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紅四重奏

『柔らかな牙』の続きっぽく。
cafe au laitさんにネタを貰ったフラ霖。
突然霖之助に抱きしめ垂れたら、少女はどんな反応をなんとやら。
俺が書くとガチ幼女っぽくなってしまう不思議。あと先日NARUTOを読んだのでry

挿絵をしゃもじさんに描いていただきました。
感謝感謝!


霖之助 フランドール








「私ね、考えたの。考えたのよ、おじさま」
「壊さないようにする方法をかい?」
「……それはまだだけど」


 霖之助の言葉に、フランドールは少しだけ視線を逸らす。

 照れたようなその表情を見てひとつ笑みを浮かべると、霖之助はぬいぐるみを手に取った。
 所々破けているが、すぐに直るだろう。
 彼女との契約。いつもの作業。

 フランドールの部屋でこうしてぬいぐるみの修復をするのも、すっかり慣れたものだ。
 最近は少しずつ壊す度合いも小さくなっている気がする。
 成長している証というやつだ。

 ……何となく、嬉しくなる。


「おじさま、最近あんまり来てくれないでしょ?」
「結構来てるほうだと思うがね」
「4日に一度じゃない。前は3日に一度だったわ」
「それで十分だろうに」
「やぁよ。私はもっとおじさまと一緒にいたいの」


 フランドールの拗ねた声に、霖之助はため息をついた。
 その仕草を不安に思ったのか、彼女は少し様子を見るような調子で、言葉を続ける。


「私が壊さなくなると、おじさまこのままだんだんと来てくれなくなるんでしょ?」
「その方が君の姉さんは喜ぶと思うよ」
「でもそれじゃ私が悲しいの。ううん、お姉様だって咲夜だって悲しいと思う」
「そうかな?」
「きっとそうよ」
「それなら悪い気はしないがね」


 確かに紅魔館に来る頻度が下がると店の売り上げも減って霖之助も悲しいのだが。
 しかしそんなことを彼女が知っているはずはないので、おそらくフランドールがそう感じたならそれは事実なのだろう。


「君がものを壊さなくても、僕はいろいろ持ってきてるじゃないか」
「でもすぐ帰っちゃうでしょ? お話はお姉様や咲夜とだし」
「値段交渉だからね、仕方ないだろう。それに君、一度見に来た時寝てたじゃないか」
「むぅ。でも壊した時は私の部屋に来てくれるのよね」
「そういう約束だからね。でも故意に壊したりはしないだろう?」
「そういう約束だもの」


 あらゆるものを破壊する――。
 フランドールの能力は、自身にも制御の難しい能力だ。

 いや、厄介なのはその精神の方だろうか。
 制御する気があるのか無いのか。

 気が触れている、と人は言う。

 だがそれでも、彼女が霖之助を破壊することはなかった。
 どうやら気に入ってくれてるらしい。光栄なことだ。


「だから私、考えたの。おじさまともっと一緒にいられる方法を、一生懸命」
「お兄様と一緒にいたくて、考えたのよ」
「これなら霖之助と4倍一緒にいられるわ」
「ずっとずっとね、おにぃちゃん」
「フランドール……?」


 いつの間にか……霖之助は4人のフランドールに囲まれていた。
 寸分違わぬようで、少しずつ違うようで。

 4対の紅い瞳に見つめられ、霖之助は首を傾げる。


「これは……君のスペルかい?」
「ええ、そうよ、おじさま」
「おどろいた? おにぃちゃん」
「いやはや。君には驚かされてばかりだね」
「私だって霖之助に驚かされてるわ。おあいこよ」
「でもお兄様のそういう顔も、私好きよ」


 中身の方は少しずつ違うらしい。
 いつも通りの呼び方なのが、本当のフランドールなのだろう。

 霖之助はぬいぐるみと針、そして糸をテーブルに置き、4人とそれぞれ目を合わせた。


「僕はひとりしかいないわけだが、君たち全員の相手をするのは無理だよ」
「だいじょうぶだよ、おにぃちゃん」
「私達はひとりで4人、4人でひとりだもの」
「そうかい? とりあえず、作業を進めても構わないかな? いつも通り大人しくしていてくれると嬉しいね」
「うん、大人しく見てる」
「隣座るね、お兄様」
「じゃあ私は肩に……」


 本当に一緒にいること、ただそれだけが目的らしい。
 霖之助はフランドールの頭をひとつ撫でると、作業に戻った。

 本物が確定していると言うことは、この分身は主と従の関係なのだろうか。
 そんな風に考えながら、針と糸を動かし……。


「ん?」
「な~に?」
「どうしたの? おにぃちゃん」


 彼女たちを見て、ふとひとつの疑問を抱いた。

 寸分違わぬ姿。
 それは服やアクセサリー、そして所持品にまで及んでいた。

 つまり、彼女がそれぞれに抱いているカバのぬいぐるみまでも。


「ぬいぐるみも増えているのかい?」
「だってこれはお気に入りだもの」
「お兄様がくれたぬいぐるみはどれもお気に入りだけど」
「これはとっても特別なのよ」
「いや、それはありがたいがね」


