゃない、守ったんだ」
「ああもう、それでいいよ」


 ああ言えばこう言う霖之助に、萃香は苦笑を漏らす。
 手にしたフィギュアを……一応壊さないように気をつけながら、まじまじと凝視。


「そのフィギュアは外の世界の創作に出てくるヒーローでね。
 鬼に変身して戦うんだ」
「へぇ、外の世界の鬼なのか」
「毎年違うシリーズが展開されているんだが、僕はこれを集めるのが楽しみでね。
 他にも龍や剣や……」


 隠していた割に目を輝かせて語る霖之助を、萃香は赤い顔で見つめる。


「そうかそうか、霖之助は鬼が好きだったのか」
「ああ、浪漫を感じるだろう?
 力なき人々に変わって人知れず悪と戦う、まさにヒーローじゃないか」
「いや、そこまで言われると照れる……」
「トドメに太鼓というのがいいね」
「お? いつ私が太鼓得意だって知ったんだ?」


 どこか話が噛み合っていない。
 しかしお互いそれに気づかず、会話は弾む。弾んでしまう。


「是非過去のヒーローたちの活躍も見てみたいところなんだが、難しくてね」
「あー、それは難しいねえ」
「必殺のキックが得意と聞いたんだが、一口にキックと言っても千差万別あるらしい」
「うん、得意得意。私のは爆発するよ」
「それに最近ではカードで召喚したりもすると……」
「うーん、勇儀の奴ができたようなできなかったような」


 いや、あいつのはデュエルとか言ってたかな? と首を傾げる萃香に、ようやく霖之助も首を傾げた。

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やはり慧霖はいいものだ・・・
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