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紫色の紅白と

木っ端天狗さんに許可を貰って絵にSSを付けさせていただきました。
イメチェン霊夢ウフフ!


霖之助 霊夢









落書き霊霖漫画27


「御機嫌よう、霖之助さん」
「いらっしゃい……と、どうしたんだい、その格好?」


 いつも通りの香霖堂。
 いつも通りの聞き慣れた声に顔を上げた霖之助は、目に映る違和感に眉根を寄せた。

 ひらひら揺れるのは紅白ではなく白と紫。
 そして前垂れに大きく描かれた太極図はスキマ妖怪を彷彿とさせ、どこか胡散臭くさえある。


「偶にはイメチェンして」
「ふむ」
「ギャップで攻めてみるのもいいんじゃないかと」
「待て」
「早苗が」
「またあの娘か……」


 楽しそうに笑うのは、いつもと違う衣装に身を包んだ霊夢。

 それにしても早苗はいったい何なのだろう。
 よくわからないことばかり霊夢に吹き込んで、それを楽しんでいる節すらある。

 ……まるでどこかの新聞記者のようだと思わなくもないが、言わないでおいた。


「その服はどこで用意したんだい?」
「紫から借りた」
「紫、そんな格好していたっけ?」
「偶にしてるよ」
「なるほど」


 どこからともなく取り出した扇で口元を隠し、彼女は笑う。
 不吉な感じがするのでその笑顔はぜひやめていただきたいのだが。

 やはり紫っぽいと感じた直感は間違ってなかったらしい。
 あまり見覚えがなかったものの、彼女の服ならそう思うのも無理はないだろう。


「いつもの服よりは少し重いかしら。特に腕のあたりが」


 言いながら、彼女はくるりと一回転。
 いつもの巫女服と比べれば袖回りの布は多めかもしれない。


「この服どうかしら? 霖之助さん」
「ああ、驚いたよ」
「ほんと?」


 ぱあっと顔を輝かせる霊夢。
 しかし。


「てっきり僕の作る巫女服に飽きたのかと」
「飽きてない! 飽きてないから!」
「でもいい加減長いからね。ここらで一度……」
「そんなことないわよ! 一生私の為だけに作って欲しいくらい!」
「そう言って貰えるのは作り手冥利に尽きるんだが」


 慌てる彼女に、霖之助は深々とため息を吐いた。


「ならまずツケを払うのが先ではないかな、いい加減」
「もちろん払う気はあるわよ」


 自信たっぷりに頷く霊夢。
 しかし服のせいかその言葉はどこか胡散臭い。

 いや、この話題の彼女はいつもこうだったか。


「ねえ私のこの格好、霖之助さんはどう思う?」
「どう、と聞かれても。さっきも答えたじゃないか」
「驚いたじゃなくて、もっと別の感想があるでしょ?」


 言いながら、霊夢は霖之助の息が掛かりそうな場所まで身体を寄せてきた。
 そんなに近づかれたら全体的な服の感想を言うどころではなくなるのだが、彼女は気づいていないらしい。


「胡散臭い」
「えー」


 ショックを受けた様子で、霊夢は頭を抱える。
 そんな彼女に苦笑を漏らし、霖之助は肩を竦めた。


「まあ、いつもと違った趣はあるね」
「そう?」


 ギャップがどうとかは置いておくにしろ、大人びた雰囲気を纏っている気がする。
 もちろん衣装だけで人間の中身が変わるわけではないが、服の持つイメージに着る側が引っ張られるということもあるのかもしれない。

