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子悪魔シリーズ19

そう言えば子悪魔シリーズに出てきたのってずっと3人だけだったかな。
いえ特に意味はないんですが。


霖之助 パチュリー 小悪魔









「私ってよくお母様の攻撃を受けてるわけですけど」
「自業自得だろう」
「自業自得よね」


 読んでいた本から顔も上げず、霖之助とパチュリーは即答した。
 図書館は今日もいつも通りである。


「ちょっと、ひどくないですか!?
 今まさに言葉の暴力を受けたんですけど!」
「自業自得だろう」
「自業自得よね」


 こういう時、普段の行いがものを言う。
 小悪魔は地団駄を踏んで悔しがっているようだった。


「もう、ちゃんと聞いて下さいよ!
 人の話の腰を折るばっかりで!!」
「最初から聞いてないわ」
「というか、君がそのセリフを言うのかね」


 ようやく顔を上げたふたりに、小悪魔はふふんと胸を張る。


「まったく、話の腰を折るからフラグも折られるんですよ!
 この前なんてせっかく勇気を出してお父様をパーティに誘ったのにあっさり断られたお母様の顔ったらもう」


 瞬間。小悪魔の姿がかき消えた。
 ただパチュリーが手をかざしただけで、それは起こった。

 どんな手段使ったのか、霖之助にはわからなかった。
 ……久し振りに本気のパチュリーを見た気がする。


「いや、あの時はどうしても外せない用事があってね」
「わかってるわ」
「霧雨の親父さんに前々からその日に来るようにと、ね。
 確かに伝えてなかったのは悪かったが、まさかいきなりパーティを開くとは思わなかったんだよ。
 これだからレミリアの思いつきというのは……」
「わかってるわよ」


