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曇りのち晴れカラス

『車輪の太陽』の続きのお空霖。
お空といる日はおっぱい日和。
いわゆる後編。


霖之助 お空









「いい風だね、おにーさん」
「そうだね。絶好の実験日和ってやつかな」


 霖之助の肩に手を置き、風に髪を揺らしながら。
 お空は空を見上げ、暢気な声を上げる。


 ふたりを乗せてゆっくり走る自転車は、やや遠回りをしながら人里へと向かっていた。
 人里への最短ルートを通るより、道が平坦なのだ。


 自転車というのは基本的に舗装された道路を走るように設計されているらしい。
 もちろんマウンテンバイクのようなオフロード用の自転車もあるのだが、
霖之助が改造した電動アシスト自転車は舗装道路用だった。

 当然ながら幻想郷に舗装道路など存在しないわけで、霖之助は自転車を走らせる道を選ぶ必要があった。


 この自転車はひまわりアシストシステムの実験機のため、できる限りの軽量化を施している。
 もっといいサスペンションを組み込んでいれば違ったかもしれないが、重い機材はどうしても自重が増えてしまう。

 今回のようにお空が乗ることを想定していればもっと別の選択肢もあったのだが。
 もしくは、重力中和機能を持つオリハルコンでフレームを形成するという手段もあるが、コストがかかりすぎるわけで……。


 そんなことを考えながらも、霖之助はお空に声をかける。


「次、右カーブだよ、お空」
「おっけー!」


 彼の声に、お空はマントをはためかせた。
 翼で風を拾うと、滑空するような形に広がる。


「ん~、気持ちいいね!」


 なめらかにカーブを曲がりきり、お空は嬉しそうに微笑んだ。
 霖之助からの位置関係上その表情こそ見えなかったが、声でどんな表情をしているかよくわかる。

 確かに彼女の言う通りだ。
 実に気持ちがいい。


「あ、なんか飛んでるよ」
「ふむ、鳥かな? いや、あれは……」


 お空の声につられるように、霖之助は空を見上げた。
 遥か上空に人影が見える。

 だがその人影はみるみるうちに近づいてきた。
 逆光で顔こそ見えなかったが、この速さでそれが誰なのかはわかっていた。


「毎度おなじみ、清く正しい射命丸です。
 変わったことやってますね、おふたりとも」
「あ、カラスのおねーさん」
「見ての通り、新しい道具の実験中さ」


 少女が伴った叩きつけるような風に何とかバランスを保ち、霖之助は文に顔を向ける。
 自転車と併走するように飛ぶ彼女は、霖之助からお空、それから自転車へと視線を動かした。


「実験の滑り出しは上々。今なら質問に答えてやってもいいよ」
「う~ん、お気持ちは嬉しいんですが……」


 上機嫌の霖之助だったが、対して文の反応は鈍い。


「見たところ、地上を移動する道具に何らかの手を加えているようですが、
 それはつまり普通の人間用の道具と言うことですよね。
 私の新聞の題材にするには、少々ターゲットが違います。
 それにこの方角ということは、これから人里に向かうのでしょう?
 道具自体を先にお披露目されては、ますます新聞で取り上げるほどの話題性がなくなりますね」
「ああ、まあ、確かにその通りだ……」


 一気にまくし立てられ、霖之助は苦い表情を浮かべた。
 さすが天狗というか、頭の回転の速い彼女らしく今後の展開を的確に予想しているようだ。

 ……的確すぎるほどに。


「霖之助さんの後ろに乗るのは楽しそうですけどね」
「でしょー?」
「というわけで、完成したら改めて取材させてもらうことにしましょう」
「わかった、その時は頼むよ」
「ええ、期待してます」
「またねー、おねーさん」


 来た時と同じように、急速に文は去っていく。
 彼女がいなくなって、お空はいつも通りの口調で疑問を発した。


「ところで何の話だったの?」
「いや、大したことじゃないよ」


 さっぱり聞いていなかったらしい。

 若干肩を落としつつ、霖之助は首を振る。
 確かに、人間にしか意味のない道具は妖怪新聞の題材にはなりにくいかもしれない。

 気を取り直して霖之助が視線をあげると、ようやく人里が見えてきたところだった。









「なるほど、これがお前が言っていた自転車か」
「ああ。ここまで走ってきてみたが、ほとんど疲れてはいない。
 路面の対策はもうちょっと考えなくてはいけないが……」


 寺子屋の前に自転車を止め、霖之助は慧音と向かい合っていた。

 お空は自転車を興味深そうに見に来た子供たちになにやら解説をしている。
 その中身はだいぶん間違っているようだったが、とにかく人目を集めることには成功したらしい。


「ここまで乗ってきたと言うことは、前言ってた問題点は解決したのか?」
「いや、それがなかなかね。今回は彼女の協力あってのものさ」
「なんだ、まだ未完成なのか」
「耳が痛いよ」