 そしてそれはスキマ妖怪の実力、と言うものだろうか。
 つかみ所がなく捉えづらい少女ではあるが、伊達に妖怪の賢者を名乗っては居ないに違いない。


「むぅ」


 そんな事を考えていると、なにやら霊夢がむくれていた。


「どうかしたかい?」
「なんでもない」


 言葉に反して不機嫌そうに顔を背ける。
 それから彼女は思い出したように、自らの胸や腰へと手を添える。


「それにしてもこの紫の服、胸の辺りがブカブカで腰周りが少しキツめなのがそこはかとなくムカつく」
「僕に言われても困るよ」


 不当な文句を聞き流しながら、彼女の服を観察する霖之助。
 霊夢が普段着ている巫女服は、その辺を調整しやすいような構造にしているのだが。

 紫の服はきっと彼女のスタイルにぴったり合わせた仕立てなのだろう。
 ということは紫のスタイルは霊夢との差から推察できる通りというわけで。


「……やっぱりいつもの服の方がいいかしら」
「どうしてそう思うんだい?」


 なにやら肩を落とした霊夢に、霖之助は首を傾げる。


「だって霖之助さんったら、私を通して別の女を見ているみたいだもの」
「そんなことはないよ」
「本当かしら」


 否定してみせるが、彼女の疑惑は晴れないらしい。
 居心地の悪い視線に逆らうように、霊夢に対して澄まし顔を浮かべる。


「変な言いがかりはやめてもらおうか。もしくは、その服には持ち主と同じように人の心を見透かす機能でも付いているのかね」
「あら、そんなの付いてるわけないじゃない」


 当然のように、彼女は首を振った。


「見透かすんじゃなくて、私は霖之助さんの心を理解しようと努めているのよ」
「……そうか」


 そう言われてしまっては、何も言い返すことが出来ない。
 やがて彼女も諦めたのか、ふと嬉しそうな笑みを浮かべた。


「でもイメチェン戦術は成功ってところかしら」
「そうかい?」
「ええ。だって新しい私の魅力を再発見したでしょう?」
「君のその自信がどこから出てくるのかはなはだ疑問だがね」


 まあ確かに、ポジティブなところは霊夢の魅力だろうか。
 暢気でお気楽なだけとも言うが。


「そういえば霊夢、いつかだって天狗の服を着ていたことがあったじゃないか」
「ええ、そうね。あの時の霖之助さんったら私のふとももに釘付けで……」
「……勝手な捏造をしないように。そんな事をした覚えはないよ」
「そうだったかしら。あ、でもあの時の霖之助さんも似合っていたわよ」


 言いながら彼女はなにやら霖之助に熱い視線を送ってくる。
 そこはかとない悪い予感に、ひょっとしたら藪蛇だったのではないかと軽く後悔をする霖之助。


「もう一度見たいわね。霖之助さんのコスプレ……じゃなかった着替え。
 ああ、もしかしてあれが早苗の言うギャップで攻めるってやつかしら。なるほど確かに」
「ひとりで納得しないでくれ。また無理矢理着せるような真似は勘弁願いたいね」
「いやあね。しないわよ、そんなこと」
「信用ならないからそう言ってるんだよ。まあ男物なら着てもいいけど……」
「男物かぁ……何かあったかなぁ」


 腕を組み、頭を捻る。
 あまり心当たりがないのだろう。


「永遠亭にも男物はなさそうだし、命蓮寺にも……う~ん。
 霧雨の道具屋さんなら持ってるだろうけど。お金ないしなあ。そういえば月にいた兵士が確か……でもどうやって手に入れよう」


 ぶつぶつとなにやら唱えるが、答えは出てこないようだ。


「ないなら諦めてくれると気が楽なんだが……」
「あ、そうよ。すっかり忘れてたけどアレならバッチリだわ」


 話を切り上げようと霖之助が声を上げた矢先。
 ポンと霊夢は両の手のひらを合わせた。


「何か思いついたのかい?」
「ええ、霖之助さんにぴったりなやつを」
「また変なものじゃないだろうね」
「そんな事ないわよ、んふふ」


 楽しそうに彼女は笑う。
 そしてビシッと指を伸ばすと、霖之助に突きつけ力強く宣言した。


「霖之助さんに似合うには、神主の服装しかないわ!」
「神主? 神主って、どこのだい?」
「もちろん、博麗神社のだけど」
「博麗神社の、ねぇ」


 博麗神社は結界の管理もだが、そもそも妖怪退治を生業とする巫女の神社である。
 そんなところに人間と妖怪のハーフが神主をするなんて聞いたこともないが……。

 まあ、そもそも妖怪の賢者たる紫が根深く関わっている神社なので、今更かもしれない。


「絶対似合うって。私が保証するわ」
「似合う以前にあそこの神主服ってあったかな」
「無いわよ、そんなもの」
「無いものをどうやって着るんだい」
「え? それはもちろん」


