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紅茶色と七色の

鳩さんと話しててアリ霖を書こうと思ってたらアリ咲霖になってしまった不思議。
アリスと咲夜はは常連可愛い。


霖之助 アリス 咲夜









「もう少し、違う本はないのかしら?」
「おや、気に入らなかったかい? そのわりには全部読んでいたようだが……」


 不満そうなアリスの声に、霖之助は作業の手を止め、首を傾げた。
 そろそろお茶のおかわりを用意しようかと思っていたところなので、ちょうどいい。

 今やっているのは霖之助人形の仕上げ作業だ。
 アリスが作って持ってきたものだが、服の細部がわからないらしい。
 腕前を見せてくれ、と言うので霖之助が手を加えているところだった。

 そんな彼女は今度人里で人形劇をやるらしく、そのシナリオの参考資料として外の世界の漫画本を読んでいたのだが。


「気に入る気に入らないじゃないのよ。話としては面白かったんだけどね」


 肩を竦めながら、彼女は視線を彷徨わせる。
 言葉とは裏腹に、次の巻を探しているのだろう。

 ……素直じゃないな、と霖之助は苦笑を漏らした。


「私が探してるのは、もっと子供向けでわかりやすいものよ。
 ……この本は、借りていっていいかしら」
「ちゃんと返してくれるなら、構わないよ。続きもある分だけ用意しよう」


 彼女が読んでいたのは恋愛を題材にしたものだった。
 確かにあまり子供向けとは言えないかもしれない。


「しかし、子供向けねぇ」


 では何が子供向けなのかと考える。

 単純ならいいというものではない。
 子供というのは大人が思っているより深く考えているものだ。
 ただ大人ほど、それを表現する言葉を持たないだけで。

 子供騙しで騙せるのは大人だけだ、と霧雨の親父さんに教えられた覚えがある。
 その教えは、あまり役に立っていないのだが。


「外の世界だとヒーローものなんてあるけどね」
「ヒーロー? 英雄ってこと」
「まあ、そんなものだ」


 自信たっぷりに頷く霖之助に、しかしアリスは渋い顔。


「……霖之助さん。さすがに私の人形劇じゃ、この店の宣伝にならないと思うけど……」
「ちょっと待て、どうしてそこで宣伝が出てくるんだ」
「え? だって英雄って霖之助さんのことじゃないの?
 稗田の書籍にもそう書かれてたし……」
「あれは忘れてくれないか」


 アリスの言葉に、霖之助は肩を竦める。

 何か恨みでもあるのかと思うくらいの記述に、霖之助も頭を抱えたものだ。
 どうしてああなったのだろう。
 心当たりは……あんまりないのだが。

 本人に聞いても上手くはぐらかされていた。


「じゃあ、霊夢や魔理沙みたいなことをするの?」
「まあ、異変解決……みたいなものだね。たぶん。僕もすべて知ってるわけじゃないが」
「他にもあるのかしら」
「ああ。外の世界にはいろんなヒーローがいるのさ。
 町内の平和を守る者から、未来と過去を守ったりね。
 主にそういったものを乱す敵と戦うんだけど」
「ふーん。いつか幻想郷にも来るのかしら」
「どうだろうね。会えるなら会ってみたいものだが」


 かくいう霖之助もファンのひとりだ。
 仮面がついてたりメタルだったり、科学者だったり社長だったり。
 もちろん輝かしい者ばかりではない。ダークヒーローと呼ばれる者も存在する。
 ヒーローというのは奥が深いのだ。


「そういったヒーローの基本は、人間が変身することらしいよ。もちろんその限りではないがね」
「でも、人形だと変身は難しいわよ。いろいろ仕込めば何とかなるけど、次の劇には間に合わないわ」
「そうか……。じゃあ例えば、霊夢を参考にするとか」
「う~ん」


 いい考えだと思ったのだが、アリスは思案顔。

 同じヒーロー好き仲間の早苗によれば、正体を隠すことも基本のひとつらしいが。
 まあそれはいいだろう。


「それって過去の異変を題材にするってことよね」
「あ、ああ。そうなるかな」
「敵はどうするの?」
「ふむ……敵か……」


 アリスの懸念ももっともだった。
 かつて大きな異変を起こした人妖は、いろいろあって今では人々に混じって暮らしていたりする。
 興味本位で過去を暴いていいかと言われれば、首を傾げざるを得ない。

