悪戯心と腕の中
突然霖之助に抱きしめられたら、少女はどんな反応をするだろうシリーズ(仮)。
いつも通りの協力者はこちら。
鳳凰院十四朗さん。
カンフー矢本さん。
accera(一方通行)さん。
ベルーマン大佐。
はらちさんに絵とネタを頂いた天霖。
「ちょっとムカついたから地震起こしてやったらなんで私のこと守ってんのここの店主バカなんじゃないの……地震止められないじゃない」と言うことだったので。
感謝満点!
霖之助 天子
熱い吐息が髪にかかる。
目に映るのは、先ほどまで少し距離を置いてみていた服の色。
青と黒。
天子は最初、自分の身に何が起きたかわからなかった。
「んっ……」
身を離そうとするものの、まるで大事なものを守るかのように頭と背中に回された腕から離れることが出来ない。
足下から緩い振動が伝わってくる。
胸に押し当てた耳から、彼の鼓動も。
「ちょっと……離してよ……」
力なく叩く。
振りほどこうと思えばいつでも可能だ。
だが何故か、それをすることは出来なかった。
事の起こりは数分前。
地上の妖怪から話を聞いていた天子が香霖堂を冷やかしに来たのだが、買う気がないと見るやここの店主は彼女を無視して読書を始めてしまったのだ。
――ちょっとムカついたから地震起こしてやっただけなのに。
初めはほんの悪戯心だった。
――なんで私のこと守ってんのここの店主バカなんじゃないの……。
ちょっと驚かすつもりだっただけなのに。
――地震、止められないじゃない。
どうして自分の方が、驚いているのだろう。
「収まった、かな?」
やがて足下の揺れが収まり、霖之助が声を上げる。
天子はハッと我に返り、再び行動を開始した。
顔が熱いのを、自覚しながら。
「離してってば!」
「ああ、すまないね」
悪びれることなく、彼は笑みを浮かべる。
離れていく体温を、少しだけ名残惜しく思った。
「少し揺れただけみたいだね。ふむ、特に被害もないようだ」
「大げさに騒ぎすぎなのよ、アンタは」
天子は開き直るように胸を張った。
被害が出るような地震は起こしていない。
本当に、驚かせるだけのつもりだったのだから。
「だいたい仮に上から物が落ちてきたとしても、それくらいで天人が怪我するわけないでしょ?」
「そうだね」
頷く霖之助は、やはり笑顔。
「怪我はないかい?」
「見ての通りよ! もう!」
わかってて聞いているのだろうか。
彼に他意がないことは見てわかる。
たぶんきっと、天子だから守ったのではないだろう。
誰であれ、彼はそうしたに違いない。
「……おかげさまでね」
天子の呟きが届いたのかはわからない。
再び彼は読書に戻ってしまった。
もしまた同じことがあっても、同じように彼は天子を守るだろう。
当然のように。
彼は大人で、自分は子供だと思われているから。
それがなんだか、気に入らなかった。
とても、気に入らなかった。
「というわけで、子供扱いされないようにする秘訣を教えて欲しいんだけど」
「いや、どういうわけかさっぱりだよ」
天子に詰め寄られ、萃香は首を傾げた。
それから手に持った杯を呷る。
いつもの瓢箪ではなく、天界の酒。
天界で飲むそれはまさに甘露というやつだ。
……面倒事がやってこなければ。
「そもそもなんでそれを私に聞くかね」
「だって……」
天子は自分と萃香を見、それからまわりの天女を見比べた。
それだけで、萃香は何かを理解したように肩を竦める。
「まあ、言わなくてもわかるけどさ」
「そ、そう?」
「つまり大人っぽく見せたいってことでしょ? う~ん……」