 霖之助はため息をつき……自転車に視線を向けた。


「だが未来予想図として見てくれれば、これがどういう道具であるかはわかってくれると思ってね」
「ものは言い様だな」


 肩を竦める慧音に、霖之助は苦笑いで返す。

 彼女に見せに来たのは偶然ではない。
 もしこの自転車を量産した場合、慧音の寺小屋で管理してもらおうかと考えているからだ。
 稗田の家も考えたのだが、いざという時すぐに香霖堂まで飛んで行ける彼女の方が心強い。


「それで、もうひとつの問題は解決したのか?」
「もうひとつ?」
「あっただろう、重要なやつが」
「ん……?」


 慧音の質問に、霖之助は首を傾げた。
 確か前見せた時は、まだアシスト機能を組み込む前で、ただの自転車と同じだったのだが。


「……ああ、結局慧音は自転車に乗れなかったんだったね」
「あんなもの、ひとりで乗れるか!」


 ポンと手を打つ霖之助に、慧音は思わず叫んだ。

 彼女が香霖堂に着た時、普通の自転車に試乗してもらったのだが、結局乗れなかったのだ。

 もちろん幻想郷には自転車に乗る習慣もないし、無理もない。
 それに慧音の場合、飛べばいいだけなのだし。


「補助輪とか三輪にすると言う手段もあるんだが……」


 オプションのことは何度か検討したことがある。
 だがやはり重量が増えてしまうし、何より速度が出なくなってしまうのだ。

 あの二輪の自転車という形自体、よく考えられていると感心してしまう。


「いっそ子供用の自転車も作って一緒に練習してみるかい?
 君の生徒の方が早く乗れるようになるかもしれないよ」
「霖之助、何か私に言いたいことでもあるようだな?」
「いやいや、滅相もない」
「それならおにーさんに乗ってもらえばいいのよ!」


 眉根を吊り上げる慧音に、突然お空が飛びついてきた。
 自転車の説明にも飽きてしまったのかもしれない。


「おにーさんの後ろに乗ると、とっても気持ちいいよ?」
「ふむ、確かにそれはなかなか……」


 子供の相手に慣れている慧音らしく、まずはじっくりと相手の話を聞き……。
 ハッと気がついたように、首を振る。


「いやいや、霖之助に会いに……じゃない、こいつの店に行く時のことを話しているんだ。
 運転してもらおうにもいないじゃないか」
「けーねはおにーさんに乗りたくないの?」
「そんなはずは……というか別に霖之助に乗るわけじゃなくてだな」
「うにゅ?」
「いやそもそも僕がお空を乗せたのは、太陽の力を貰うためだがね」


 一応突っ込んでおくが、ふたりとも全く聞いている様子がない。


「ところであいつの最近の生活はどうだ? ちゃんと飯食べてたか?」
「う~ん、私が行くとご飯出してくれるけど……」
「なん……だと……? 定期的に行っているのか?」
「何を聞き出しているんだい、慧音」


 慧音とお空を見比べ、霖之助はため息をついた。

 それにしてもこのふたりが話していると、実に圧倒的な存在感である。
 それは背や佇まいというものだけによらず、もっとシンプルに自己主張をしているものがあるからで……。


「何をニヤついているんですか?」


 突然背後からやってきた聞き覚えのある声に、霖之助はこっそりと胸中でため息をついた。


「……阿求か」
「今あからさまに残念そうな顔しましたね。
 いったい何を考えてたんですか、この駄眼鏡」
「真っ当に商売のことをね。見ての通りさ」
「ああ、前言ってましたね。自転車でしたか」


