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騒霊のランプ

ルナサは騙されやすいそうです。
長女は金髪かわいい。


霖之助 ルナサ









 湖の近くの、廃墟のような洋館。
 朽ちかけた扉を開き、霖之助は館の中へと足を踏み入れた。


「誰かいるかい?」


 声をかけるが、返事はない。
 遠くでバイオリンの音が鳴っているのは聞こえるのだが……。


「留守、かな?」
「……誰ですか?」


 しばらく待っても反応がないので引き返そうとした時、落ち着いた声が響く。
 声の主は黒い帽子に黒い服、そして金髪の少女で……霖之助はその姿に見覚えがあった。


「君がルナサ君で合ってたかな。プリズムリバー姉妹のリーダーの」
「そうですけど」
「そうか、以前イベントで見たことはあったんだが念のため確認しておきたくてね。
 他の姉妹も在宅なのかな?」
「さぁ、今日は朝から見かけてませんけど」


 ルナサは訝しげな表情で霖之助を見る。
 警戒してるようだ。

 ……自己紹介もなしに、少々不躾だったかもしれない。


「ファンの方ですか? それともお仕事の依頼ですか?」
「ファン……ではあるかもしれないが、仕事の依頼じゃないね。
 むしろ仕事を依頼されて来たと言うべきか」


 霖之助はひとつ咳払いすると、姿勢を正した。
 真っ直ぐにルナサと向き合うと、恭しく一礼する。


「僕は森近霖之助。魔法の森の近くで古道具屋をやっているんだ」
「道具屋? セールスはお断りしてるんですけど」
「いいや、セールスじゃなくて」


 首を傾げるルナサに、霖之助は苦笑を浮かべた。


「今日は掃除をしに来たんだ」









『騒霊のランプ』









「お断りします」


 はっきりと彼女は首を振る。
 ……だが、ここまでは予想通りだ。


「そう言うだろうと思ったよ。
 だが話くらいは聞いてくれるかな?」
「……わかりました」
「ありがとう」


 ルナサはそのままの姿勢で霖之助の言葉を待った。
 話を聞く気はあるようだ。

 だが立ったままということは、本当に話だけのつもりなのだろう。


「まず最初に、紅魔館のメイド長はうちの店の上客でね。
 今回はそのツテで依頼されたんだよ」
「紅魔館ですか。よく会場として利用させてもらってます」
「そう、そこでひとつ問題が起こったんだ」
「え?」


 霖之助の言葉に、再びルナサは首を傾げる。


「最近、紅魔館に君たちへの出演依頼を尋ねる人が増えているらしくてね」
「え、でも……」
「わかってるよ。イベントの主催と君たちは無関係だろう。
 だが同じようなことが妖夢……白玉楼でもそんな質問が多いらしいんだ」


 幽霊だからと言う理由で、冥界にある白玉楼に質問が行くようだ。
 騒霊は微妙に幽霊とは違うらしいのだが。

 もっとも冥界に行くより紅魔館に行くほうが近いので、やはり紅魔館への質問が圧倒的に多いと聞いていた。


「そんなの、うちに来てくれれば……」
「僕もそう思うよ。でもこの洋館に案内するには、少々問題があってね」


 言って、霖之助は周囲を見回した。
 まさに散らかり放題、荒れ放題というやつだ。
 幽霊が出る雰囲気的にはぴったりだが……入れと言われても、なかなか出来ないだろう。


「…………」


 彼の言葉に、なにやらルナサは黙って考え込んでいた。

 ――機嫌を損ねたかもしれない。

 一瞬、霖之助の胸中を不安がよぎる。


「なるほど……お話はわかりました」


 そう思った矢先、ルナサは口を開いた。


「ですが……」
「すまない、まだ話は終わってないんだ」


 彼女の言葉を、さらに遮る霖之助。
 否の形に開きかけた口を、ルナサは仕方なしに閉じる。


「ただ単に掃除するだけなら、妖精メイドを派遣すればいい。
 しかしそれではダメなんだ。何故なら彼女たちは『綺麗に掃除』をしてしまうからね」


 妖精メイドでは満足に掃除もできないという可能性もあるが……それはそれとして。


「僕は古道具屋だとさっき言ったが、古道具屋に必要な掃除というのはただ綺麗にすればいいと言うわけではないんだよ。
 ……だから僕が来た。
 君が危惧している事はわかっているつもりだがね」
「……そう、ですか」


