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たい焼きにすべてを賭けて

たい焼きにすべてを賭けて
さとやさんに絵とネタを頂き書いてみました。
たい焼きをどっちから食べるか言い争う霊魔霖、ということだったので。
感謝感謝。


霖之助 霊夢 魔理沙








「だから頭からがいいって言ってるでしょ?」
「尻尾からのほうが美味いぜ」
「尻尾にはあんこが入ってたり入ってなかったりするじゃない。
 確実に入っている頭から行くべきよ、絶対」
「不確かな場所を確かめてこそ研究者だぜ。
 そう言うならあんこが確実に入ってるからこそ最後に残すんじゃないか」
「尻尾はあのカリカリの部分を最後に食べることで口直しにもなるのよ」
「口直しなんて必要無いぜ。私はあんこ党だからな。
 何ならこのたい焼き全部食べてやろうか?」
「お断りするわ」
「君たち、人の背後で暴れないでくれないか」


 激しい口論に、霖之助はため息を吐いた。
 放っておくと暴れ出しそうな雰囲気だったのだが、実際のところはどうかわからない。

 理由は簡単、目の前のコンロから目を離せないからだ。
 そしてその上には、鯛の形をした鉄板が載っていた。


「だってぇ……」
「霊夢が譲らないから悪いんだぜ」
「別にいいじゃないか、どっちから食べようと。
 どっちも美味しいことに変わりないんだし」


 言いながら霖之助は焼き具合を確認し、生地にあんこを載せる。
 さっきの言い争いで尻尾をどうしようか迷ったが……やめておいた。

 個人的には口直しの意見を押したいところでもあるし、あんこの節約でもある。
 そして同じことをもう2回繰り返す。これで3人分のたい焼きを作成中だった。

 ひとつの鉄板に複数のたい焼きの型が付いているのは養殖物と呼ばれるらしい。
 逆にひとつしかないものは天然物だとか。
 霖之助の目には焼き型としか映らないので本当のことは不明だが。


「魔理沙、わかってると思うが……」
「闘うなら外で、だろ。そうしたいのは山々なんだが、その間に出来たてを食いそびれそうだから勝負はおあずけだな」
「そうね。残念だけど」


 ズズ、とお茶を啜る音が聞こえた。たぶん霊夢だろう。

 霖之助は焼き型をパタンと閉じた。
 上側と下側がくっつき、あんこを閉じ込める。

 待つことしばし。


「で、香霖はどっち派なんだ?」
「私も興味あるわね、霖之助さん。
 霖之助さんの一票で私たちの未来が決まるわ」
「責任を僕に押しつけないでくれ。それに答えならさっき言っただろう」
「どっちもなんて認めないわよ」
「香霖のことだ、どうせいろいろ考えてるんだろう?」
「そこまで言うなら仕方がないね」


 霖之助はゆっくりと鉄板を開くと、満足げに頷いた。

 綺麗なたい焼きの完成だ。
 満足げに頷き、それぞれの皿に移す。

 そしてたい焼きを3人に配り、口を開いた。


「僕は中心、つまりお腹から食べるのが一番美味しいと思っているよ。もちろんこれには理由があって……」
「……ぷっ」
「くすっ」


 自信満々に言った言葉だったが、だがふたりの反応は予想外のものだった。
 何がおかしいのか、霊夢も魔理沙も笑みを隠せていない。


「……何がおかしいのかな」
「いや、別に香霖が悪いんじゃなくて……」


 魔理沙が首を振り、霖之助とたい焼きを交互に指さした。


「なんか香霖みたいな猫が、たい焼きくわえて逃げてるところ想像してさ」
「そうそう、お魚くわえたドラネコかしら」
「……すまないが、このたい焼きは僕ひとりで食べるとしよう」
「香霖、拗ねないでくれよ。笑って悪かったって」
「ごめんなさい、霖之助さん」


 謝っているが、ふたりともまだ笑い続けていた。
 霖之助は渋々と湯飲みにお茶をつぎ直し、椅子に腰を下ろす。

 焼きたてを食べられるように、とキッチン横に置いたテーブルはなかなか便利だった。
 ひとりだと使うことはないだろうが。


「そうよね、どこから食べても同じよね」
「最初からそう言ってるじゃないか」
「香霖に免じてそういうことにしておいてやるか」


 どうでもいい感じに流されたのが気に掛かるが……。
 ふたりともたい焼きを目の前にして待ちきれない様子だった。

 霖之助は諦め、手を合わせる。


「いただきます」
「いただくぜ」
「ああ、召し上がれ」


 どちらでもいい、と言ったものの。
 霊夢は頭から、魔理沙は尻尾からたい焼きに齧り付いた。

 霖之助も宣言通りお腹からかぶりつくことにする。

 どこから食べようと、この小振りなたい焼きは3口ほどで食べ終わってしまった。
 少女のほうはさすがに3口とは行かないようだが、やはりすぐに食べ終わる。


「美味しかったわ。前食べたのとは別物みたい」
「そうだろう、そうだろう。実はあんこに手を入れていてね」
「隠し球の披露は後回しにしようぜ。次がつかえてるんでな」


 満足げな表情のふたりに、霖之助も思わず笑みを浮かべる。
 もちろんたい焼きが小振りなのは理由がある。

 立ち上がった魔理沙を追いかけるように、霊夢も台所に向かった。


「次は私たちの番だな」
「霖之助さん、台所借りるわね」


 霊夢と魔理沙はそれぞれエプロンと三角巾を付け、持ってきた材料に手を伸ばす。
 霖之助はテーブルの上に皿を並べ直すと、近くにいた魔理沙の手元を覗き込んだ。


「ほう、カスタードクリームをあんこ代わりにするのか」
「ああ、この前山の神社に行って話を聞いたんだ。
 外の世界じゃチョコとかキャラメルも入ってるそうだぜ」
「ふむ……」


