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普通の住職さん

白蓮さんの可愛さがやばかったのでこんな感じでひとつ。


霖之助 白蓮








「本当に申し訳ない」


 霖之助は潔く頭を下げた。
 視線の先には扉。相手の姿は見えないが、声は聞こえているはずだ。

 ……やや時間をおいて、返答が返ってくる。


「いいんです。不可抗力でしたから」
「しかし……」


 返ってきた声に安堵しながらも、かすかに聞こえてきた衣擦れの音に霖之助は少し扉から距離を離す。
 店内に点在する滴の跡を眺めながら、ため息ひとつ。


「……とにかく風邪を引かないように気をつけてくれ、白蓮」
「わかりました。ふふ、霖之助さんは心配性ですね」
「それほどでもないが……」


 魔法使いといえ、白蓮は元人間だ。
 濡れたままでは身体に悪いに違いない。

 ストーブのつまみをいじると、揺れる炎が少し大きくなる。
 少し熱いくらいがちょうどいいだろう。


「お待たせしました」
「ああ、いい着替えは見つかったか……い……?」


 背後から聞こえてきた彼女の声に振り向き、動きを止める。
 痛む頭を押さえながら、霖之助は声を上げた。


「……白蓮、どうしてその服を選んだんだい?」
「あら、似合ってませんか?」
「そんなことはないがね」


 白のブラウスと黒のスカート。ほぼその2色で構成された出で立ちに帽子を被り、彼女はそこに立っていた。
 色合い自体はいつもの白蓮と同じものだ。
 しかしその実体には決定的に違うものがある。

 他にもいくつか選択肢はあったはずなのだが……。

 どうして彼女は魔理沙の服を着ているのだろうか。


「お寺の住職が目的もなく巫女服を着るのもどうかと思いまして」
「そうかい? 真面目だね」
「ええ。それに派手な色は似合わないような気がしますし」
「そんなことはないと思うが」
「ありがとうございます、霖之助さん。お世辞でも嬉しいですよ」


 じゃあ頼まれたら着てみることにしますね、と彼女は笑う。
 そんな機会があるのかはわからないが。


「……それに殿方の服を着るのは、心の準備が……」
「ん?」
「いいえ、なんでもありませんよ」


 そう言って彼女は微笑み、ここに来る時まで着ていた服をストーブの近くに吊り下げた。
 服から滴る雫は雪が溶けたものだろう。


「魔理沙や霊夢の服以外にも、外の世界の服とかあっただろう?」
「はい。ありましたけど……」
「おや、気に入らなかったのかい?」
「いえ、そうではなく。どうもこう、若い子の着るような服は恥ずかしくて」
「……そうか」


 確かに店にある外の世界の服は、いわゆる若者向けのものが多い。
 しかしそうすると、彼女が今着ている魔理沙の服はどういう扱いになるのだろうか。


「あ、もちろんこれには理由があるのですよ」


 その考えを読んだのか、白蓮が笑顔を見せる。


「魔法使いなら、元の服と近いですし。私の着ていた服と色も同じですし」
「なるほどね。職業も色も同じだから着やすいということかな。
 ああ、もう少しストーブの近くに寄るといい」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「そうは言っても、僕の責任だからね」


 きっかけは小さな出来事だった。

 久しぶりに大雪が降り、香霖堂に屋根に積もった雪を下ろそうと考えて早3日。
 柱がたまに変な軋み音を上げるので、ようやく霖之助が行動を始めたのがつい先ほどのこと。

 雪かきをするため玄関を開けたところ、ちょうど目の前に白蓮が立っていたのだ。
 普段の彼女なら余裕で避けていたのだろうが、屋根の雪を見上げたところにぶつかってしまったらしい。

 しかも運悪く白蓮が倒れた場所に屋根の雪が落ちてきて埋まってしまった、と言うわけだ。
 彼女が屋根を見上げていた理由も霖之助が雪下ろしをサボっていたからで。

 ……誰の責任かと言えば、これはもはや明らかだろう。


「もう少し注意して扉を開ければ良かったよ」
「いえ、私があそこで立ち止まっていたのが悪いのですし」


 思い出しながら、湯飲みにお茶を注ぐ。
 これがもし霊夢だったら、対価として店の茶葉を全部持って行かれたかもしれない。


「少し熱めだから、気をつけてくれ」
「ありがとうございます。けど私、そんなにヤワじゃないですよ?」
「そうかもしれないが、君に風邪を引かせでもしたら、寺の皆に申し訳が立たなくてね。
 どんな風に怒られるか見当も付かないよ」
「そんなことはないと思いますけど」
「さて、だといいんだが」