 話題の誤魔化しに成功したと見て、霖之助は阿求とともに自転車へと視線を移した。

 見ると、子供たちが楽しそうに動かそうとしている。
 そうそう壊れるものでもないし、好きにしていいとは言ってあるのだが。


「あ、倒れましたね」
「大丈夫かな、あの子」
「放っておいていいですよ。それくらいで泣くような子供はここにはいませんから」
「……そうだね」
「とはいえ、人の前で格好付けたい大人はどう言うか知りませんけど」
「何か言ったかい?」
「いいえ」


 どうやら子供たちの身長では乗ろうとしても足が届かないらしい。
 大人の、それも比較的長身な霖之助用のサイズに調整してあるのだ。
 当然と言えば当然の結果だった。

 それでも子供たちは諦めず、果敢にチャレンジしている。


「阿求は乗ってみないのかい?」
「冗談でしょう。私があれに乗ればどうなるかなんて、考えなくてもわかりますよ」
「……まあ、そうだろうね」
「馬鹿にしてます? してますよね?」


 ジト目で睨んでくる阿求に、霖之助は視線を逸らした。

 阿求は少女の中でも小柄なほうだ。
 そんな彼女が自転車に乗れば、どうなるかは考えなくてもわかる。


「寺子屋に置く予定なのは香霖堂の客になるべき大人のサイズなんだがね。
 君がどうしてもと言うなら子供用の自転車を作ってやってもいいよ」
「そんな必要はありません。むしろあなたこそ私に来てくださいと頼み込む立場じゃないんですか?」


 睨み合う阿求と霖之助。
 顔を合わせるとどうしても罵り合いが始まってしまう。

 ……決して幻想郷縁起にさんざんなことを書かれたからではないのだが。

 とそんなやりとりをしていると、いつの間にか結構な時間が経っていた。


「お空、そろそろ帰ろうか」
「うん、わかったー」
「なに、もう帰るのか? もっとゆっくりしていけば……」
「そうですよ、まだうちに挨拶にも来てないでしょう」
「そう言われても、まだ寄るところもあるしね」


 ふたりの声を振り切り、子供たちから自転車を受け取る。
 サドルに腰掛け、お空を乗せ、ペダルに足をかけて準備完了。


「じゃあ、完成したらまた来るよ」
「それってしばらく来ないってことですか?」
「そうだぞ、もっとこまめに顔を出せ」
「……耳が痛いよ」
「ばいばーい」


 手を振るお空と霖之助の背中を見送り……慧音はひとつ、うなり声を上げた。


「……むう、羨ましい……」
「どうしたんですか、慧音さん?」
「いや、なんでもないぞ、うん」









 人里を出たふたりは、ゆっくりと流れる景色を進んでいく。
 来た道とは少し違う通りに、お空は首を傾げた。


「そういえばおにーさん、寄るところってどこなの?」
「すぐに着くさ」


 霖之助の言葉通り、それから数分もしないうちに目的の場所が見えてきた。
 人間の里からは若干距離があるが、夏には目が眩むほど黄色く眩しく輝く場所、太陽の畑。

 季節が少し早いためひまわりの花はないが、代わりにひとりの人影を見つけた。


「幽香」
「あら、霖之助じゃない。それにカラスの」
「やっほー、花のおねーさん」


 幽香に向かって手を振るお空に、霖之助は少しだけ驚きの声を上げる。


「お空、幽香と知り合いかい?」
「うん、たまに遊んでくれるの」
「幽香がねぇ……」
「花には太陽が必要なのよ」


 霖之助の視線の意味を理解してか、幽香は楽しそうに笑った。
 彼女たちの遊びがどの程度のものかはわからなかったが……なんにせよ、知り合いならば都合がいい。

 ふたりは自転車から降りると、彼女の元へと歩み寄った。


「ひまわりの世話中かな?」
「そうよ。それと、紫陽花をね」


 見ると、少し離れた場所に紫陽花が並んでいた。
 あと半月もすれば綺麗に咲き誇るだろう。


「わざわざあなたから来るなんて、何かあったのかしら」
「ああ、君に協力してもらった自転車がひとまず形になったから、報告しておこうと思って
「あら、完成したの?」
「いや、まだなんだよ。この子の力を借りてようやくと言ったところかな」
「そうなのー」
「ふぅん」


 本日何度目の説明だろう。
 ……相手に呆れられるたびにボディブローを食らった気分になるのだが、甘んじて受けなければならない。


「なかなか良好だよ。今回のデータを元に、もう少し改良してみるつもりさ。
 その時また、君の力を借りるかもしれないがね」
「あら、私は高いわよ?」
「お手柔らかに頼むよ」
「私も手伝うー!」
「ああ、お空もよろしく」