言って、彼女は考える。
腕組みをした際、付けられた枷がじゃらりと音を立てた。
「そうだねぇ、やっぱ内面から滲み出るもの次第じゃないかな」
「だよね! そうよね! 決して見た目第一とかじゃないよね!」
「そうだねー」
予想以上に喜ぶ天子に、萃香は困り顔。
萃香にとっても、そっちを認めるわけには行かないのだが。
「ま、妖怪は内面に外見が左右されることが多いけど」
「うぐ。で、でも私天人だし。その限りじゃないし」
「そりゃそうだ。実際がどうかは置いといてね。あとは……」
一拍置いて、ニヤリと笑った。
「気晴らしに地震とか起こしたらまあ、アウトかな」
「…………」
喜んでいた天子の顔が、一瞬で凍り付く。
それから恐る恐ると言った様子で口を開いた。
「リカバリは効く、よね?」
「さーてどうだか」
萃香がはぐらかすと、天子は半泣きになった。
これだけで何をしてしまったかがだいたい予想できる。
実にわかりやすい。
「でも大人のことならたまに一緒にいるやつに聞けばいいじゃん?」
「衣玖のこと? 衣玖はダメよ。ダメダメよ」
「そうなん?」
「そうよ」
過ぎたことは仕方がないと割り切ったのだろうか。
天子は気を取り直して、首を振る。
「だって衣玖ったら下着は裏返して履けばセーフなんて言うし。
プライベートな空間だからって自室では裸だし。洗濯物は部屋に干しっぱなしだし。
だらしないったらないわ」
「そりゃまたなんとも。二周くらい回って大人って感じだねぇ」
「でしょ? だから衣玖には相談できないのよ。参考になりそうにないわ」
「あらあら、それはあんまりじゃありませんか?」
後ろから響いてきた声に、天子は驚いて飛び上がった。
慌てて振り向き、声を上げる。
「……って、なんでいるのよ、衣玖!」
「いえ、何となく。面白いことを話している空気がしたので」
「いつもの面倒臭がりっぷりを発揮して寝てていいわよ、遠慮なく」
「お断りします」
「言い切ったし!」
「空気を読んだ結果です」
したり顔で当然のように、衣玖は天子の隣に腰掛ける。
しっかり酒とつまみを持ってきているあたりさすがと言うべきか。
「いーじゃないの、三人寄れば文殊の知恵ってやつよ」
「そうですよ。いーじゃないですか」
「面白がってるでしょ、アンタ達」
天子は諦めた様子で、再び腰を下ろした。
それからジト目で衣玖をひと睨み。
「そもそもいつからいたのよ」
「というわけで、あたりですかね」
「最初からじゃない!」
「気づかなかった方が悪い」
カラカラと笑う萃香に、衣玖も大きく頷く。
「ようやく総領娘様が大人の階段を上る決心をされたんですもの。
生温かく見守らせてもらいますよ。特等席で」
「それってなんかすごくヤな感じなんだけど」
「気のせいです」
言い切られるとそんな気がしてくるから不思議だ。
実際がどうかはともかく。
「で、誰なの?」
「へ? 何が?」
「とぼけないでよー。子供に見られたくないなんて思う原因なんて、十中八九男に決まってるじゃん」
「そうですね。オトコですね」
「うぐぐ」
「とっとと吐いた方が楽だよー。嘘は絶対許さないけど」
さすがの天子も、鬼の前で嘘を吐く度胸はない。
やがて観念したかのようにため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
「あのね、下界にいる、香霖堂って店の店主なんだけど」
「…………」
「…………」
照れた様子で言う天子に、しかしふたりは困り顔。
