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死神と店主のある晴れた一日

おっぱいの大きい少女が今僕の中でブームです。
親友みたいな気安さってとてもいいよね!


霖之助 小町








「どこのお嬢様かと思ったよ」
「……旦那、それ本気で言ってる?」
「嘘ではないよ。本気でもないけど」
「むう」


 小町は霖之助の言葉に、唇を尖らせる。
 香霖堂のカウンターの上には、赤く丸い物が置かれていた。

 小町の髪留めだったものだ。
 過去形なのは、それが壊れてしまっているからに他ならない。
 髪留めを外し、髪を下ろした彼女はいつもと違った印象を受ける。


「しかし、今回はどうやってまた髪留めを壊したりしたんだい?」
「それには深い理由があるんだけど」
「ああ、参考程度に聞こうじゃないか」


 霖之助の言葉に、小町は仕方ないねぇと呟き、咳払いひとつ。


「木の上で昼寝してたら、枝に引っかかって、こう」
「……なんだ、聞いて損した」
「えー、旦那がどうしてもって言うからあたいの恥ずかしい秘密を話したのに」
「そんな事を言った覚えはないよ」


 散々もったいつけておいて、この有様である。
 霖之助は呆れ顔とともに空を見上げた。

 もうすぐ冬だというのに、窓の外からは暖かい日差しが差し込んでいた。
 小春日和というやつだろう。
 この陽気に誘われつい二度寝をしてしまい、霖之助も先ほど起きたところだった。


「安物だったから構わないけど。最近ガタもきてたし。
 というわけで旦那、似たような安物をひとつちょうだい」
「ふむ、もったいないね。もっと髪を手入れしてみるのも似合うと思うんだが」
「はは、勘弁しとくれよ。どこかのお嬢様じゃあるまいし」


 彼女はそう言って肩を竦める。
 容姿に無頓着というわけではないようだが、必要以上に飾りたくはないらしい。


「髪は女の命なんじゃないのかい?」
「さてね。普遍的な言葉が当てはまるほど大人しい女じゃないのさ」
「……確かに、普遍的な社会人は仕事をするものだしね」
「ちゃんとしてるよ? たまたま今はサボってるだけで」
「たまたま、ね」


 たまたまにしては頻度が多すぎる気がするが、今更言っても始まらない。
 それも含めていつもの小町、いつものやりとりである。

 霖之助は苦笑を浮かべると、いつもの席から腰を浮かした。


「確か在庫はいくつかあったから、すぐ用意できるよ。同じ色でいいのかい?」
「ああ、そのほうが落ち着くからね。いつもと違うと、寝ぼけて見落として探し回るかもしれないし」
「……やってしまったのか」
「前に……一度」


 小町はふと遠い目を浮かべる
 その仕草を見ながら、霖之助は昔チョーカーを変えた時のことを思い出した。
 何となく気分で色を変えてみたのだが、着替えの際探す時にいつもの色を念頭に入れてしまい、見落とすと言ったことが何度かあった。
 その点で言えば、彼女の言いたいこともよくわかる。

 霖之助は内心で頷きつつ、商品棚から目当ての物品を取り出した。


「じゃあこのあたりでどうかな」
「ありがと……って、旦那? なんだいこれ」
「見ての通り鏡と櫛だよ」
「別に鏡なんて使わなくても結べるけど……」


 不思議そうに首を傾げる小町に、霖之助は手鏡を渡す。
 いまだ意図が把握できてないらしい彼女を促し、手鏡の方向を軽く指示していく。


「もうちょっと右、その後頭部あたりに……」
「ってちょっと旦那、髪に葉っぱがついてるなら先に言っておくれよ!」
「いや、直接指摘すると迷惑かなと思って」
「生ぬるい気遣いの方がよっぽど困るってば!」


 彼女を思い遣っての事だったのだが、どうやらお気に召さなかったらしい。
 小町は髪についていた木の葉をつまんでゴミ箱に投げ捨てると、がっくりとカウンターに突っ伏した。


「うう、また旦那に恥ずかしいとこ見られるなんて……」
「それこそ今更だろうに」
「……旦那って、まったく女心がわかってないねぇ」
「そんなことはない。商売人たるもの、常に客への心配りは完璧なつもりだよ」


 自信たっぷりに胸を張る霖之助。

 しばし後に、少しだけ視線を逸らす。


「……だが不思議とよく言われるんだがね」
「だろう? まったくもう……」


 小町は疲れた顔で身体を起こすと、懐に手を伸ばし、胸の谷間から財布を引っ張り出した。

 ……便利な収納だと思う。どうやって納めているかは聞けそうにもないが。


「さて、お会計はいくらだい?」
「そうだね、君の注文通り安いものではあるし……。
 ああ、わかってると思うが強度的にはあまり強くないからね、壊れてもノークレームノーリターンで頼むよ」
「もちろん、その時はまた買いに来るさ」


 実際、小町が髪留めを買いに来るのは初めてというわけではない。
 壊れた前の髪留めもこの香霖堂で買っていったものだし、額こそ大きくないものの彼女もれっきとした香霖堂の常連のひとりだ。

 まあ、買い物外で来る頻度の方が遥かに多いのだが。


「うん、やっぱりこの髪型が落ち着くよ」
「いつもの小町って感じだね。見てる方もなんだか安心するかな」
「またそんな、褒めたって何も出ないよ、旦那」


 霖之助としても、もっとちゃんとした作りの髪留めを勧めてみたこともある。
 しかし彼女はあくまで安物の髪留めを選んでいった。
 小町なりのこだわりがあるのかも知れない。
 場合によってはすぐ壊れてしまうので、それこそ一週間後にはまた香霖堂に来ることもあるのだが。