 不思議そうに。
 本当に不思議そうに、霊夢は首を傾げた。

 それだけで彼女の答えが容易に想像できるのだが……あえて霖之助はとぼけることを選択する。


「ちなみに聞くが、どうやって入手するつもりかな」
「私の服って、霖之助さんが作ってくれてるわよね」
「ふむ」
「じゃあもちろん、神主服も」
「自分で着る服を自分で作れと言うのか」


 自分で作る。それ自体はいつものことだ。
 しかしどうして彼女に見せるためだけにこしらえないといけないのか。

 本当に神主になるならともかく。
 ……そういう選択肢の可能性は、ひとまず置いておくとして。


「残念ながら僕は道具屋だから、神主になるつもりはないよ」
「あらそう?」
「……やけに聞き分けがいいね」
「私をなんだと思ってるのよ。それに今のところは、でしょう?」


 霊夢の笑顔に、霖之助はため息を吐いた。
 それからいつものように彼女専用の湯飲みを取り出し、いつもの席……霖之助の対面へちょこんと腰をかける。

 いつもと違う服装の彼女だったが、いつもと同じ行動を見ると安心してしまうから不思議だ。
 そして霊夢は慣れた手つきでお茶を入れ、口に運んでほっと一息。


「じゃあやっぱり私が店員になったほうが早いかな」
「……何を言ってるんだい?」
「何って、将来設計だけど」


 私が入れるといつも茶柱が立つのよねと呟き、もう一口お茶をすする。


「そして今度こそ香霖堂の看板娘と呼ばれる日が来るのよ!」
「……まあ、頑張ってくれ」


 深い追及はやめておいた。
 未来は誰にもわからないのだから。


「ところでツケは」
「もちろん精算するわよ」
「どうやってだい?」
「あら、決まってるじゃない。とりあえず頑張ることにするわ。霖之助さんの言う通り、ね」


 そこまで言って、彼女は言葉を切る。
 しばらく待ってみても続きはない。
 これでこの話は終わりらしかった。


 まさか、とは思うのだが。
 だがそれを確認する気も、あまり起きなかった。


 時が来れば自然にわかることだ。
 彼女が成長した時、答えを出すのだろう。

 ……ツケはそこまで待ってやってもいいかもしれない。
 そんな事を、考えながら。

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No title

この絵も文章も素晴らしいです!

しかしゆかりん服をきた靈夢は…たしかに胡散臭い。
でも霖之助も靈夢のツケを待つぐらいには魅力的に感じたみたいですね。
イメチェン大成功!

No title

きっと霖之助の眼には霊夢が着ている紫の服の用途が
「着ている者を胡散臭くする」みたいに見えているに違いないwww

「そんなことないわよ! 一生私の為だけに作って欲しいくらい!」
なんて完全にプロポーズじゃないですか霊夢さん!
神主ver.の霖之助or店員姿の霊夢どちらの未来も見てみたいなぁ・・・

・・・一部始終を見ていた某天狗の記事によって、香霖堂には
「霖之助に着て欲しい服」の作成依頼が殺到したりしてwww

いやぁ、霊夢のいじらしさというか可愛さというかが本当に素晴らしい。
しかも、プロポーズまでしちゃって・・・結婚しちゃえよ。巫女って結婚してもやめる必要はないっぽいしwww神主が半妖ってのも博麗神社っぽいしwwwあるいは、香霖堂の若女将になるかwwwいろいろ選択肢はありそうだしwww

霊霖ウフフ!

No title

しかし、こうしてみると紫も相当に強いですね
胡散臭い霊夢を通して、霖之助さんの意識を自分に向けさせるとは流石妖怪の賢者は格が違った
そういえば、紫って妖怪版の霊夢らしいですから実は親和性があるのかも?

No title

そりゃあ結婚して帳消しにするさ
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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