 そう言って霖之助は寺の面々を思い浮かべた。
 皆彼女を慕って集まった者ばかりだ。
 どんな制裁が下るか想像するだに恐ろしい。

 何より霖之助自身、彼女をそんな目に合わせたくないわけで。


「でも雪かきくらいなら、言っていただければ寺のみんなで手伝いますよ」
「そうかい?」
「はい。お世話になってますし」


 白蓮はひとつ指を立てると、自らの頬に当てた。
 それから苦笑混じりに、言葉を付け加える。


「それに最近運動不足みたいなんですよ。
 思い切り身体を動かせる場所があるといいんですが、人里の近くではなかなかありませんので。
 星なんて仕事以外、ずっとコタツに入ってるんですよ?」
「……まあ、寒いからね」


 確かに雪下ろしや雪かきはいい運動になるだろう。
 寒いのが苦手な妖怪がやってくれるかどうかはわからないが。

 といっても、寒いのが苦手なのは霖之助も同じなわけだし。


「手伝ってくれるなら助かるよ。雪かきも結構な重労働だからね。機会があったら頼むとしよう」
「はい、お任せください」


 笑顔の白蓮に、霖之助はひとつ頷く。

 機会があったらというのは決して社交辞令ではなく、見合う報酬が見つかったらという意味だ。
 どのみち今日はもう雪下ろしはできないだろう。

 いつぞやのように半霊の少女でも尋ねてくればまた話は違うのだが。


「なんにしても、君が着られる服があって良かったよ。
 普段僕が作るのは霊夢の服くらいなんだが、珍しく魔理沙に服を頼まれたところでね」
「そうなんですか?」
「ああ。春の宴会に向けて服を新調したいとかで」
「まあ、宴会に?」


 春は彼女たちにとって一種の晴れ舞台である。
 連日連夜宴会が行われ、自然と人と会う機会が多いわけで。


「メインの宴会は花見かな。桃の節句や梅の花、春分で集まってたこともあったね。
 理由は何でもいいのさ、騒ぐことができれば」
「賑やかになりそうですね」
「まったくだよ。僕は静かに飲むのが好きなんだが」


 一時期は連続宴会記録なんてのも立てられていたらしい。
 まあそれは鬼が関わっていたらしいのだが……詳しいことは聞いていない。

 と、そこで霖之助は改めて白蓮の着ている服に視線を向けた。


「とはいえ実は少々製作が難航していたんだよ。
 頼まれたのはいいが、作り慣れてないからか勝手が違ってどうもね。
 もしよかったら、着心地や構造で気になるところがあったら教えてくれないかい?」
「わかりました。ええと」


 白蓮はぺたぺたと服を触り、確認しながら……やがて納得したのか顔を上げる。


「ちょっと窮屈かもしれませんね」
「丈が合ってない分は仕方がないとは思うが」
「いえ、その、胸が……」
「…………」
「…………」


 気まずい沈黙が流れた。
 胸元の開いているタイプでなくて良かった、と思いつつ。
 霖之助はなんとなく、視線を逸らす。

 視線の先に白蓮の服があったので乾き具合を確かめていると、話題を変えるように白蓮が口を開いた。


「そういえば、たまに魔理沙さんが命蓮寺に遊びに来てくれるのですよ」
「ああ、本人から話は聞いてるよ。迷惑をかけていないかい?」
「いえ、とてもいい子ですよ? 元気が良くて、向上心もあって。たまに魔法を教えたりしてますし」
「そうか」


 満足げに頷く霖之助。
 やはり妹分を褒められて悪い気はしない。


「魔理沙さんから結構あなたの話も聞きますよ」
「僕の? 変なことは言ってないだろうね」
「さて、どうでしょう」


 くすくす、と彼女は笑う。
 白蓮は香霖堂の店内を見渡すと、それからゆっくりと霖之助に視線を戻した。


「この店には昔からほとんど客がいない、とはよく言ってますけど」
「……魔理沙が客としてカウントできるようなら、そんな事もないんだが」
「ふふ。今度伝えておきますよ。それにしても、長い付き合いだそうですね」
「ああ、それなりにね。妹分といったところかな」
「妹ですか」


 そこで近くに置いてある壷に目を向ける。
 いつも魔理沙の椅子代わりになっている壷。
 そこでなにやら納得したかのように白蓮は頷いた。

 ……きっと魔理沙からその壷について話を聞いたのだろう。
 本来は売り物だというのに。


「元気ばかり良くても騒がしくてはね」
「いいことじゃないですか。一緒にいると若返ったような気持ちになりますよ」
「君が言うと不思議な説得力があるな」
「そうですか? あ、そうだ」