 いやそれ以前に、異変の内容の詳細まで知っている者すらあまりいないのだ。

 霊夢や魔理沙、もしくはアリス自身が解決に乗り出した異変ならともかく。
 もしくは異変の当事者だろうか。

 だが彼女たちはその詳細をあまり語ろうとしない。
 話したくないということは知られたくないわけで、題材には不向きといえた。

 敵を倒してめでたしめでたし、とはいかないらしい。


「物言わぬ怪物が敵ってのも、なんだかねぇ」


 人形劇は命蓮寺の庭で行われる。
 つまりそれは人間のみならず、妖怪の子供だって見に来る可能性が多い。


「そうだねぇ……じゃあオリジナルの異変なんてどうだい?」
「霖之助さんは知らないでしょうけど。
 小さな異変なんてバカバカしいものよ。朝ご飯が不味かったとか」
「そんなものなのか」
「そんなものよ」


 アリスに言われ、霖之助は思い出した。
 香霖堂の周囲にだけ激しい雨が降っていた原因は、単に梅霖の妖精が屋根裏に住み着いていただけだったことを。
 確かにそんなオチでは肩すかしもいいところだ。

 そんなことを考えていると、ふと脳裏にひとつの考えが閃いた。
 たぶんこれならすべてが上手くいく。


「僕にいいアイディアがある」
「何かしら」
「それなら本人達に許可取ればいいんじゃないかな」
「へ?」


 驚くアリスに、霖之助は頭の中で作戦を練り始めた。









「フハハハハ! よくぞここまで来たな!」


 深紅に染め抜かれた豪奢なマントを優雅に翻すレミリア……の人形。
 それを見守る多くの子供達、とその親。

 人形劇での異変の再現に際して、霖之助は紅魔館に協力を仰いだ。

 理由はいくつかある。
 人妖の間で名が通っていることと、彼女たちが起こした異変が幻想郷全体に及んだこと。
 そのため知名度は申し分なく、なおかつ黒幕は自分だったと公言している、
 使用許可ならず声の出演までしてくれたのは僥倖だったが……。

