特効薬と蜘蛛の糸
突然霖之助に抱きしめられたら、少女はどんな反応をするだろうシリーズ(仮)。
いつも通りの協力者はこちら。
ベルマン少佐(しゃがみタメ)。
かへおれさん(2:8)。
ヤモトスレイヤー=サン(ムロマチ)。
イメージ画像をはらちさんに描いていただきました。
感謝感謝!
霖之助 ヤマメ 阿求
「大丈夫だよ、嫌われるのには慣れてるから」
「慣れている、ね」
消え入るような声で呟いたヤマメに、霖之助は肩を竦める。
先ほど降ったにわか雨に打たれたのか、彼女の服はずぶ濡れだった。
いまだ尾を引く重い天気と同じ、暗く沈んだヤマメの顔。
霖之助は人里に用事があって出かけていたのだが、その途中で偶然彼女を見かけたので思わず声をかけてしまった。
見知った顔が力なく歩いていれば、気にならないはずがないだろう。
「とてもそうには見えないな」
「どうして? 私は妖怪だよ? 人間の負の感情は、私の力になるんだよ?」
「そうだね、その通りだ。だけど君は、妖怪としての力を求めているのかな?」
「……いる、と言ったら?」
「嘘だね。そう思ってるなら……そんな顔はしないはずだ」
「なーんだ、お見通しか」
ため息をついて、彼女は力なく肩を落とす。
家族が病気になった人間が、ヤマメの能力を知って彼女に文句を言った。
ただそれだけのことだ。
幻想郷ではよくあること。
……そのはずだった。
「私じゃないのになぁ。ほんとだよ?」
「ああ、わかってる」
病気を操る土蜘蛛であるヤマメにとって、病気がある限り彼女は畏怖の対象である。
だから地下に閉じこもっていても、飢えることはないのだろう。
故に彼女は軽々しく力を使わない。
勝手に怯えてくれるなら尚のことだ。
「嫌われるのに慣れてるのも、ほんとだよ?」
そう言って、彼女は微笑んだ。
力の抜けた、悲しそうな笑み。
……そしてその笑い方には、見覚えがあった。
諦めを受け入れ、笑顔で誤魔化そうとしているような、そんな顔。
「あ……」
記憶が霖之助の胸を刺し、気づいたときには……身体が動いていた。
「いきなりどうしたの? 霖之助?」
「…………」
腕の中のヤマメは、少し震えているようだった。
濡れた服から水分が伝わってくるが、そんなものは気にならない。
「……私に抱きつくと、病気がうつるかもしれないよ?」
「そんなことはないさ」
霖之助はもう少し腕に力をこめた。
そして囁くように、言葉を続ける。
「僕は病気にかかりにくい体質だし……それになにより、君はむやみに能力を使わない。
それほど長い付き合いではないが、そのことは僕もよく知ってるよ」
「そっか。ありがと」
やがて彼女の身体から震えが止まり、身体を預けるかのように霖之助へと体重をかけてくる。
ふたり抱き合うような格好のまま、しばしの無言。
「あったかい、ね……」
ヤマメはゆっくりと息を吐き出し、ぽつりと呟いた、
それから霖之助の胸へと押しつけていた顔を上げ、微かに首を傾げる。
「ねえ、これって同情なのかな?」
「いいや」
彼女の疑問に、霖之助はゆっくりと首を振った。
それから空を見上げる。
雨をもたらした厚い雲も、いつの間にか少しずつ切れ間が見え始めていた。
「昔ある人に教えてもらった、心の特効薬だよ」
「特効薬?」
「そうだ。効き目に関しては、保証出来かねるがね」
そう言いながら、思い出すのは遠い記憶。
もう100年以上前の話だ。
今より人間と妖怪の距離が少し離れていた、そんな時代。
「実は、似たような話を聞いたことがあってね」
あえて自分のこととは語らずに、霖之助は言葉を紡ぐ。
……少し、気恥ずかしさもあったのかもしれない。
「昔の話さ。正体のよくわからない、混血の子供がいてね。
ある時、人の集落に謎の病気が流行した。
どこにでもあるような、そんな話」
「…………」
「当然、人は原因を探った。誰のせいでこうなったのか、をね」
「それで、どうなったの?」
「元から奇異の視線で見られていた子供は、すぐに槍玉に挙げられた。
だが幸いなことに、保護されていたのは大きな屋敷でね。
特別実害があるわけではなかったよ。後ろ指を指されるくらいで」