 白蓮はひとつ気合を入れるかのように深呼吸すると、くるりと一回転。


普通の住職さん


「普通の魔法使い、だぜ?」
「…………」


 本日2度目の沈黙が落ちた。

 ……少し彼女のことを誤解していたのかもしれない。
 そんなことを、考える。


「……すみません。なんか……」
「いや、こちらこそ……」


 あまりにも唐突すぎた。
 意外と言ってもいい。

 何と言ったらいいのか、かける言葉が見つからないわけで。


「あ、あの。あまり気を使わないでください」
「そんなつもりはないんだが」


 霖之助は白蓮に向き直り、コホンと咳払いをひとつ。


「驚いたんだよ、なんて言ったらいいのか……」


 なんと言うべきなのだろうか。
 考えがまとまらないまま、霖之助は口を開く。


「思ったよりも可愛かったから、かな?」
「はえ?」


 最初は首を傾げる白蓮。
 それからすぐに、頬を真っ赤に染める


「もう、からかわないでください」
「すまない、口が滑った」
「口が滑ったと言うことは……えっと、本心で……」
「すまない、落ち着こう。お互いに。そうしよう」
「いいえ霖之助さん。私、決めました」
「……白蓮?」


 霖之助は大きく深呼吸。
 心を落ち着かせようと試みるも、それより前に白蓮がずずいと距離を詰めてきた。

 鼻と鼻がぶつかりそうなほど、近くに。


「魔理沙さんを見習って、私ももっとガンガン行くことにします」


 それ以上ガンガン行くとどうなってしまうのだろう。
 考えてみるが、想像が付かない。


「……そうか。応援してるよ」
「本当ですか?」


 霖之助の言葉に、ぱぁっと白蓮が顔を輝かせた。
 彼女の甘い吐息が頬を撫でる。


「というわけで、霖之助さん」
「なんだい?」


 不思議な色合いの髪がふわりと揺れたかと思うと、白蓮は霖之助の手を取った。
 霖之助はある種の予感を覚えたが、時すでに遅し。

 同時に脳裏をよぎったのは、諦めというやつだろうか。


「あなたのこと、一生……お借りしますね?」

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No title

本気で死ぬまで借りてかれたらどうしようも無いやないですかー
ところでですね、白蓮さんが胸がキツイと仰ってたわけですがこう、胸のボタン?がぱつーんと……

No title

イラストの白蓮がヤバすぎる/// そりゃ霖之助も口が滑りますよwww
その言葉でナチュラルに口説いているのはいつもの事ですけどね(笑)
しかしこの話読むと、他のキャラの服を着た白蓮も見てみたくなりますね。
・・・貧乳で胸元開いた服着ているキャラって誰かいたっけ?・・・

もしこのタイミングで妖夢が来たりしたら・・・イチャイチャしている霖之助と
白蓮を見ながら雪かきすることになるんですね(笑)

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白蓮さん、だーいたーん!
しかし、なんだか病んでるように聞こえたのは自分だけかwww
後、私事ですがpixivでSSの投稿始めました。もちろん霖之助ものです。よろしくおねがいします

No title

白霖ktkr やっぱり白蓮さんは可愛いな。あと、一瞬イラストを見て「無理すn(ry」と思った俺は南無三されたほうがいいですねわかります

でも霖之助さんにとって良識のある命蓮寺の住人は心のオアシスなのではないかと思ってしまうわけですよ……
魔理沙ぁぁぁぁ!白蓮さんにガンガンいかれたらヤバいぞ!と言うか既にリーチかかってるよ借りていかれちゃうよぉぉぉ!!

ふぅ、香霖堂版の服だったら危ないところでしたね。

No title

よし、聖お姉さん! もっとガンガンいこうぜ!

ゼロドリームで巫女服ひじりんにも萌えましたが、やはり魔法使いならば魔理沙服ひじりんもイイ!
そして脳裏に神子さんと普通に伝説な魔法使いというのが思い浮かんだ。
つまり何が言いたいかと言うと…神子白霖とか書いてくれないかなぁ、と(チラッ、チラッ

そして星ちゃんはハングリータイガーならぬニャングリータイガー…萌えるニャ(ぁ

ちなみに私はDQではみんながんばれで戦ってました。
DQ6は俺の青春。

聖さんが本気キター!そして何故か霖之助さんの手を取ってマリサから逃げる聖さんの様子が見えました

No title

うーんやばいな、このオシオシ白蓮ちゃんには魔理沙も幽香も勝てそうにない。
頑張れ皆!素直にならなきゃNTRるぞ!。

No title

絵で思わず噴いてラストで なにこの聖可愛い^^ ってなったw

つか聖がガンガン行ったら魔理沙に勝ち目が……;
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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