 元気いっぱいのお空の頭を、霖之助は優しく撫でた。
 気持ちよさそうに目を細める彼女を見て、幽香はふと口を開く。


「そうね……完成したら、私も乗せてもらおうかしら」
「ああ、君用にも一台……」
「あら、違うわよ。別に私は自分で運転するつもりはないわ」
「ん?」


 疑問符を浮かべる霖之助に、幽香は傘の先と一緒に回答を突きつける。


「簡単よ、あなたが運転すればいいの」
「……完成したら、ね」


 この言葉も何度目だろうか。
 霖之助は曖昧な笑みで返すと、彼女の作業の邪魔になる前に、自転車に乗る。


「また来るよ」
「ええ、待ってるわ」
「またねー」


 幽香に見送られ、今度こそふたりは帰途についた。


「けっこう評判よかったね、この自転車」
「君のおかげだよ」
「えへへー」


 照れたように笑うお空は、しかし小声で言葉を続ける。


「でも、おにーさんの後ろに乗るのは……」
「ん? 何か言ったかい?」
「んーん、なんでもー」


 お空が首を振ってるのが振動でわかった。

 それからしばし、無言で自転車を走らせる。
 言葉はないが、悪い雰囲気ではない。

 やがて香霖堂が近づいてきた頃、空を飛ぶ天狗を見てお空が口を開いた。


「そうだ、おにーさん。これってどれくらいスピード出るの?」
「さて、どれくらいだろう」
「わからないの?」
「測ったことがないからね」


 お空に言われ、霖之助は思考を巡らせた。
 どんな人間が乗るかわからない以上、可能性は常に検討すべきである。


「そうだね、試してみようか」
「おー!」
「安全のため、しっかり捕まっててくれよ」
「はーい」


 幸いなことにあとは香霖堂までほぼ一直線だ。
 限界速度を知るのにこれ以上の条件はない。

 何より、霖之助自身この道具の上限を知りたいということもあった。


「わわっ、結構揺れるね」
「そうみたいだね……」


 お空がくっついているため立ち漕ぎで加速というわけにもいかないが、順調に自転車は加速していく。
 スピードが乗った分、路面の凹凸がダイレクトに尻に伝わってくるのは要改善点だろう。


「わー、妖精よりはやーい」


 あっという間に流れていく景色に、お空はご機嫌だった。
 やはりこれはこれで楽しいもののようだ。


「結構スピード出るんだね、お兄さん」
「ふむ、それにどうやらある程度の加速までしかアシストの効果はないようだよ」


 アシストはあくまでペダルの抵抗を軽減するものである。
 つまり足の上げ下げの速度はやはり体力勝負と言うことだ。

 ……一言で言うと、疲れた。


「貴重なデータが取れた。次に生かすとしよう」
「やったね! ところで、この自転車はどうやって止まるの?」
「ああ、普段ならブレーキを引けばいいハズなんだが……」
「うにゅ?」
「どうやら壊れてしまったみたいでね」


 さっきからブレーキレバーを引いているのだが、さっぱり手応えがない。
 むしろ暴走をしている感じすらある。

 お空の力を吸収しすぎたのかもしれない。


「お、おにーさん、前、前!」


 霖之助が冷静に状況を分析していると、お空の言葉で現実に引き戻された。
 気がつけば、目の前に木。

 ぶつかると思った瞬間、身体が浮遊感に包まれる。


「ふぅ、びっくりした」
「助かったよ、お空」


 耳元でお空の声がした。
 どうやらぶつかる瞬間、抱えて飛んでくれたらしい。


「何とか香霖堂には帰ってきたね。無事とは言えないが……」


 眼下に広がるのは衝突事故の現場だ。
 これを片付けるのは一苦労だろう。


「ところでいつまで飛んでるのかな」
「ん~?」


 言外にそろそろ降ろしてほしい、と言う意味を込め、尋ねてみた。
 その意図が伝わったのかは定かではないが、お空は地上に近づきながら、より強い力で霖之助の身体を抱きしめる。
 密着した彼女の感触から、甘い匂いが伝わってきた。