 再びルナサが考え込む。


「……わかりました。お願いすることにします」
「ああ、任せてくれ」


 ややあって頷く彼女に、霖之助は笑みを零した。

 素直すぎる、とちょっとだけ思いながら。









「それにしても、そんなに不景気なんですか?」
「そう見えるかい?」
「ええ」


 霖之助の作業を見ながら、ルナサは頷いた。
 ……なかなかはっきりと言う娘である。

 心配なら見ているといい、と霖之助が言ったせいか。
 ルナサは作業中、ずっと見ていたようだった。

 寡黙な彼女はあまり喋りかけてくると言うことはない。
 たまにこうやってぽつりと呟いたことを拾うくらいだ。

 騒霊は躁霊に通じるはずなのだが、彼女はいろいろと規格外のようだ。


「道具屋なのに掃除の仕事だなんて、やることがないって言っているようなものです」
「とんでもない、これも立派な道具屋としての仕事だよ」


 霖之助の返答に、ルナサは無言だった。
 きっとわかってないのだろう。


「これも紅魔館のメイド長との話なんだが、チケットの代理販売をうちでやることになってね」
「代理ですか?」
「ああ、君達は人気グループだからね。
 そのチケットを欲しいという人はたくさんいるが……紅魔館まで足を運ぶのも大変なんだよ、普通の人間には特にね」
「そうなんですか?」


 空を飛べればすぐに到着するのだろうが。
 まあ香霖堂も人里からは結構距離があるが、紅魔館よりはマシということだ。


「こうやって掃除をすることでもっとイベントを依頼する人が増えれば、僕の店での代理販売の機会も増えるだろう。
 それはつまり、うちに客を呼ぶチャンスというわけだよ」
「なるほど。別の形でお役に立てれば私としても嬉しいです」


 ルナサは礼儀正しく頭を下げる。
 しっかり者だと聞いていたが、音楽のためならいいものはきちんと取り入れるらしい。


「よし、こんな感じかな」


 あらかた作業も終わり、霖之助は一息吐いた。
 先ほど掃除したばかりの椅子に腰掛ける。

 このテーブルと椅子は部屋の隅に転がっていたものを修理したものだ。
 一見古いが使用するには問題無いし、景観も崩すことがない。


「……どうかな。出来のほうは」
「思ってたより、ずっといいですね」


 思っていたよりということは期待されてなかったのだろう。
 正直な彼女の感想に、霖之助は苦笑を漏らした。


「これで仕事の依頼もしやすくなると思うよ。
 君たちの仕事は、僕も応援してるからね」
「ありがとうございます」


 ……少し、素直すぎるのではないだろうか。
 霖之助はそう思ったが、あえて口には出さない。

 その方が、仕事がしやすくなるからだ。


「ああ、仕事と言えば……」


 あくまで今思い出したように、霖之助は言葉を続ける。


「人魂灯というものを知ってるかな?」
「ええ、有名ですから」


 幽霊内ではやはりわかるものらしい。
 騒霊もそうであるのだろうか。


「ちょっと冥界にツテがあってね。
 それを参考に作ってみた道具があるんだ」


 霖之助は懐からランプを取り出した。
 冥界の姫監修、騒霊を呼び出すことのできるランプである。

 騒霊灯とでも名付けるとしようか、などと霖之助は考えていた。


「離れていても見えるはずだが、どうかな」


 これは騒霊だけに光が見えるよう調整したものだ。
 人魂灯のように幽霊が集まってくることはない。


「見えますね」
「そうか、じゃあ成功かな」


 実際に試してないので少々不安だったのだが、動作確認もバッチリだったようだ。
 霖之助は安心したように胸をなで下ろす。


「……それで、これが何か?」
「ああ、これが見えたら香霖堂に来て欲しいんだ。
 つまり呼び鈴みたいなものだね」
「何故?」
「さっきも言っただろう、君たちが人気あるからだよ」