「な、なによ! なんなのよ!」
「いや、だって」
「ねぇ……」
萃香と衣玖の表情に、天子は慌てたように声を上げた。
「もしかして、知ってるの?」
「わりとねー」
「会ったことはあるんですが」
ため息。
その様子がいっそう不安をかき立てる。
「また厄介なヤツに惹かれちゃって」
「べ、別に惹かれてなんか……」
「巫女や白黒も同じこと聞いてきたことあったねぇ」
「ああ、ありましたね。そう言えば」
「そうなの? 俄然やる気が湧いてきたわ!」
そのなだらかな胸を自信たっぷりに張る天子に、ふたりは苦笑を浮かべた。
頑張ってくれ、と言わんばかりに。
「スタートラインは遙か遠いけど」
「そうですね」
「ちょっと、不安になること言わないでよ!」
天子はそこでふと思い出したように首を傾げた。
「ちなみにふたりとも、あの人から子供扱いされたことは」
「私はないですよ、見ての通り」
「私もないねぇ、ニャハハ」
「……え?」
「えってなにさ」
「萃香が子供扱いされないなんて……」
「こう見えてもながーく生きてるからねぇ。鬼だと知ったらむしろ興味深そうだったよ」
「どちらかというと酔っぱらってたから子供に見えなかったんじゃないでしょうか」
「霊夢だって魔理沙だって酔うでしょ-?」
「でも、いつも酔ってる訳じゃありませんし」
「萃香はいつも酔ってるよね」
「それが大人ってことだよ」
そんな大人ならならなくていいや、と言いかけ、我慢する。
今重要なのはそこじゃない。
天子の表情を読んだのか、萃香は楽しそうな笑みを浮かべた。
「仕方ない、とっておきの方法を教えてあげようじゃないか」
「なになに? そんなのあるの?」
「もちろん。これをマスターすれば一気に……メイドくらいの立ち位置には近づけるかな?」
「本当?」
「お互いをよく知っている霊夢や魔理沙には出来ないことさね。
ま、かなりの上級者向けだけど……」
深呼吸ひとつし、香霖堂の扉をくぐる。
天子を出迎えた視線は、前と同じものだった。
「いらっしゃい。おや、また君か」
「ええ、こんにちは」
あくまでにこやかに。
お客としての顔で、天子は霖之助に近づいていく。
「いるのは構わないが、今日は地震は起こさないでくれよ」
「う……悪かったわよ。ちゃんとそのお詫びも持ってきたんだから」
ばれてると言うことは誰かが喋ったのだろう。
天子はため息を吐きつつ、持ってきた包みをカウンターの上に置いた。
「あげるわ。天界の酒よ」
「ほう、これは……かなり上等なものだね」
「そう、感謝しなさい」
嬉しそうな霖之助を見ていると、何故か天子も嬉しくなってくる。
これだけで持ってきたかいがあったかもしれない。
「で、その……」
少し照れた様子で、天子は口を開いた。
霖之助の視線がまっすぐに彼女を見る。
「これを飲みながら、この店の道具のこと、聞かせてもらえるかしら」
思わず早口になってしまう。
逸らした視線をなんとか戻すと、霖之助の笑顔があった。
「ああ、喜んで」
静かに飲みながら、道具のことを聞く。
上級者向けと言っていた意味がわかったのは、説明を聞き始めて4時間後のことだった。
いつも通りの協力者はこちら。
鳳凰院十四朗さん。
カンフー矢本さん。
accera(一方通行)さん。
ベルーマン大佐。
はらちさんに絵とネタを頂いた天霖。
「ちょっとムカついたから地震起こしてやったらなんで私のこと守ってんのここの店主バカなんじゃないの……地震止められないじゃない」と言うことだったので。
感謝満点!
