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お求めは香霖堂

構想段階では早苗ルートのはずだったんだけど。

魔理沙は香霖堂版。
咲夜さんは瀟洒。
早苗さんは乙女。
ゆかりんは少女。


早苗が香霖堂で欲しがったのは、外の世界の女性用品だった。

霖之助 早苗 咲夜








 香霖堂にやってきた早苗は、何故だかずっと無言だった。
 顔を赤らめ、視線を落とし、袴を押さえてもじもじとしている。

 霖之助はどんなに大層な用事なのかと期待しつつ、本を読みながら待ち……。


「あ、あの……ぱんつっておいてありますか?」
「ああ、その棚にまとめて置いてるよ」


 ようやく早苗が発した言葉に、拍子抜けしてしまった。

 たかが下着ひとつ買うのに、そこまで気にするものなのか。
 ……霊夢の服をドロワーズ込みで作っているせいか、やや麻痺している感がある。

 もしくは麻痺しているのは霊夢だけなのだろうか。
 よくわからない。


「あ、ありがとうございます!」
「その下の段には女性向けの消耗品が置いてあるからね。好きに見ていくといい」


 霖之助は興味を失ったかのように、いつも通りの口調で話す。
 それが早苗にとってはありがたかったようだ。
 彼が自分の方を向いてないことをチラチラと確認しながら、商品を選んでいく。


「あ、これもあるんだ……」


 なにやら嬉しそうな声が聞こえた。
 少し気になったが……どうせ会計の時に持ってくるのだ。
 今は手元の書物の方が大事だった。
 女神アテナと冥王との戦いの行方の方が……。


「あ、あの」
「……ああ、終わったのか。どれ……」
「あ、あの! 数だけ言いますから、中身確認しないで……均一の値段で売ってくれませんか?」


 羞恥に染まり、泣きそうな顔で訴える早苗に霖之助は思わず面食らってしまった。

 その販売形式は聞いたことがある。
 確か100均、だったか。


「……まあ、君は常連だし、数を誤魔化すなんてこともしないだろう」


 そのまま勢いに押されるかのように了承。


 ――つくづく、女性の考えというものは理解できない。


 霖之助は深く息を吐くと、ひとつ思いつく。
 会計を済ませ、そそくさと逃げるように出て行こうとする早苗に声をかけた。


「早苗」
「ひゃいっ!?」
「……別にそんなに驚かなくていいだろう。何もしはしない。ひとつ確認なんだが……」


 商品……下着類や、おそらく生理用品の入った紙袋を後ろ手に隠し、早苗はコクコクと頷く。


「やはりその、女性の用品を買うというのは恥ずかしいものなのかな」


 コクコク。
 ……慌てているせいか言葉を発するのも辛いようだ。

 まあ、それは無理もないだろう。
 女性の月ものは穢れにも通じると言われ、昔からいろいろ……と、それはともかく。


「ふ~む」


 外の世界でも女性用品というのはわりと数が出て、しかも新製品のサイクルが早いせいかわりと無縁塚にも流れ着く頻度が高い。
 在庫は結構あるのだ。

 これが捌ければ香霖堂の売り上げがうなぎ登り……とまでは行かないまでも、少なくとも足を運ぶ人間は増えるのではないか。
 つまり他の外の道具を売りつけるチャンスに繋がる。

 そのためにはどうすればいいか。


「早苗、ひとつ相談があるのだが……」
「にゃ、にゃんでしょ?」


 早く帰して欲しい。
 早苗の顔にはそう書いてある……が。

 香霖堂の明日のため、彼女にはもう少し付き合って貰う必要があった。







 と、いうわけで。


「いらっしゃいませ~」


 早苗は香霖堂の店員になった。
 ……週に1回ほどの頻度で、数時間だけはあるが。

 香霖堂にある女性用消耗品の在庫は多い。
 とはいえ霖之助には消耗品とわかるだけで、その使い方もわからなかったし……
例えわかっても、買いに来た女性が霖之助から使用法を説明されるのをよしとするだろうか。