 霖之助はあえて回り道をするかのように、ゆっくりと言葉を重ねていく。


「君たちを宴会に呼ぼうとするのは、実力者が多いんだ。
 当然、イベント会場や集客を手配できる者になっていくからね」
「そうですか。そう言えばそんな気もします」


 これが本来の目的だった。

 わざわざ掃除を引き受けたのも。
 彼女たち用の道具を作ったのも。

 全ては香霖堂に客を呼ぶためである。

 もちろん人里の小さな宴会にも彼女たちは呼ばれれば参加するし、実力者ばかりが利用するわけでもないのだが。
 それでも人が増えることには変わりない。だろう。多分。


「君たちをうちで呼べる、となればそれなりのメリットがあるということさ。
 もちろん君たちの手が空いている時でいいし報酬も約束するが……どうかな」
「そうですね……」


 ルナサは考える際黙り込む癖があるらしい。

 霖之助は彼女の返答を黙って待った。
 待つのは嫌いではないし……悪い予感はしない。


「……わかりました。こちらとしても特に悪いことではありませんので」
「そうかい、ありがとう」


 頭の中で明るい未来を想像しながら、霖之助はほくそ笑んだ。


「姉さん、今の光なに?」
「なんかよく見えたけどー」


 集まってきた姉妹に、霖之助は挨拶を交わす。

 ――契約の時、狡猾という末妹がいなくて助かったかもしれない。
 そんな事を、思いながら、











 代理サービスは好評だった。
 ただ、いくつかの誤算を除いては、

 まず、有力者は部下を持っているので交渉には部下をよこす。
 そのため訪れるのは妖夢や鈴仙と言った……いつもの面々だ。

 咲夜はあの洋館に行ったほうが近いためこの用件で香霖堂に来ることはない。

 つまり、香霖堂の客が劇的に増えたわけではなかった。

 あとは……。


「雰囲気は悪くないですけど、散らかりすぎですね。
 古道具屋と言うよりゴミ屋敷じゃないですか?」


 ルナサがよく来るようになったこと、だろうか。
 話し合いの結果、呼び出しの光が見えたらルナサだけが顔を出すことになったらしい。

 ……確かに3人揃っていてはまとまる話もまとまらないかもしれない。


「今日はまだ呼び鈴を鳴らしてないはずなんだがね、ルナサ」
「鳴ったら来るんですし、いついても一緒でしょう? 道具屋さんの望み通りのはずですけど」
「……状況だけ見れば、確かにね」


 ルナサは楽譜を眺めながら、ぽつりと呟いた。
 商品を勝手に持って行くわけではないし……害もない。

 それに、落ち着いた彼女と一緒にいると悪い気はしない。


「でも、今日もお客は来そうにないですね」
「今日も、は余計だよ」


 正直すぎるのが難点だが。

 霖之助は苦笑を浮かべると、店番に戻った。
 ルナサとふたり、ゆっくりとした時間を過ごしながら。

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非公開コメント

おお、これはいいルナ霖……! そしていつかは通い妻へとレベルアップして、などと妄想がゆんゆんしますねぇ。

No title

物静かなルナサは霖之助との相性はバッチシですね。
ルナサ霖は数が少ないので出会えて幸せでする。

No title

いいルナ霖だ・・・後は通い妻をしてもらい他のヒロインと修羅場をおこしてくれれば完璧だ・・・

No title

ルナサかわいいよルナサ!
はっ!ちょっといきなり暴走してしまいました。
ルナサがかわいいからだうん絶対そうだ!
にしてもふふふっ!
とてもいいルナ霖ですね!
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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