 霖之助も外の世界の雑誌を拾って何度かみかけたことがあるが、自分で作ったことはなかった。
 たかがたい焼き、されどたい焼き。いろいろ進化しているのだろう。

 外の世界に思いを馳せていると……ふと、声がかかる。


「香霖」
「ああ」


 魔理沙の声に、考えるより先に身体が動いていた。
 たい焼き用の油引きを手に取り、渡す。

 彼女の位置からだと届かないだろう、と思ったのは渡したあとだった。


「よく今のでわかったわね」


 たまたま見ていたのだろう、霊夢が呆れたように言った。


「何となくだよ」
「ふふん」


 何故か勝ち誇ったように笑う魔理沙に、霊夢がため息を吐いた。
 カスタードクリームと格闘する魔理沙から、霖之助は霊夢の場所へと移動する。


「……霊夢」
「何かしら」


 思わず霖之助は絶句していた。
 そこにあるのは、小麦粉、卵、刻んだキャベツ、ネギ、紅生姜。
 かつお節に青のり。そして。


「なんでタコがあるんだい」
「藍に貰ったのよ」
「藍に? というと、紫の式の」
「ええ、猫にタコはダメなんですってね」


 大方紫が手に入れてきて、式神にダメ出しされたので霊夢が貰ったのだろう。
 妖怪だから多少は平気だと思うのだが。
 というか、一緒に食事するとは限らないのにダメ出しされるとはなんともはや。


「たい焼きにタコ入れちゃダメって決まりはないでしょう?」
「まあ無い……とは言えるが」


 霖之助は頷きかけ……思い直した。
 やはり何かがおかしい。


「完全にたこ焼きかお好み焼きだろう、これは」
「考え過ぎよ。霖之助さんの悪い癖ね」


 悪い癖、ときたものだ。
 しかしそう断定されてしまっては食い下がるわけにも行かない。


「そういえばソースってあるかしら」
「あるよ。マヨネーズもね」
「あら、完璧じゃない」


 何が完璧というのだろう。
 どう考えても作ろうとしているものはたい焼きではないはずなのだが、それについてはまずたい焼きの定義から考え直さなければならない。
 そもそもたい焼きとは鯛の形をした菓子であるべきではないだろうか……。


「あ、霖之助さん」
「はいよ」


 と考えている途中で霊夢に呼ばれ、霖之助は近くにあった千枚通しを手渡した。
 何となく彼女が必要としてるから、と思ったのだが。


「なんだ、霊夢も同じじゃないか」


 唇を尖らせ、魔理沙が口を挟む。


「たまたまだよ」
「そーねー」


 なにやら勝ち誇ったような霊夢に、魔理沙は悔しそうな顔。

 そして指を突きつけ、宣言した。


「焼き上がったら勝負だぜ!」
「望むところよ。結果は見えてるけどね」
「そんなご飯のおかずみたいなものに私のたい焼きが負けるわけはないぜ」
「霖之助さんのあんこに勝てないからって急遽カスタードに変更したようなたい焼きじゃ私に勝てないわよ」
「……私は初めからこのメニューだぜ」


 少しだけ魔理沙が視線を逸らしたような気がした。
 しかし、今重要な点はそこではない。


「ちなみに結果はどうやって決めるんだい?」
「もちろん香霖だぜ」
「公平なジャッジをお願いね」


 一瞬、白黒付ける裁判官に審査をお願いしようかと考えたのだが、そう言うわけにも行かないらしい。
 ふたりの視線に見つめられ、霖之助は苦い表情を浮かべる。


「どっちも美味しい、じゃ……」
「ダメだ」
「却下ね」


 即答だった。
 どうやら本気らしい。


「どっちの味が香霖にふさわしいか、だぜ」
「あとで泣いたって知らないわよ」


 なにやら燃え上がるふたりに、霖之助は肩を竦めた。

 そろそろきっちり決めるのも悪くないかもしれない。
 そして……。


 どうせ3本勝負から5本勝負とか増えていくんだろう、と考えながら。

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非公開コメント

No title

霖之助を挟んでぎゃーぎゃーやってる二人が目に浮かびます。
このあと5本、7本と増えて行くんでしょうかね、勝負。
外の世界からの断片的な情報から試行錯誤でできた幻想郷独自の味なんてものもあるかもしれません。
早苗さんたちがそれに驚愕なんてこともあるかも。

No title

もう見ました、面白いですね

No title

霊夢を立てれば魔理沙が立たず。逆もまた然り。
そして「両方」は論外で、今回は話題そらしも通用しないでしょうね。
こういう状況下での「正しい返答」ってあるんですかね?

とりあえず修羅場乙w
今回も楽しませていただきました。

No title

霊夢の「だってぇ……」に、キュンッ…!
ほんとこの3人は家族ですねw
ほんわかキュンキュン、ごっちゃんです!

No title

竜虎相打つ! ですねわかりますwww
ていうか霊夢はなんでそうなったwww

面白和みますた^q^

No title

「だってぇ……」
なんだこの破壊力は
カプ物でもないのに砂糖がががが

とらのあなに出向いて「動物みたいに恋したい!」を買わせて頂きました
「○○霖は俺らのジャスティス!」も買いたかったのですが売り切れ・・・無念
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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