霖之助 天子
熱い吐息が髪にかかる。
目に映るのは、先ほどまで少し距離を置いてみていた服の色。
青と黒。
天子は最初、自分の身に何が起きたかわからなかった。
「んっ……」
身を離そうとするものの、まるで大事なものを守るかのように頭と背中に回された腕から離れることが出来ない。
足下から緩い振動が伝わってくる。
胸に押し当てた耳から、彼の鼓動も。
「ちょっと……離してよ……」
力なく叩く。
振りほどこうと思えばいつでも可能だ。
だが何故か、それをすることは出来なかった。
事の起こりは数分前。
地上の妖怪から話を聞いていた天子が香霖堂を冷やかしに来たのだが、買う気がないと見るやここの店主は彼女を無視して読書を始めてしまったのだ。
――ちょっとムカついたから地震起こしてやっただけなのに。
初めはほんの悪戯心だった。
――なんで私のこと守ってんのここの店主バカなんじゃないの……。
ちょっと驚かすつもりだっただけなのに。
――地震、止められないじゃない。
どうして自分の方が、驚いているのだろう。
「収まった、かな?」
やがて足下の揺れが収まり、霖之助が声を上げる。
天子はハッと我に返り、再び行動を開始した。
顔が熱いのを、自覚しながら。
「離してってば!」
「ああ、すまないね」
悪びれることなく、彼は笑みを浮かべる。
離れていく体温を、少しだけ名残惜しく思った。
「少し揺れただけみたいだね。ふむ、特に被害もないようだ」
「大げさに騒ぎすぎなのよ、アンタは」
天子は開き直るように胸を張った。
被害が出るような地震は起こしていない。
本当に、驚かせるだけのつもりだったのだから。
「だいたい仮に上から物が落ちてきたとしても、それくらいで天人が怪我するわけないでしょ?」
「そうだね」
頷く霖之助は、やはり笑顔。
「怪我はないかい?」
「見ての通りよ! もう!」
わかってて聞いているのだろうか。
彼に他意がないことは見てわかる。
たぶんきっと、天子だから守ったのではないだろう。
誰であれ、彼はそうしたに違いない。
「……おかげさまでね」
天子の呟きが届いたのかはわからない。
再び彼は読書に戻ってしまった。
もしまた同じことがあっても、同じように彼は天子を守るだろう。
当然のように。
彼は大人で、自分は子供だと思われているから。
それがなんだか、気に入らなかった。
とても、気に入らなかった。
「というわけで、子供扱いされないようにする秘訣を教えて欲しいんだけど」
「いや、どういうわけかさっぱりだよ」
天子に詰め寄られ、萃香は首を傾げた。
それから手に持った杯を呷る。
いつもの瓢箪ではなく、天界の酒。
天界で飲むそれはまさに甘露というやつだ。
……面倒事がやってこなければ。
「そもそもなんでそれを私に聞くかね」
「だって……」
天子は自分と萃香を見、それからまわりの天女を見比べた。
それだけで、萃香は何かを理解したように肩を竦める。
「まあ、言わなくてもわかるけどさ」
「そ、そう?」
「つまり大人っぽく見せたいってことでしょ? う~ん……」
言って、彼女は考える。
腕組みをした際、付けられた枷がじゃらりと音を立てた。
「そうだねぇ、やっぱ内面から滲み出るもの次第じゃないかな」
「だよね! そうよね! 決して見た目第一とかじゃないよね!」
「そうだねー」
予想以上に喜ぶ天子に、萃香は困り顔。
萃香にとっても、そっちを認めるわけには行かないのだが。
「ま、妖怪は内面に外見が左右されることが多いけど」
「うぐ。で、でも私天人だし。その限りじゃないし」
「そりゃそうだ。実際がどうかは置いといてね。あとは……」
一拍置いて、ニヤリと笑った。
「気晴らしに地震とか起こしたらまあ、アウトかな」
「…………」
喜んでいた天子の顔が、一瞬で凍り付く。
それから恐る恐ると言った様子で口を開いた。
「リカバリは効く、よね?」
「さーてどうだか」
萃香がはぐらかすと、天子は半泣きになった。
これだけで何をしてしまったかがだいたい予想できる。
実にわかりやすい。