 何を言い訳しているのだろうと思いながらも、霖之助は言葉を続ける。
 もう済んだ話だ。とっくの昔に。

 ……だと、思ってたのだが。


「別に、悲しくなんてなかったわ」


 霖之助はパチュリーの顔を見……ため息を吐いた。
 素直じゃないな、と苦笑しながら。


「次の機会には、エスコートさせてもらってもいいかな?」
「…………」


 パチュリーがなにか答えようと口を開いた瞬間。


「とまあ、こんな感じで毎度毎度攻撃を受けてるわけなんですけど」


 復活してきた小悪魔に遮られる。


「……空気を読みなさいよ」
「はい?」


 棘のある言葉に、彼女は首を傾げた。
 まったく堪えていないあたり、さすがというかなんというか。


「で、攻撃がどうかしたのかい?」
「そうなんですよ。いつも私ばかりが標的なんですけど」


 自業自得だろう、と言いかけて止めた。
 無限ループはなんというか、怖い。


「お父様って、お母様に攻撃されたことってあるんですか?」
「さて、僕は弾幕ごっこをやるわけじゃないからね」
「いえいえ、そうではなく」


 首を振る小悪魔に、霖之助はひとつ考える。
 パチュリーと自身を見比べ、肩を竦めた。


「僕がパチュリーと魔法で勝負しても勝てないよ」
「そうでもなくてですね」


 続けて首を振る小悪魔に、霖之助は疑問符を浮かべる。


「……何を言いたいんだい?」
「ほら、言うじゃないですか」


 ニヤリと笑う小悪魔。
 その顔を見て、霖之助はロクでもない予感に後悔した。


「涙は女の武器って話ですよ!」
「…………」


 溜息。結局、それが言いたかっただけらしい。
 悪い予感は当たるものだ。いや単に小悪魔の行動パターンなだけかも知れないが。

 つまり小悪魔が聞きたいのは戦闘なんかじゃなく、ふたりのやりとりなのだろう。
 無視してもよかったのだが、何となく霖之助は記憶を辿る。


「パチュリーはあまり表情を変える方ではないからね。
 泣いたのをはっきり覚えてるのは……」
「ベッドの上とか」
「それはあるが……って、いやいや」


 思わず頷きかけた霖之助の言葉を拾ったのは、横で話を聞いていたパチュリーだった。


「確かに貴方はそうやって創られたのよね」
「ですよねー」
「……随分昔の話だな」


 5つの液体。
 まだ小悪魔は生まれる前の話である。

 もうあれからどれくらい経ったのだろうか。


「まぁ、武器とわかってても狙って利用するような性格ではないですからね、お母様は」
「そうだね」


 ……むしろそれが似合うのは小悪魔だと思う。小悪魔的に考えて。
 もっとも、小悪魔の涙が武器になるかはさておき。


「だって使えばお父様に特効ですもの。
 絶対に勝てる勝負は面白くないって思ってますよ、きっと」
「そういうものなのかな……」


 霖之助は困った顔でパチュリーの顔を見るが、表情に変化はない。
 まあ、パチュリーが自分に頼み事をしてくることはそれほどないのだが。

 ――むしろ、そんな風に言葉にしてくれればどれだけ楽だろう。

 無表情なままでページをめくる魔女を見ながら、霖之助はため息を吐いた。


「でもお父様の笑顔もお母様に特効ですからおあいこですけどね!
 魔法使いキラーとでも名付けましょうか」
「勝手に武器にしないでくれ」


 それに魔法使いはひとりではない。
 霖之助の脳裏に複数の魔法使いの顔が思い浮かび……。


「……あまり間違ってはないけど」
「ん?」
「なんでもないわ」


 何に対しての言葉だったのだろうか。
 あいにくと聞き逃してしまった。


「ドラゴンキラーとか一ツ目殺しとか成仏の鎌とかいろいろあるじゃないですか。
 そんな感じですよ、きっと」
「人の顔を物騒な武器と同列に扱わないでくれないか」


 小悪魔の言葉に、肩を竦める。
 似たような武器が香霖堂にもいくつかあるな、と思いながら。


「お父様って、やっぱり人間と妖怪の特性を持ってるんですかね」
「どういうことだい?」
「ほら、人間と妖怪にそれぞれ特効の属性攻撃を受けたら4倍のダメージを、とか」
「……面白いわね。試してみようかしら」
「面白がらないでくれ。
 そんなもののために身体を張る気はないよ」


 くつくつと笑うパチュリーに、霖之助は首を振った。
 止めておかないと本当に実行してしまいそうで怖い。


「だいたい、人間にも妖怪にも特効なんて武器があったらほとんど無敵じゃないか」
「それもそうですね」
「いえ、あるわよ」
「ふむ?」
「確か天人が持ってた剣が、そんな効果だったわ」
「ああ……」


 緋想の剣。
 天人しか扱えない剣が、確かにそんな代物だった。
 さすがは天界の道具といったところか。


「じゃあちょっと斬られてみて下さいよ、お父様」
「断る」


 にこやかに言う小悪魔に、霖之助は首を振る。
 斬られて無事で済むとも思えないわけで。


「多分あれは個人個人で気質が変わるものだから、倍々ゲームみたいにはならないと思うけど……」
「けど?」
「やっぱり気になるわね」
「パチュリーまで……」


 パチュリーの視線に、苦い表情を浮かべる霖之助。
 好奇心旺盛なのは魔法使い故のサガか。

 実験台にされるほうはたまったものではない。


「冗談よ」
「冗談でも止めてくれ」
「だらしないですねぇ、研究のためなら身体を張るのが魔法使いなのに」
「僕は本職というわけではないからね」


 首を振る霖之助に、ニヤリと小悪魔は笑う。


「そうですよね、お父様の仕事はお母様のおっぱいを張らせることですからね!」
「…………」
「…………」
「そして搾乳プレイ……って、あれ。どうしたんですかふたりとも」


 突然顔を見合わせたふたりに、小悪魔は首を傾げた。
 いつもならここでリアクションがあるはずなのに、と。


「なんでもないわ」
「なんでもないよ」
「んんん?」


 ふたりの返答に、なにやら違和感を覚えたものの。
 その答えを彼女が知ることは出来なかった。

 この時は、まだ。

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No title

できちゃったフラグ来た!?

あと安心と信頼の自重しない小悪魔www

No title

なんとも意味深で2828なラストですね~ww
早く展開を迎えて欲しいような、もう少しこの空気を続けて欲しいような複雑な気持ちです^^
いつも読んでいて楽しい話をありがとうございます。
これからも頑張ってください。

シレンww

思わずガタッと席を立ってしまった
64は至高だったな……

No title

シレンよりポケモンを連想した私は某改造版をやりすぎですなw
5つの液体の話が出てきて思わず第1話を読み返してしまいました
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