「……でも、それって」
ヤマメはそこで言葉を切った。
どこに行っても睨まれ、噂される。
今よりもっと閉鎖的な共同体でそんな扱いを受ければ、発狂してしまいかねない。
それでも何とかやって来られたのは……すべて彼女のおかげだろう。
少し身体が弱く……だけど強い意志を持った、姉代わりだった彼女。
「そんな時、その子供の保護者はただ黙って抱きしめてくれたそうだ」
「こんな風に?」
「そう、こんな風にね。だから僕は……放っておけなかった、かな」
かつての自分を重ねていないと言えば嘘になる。
だが同情などではなく、あくまでヤマメの力になりたかった。
……彼女のそんな顔を、見ていたくなかった。
「そっか」
言葉少なげにそう伝えると、ヤマメは困ったように目を閉じる。
どうやら安心してくれたらしい。
彼女が落ち着いたことを確認し、あまり少女に触れたままというのもどうかと思って、霖之助は身体を離そうとすると……。
「……もう少し、このままで」
ヤマメが回した腕に、動きを止められた。
仕方なく、もう少しだけ身を寄せる。
……まあ、嫌がられているわけではないと思うと、悪い気分ではない。
「そのあと、どうなったの?」
「当時の巫女が原因を封じてくれて解決さ。あっけないものだったよ」
「へぇ、誤解が解けたんだ」
「ああ。似たようなことは何度か起こったがね。だから……」
霖之助は彼女の頭を優しく撫で、肩を竦める。
「君もいつか、理解を得られる時が来るよ」
「そう、かな」
そこでヤマメは笑みを浮かべる。
先ほどとは違う、彼女らしい笑み。
地底のアイドルと称される彼女の笑顔は、いつにも増して愛らしく見えた。
「霖之助」
「ん?」
「その混血の子ってさ、その保護者の事好きだったのかな」
「さてね、もう昔の話だ。だが……」
至近距離から探るようなヤマメの視線に、少し居心地の悪いものを感じながら、霖之助は言葉を探す。
「恩人だとは、思っていたと思うよ」
「ふぅん」
腕の中で、ヤマメはなにやら考え込んでいるようだった。
それから再び顔を上げ、遠慮がちに口を開く。
「その人は、今……?」
「もう、いなくなってしまったよ。ずっと前にね」
そう言って、霖之助は感慨深げに息を吐き出した。
人間と妖怪のハーフ。
霖之助は幼い頃、観察という名目で稗田家に保護されていた。
その時世話になったのが先代阿礼乙女……稗田阿弥だ。
御阿礼の子として転生の宿命を背負った彼女は、幻想郷縁起を完成させると程なくして閻魔の元に旅立っていった。
まだ霖之助が子供の頃の話である。
――まあ、その転生体なら今ごろ稗田家でふんぞり返っているだろうが。
「……じゃあ、勝ち目はあるかな」
「なんのことだい?」
「んー、こっちの話」
なにやら納得したらしいヤマメは、満足そうに身体を離す。
それから改めて霖之助の手を握り、激しく上下に振った。
「ありがとう、霖之助。元気出た」
「どういたしまして」
霖之助は大きく頷くと、香霖堂へと歩みを向けた。
そんな彼の後ろ姿に、ヤマメは追いかけるように声を上げる。
「ねえ、せっかくだから少し霖之助の店で休んでいってもいい?」
「構わないよ。タオルも貸してあげるから、服も乾かすといい」
「別に平気なんだけどね、これくらいで風邪引くわけもないし」
「僕が気になるんだよ」
「そっか」
そう言って、今度は霖之助の腕に手を回すヤマメ。
「じゃあもう少しだけ、甘えちゃおうかな」
腕に掛かる彼女の体重に、霖之助は少しだけ困ったような……だけどどこか安心したような笑みで答えるのだった。
「今回お呼び出しした理由は、おわかりですね?」
ヤマメと会った数日後。
霖之助は稗田の屋敷に呼び出されていた。
現稗田家当主……阿求の地獄から響いてくるような声に、霖之助は肩を竦める。
「あいにくだが、さっぱりと。むしろ君がうちに来るのが筋ってものじゃないかい?」
「そうですか。ではこれをご覧ください」
そう言って机の上に置かれた一枚の紙を見て、霖之助は思わず動きを止めた。
――香霖堂店主、熱愛発覚!? 初恋の人に教わった方法で求愛! ……か?