「でも大人のことならたまに一緒にいるやつに聞けばいいじゃん?」
「衣玖のこと? 衣玖はダメよ。ダメダメよ」
「そうなん?」
「そうよ」
過ぎたことは仕方がないと割り切ったのだろうか。
天子は気を取り直して、首を振る。
「だって衣玖ったら下着は裏返して履けばセーフなんて言うし。
プライベートな空間だからって自室では裸だし。洗濯物は部屋に干しっぱなしだし。
だらしないったらないわ」
「そりゃまたなんとも。二周くらい回って大人って感じだねぇ」
「でしょ? だから衣玖には相談できないのよ。参考になりそうにないわ」
「あらあら、それはあんまりじゃありませんか?」
後ろから響いてきた声に、天子は驚いて飛び上がった。
慌てて振り向き、声を上げる。
「……って、なんでいるのよ、衣玖!」
「いえ、何となく。面白いことを話している空気がしたので」
「いつもの面倒臭がりっぷりを発揮して寝てていいわよ、遠慮なく」
「お断りします」
「言い切ったし!」
「空気を読んだ結果です」
したり顔で当然のように、衣玖は天子の隣に腰掛ける。
しっかり酒とつまみを持ってきているあたりさすがと言うべきか。
「いーじゃないの、三人寄れば文殊の知恵ってやつよ」
「そうですよ。いーじゃないですか」
「面白がってるでしょ、アンタ達」
天子は諦めた様子で、再び腰を下ろした。
それからジト目で衣玖をひと睨み。
「そもそもいつからいたのよ」
「というわけで、あたりですかね」
「最初からじゃない!」
「気づかなかった方が悪い」
カラカラと笑う萃香に、衣玖も大きく頷く。
「ようやく総領娘様が大人の階段を上る決心をされたんですもの。
生温かく見守らせてもらいますよ。特等席で」
「それってなんかすごくヤな感じなんだけど」
「気のせいです」
言い切られるとそんな気がしてくるから不思議だ。
実際がどうかはともかく。
「で、誰なの?」
「へ? 何が?」
「とぼけないでよー。子供に見られたくないなんて思う原因なんて、十中八九男に決まってるじゃん」
「そうですね。オトコですね」
「うぐぐ」
「とっとと吐いた方が楽だよー。嘘は絶対許さないけど」
さすがの天子も、鬼の前で嘘を吐く度胸はない。
やがて観念したかのようにため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
「あのね、下界にいる、香霖堂って店の店主なんだけど」
「…………」
「…………」
照れた様子で言う天子に、しかしふたりは困り顔。
「な、なによ! なんなのよ!」
「いや、だって」
「ねぇ……」
萃香と衣玖の表情に、天子は慌てたように声を上げた。
「もしかして、知ってるの?」
「わりとねー」
「会ったことはあるんですが」
ため息。
その様子がいっそう不安をかき立てる。
「また厄介なヤツに惹かれちゃって」
「べ、別に惹かれてなんか……」
「巫女や白黒も同じこと聞いてきたことあったねぇ」
「ああ、ありましたね。そう言えば」
「そうなの? 俄然やる気が湧いてきたわ!」
そのなだらかな胸を自信たっぷりに張る天子に、ふたりは苦笑を浮かべた。
頑張ってくれ、と言わんばかりに。
「スタートラインは遙か遠いけど」
「そうですね」
「ちょっと、不安になること言わないでよ!」
天子はそこでふと思い出したように首を傾げた。
「ちなみにふたりとも、あの人から子供扱いされたことは」
「私はないですよ、見ての通り」
「私もないねぇ、ニャハハ」
「……え?」
「えってなにさ」
「萃香が子供扱いされないなんて……」
「こう見えてもながーく生きてるからねぇ。鬼だと知ったらむしろ興味深そうだったよ」
「どちらかというと酔っぱらってたから子供に見えなかったんじゃないでしょうか」
「霊夢だって魔理沙だって酔うでしょ-?」
「でも、いつも酔ってる訳じゃありませんし」
「萃香はいつも酔ってるよね」
「それが大人ってことだよ」
そんな大人ならならなくていいや、と言いかけ、我慢する。
今重要なのはそこじゃない。