「そうだ。代金なんだが、ひとつ頼まれてくれないかな?」
「ああ、なんだい? 旦那があたいに身体で払えっていうなら……あたい……」
「……誤解を招くような言動は慎んでほしいんだが」


 大きくため息をつくと、霖之助は窓の外に視線を移した。
 雲ひとつ無い青空が見える。
 天高く馬肥ゆる秋。


「ちょっと夕食の調達がてら、釣りにでも行こうかと思ってたんだよ」
「なるほど、こんなにいい天気だもんね。出掛けなきゃ損ってわけだ」
「まあね」


 出掛けようと思っていたところに、小町はやって来た。
 今日は休業してしまおうと思っていたものの、急を要すると言うので応対し、今に至る。
 いやそもそも営業中の札も出してないのだが……それはいいだろう。


「だから昼寝して寝ぼけて髪を枝に引っかけてその拍子に木から落ちても仕方ないことだよね」
「いやそれはどうだろう」


 その光景が脳裏にはっきりと再現され、霖之助は呆れ気味に首を振った。

 とはいえもう少ししたら冬に入るこの時期、今のうちに季節を楽しみたいと思うのはよく理解できた。


「なるほど、旦那はあたいの能力が目当てってわけだね」
「ああ。君に距離を操って貰えば目的地まであっという間だし」
「まあね。旦那を抱えて飛んで行ってもいいんだけど……」
「いや、それは遠慮しておくよ」


 確かに飛んでいけば早いのだろうが、少女に抱きかかえられて移動するのは大変見た目的によろしくない。
 今までの人生経験上、飛ぶ必要性を感じなかった霖之助の主な交通手段はもっぱら徒歩だった。
 たまに魔理沙のほうきに乗せてもらうことはあるのだが。


「了解、了解。じゃあそれがお代ってことでいいんだね?」
「ああ、交渉成立だ」


 神聖な取り決めが交わされたあと、早速出掛ける準備を始める霖之助。
 とはいえ用意するものなんて釣り道具一式くらいのものだ。

 試してみたいと思っていたルアーや練り餌を籠に詰めていくと、ふと横手から声が掛かる。


「あ、あたいの分の釣り竿も持って行ってよ、旦那」
「ん? 君も釣りをするのかい?」
「えー、旦那ったらあたいに乗ってポイするつもりだったの?
 これはひどい。天狗にチクろうかね……」
「いや、ちょっと待った」


 社会的に抹殺されかねない小町の呟きも見過ごせなかったが、霖之助はもっと肝心な疑問を投げかけることにした。

 つまり。


「……てっきり僕は、仕事に戻るものかと」
「ははは、こんなに天気がいいんだよ?」


 答えになっていない回答に、霖之助は肩を竦める。


「あとで閻魔様に怒られても知らないからね」
「大丈夫だって。なんとかなるさ!」
「僕のせいにはしないでくれよ」
「……その手があったか」
「あったか、じゃないよ」


 霖之助としても、閻魔に怒られるのは勘弁願いたいところだ。
 真正面から圧倒的正論で切り捨てられるあの説教は、聞くものの心をたやすくへし折ってくる。


「ねえ旦那、せっかくだしさ、舟を出して釣ろうよ。
 いいポイント教えてもらったことあるし、舟を漕ぐのは得意だしさ。いろんな意味で」
「ん? まあ構わないけど、どうやって用意するんだい? 持って行こうにもすぐ使えそうな舟なんてうちにはないよ」
「ああ、それは大丈夫。紅い館の門番が持ってるから」
「……本当に、君のサボる時の行動範囲は驚くものがあるね」


 だが悪くない提案だった。
 ひとりなら逃げ場のない空間を避けるべきではあるが、小町と一緒なら舟上で妖精にちょっかい出されても大丈夫だろう。

 いつの間にか彼女も一緒に行く流れになっているのは……この際いいとして。


「魚の2、3匹くらいお土産にすれば気前よく貸してくれるって。
 それに釣れなかった時は紅魔館に頼めば夕食くらい出してくれるよ、多分」
「そっちの心配はしてないんだが……」


 別に霖之助は必ずしも食事を摂らなくてはならないわけではないのだし。
 いや、だからこそ食事と、その食事に至るまでのプロセスも有意義であるべきだと思っていた。

 その点から考えれば、釣りを楽しむと言うこともまた重要な要因だろう。
 道連れが居れば……それが彼女なら、なおさらである。


「ところでひょっとして君、夕飯まで食べていくつもりじゃないだろうね」
「はは、まさか。偶然だよ、考えすぎさ」
「そうか。じゃあ夕食はひとりで楽しむことにしようか」
「えっ、そりゃないよ旦那」


 慌てる小町の表情を見ながら、霖之助は笑みを浮かべた。
 予備の竿を取り出し、香霖堂の玄関をくぐる。


「じゃあ今日一日、お付き合いを頼もうかな」
「旦那との付き合いなら、いつだって歓迎だよ」


 小町の差し出した手を取り、霖之助は空を見上げる。

 彼女とふたり。
 怠惰で有意義な一日になりそうだ、と思いながら。

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非公開コメント

No title

釣りをしているところをえいきさまに見つかって二人で説教を食らうんですね

No title

あえて安物を買うのは、壊れる度に霖之助に会いに行けるから
なんだろうな2828 小町マジ乙女www
しかし便利な収納場所である(笑) 
・・・ない人たちにとっては殺意の対象でしょうがwww
プロフィール

道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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