見た我だけで頭が痛くなる見出しが躍っていた。
当然のように最後の疑問符はものすごく小さい。
よくよく見ないと見逃してしまうだろう。
そして極めつけは、でかでかと貼られた写真だ。
どう見ても霖之助と少女が抱き合っているようにしか見えない。
……まあ事実なのだが。
「君は天狗の新聞を鵜呑みにするのかな?」
精一杯の抵抗。
正直に理由を話すのは、なんだかすごく不味い気がした。
「そうですね、天狗の書いた記事に信憑性はないでしょう」
だが阿求は顔色ひとつ変えることなく、睨み返してくる。
「けどこの写真はどう説明するつもりですか?」
「えーと、写真は……」
相手が誰だか特定しにくい、絶妙なアングル。
狙って撮ったのではないかと思ってしまうほどのそれに、むしろ感心してしまう。
無論、そんな暇はないのだが。
「あと当事者インタビューとかもあるみたいですねぇ。
これによると、霖之助さんから抱きついたとか……」
確かにそれも事実だ。
そして事実は事実のみを適切に抜き出すことにより、凶器になるらしかった。
……もっとも、ヤマメがその天狗に対してどういう説明をしたかはわからなかったが。
「安心してください、霖之助さん。全部説明しろなんて野暮なことは言いません。
相手にもプライバシーがあるでしょうから」
「……そうかい」
その言葉を聞いて、胸を撫で下ろした矢先。
「だからひとつひとつ、ゆっくり聞いていくことにしますね。
特にこの、初恋の相手ってところから」
にっこりと笑った阿求の視線に、霖之助は大きくため息を吐き出す。
まるで蜘蛛の糸にかかった羽虫のようだ、と思いながら。
いつも通りの協力者はこちら。
ベルマン少佐(しゃがみタメ)。
かへおれさん(2:8)。
ヤモトスレイヤー=サン(ムロマチ)。
イメージ画像をはらちさんに描いていただきました。
感謝感謝!