天子の表情を読んだのか、萃香は楽しそうな笑みを浮かべた。
「仕方ない、とっておきの方法を教えてあげようじゃないか」
「なになに? そんなのあるの?」
「もちろん。これをマスターすれば一気に……メイドくらいの立ち位置には近づけるかな?」
「本当?」
「お互いをよく知っている霊夢や魔理沙には出来ないことさね。
ま、かなりの上級者向けだけど……」
深呼吸ひとつし、香霖堂の扉をくぐる。
天子を出迎えた視線は、前と同じものだった。
「いらっしゃい。おや、また君か」
「ええ、こんにちは」
あくまでにこやかに。
お客としての顔で、天子は霖之助に近づいていく。
「いるのは構わないが、今日は地震は起こさないでくれよ」
「う……悪かったわよ。ちゃんとそのお詫びも持ってきたんだから」
ばれてると言うことは誰かが喋ったのだろう。
天子はため息を吐きつつ、持ってきた包みをカウンターの上に置いた。
「あげるわ。天界の酒よ」
「ほう、これは……かなり上等なものだね」
「そう、感謝しなさい」
嬉しそうな霖之助を見ていると、何故か天子も嬉しくなってくる。
これだけで持ってきたかいがあったかもしれない。
「で、その……」
少し照れた様子で、天子は口を開いた。
霖之助の視線がまっすぐに彼女を見る。
「これを飲みながら、この店の道具のこと、聞かせてもらえるかしら」
思わず早口になってしまう。
逸らした視線をなんとか戻すと、霖之助の笑顔があった。
「ああ、喜んで」
静かに飲みながら、道具のことを聞く。
上級者向けと言っていた意味がわかったのは、説明を聞き始めて4時間後のことだった。
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No title
4時間に吹いたww
あとイクさんがプライベートひでぇっすw
霊夢や魔理沙、マジ切れゆかりんとのバトルはまだですか?
あとイクさんがプライベートひでぇっすw
霊夢や魔理沙、マジ切れゆかりんとのバトルはまだですか?
No title
頑張れ天子。敵は手ごわいぞ、いろんな意味でwww
しかし衣玖さんェ・・・・・・
しかし衣玖さんェ・・・・・・
No title
大人の階段を上りたがる天子ちゃんがなんというか、放っておけない感じで可愛いです。
それに上級者向け。うん、なるほどw
萃香さんも無茶振りをなさるw
それに上級者向け。うん、なるほどw
萃香さんも無茶振りをなさるw
No title
天子のかわいさが正に天に昇らんばかりという。霖之助さんの説教を半泣きで我慢して聞いてたりしてたらすっごいニヤニヤしてしまうな。
あえて上級者向けに挑むというのも乙なものではないか。
あえて上級者向けに挑むというのも乙なものではないか。
No title
あのネタで本当よくこんな素敵なSSに・・ありがとうございました、そしてごちそうさまでした!それにしても衣玖さんがいろいろひどいww
確かに上級者向けだがその代わりに得るものも大きいな
好きな人の為に努力するのは良いことですよね!!
後、衣玖さんのプライベートがひでぇや(-_-;)
霖之助さんの前だとどうなるんだ?
好きな人の為に努力するのは良いことですよね!!
後、衣玖さんのプライベートがひでぇや(-_-;)
霖之助さんの前だとどうなるんだ?
No title
衣玖さんが酷すぎてふいたww
面白かったです!
面白かったです!
No title
衣玖さんの私生活とか説教時間とか協力者の名前とかツッコミが止まらないSSでした
天子可愛いよ天子
天子可愛いよ天子
No title
衣玖さんマジ天女(笑)
最初の天子がかわいいですね。
でもいつも酔っ払ってても萃香は大人には見えないというか圧倒的に色々足りないというか・・・
だがそこがいいっ!
なんか話それましたけど面白かったです。
最初の天子がかわいいですね。
でもいつも酔っ払ってても萃香は大人には見えないというか圧倒的に色々足りないというか・・・
だがそこがいいっ!
なんか話それましたけど面白かったです。