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Shall we dance?

ジンナイさんからネタを貰ったので。
同人誌のネタもちょっと使わせていただきました。


霖之助 美鈴








 パラパラと紙をめくる音が店内に響く。
 文章を読むには早すぎるテンポだが、別に速読をしているわけではない。

 霖之助の手元にあるのはフリップブック――いわゆるパラパラ漫画だった。
 元々白紙だったそれは、しっかりと絵が描かれていた。


「どうですか? 今回のは特に自信作なんですよ」
「と言ってもね」


 自信たっぷりに胸を張る美鈴に、霖之助は肩を竦めてみせる。
 改めて最初からパラパラとめくるが、内容はやはり同じもの。

 そう、同じだった。
 延々と同じく、座って本を読んでいる絵が続いていた。


「ほとんど全部、同じ絵ばかりに見えるんだが」
「微妙に変わってますよ。ほらここのところとか」


 美鈴が指を指したページでは、パチュリーの後ろを小悪魔が通り過ぎていた。
 なるほど、芸が細かい。


「でしょー?」
「ああ……確かにそうだね」


 霖之助はフリップブックを閉じ、表紙を見る。
 タイトルはパチュリーの1日らしい。

 ……少し前に、同じようなものを貰った記憶がある。
 その時のタイトルは香霖堂の1日で……今回と同じく、本を読む霖之助の絵だけが描いてあった。


「それに同じようなと言いますけど、同じような絵を描くのも技術が要るんですよ」
「なるほど、確かに」


 彼女の言葉に、霖之助は頷いた。
 単純な絵ならともかく、このレベルの絵で連続して見ても違和感が無いのはさすがだろう。

 霖之助にこれと言って絵心があるわけではないが、絵も上手い方だと思う。


「しかし毎度思うが、意外な特技だね」
「いえそれほどでも。時間だけはたっぷりありましたからねー」
「……仕事中は仕事をしなさい」
「霖之助さんには言われたくありません」


 美鈴は苦笑混じりに首を振った。
 その拍子に彼女の三つ編みがゆらゆらと揺れる。


「それに絵を習ったこともありますよ。人里に買い出しのついでに。ほら、稗田の……」
「阿求かい?」
「ええ。霖之助さんによろしくって言ってました」
「……聞かなかったことにしておくよ」
「あ、ひどいですね。言い付けますよ?」
「多分向こうは僕がこういう反応をすると想定してると思うよ。それが余計に悔しいんだが」


 唇を尖らせる霖之助に、美鈴は笑みを浮かべる。
 普段大人びているもののたまにこうやって子供っぽい仕草を見せる彼を、なんだか彼女は気に入っていた。


「仲良いんですね」
「どこをどう見たらそう見えるのかな」
「だってそう言うの、ツンデレって言うんでしょ?」
「断じて違う」


 断言する霖之助に、美鈴は首を傾げた。
 ちょうど今彼女が呼んでいた本にそれっぽいことが書かれていたのだが。

 おかしいなー、と彼女は呟き、漫画の続きへと戻る。


「ところで霖之助さん、この続きはないんですか?」
「ないよ。多分それが最新刊だろうね」


 美鈴が読んでいるのは、レミリアが注文していた外の世界の漫画だった。

 最近天狗の漫画にハマっているという吸血鬼が所望していた。
 売るものもあれば貸すだけのものもある。

 代わりに霖之助はレミリアから天狗の漫画を借りていた。
 自分で購読してもよかったのだが……購読しようとすると文がやってきてものすごく悲しそうな顔をするのだ。


「で、漫画を読むのも買い出しのついでなのかな」
「いえいえ、これはちゃんとした仕事ですとも」
「漫画を読むことがかい?」
「もちろんですよ」
「それもレミリアの注文かな?」
「いいえ、こっちは咲夜さんからです。教育によくない漫画は外すようにと」
「ああ、そういうことか」