霖之助 ヤマメ 阿求
「大丈夫だよ、嫌われるのには慣れてるから」
「慣れている、ね」
消え入るような声で呟いたヤマメに、霖之助は肩を竦める。
先ほど降ったにわか雨に打たれたのか、彼女の服はずぶ濡れだった。
いまだ尾を引く重い天気と同じ、暗く沈んだヤマメの顔。
霖之助は人里に用事があって出かけていたのだが、その途中で偶然彼女を見かけたので思わず声をかけてしまった。
見知った顔が力なく歩いていれば、気にならないはずがないだろう。
「とてもそうには見えないな」
「どうして? 私は妖怪だよ? 人間の負の感情は、私の力になるんだよ?」
「そうだね、その通りだ。だけど君は、妖怪としての力を求めているのかな?」
「……いる、と言ったら?」
「嘘だね。そう思ってるなら……そんな顔はしないはずだ」
「なーんだ、お見通しか」
ため息をついて、彼女は力なく肩を落とす。
家族が病気になった人間が、ヤマメの能力を知って彼女に文句を言った。
ただそれだけのことだ。
幻想郷ではよくあること。
……そのはずだった。
「私じゃないのになぁ。ほんとだよ?」
「ああ、わかってる」
病気を操る土蜘蛛であるヤマメにとって、病気がある限り彼女は畏怖の対象である。
だから地下に閉じこもっていても、飢えることはないのだろう。
故に彼女は軽々しく力を使わない。
勝手に怯えてくれるなら尚のことだ。
「嫌われるのに慣れてるのも、ほんとだよ?」
そう言って、彼女は微笑んだ。
力の抜けた、悲しそうな笑み。
……そしてその笑い方には、見覚えがあった。
諦めを受け入れ、笑顔で誤魔化そうとしているような、そんな顔。
「あ……」
記憶が霖之助の胸を刺し、気づいたときには……身体が動いていた。
「いきなりどうしたの? 霖之助?」
「…………」
腕の中のヤマメは、少し震えているようだった。
濡れた服から水分が伝わってくるが、そんなものは気にならない。
「……私に抱きつくと、病気がうつるかもしれないよ?」
「そんなことはないさ」
霖之助はもう少し腕に力をこめた。
そして囁くように、言葉を続ける。
「僕は病気にかかりにくい体質だし……それになにより、君はむやみに能力を使わない。
それほど長い付き合いではないが、そのことは僕もよく知ってるよ」
「そっか。ありがと」
やがて彼女の身体から震えが止まり、身体を預けるかのように霖之助へと体重をかけてくる。
ふたり抱き合うような格好のまま、しばしの無言。
「あったかい、ね……」
ヤマメはゆっくりと息を吐き出し、ぽつりと呟いた、
それから霖之助の胸へと押しつけていた顔を上げ、微かに首を傾げる。
「ねえ、これって同情なのかな?」
「いいや」
彼女の疑問に、霖之助はゆっくりと首を振った。
それから空を見上げる。
雨をもたらした厚い雲も、いつの間にか少しずつ切れ間が見え始めていた。
「昔ある人に教えてもらった、心の特効薬だよ」
「特効薬?」
「そうだ。効き目に関しては、保証出来かねるがね」
そう言いながら、思い出すのは遠い記憶。
もう100年以上前の話だ。
今より人間と妖怪の距離が少し離れていた、そんな時代。
「実は、似たような話を聞いたことがあってね」
あえて自分のこととは語らずに、霖之助は言葉を紡ぐ。
……少し、気恥ずかしさもあったのかもしれない。
「昔の話さ。正体のよくわからない、混血の子供がいてね。
ある時、人の集落に謎の病気が流行した。
どこにでもあるような、そんな話」
「…………」
「当然、人は原因を探った。誰のせいでこうなったのか、をね」
「それで、どうなったの?」
「元から奇異の視線で見られていた子供は、すぐに槍玉に挙げられた。
だが幸いなことに、保護されていたのは大きな屋敷でね。
特別実害があるわけではなかったよ。後ろ指を指されるくらいで」
「……でも、それって」
ヤマメはそこで言葉を切った。
どこに行っても睨まれ、噂される。