 ……それは、今の結果が物語っている。


「あ、あの……」
「咲夜……?」
「人違いです。ちょっといいですか?」
「はい、こちらへどうぞ」


 香霖堂の一角を仕切りで区分けし、早苗が管理する。
 霖之助が手に入れた下着などはすべてそちらに置くことにした。
 報酬として、早苗は霖之助に断ることなく商品の一部を持って帰っていい、という取り決めだった。

 どうせ置いていても霖之助では売れないのだ、構わないだろう。
 女性客に使い方を聞かれても……困るし。
 早苗が教えてくれるとも思えない。


 参拝客の口コミの成果か、日増し……いや、週ごとに客は増えていた。
 そのすべてが女性客で、ほとんど早苗のところに直行直帰なのはいかがなものか。


「すみませんね、気の効かない店主で」
「貴方が居て助かったわ。外の世界のはモノがいいんだけど……置いてあるのも知ってたんだけど……」
「ですよね。……私もそうでした」
「本当、助かったわ。ええと、とりあえずこれ頂戴。それと……これなんてどうかしら」
「でもそれならこっちと合わせた方が……あ、これも可愛いですよ」
「でもせっかくだから、もうちょっと大人っぽい方が……」
「さすがですね咲夜さん」


 声は丸聞こえなのだが、それについては気にしてないらしい。


 ――やはり、女性の考えというものは理解できない。


「……なんで早苗が手伝ってるんだ?」
「男子供にはわからない問題、だそうだ」


 やって来た魔理沙も、首を捻っていた。
 いつも通り彼女の指定席となった壺に腰掛け、足をぶらぶらさせる。


「なんで私に聞かないんだ?」


 魔理沙は不機嫌そうに言った。
 他の少女を頼ったことが気にくわない。
 顔にそう書いてあった。


「外の道具のことだったからね。使い方がわかる人間が彼女しか居なかった。あとは……まあ」
「……なんだよ」


 言っていいものか、悩む。
 これは男の霖之助にもわかる問題なのだが、当の本人は気づいていないらしい。
 もしくは、認めたくないだろうか。


「そうね……少なくとも、まだブラジャーは必要無いと思うわ。
 いろいろ必要になるのも、数年後かしら」
「んなっ……ちょ……」


 一瞬で顔を赤くする魔理沙。
 一応気にしていたらしい。


「ああ、咲夜か。来てたんだな」
「あら、さっき会ったでしょう?」


 人違い、と惚けたことなど記憶にないようだ。

 早苗は咲夜と並んで霖之助のテーブル近くにやってきた。
 選び終わるまでずいぶん時間がかかった気がする。
 ……そう言うものなのだろうか。


「さて、それで今日は香霖堂にどのようなご用で?」
「そうね、今日は……」


 咲夜は店内を見回し……しかし、動くことはなかった。


「買い物に。もう済みましたけど」
「あっちは香霖堂であって香霖堂じゃないよ」
「では、挨拶に」


 悪びれもなく微笑む。
 そんな彼女を見て、霖之助はため息を吐いた。


「早苗に店を貸したのは失敗だったかもしれないな」
「あら、そんなことないわ。みんな感謝してるのよ?」
「そうですよ、霖之助さん」
「そうなのか? 香霖」
「こっちの客は増えてないけどね」


 霖之助と魔理沙だけが首を傾げる。


「しかし、だな。ここは……」
「それにね」


 言いかけた霖之助の唇を、咲夜の人差し指が押さえた。
 そのまま耳元に顔を近づけ……周りにも聞こえる絶妙なボリュームで囁く。


「どんな下着を買ったかわかったら、あとで見る楽しみがないでしょう?」
「えっ」
「それって……」


 完璧な洒落の効いたメイドは、完璧な微笑みを見せたかと思うとその姿を消した。
 ……相変わらず、便利な能力だ。


 ――しかしせめて。


「……せめて冗談だ、とかのフォローはしていって欲しいね」


 それぞれ別の意味で顔を赤らめる早苗と魔理沙を前に、霖之助はやれやれと肩をすくめた。

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その後、咲夜さんは自室のベッドでジタバタするんですね わかります
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