 彼女がいつも身につけている服が増えるのは、まあいいとしよう。
 しかし比較的最近フランドールが手に入れたぬいぐるみまで増えるということはどういうことか。

 目的も用途も、霖之助の目にはどれも同じに見える。
 いろいろな可能性が頭に浮かび、霖之助は彼女に質問してみることにした。


「ひとつ聞くが、どうやって分身しているんだい?」
「えっと、それはね……」
「ねぇ、お兄様」


 答えようとしたフランドールを、別のフランドールが遮った。
 ……なんだかだんだんと見分けが付くようになってきた気がする。


「ただ教えるだけじゃ面白くないから、私達とゲームをしましょ?」


 少し精神的に年上のフランドールが、くるりと回って笑顔を見せる。
 何か企んでいるような、蠱惑的な笑み。


「ルールは簡単。私達からぬいぐるみを取れればお兄様の勝ち」
「取れなかったら?」
「取れるまで私達と遊んでもらうわ」
「今作業中なんだがね」
「いいじゃない。少しくらい息抜きしても。霖之助だって、このぬいぐるみを調べたいんでしょう?」
「どうしてもというわけではないが、そうさせてくれると嬉しいかな」
「だったら私に付き合ってよ。いいでしょ?」


 口調は柔らかだが、フランドールの瞳が少しだけ妖しく輝いた。


「……いいだろう」


 その光に、霖之助は渋々と頷く。
 安定してきたとは言え、あまり変に刺激を与えるとどう危険が及ぶかわからない。

 危険は避けるのが鉄則だ。
 特に、この紅魔館では。


「で、僕は4つ全部集めないといけないのかい?」
「ううん、それじゃフェアじゃないもの」
「フェアじゃないと楽しく遊べないでしょ?」
「だから、おにぃちゃんにはひとつだけとってもらおうとおもって」
「なるほどね」


 フランドールは4つのうち3つをテーブルの上に置いた。
 手を離しても消えないところを見ると、やはりこれ自体が独立した何かのようだ。


「じゃあ、いくよ?」
「仕方ないな」


 霖之助は椅子から立ち上がると、ぬいぐるみを持ったフランドールを見据えた。

 やるからには手は抜かない。
 どのみち吸血鬼とハーフでは基礎体力が違うのだ。

 向こうが遊んでるつもりでも、速攻で終わらせようと霖之助はフランドールに近づき……。


「お兄様、こっちこっち」
「霖之助ったら、少し遅かったわね」
「おにぃちゃん、がんばれー」


 ぬいぐるみを取ろうとした霖之助の手は、しかし虚しく空を切った。


「あと一歩ね、おじさま」
「次はこっちよ」
「そうかい」


 はしゃぐ彼女たちに、疲れたため息を吐く。

 正直、まったく動きが見えなかった。
 正攻法で行ってはこのゲームを終わらせることは出来ないだろう。

 霖之助は気を取り直し、ぬいぐるみを持ったフランドールに歩み寄る。


「今度はあっちー……ひぁわっ」
「捕まえた」


 すでに彼女の手にぬいぐるみはない。
 だがそれに構わず、霖之助はフランドールを抱き寄せた。

 フランドールがフランドールにぬいぐるみを渡していくなら、その受け取り主自体を捕まえておけばいい。
 そう思ってのことだったのだが。


「あー、ずるーい」
「次私、私」


 何故か皆自分から集まってきた。
 効果覿面である。

 ……こんなつもりは無かったのだが。


「ほら、僕の勝ちだ」
「私の負けね」
「負けちゃった」


 ゲームは霖之助の勝利だ。

 何にせよ、結果よければすべてよし。
 霖之助は椅子に腰を下ろし、近づいてきたフランドールからぬいぐるみを受け取った。


「じゃあ約束通り、貸してあげる」
「ありがとう……だがなんでそこに座るんだい?」
「えー? いいじゃない、減るもんじゃないし」


 椅子に座った霖之助の、その膝の上。
 いそいそとフランドールは乗っかってきた。

 小さなお尻の感触が、布越しに伝わってくる。


「……まあ、邪魔をしないなら構わないけど」
「うん、大人しくしてる!」
「いいなー」
「いいなー」


 言葉通り大人しくしているようだが、むしろ残り3人のフランドールからの視線が気になっていた。
 霖之助は気を取り直すと、彼女から取ったぬいぐるみと、それからテーブルの上に置いてあったものとを見比べる。


「なるほど、こうなってるのか」
「そうなってるのよ」
「たぶんそんな感じ?」
「感覚で作ってるからわかんなーい」
「お兄様が思うとおりでいいわ」


 本物はひとつ。
 あとはフランドールの魔力で形作られていた。

 ほとんど無意識に作っているのだろう。
 作っている、という意識すらないのかもしれない。


「服の延長、みたいなものかな」
「たぶん。放っておくとそのうち消えるのよね」
「中身はがらんどう、しかし見た目と手触りは寸分違わず。
 君の認識を元に移しているのかな」
「それはわからないけど、そんな感じなんじゃない?」