今よりもっと閉鎖的な共同体でそんな扱いを受ければ、発狂してしまいかねない。
それでも何とかやって来られたのは……すべて彼女のおかげだろう。
少し身体が弱く……だけど強い意志を持った、姉代わりだった彼女。
「そんな時、その子供の保護者はただ黙って抱きしめてくれたそうだ」
「こんな風に?」
「そう、こんな風にね。だから僕は……放っておけなかった、かな」
かつての自分を重ねていないと言えば嘘になる。
だが同情などではなく、あくまでヤマメの力になりたかった。
……彼女のそんな顔を、見ていたくなかった。
「そっか」
言葉少なげにそう伝えると、ヤマメは困ったように目を閉じる。
どうやら安心してくれたらしい。
彼女が落ち着いたことを確認し、あまり少女に触れたままというのもどうかと思って、霖之助は身体を離そうとすると……。
「……もう少し、このままで」
ヤマメが回した腕に、動きを止められた。
仕方なく、もう少しだけ身を寄せる。
……まあ、嫌がられているわけではないと思うと、悪い気分ではない。
「そのあと、どうなったの?」
「当時の巫女が原因を封じてくれて解決さ。あっけないものだったよ」
「へぇ、誤解が解けたんだ」
「ああ。似たようなことは何度か起こったがね。だから……」
霖之助は彼女の頭を優しく撫で、肩を竦める。
「君もいつか、理解を得られる時が来るよ」
「そう、かな」
そこでヤマメは笑みを浮かべる。
先ほどとは違う、彼女らしい笑み。
地底のアイドルと称される彼女の笑顔は、いつにも増して愛らしく見えた。
「霖之助」
「ん?」
「その混血の子ってさ、その保護者の事好きだったのかな」
「さてね、もう昔の話だ。だが……」
至近距離から探るようなヤマメの視線に、少し居心地の悪いものを感じながら、霖之助は言葉を探す。
「恩人だとは、思っていたと思うよ」
「ふぅん」
腕の中で、ヤマメはなにやら考え込んでいるようだった。
それから再び顔を上げ、遠慮がちに口を開く。
「その人は、今……?」
「もう、いなくなってしまったよ。ずっと前にね」
そう言って、霖之助は感慨深げに息を吐き出した。
人間と妖怪のハーフ。
霖之助は幼い頃、観察という名目で稗田家に保護されていた。
その時世話になったのが先代阿礼乙女……稗田阿弥だ。
御阿礼の子として転生の宿命を背負った彼女は、幻想郷縁起を完成させると程なくして閻魔の元に旅立っていった。
まだ霖之助が子供の頃の話である。
――まあ、その転生体なら今ごろ稗田家でふんぞり返っているだろうが。
「……じゃあ、勝ち目はあるかな」
「なんのことだい?」
「んー、こっちの話」
なにやら納得したらしいヤマメは、満足そうに身体を離す。
それから改めて霖之助の手を握り、激しく上下に振った。
「ありがとう、霖之助。元気出た」
「どういたしまして」
霖之助は大きく頷くと、香霖堂へと歩みを向けた。
そんな彼の後ろ姿に、ヤマメは追いかけるように声を上げる。
「ねえ、せっかくだから少し霖之助の店で休んでいってもいい?」
「構わないよ。タオルも貸してあげるから、服も乾かすといい」
「別に平気なんだけどね、これくらいで風邪引くわけもないし」
「僕が気になるんだよ」
「そっか」
そう言って、今度は霖之助の腕に手を回すヤマメ。
「じゃあもう少しだけ、甘えちゃおうかな」
腕に掛かる彼女の体重に、霖之助は少しだけ困ったような……だけどどこか安心したような笑みで答えるのだった。
「今回お呼び出しした理由は、おわかりですね?」
ヤマメと会った数日後。
霖之助は稗田の屋敷に呼び出されていた。
現稗田家当主……阿求の地獄から響いてくるような声に、霖之助は肩を竦める。
「あいにくだが、さっぱりと。むしろ君がうちに来るのが筋ってものじゃないかい?」
「そうですか。ではこれをご覧ください」
そう言って机の上に置かれた一枚の紙を見て、霖之助は思わず動きを止めた。
――香霖堂店主、熱愛発覚!? 初恋の人に教わった方法で求愛! ……か?