 納得し、頷いた。
 まるで母親のようだ……と思ったが、口には出さないでおく。


「んで、内容をこうやってチェックしてるわけですよ。それには読むのが一番でしょう?」
「君たちは従者の鏡だよ」
「あはは。心配症なんですよ、咲夜さんは」


 美鈴はただ読みたいから読んでるのだろう。
 感心して損したかもしれない。


「そもそもそう言う本は店先に置いてないよ」
「まあ私も信用してるんですけどね」


 ――じゃあ読む必要はないのではないだろうか。

 そう思ったがあえて言わず、思いとどまる。

 別に勝手に商品を持って行くわけでもないし……。
 彼女が店にいて、悪い気はしないせいだろう。


「私も漫画描いてみようかな」
「描いてるじゃないか。パラパラ漫画を」
「いえもっとしっかりしたやつですよ。こっち系の」


 そう言って、美鈴は手の中の本を指さした。
 瀟洒なメイドも好きなシリーズの最新刊だ。


「さすがにそれだけのものとなると、門番をやりながらというわけにも行かないだろう」
「そうだとは思うんですけどね。
 でもお嬢様に頼んだらやらせてくれそうな気がするんですよ」
「咲夜が泣くから止めておきなさい」


 ペレー帽を被り、紅魔館の入り口で原稿に向かう美鈴を想像し、霖之助は思わず脱力してしまった。
 本来の職業がなんだったのか一瞬わからなくなってしまう。


「よし、検品完了」
「つまり最後まで読み終わったと言うことだね」
「そうとも言います」


 美鈴はひとつ笑うと、本を荷物に戻した。
 今回の納品分は結構な量があるのだが……彼女には軽いものだろう。


「お代はまた月末にでも集金させてもらいに行くよ」
「はい。お待ちしてます。いいお茶も入りましたし、お菓子も焼いておきますね」
「遊びに行くわけじゃないんだがね」


 紅魔館に行くとよく歓迎してくれるのだが、門と屋敷、そして帰りの門と3回歓迎されてしまう。
 ひょっとしなくても美鈴は暇なのだろう。


「あ、そうそう。霖之助さんに言わなきゃいけないことがあったんだった」
「なんだい?」
「お嬢様が、霖之助さんをパーティに招待するって言ってたんですよ」
「パーティねぇ……今度はどんな題目で開催するんだい?」
「さて、なんでしたっけ。お嬢様の乳歯が抜けた記念……は、もう終わったような」


 美鈴はなにやら考え込み……さほど時間をかけず、あっさりと諦めた。


「理由なんてなんでもいいんですよ。開催できれば」
「適当だね」
「そんなものです」


 ひとつ笑うと、彼女は霖之助の瞳を見つめた。
 返事を待っているのだろう。

 霖之助はしばし思案を巡らせると、やがて頷いた。


「ま、お呼ばれしてみようかな」
「本当ですか?」
「……なんで誘った君が驚いてるんだい?」
「いえ、だって霖之助さん、来たこと殆ど無いじゃないですか。
 人が多い場所は苦手だって言って」


 言われて気付いた。
 確かに彼女からのこういった誘いを了承したのは初めてかもしれない。


「営業は顔を出すことだからね。たまにはいいだろう」
「へぇ……でも今まで誘った時は来てませんよね。
 営業はいいんですか?」
「それはそれこれはこれ。今は今さ」
「もう、調子いいんだから」


 美鈴の笑顔に、霖之助はつられて笑みを浮かべる。

 言ったことに嘘はない。
 それに……。


「今回は他の目的もあるからね。パーティならちょうどいいよ」
「はい?」
「ちょっと待っててくれ」


 霖之助は立ち上がると、店の奥へと引っ込んだ。
 そして目当ての布袋を掴み、再び店内へ、


「美鈴、これをあげるよ」
「なんですか、これ」
「君の服だよ」
「私の?」


 首を傾げる彼女だったが、霖之助の視線に促され袋のを覗き込んだ。
 中に入っているものを取り出し、ため息を吐く。


「へー……綺麗ですね。もしかして、霖之助さんが作ったんですか?」
「まあ、ね。目算でサイズを測ったせいで、合ってるかはわからないが」
「でも、なんで私に?」
「いつも絵を見せてもらってるお礼だよ」