 それにしても、この吸血鬼ノリノリである。


「紅い霧を止めなさい! みんな迷惑してるのよ!」
「ん~? 聞こえんなぁ。止めて欲しければ力ずくで来い!」


 聞こえてるじゃないか、と言う突っ込みは野暮だろうか。

 芝居がかった様子で、レミリア人形は両手を広げる。
 本人直々の演技指導によるものだ。いわゆるカリスマポーズらしい。

 しかもご丁寧に紅い霧付きなので臨場感も大幅アップである。
 あの時は吸うだけで気分が悪くなったが、今回は色だけだ。


「じゃあ実力で排除するしかないようね」
「できるのならな!」


 レミリアと相対するアリス人形。
 今回はアリスが異変を解決する役のようだ。

 そしてその相棒は、霖之助。
 他ならぬ霖之助が手を加えた人形である。

 もちろんフィクションなので実際には参加していない。
 そのことは観客によく説明しておいた。

 ……そうでなければ、こんな劇など出来るはずもない。


「お嬢様の邪魔はさせません」
「どいてくれないのか」
「ええ」


 霖之助の前には、メイドが構えていた。

 それにしてもみんな予想外に上手い。
 ……正直多くの人前で演技をするのがこんなに恥ずかしいことだと、今に至るまで知らなかった。


「御託はいいから、かかってきな!」


 レミリアの合図で、人形同士の弾幕ごっこが始まる。
 それぞれのスペルカードを参考にした本格的なものだが、操るのはアリスひとりのため実質休憩時間だ。

 隣を見ると、咲夜が視線に気づいたのか微笑み返してきた。
 レミリアは、練習で何度も見たはずのその人形劇を楽しそうに見守っている。


「ふん、意外とやるわね」
「負けられないのよ、私は!」
「あらそう? じゃあやっぱり……」


 そして物語は終盤に入る。
 再び出番が回ってきたレミリアは、自信たっぷりにセリフを読み上げた。


「最強の体術を喰らうほうがお望みってわけね!」


 言葉とともに、レミリアの人形がすさまじい速度で霖之助の人形へと突進して行った。
 これはアリスだけの操作ではない。レミリアの魔力も加算されている。


「霖之助さん!」
「くっ……」


 そしてぶつかろうとした刹那……霖之助人形の姿がかき消える。
 少し離れた場所に移動する霖之助人形と、その隣に佇む咲夜人形。


「咲夜、どうして……?」
「隙あり!」


 霖之助人形を助けた彼女の行動。
 従者に裏切られた主は、呆然と立ち尽くしていた。

 その隙を突いて、アリス人形がとどめの一撃を放つ。
 ぱたりと倒れるなので、味気ないと言えば味気ないのだが。

 さすがにアリスも本人の目の前で人形を壊したりはしたくないらしい。


「どうしてか、聞いていいかな」
「兄を助けるのに、理由がありますか?」


 ゆっくりと咲夜が答える。
 どうでもいいが、どうして霖之助本人を見つめてセリフを喋るのだろうか。


「やっぱり君は、僕の……」
「今の私は吸血鬼の従者。主が消えれば、また私も消える運命です」


 どうやら今回はそういう設定らしい。
 もちろん霖之助と咲夜が兄妹ではないし、こんな異変を解決したことはないのだが、お芝居と言うことで話は付いていた。

 何故かアリスは最後まで不満そうだったが。


「でも忘れないで。ご主人様は必ず復活することを。
 そう、人間がいる限り、何度でも……」


 だんだんと咲夜のセリフが細く、そして動かなくなっていく。
 そんな彼女を抱き上げる霖之助(人形)。

 動きはアリス担当なのだが、シナリオを考えたのは咲夜だった。

 ……協力してくれる手前、渋々アリスが了承したことを覚えている。


「その時はまた、君に会いに来るよ」


 霖之助の言葉で、舞台に幕が下りる。
 観客の拍手に、霖之助は大きく胸を撫で下ろした。









「いやー楽しませて貰いましたよ。アリスさんの人形劇と、皆さんの演技を」
「忘れてくれても構わないよ」
「またまた、照れちゃってもう!」


 取材に来ていたらしい文が、手帳片手に満面の笑みで近寄ってきた。
 白蓮の好意で命蓮寺の一室を借りているのだが、さすがに道具一式を置いている部屋に5人いると狭く感じてしまう。


「実際にあった異変を元に面白可笑しく再構築。なるほど見る人が実際に体験したことなら臨場感も倍ですね。
 本当かどうかは二の次という素晴らしい企画だと思います」
「でしょう! 私が考えたのよ」


 自慢げに小さな胸を張るレミリア。
 そんな彼女に、文は首を傾げた。


「でも貴方がよくあのエンディングを認めましたね。
 私はてっきり吸血鬼無双が行われるのではないかと思ってたんですが」
「滅びの美学ってやつよ。倒しても倒しきれないってところが恐怖と存在感を与えるポイントね」
「……アレ、君が吹き込んだのかい?」
「ええ」


 小声で咲夜に尋ねると、楽しそうな笑顔が返ってきた。
 思い返してみれば、話を持って行った直後はいろんな意味で素晴らしいシナリオが出てきたものだ。

 結局、レミリアのあらすじに咲夜が手を加えることで今の形に落ち着いた。


「……大成功だったからよかったものの」


 納得いかない顔で、アリスが呟く。
 なんだか視線が咲夜と話す霖之助を睨んでいるような気がするのだが。


「霖之助さん、さっきの人形劇なんだけど」
「うん?」
「霖之助さんから見て、いったいどっちがメインヒロインだと思う?」
「メイン……?」


 片や異変解決の相棒。
 片や生き別れの妹。
 話の重点は……どっちだろうか。


「霖之助さん?」
「ちょっと待ってくれ、今考え中だ」


 アリスはにこやかに首を傾げた。
 その瞳は……あんまり笑っていないように見える。


「では私達はそろそろ帰ります。行きましょうか、お嬢様」
「そうね、もうこんな時間じゃない」


 時計を確認し、ふたりは立ち上がった。
 いろいろと文から取材を受けていたらしい。

 ……どんなことを受け答えしたのか非常に気になる。


「またあとで取材に伺わせていただきますね」
「構わないわよ。手土産を忘れなければね」
「では、また」


 去っていくレミリアと咲夜。
 その背を見送っていると、ふと咲夜が振り返った。

 霖之助に目配せすると、口を開く。


「紅魔館まで私に会いに来てくださいね、お兄様」
「……それはもう終わった劇のはずだが」
「ふふっ」
「…………」


 アリスの視線が痛い。
 無言でも何を言いたいのか伝わってくる。


「あやや、これはまた別のスクープの予感ですね!」


 格好のネタを見つけたと言わんばかりの文に、霖之助は頭が痛くなる思いだった。


「次は冥界編と言うことで、期待しておきますね!」

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非公開コメント

No title

修羅場の予感しかしないけど、霖之助さんなら妙なフラグも折ってくれる…はず

冥界編もなかなか面白そうですww

No title

冥界編……そう言うのもあるのか!続編に希望したいです
咲夜さんとアリス、タイプこそ違うけど、どっちも美人さんですな

No title

冥界編で十二宮を駆け上がったり、嘆きの壁を破壊したりした後に天界編の開始ですねわかります

No title

劇中劇面白かったですw

あと冥界編は誰にフラグを立てるのー?(ぉ

No title

捏造した関係が可ということで吹き替え希望者の争いが起こりそうです

それでも霖之助さんならなんとかしてくれる……

ハリ

なんだろう…どの物語をやっても霖之助の家族でした設定キャラが出てくる気がする
妖夢とか永琳とか妹紅とか主に銀髪な方々が

No title

もちろんネタを振ったんだから続きはやるんでるすね必ずww
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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