見た我だけで頭が痛くなる見出しが躍っていた。
当然のように最後の疑問符はものすごく小さい。
よくよく見ないと見逃してしまうだろう。
そして極めつけは、でかでかと貼られた写真だ。
どう見ても霖之助と少女が抱き合っているようにしか見えない。
……まあ事実なのだが。
「君は天狗の新聞を鵜呑みにするのかな?」
精一杯の抵抗。
正直に理由を話すのは、なんだかすごく不味い気がした。
「そうですね、天狗の書いた記事に信憑性はないでしょう」
だが阿求は顔色ひとつ変えることなく、睨み返してくる。
「けどこの写真はどう説明するつもりですか?」
「えーと、写真は……」
相手が誰だか特定しにくい、絶妙なアングル。
狙って撮ったのではないかと思ってしまうほどのそれに、むしろ感心してしまう。
無論、そんな暇はないのだが。
「あと当事者インタビューとかもあるみたいですねぇ。
これによると、霖之助さんから抱きついたとか……」
確かにそれも事実だ。
そして事実は事実のみを適切に抜き出すことにより、凶器になるらしかった。
……もっとも、ヤマメがその天狗に対してどういう説明をしたかはわからなかったが。
「安心してください、霖之助さん。全部説明しろなんて野暮なことは言いません。
相手にもプライバシーがあるでしょうから」
「……そうかい」
その言葉を聞いて、胸を撫で下ろした矢先。
「だからひとつひとつ、ゆっくり聞いていくことにしますね。
特にこの、初恋の相手ってところから」
にっこりと笑った阿求の視線に、霖之助は大きくため息を吐き出す。
まるで蜘蛛の糸にかかった羽虫のようだ、と思いながら。
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No title
まさかの阿求www前半どう見ても嫉妬です本当にウワナンダキサマラナニヲスルヤメrアッー!(拉致られました
とりあえずしおらしいヤマメと後半霖之助から阿弥(=自分)への気持を聞き出そうとする乙女阿求かわいいです^^
とりあえずしおらしいヤマメと後半霖之助から阿弥(=自分)への気持を聞き出そうとする乙女阿求かわいいです^^
No title
パルスィさんも一緒に地上に出て来てるんですかわかりません
ヤマメさんも可愛いけど、AQNも可愛い……
ヤマメさんも可愛いけど、AQNも可愛い……
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ヤマメは病気を操る能力ですが、霖之助はとある病気を無意識に操る能力を持っている訳ですね、わかります。
それと最後に一言。
…実に良い…修羅場だ。
それと最後に一言。
…実に良い…修羅場だ。
なんなんだ、この素敵な企画は。
けしからん!もっとやれ!
しかしヤマ霖とは…何かキュんとしました。
新聞のネタにされるオチは大好物です^p^
けしからん!もっとやれ!
しかしヤマ霖とは…何かキュんとしました。
新聞のネタにされるオチは大好物です^p^
No title
兎角アイドルというのはスキャンダルと切っても切れない間柄であるに違いないという偏見を抱いている訳ですが、
何が言いたいかというと香霖堂へと向かった後が大変気になっておりまして、
その辺が具体的に載ってる記事はどこに行けば読めるでしょうか。
何が言いたいかというと香霖堂へと向かった後が大変気になっておりまして、
その辺が具体的に載ってる記事はどこに行けば読めるでしょうか。
No title
なんという修羅場・・・
もし霖之助が子供のときに流行った病がヤマメの能力で、そのまま封印されたことに繋がってたら、なんて考えてしまいます。
まぁただの妄想ですから時間軸とかなんて些細な問題です。
今回も(特に後半)2828させて頂きました。
もし霖之助が子供のときに流行った病がヤマメの能力で、そのまま封印されたことに繋がってたら、なんて考えてしまいます。
まぁただの妄想ですから時間軸とかなんて些細な問題です。
今回も(特に後半)2828させて頂きました。
No title
いつも通りの共犯者たちですねわかります
ヤマメかわいいよヤマメもっと人気でろー
ヤマメかわいいよヤマメもっと人気でろー
No title
なるほど勝手に人間が怖がってくれるからヤマメあんまり力使わないのか、勉強になった。
それにしても阿求かわいいな、そして射命丸ェ
それにしても阿求かわいいな、そして射命丸ェ