 霖之助はカウンターの上に置かれたフリップブックへと目を向けた。

 もちろん最初はちょっとした小物を作る予定だったのだが。
 ……いつの間にか興が乗ってしまい、服を一着仕上げてしまったのだった。

 予定外の出来事だが……わざわざそんな事を言う必要はないだろう。


「ありがとうございます。あの、早速着てみてもいいですか?」
「ああ、構わないよ。店の奥を使うといい」


 霖之助は頷くと、適当な本に視線を落とした。
 待つことしばし。

 やがて近寄ってきた足音に、改めて視線を上げる。


チャイナ美鈴


「じゃーん。どうですか、霖之助さん」
「ふむ、サイズぴったり……いや、少し小さいかな?」


 すらりとしたシルエットのチャイナドレスは、美鈴の鍛えられた肢体を艶やかに彩っていた。
 だがシルエットを追求しすぎたせいか、ボディラインがはっきりと出てしまっている。

 本人は気にしてないようだが。


「気になるのはわかりますけど、最初の感想がそれですか?」
「いや……よく似合ってるよ」


 霖之助は頬をかきながら、それだけ呟いた。

 あまり褒めても自分で作った服の自画自賛になりそうで……難しいところだと思う。
 だがまあ、素材がいいのは間違いない


「で、パーティとこの服がなんの関係があるんです?」
「君はもしかして鈍感なのかい?」
「霖之助さんだけには言われたくないです」


 きっぱりと言い切る美鈴に、少しだけ霖之助の心はダメージを負った。


「……男ひとりでパーティに居座るのはなかなか気まずいものがあってね。
 社交パーティと言えば昔、女性をエスコートするものだったらしいよ」
「エスコート?」
「ああ、つまり女性を連れて……。
 まあ単刀直入に言うと、君にも一緒にパーティに出てもらいたいという事さ」
「へー……え?」


 霖之助が何を言いたいのか、ようやく気付いたのだろう。
 彼女は慌てたように、言葉を続けた。


「でも私、多分受け付けの仕事とかありますし」
「今回のお代の一部として君の時間を貰うようレミリアに言ってみるつもりだよ」
「ふふっ」


 突然吹き出した美鈴に、霖之助は首を傾げる。


「どうしたんだい?」
「時間を貰うだなんて、そんなこと言うのは咲夜さんくらいだと思ってました」


 ――貴方の時間は私のもの。

 咲夜の言葉が思い出される。
 確かに言葉は同じだった。使い方と意味はまったく違うが。


「でもダメですよ、そんなこと言っちゃ。
 勘違いされちゃいますよ?」
「そうかい?」
「そうです」


 そう言って……美鈴は少しだけ、視線を逸らす。


「でも、勘違いするのも悪くないですね」
「ん、何か言ったかい?」
「なんでもありません」


 彼女は首を振り、霖之助に一歩近づいた。


「じゃあ、当日はよろしくお願いしますね、霖之助さん」
「こちらこそ」
「じゃあ、早速。お願いします」


 さらに近づいてくる美鈴に、今度は霖之助が疑問符を浮かべる。


「何をだい?」
「え? だって未完成なんでしょ? この服」


 チャイナドレスの裾を少しつまむと、健康的な脚線美が露わになった。

 確かに彼女の言う通り、まだ仕上げには遠いかもしれない。
 それを読んでのことだろう。

 美鈴はにっこりと微笑み、両手を差し出した。
 まるで霖之助を抱きしめるように。


「隅々まで採寸してくださいね?」

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非公開コメント

ネチョを連想させる終わり方。本当にありがとうございました。

No title

ネチョそうな続きだけどエロスを感じない不思議。健康的っすなぁ。

No title

おぉ、あの霖之助さんがお姫様抱っこされた同人誌ネタですね(笑)。
そしてこれぞ美霖、的な気軽な空気感が伝わってきますねぇ。
ラストはちょっとエロスが感じられますがね(爆)。

No title

フレンドリーな門番だなぁ しかし採寸してください!ってあーたアリスさんみたくなりますね。 可愛いからいいけど

美鈴、少ないなぁと思っていたので嬉しいです

それにしても霖之助さん超イケメン//

どっからどう見てもネチョネチョする一歩出前です…

美霖はもっと増えるべき!

No title

健康的でありながら何かエロい・・・・・流石道草さんだ!

パーティ当日
IN紅魔館

咲「中国?何その服、というか受付の仕事はどうしたの?」
美「霖之助さんが作ってくれました。仕事の方は、今からは霖之助さんにエスコートされるのが仕事です」
咲「なん・・・・だと・・・・・?」

↑こんなん想起余裕でしたwww
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道草

Author:道草
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同好の士は大ウェルカムだよね。
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