「好きな人ができたら抱き締めろってお燐が言ってたの」
「…………」


 彼女の好きがどの程度のものかわからない。
 だが笑って済ませるには……あまりにも魅力的な笑顔だった。


「よっと」
「ありがとう」


 霖之助は礼を言うと、あくまでいつもの調子で木にぶつかった自転車へと手を伸ばす。


「壊れちゃったね」
「なに、また作ればいいさ」


 隣に立つお空に、霖之助は笑って見せた。

 今回の実験でわかったことがいくつかある。
 もっとフレームを太く、そしてオフロードに耐えうるクッションを付けなければならない。
 逆に言うなら、それらを含めて動かせるアシストの出力を得て初めて完成と言えるだろう。

 今のままではとても普通の人間に使ってもらえる道具になるとは思えなかった。

 そして何よりブレーキだろう。
 まあ、最後のアレはお空の出力があってのものだとは思うが……。


「おにーさん、この自転車、どうするの?」
「そうだね……」


 タイヤは破裂し、フレームは曲がっていた。
 正直一から作った方が早い。

 だが。


「せっかく作ったのに……」


 お空の悲しそうな声を聞くと、あっさり手放すのも悪い気がした。


「そうだね、じゃあ君にあげようか? もちろん修理してから、だけど」
「ほんと?」


 曇っていた表情が、ぱっと輝いた。
 勢い余って抱きついてくるお空に、霖之助は頭を撫でる。


「その代わり、またいろいろと調べさせてくれるとありがたいけど」
「いいよ、私のこと好きにして」
「……いや、その言葉は誤解を招くから」
「にゅ?」


 彼女の力が借りられるのなら、やってみたいことはいくつもある。

 路面の対策ひとつにとっても、もっと車体を重くもできるし、
逆に軽くしていっそ少しだけ浮かせてみるというのもいいかもしれない。

 今まで出力の問題で断念していたことをすべて検討し直す必要があった。
 量産には全く向かない構造になってしまうが、致し方ない。


「また一緒に乗ろうね。おにーさん!」


 お空の抱きつき癖は、あくまで好意の延長上と思うことにした。
 今は、まだ。

 それにこの笑顔を見ていると、多少のことは苦にならなくなる気がする。


「そうだ! ねぇおにーさん、私からもひとつお願いしていい?」
「なんだい?」


 身体を離し、改まって言うお空に、霖之助は思わず身構える。


「おにーさんとこの自転車を、私専用にしたいの」
「それって……」


 今日一日のこと。
 お空はお空なりに何か思うところがあったのかもしれない。


「おにーさんに乗っていいのは私だけだからね!」
「僕の自転車に、だろう」
「うにゅ?」


 首を傾げるお空に、霖之助はため息をついた。
 とりあえず。

 幽香との約束をどうやって守ろうか、と考えながら。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

無邪気なお空と鈍感霖之助さんの自転車回りの営業ですねww

他の女性陣にとって無邪気に好意を表せるお空は脅威以外の何でもないですよねww
さすがの霖之助さんも気付き始めているので慧音や幽香は頑張らねば(`・ω・´)

道草さんの作品読んだ後のニヤニヤしすぎな自分が気持ち悪いww(・ω・;)

他の少女が乗る+太陽エネルギー=ロイヤルフレア
と想像したら霖之助さんの後ろで巨大な光球掲げたパチュリーが…
すっげえシュールかつ目立つなw

No title

はじめまして。初めて感想を書かせていただきます
お空可愛いですね。お空の独占欲が子供っぽいわりに体が大人なあたり危険なウフフの気配を感じます

No title

自転車に乗れないけーね先生かわいいです^q^<ウマウマ

そして無邪気に霖之助に告白してるおにーさん独占したいお空超かわいいです^q^<モエル!

No title

このまま霖之助とお空が付き合ったらどうなるでしょうね。
幽香→霖之助を自転車ごとマスパでドーン
慧音→第一回「自転車に関する歴史大食い選手権」開催
なんてことを考えてしまいます。
案外黙って見守るかもしれませんけどね。
ごちそうさまでした。

No title

お空が可愛いながらも色っぽくてウフフ
おっぱいはいいですよね、はい
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
リンクはフリーですが、ご一報いただけたら喜びます。

バナーはこちら。

<wasre☆hotmail.co.jp>
メールです。ご用のある方は☆を@に変えてご利用ください。

スカイプID<michi_kusa>

ついったー。

相方の代理でアップしてます。

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