 本物は中に綿が詰まっている。
 複製品はなんだかよくわからない物質だ。

 あわよくば道具の複製を頼もうかと思ったのだが、この調子では無理のようだ。


「ありがとう、参考になったよ」


 霖之助はフランドールの頭を撫でると、作業に戻った。
 しかし彼女は霖之助の手が触れた場所に手を当て、口を開く。


「おじさまの手って不思議ね」
「そうかい?」
「そうよ」


 そう言って、彼女はじっと霖之助の手を見た。
 いや、彼女たち、か。


「撫でられたら安心するし」
「可愛いぬいぐるみは作れるし」
「壊れたものは戻せるし」
「壊すだけの私とは大違い」


 それからフランドールはそれぞれの手へと目を落とす。


「もっと一緒にいたいのに……」


 その呟きは、誰のものだったか。
 霖之助は手を止めると、持ってきた鞄に手を伸ばした。

 取り出したのは、裁縫道具の予備。


「フラン。ぬいぐるみを作ってみる気はないかな?」
「私が? 作るの?」
「ああ」
「どうやって? やり方も知らないのに」
「僕が教えるよ」
「壊すことしかできないのに」
「だからこそ、作れるようになればいい」
「初めてでもできるの?」
「もちろんさ」


 針と糸、それから布を用意する。
 彼女たちはそれを興味深そうに見つめていた。

 観客側の立場にいた今までから、一歩踏み出した場所で。


「初めは上手くいかないだろうが、練習すればきっと上手くなるよ」
「おじさまよりも?」
「頑張ればね。そう簡単には抜かせないけど」
「じゃあ、頑張る。それまでずっと教えてもらう」


 霖之助はフランドールに4セットの裁縫道具を手渡した。
 彼女なら怪我することもないだろうが、それでも注意は払っておかなければならない。


「まずは針と糸の扱いに慣れようか。
 今日はあまり道具を持ってきてないから、簡単な刺繍くらいだけど。
 基本だが、少し習得には時間がかかるかもしれないな」
「大丈夫、大丈夫」
「私達でやれば、4倍で覚えられるわ」
「4人分でお兄様に近づいていくから」
「そうか」


 便利な能力だ、と思う。
 つまり時間を4倍濃縮できるのだろう。

 ……あまりうかうかしていられないな、と霖之助は内心気合を入れ直した。

 あっさり生徒に負けては、格好が付かない。


紅四重奏



「あ、でも」
「練習するのは3人にして、ひとりはおじさまにくっつく係にしたほうがいいかな」
「最初は誰にしようかしら」
「交代交代がいいよね」
「……好きにしてくれ」


 楽しそうなフランドールに、霖之助は苦笑いで返した。
 膝の上に誰かを乗せて作業するのは、慣れてるから問題ないのだが。



 彼女が満足しないとそこからどいてくれなくなりそうで、それが気がかりだった。

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流石霖之助さん賢い
フランが捕まるところで、フランを両手に抱える霖之助さん想像して和んだ

某忍者漫画で分身が経験したことが全て本体の経験値になるって設定がありましたが、フランも同じ様なものなのかな?
勉強しつつしっかり甘えるフランは欲張りさんですね(笑)。

フランが可愛すぎる!
次は子どもの作り方を教えて。と言われて驚く霖之助。
四対一では逃げられず、奥につれていかれ……
ゴチソウサマデシタ

No title

凄くかわいらしい妹様を見た^q^
萌 え 死 に ま す た ^q^<ウボァー

代わる代わる聖域に居座る妹様たちにやれやれ顔な霖之助さん想起余裕でしたw

No title

フラン可愛いよフラン。
魔理沙が見たら即マスパぶっ放すような話ですね。
フランのssは分身ネタが多いですけど、道草さんのはそれぞれに個性があっていいですね。
ところでフランは姿を消すことも出来ますよね?不思議とそのネタを見ないのはなぜでしょうかねぇ。

霖之助の手元を正面から刺繍道具を持ちながら真剣に見つめるフラン3人と膝に乗りながら興味深く見つめるフランが想像できました

ごちそうさまです(^p^)

なにこのフランちゃん可愛過ぎるうふふあはは(ry

三人寄って文殊の知恵を発揮しつつも残りの一人がしっかりと甘えるしたたかさは、間違いなくそこの霖之助くんの教育の賜物ですね。
そのうち先生を手玉に取るかもしれません。素晴らしい。
そうなったらいよいよ七曜の魔女とのお嫁様の座を賭けた最終決戦ですね。
気付いたら瀟洒なメイドやらお姉様やらも参戦して、ガンダムファイトみたいな熱いバトルロイヤルが繰り広げられるのですね、分かります!

No title

まさか続きが見られるとは…!こういうほほえましいのは好きですねー
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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