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子悪魔シリーズ16

SAGさんから誕生日絵を頂いたので書いてみました。
感謝感謝。


霖之助 パチュリー 小悪魔









「なんで来るんですか、まったくもう!」


 図書館に足を踏み入れるなり、待っていたのは小悪魔の文句だった。

 とはいえ今日来ることは伝えていたはずだ。
 いつもより10分早く来ただけなのだが……。


「取り込み中だったかい?
 都合が悪いようなら、また今度にでも……」
「いえ、そこまではしなくていいですけど。
 仕込みがまだだったので、つい」


 小悪魔は慌ただしく立ち上がると、なにやら片付け始めた。
 そしてパチュリーに近づき、宣言する。


「じゃあパチュリー様、始めましょうか」
「……?」


 しかしパチュリーも初耳だというような表情を浮かべていた。


「あれ、言ってませんでしたっけ?
 プレゼントしようっていってたじゃないですか」
「聞いてないわよ」
「あれー?」


 首を傾げながら、小悪魔は懐からリボンを取り出す。

 ちょっと幅のある、ずいぶん長いリボン。
 用途は梱包。プレゼントを包むこと。


「この前話してましたよね、お父様の誕生日について」
「ええ、それは覚えているけど」
「じゃあもういいじゃないですか。
 あとはプレゼントを贈るだけですよね」


 小悪魔はリボンをパチュリーに押しつけ、満面の笑みを浮かべた。


「すみません、お父様。気の効かない母で」


 霖之助の前に移動し、頭を下げる小悪魔。
 だがしかし、彼女にそう言われたらいろいろと終わりのような気もする。


「……仕込みは済んだのかい?」
「ええ、バッチリです」


 完璧と言わんばかりに小悪魔は頷く。
 ……しかし、いまだにパチュリーはリボンを手に首を傾げているようだが。


「すぐにプレゼント進呈しますからね。
 ああいえ、今日が誕生日じゃなくても構いませんよ。
 予行演習なのでお気になさらず。
 それに何回受け取っても大満足なプレゼントですから」


 自信たっぷりに言いきる彼女に、霖之助はなんとも言えない不安を覚えた。
 一度パチュリーに視線を送り……それから改めて、聞き直す。


「一応聞くが、何をプレゼントするつもりなのかな?」
「え? 決まってるじゃないですか」


 さも当然とばかりに小悪魔は胸を張った。


「お母様が全裸にリボンを巻いて、バースデーカードを咥えてですね。
 そして仕上げはおとーさま!」


 ピンと指を立て、ぺろりと舌を出す。


ハピバ


「お母様のふあふあスポンジぼでぃにお父様の濃厚白濁生クリームをデコレイトするんですよ!」


 しゅるり、と布の擦れる音が聞こえてきた。
 同時に聞こえるのは、パチュリーの呪文の声。

 しゅるりしゅるりと、赤いリボンが小悪魔の足に巻き付いていく。


「あっ、ちょっ!」


 リボンが自在に動き、いつの間にか端が蛇へと変化を遂げていた。
 逃れようともがく小悪魔を、手早く梱包していく。

 本来の用途通りに。


「……憑依召喚?」
「実験段階だったけど、早速使う時が来るなんてね」


 そう言って、パチュリーはため息を吐いた。
 詠唱は完了したらしい。


「ああん、私のあんなところやこんなところに巻き付いて縛り上げ……。
 あ、そこ、もうちょっと強く……」


 縛られているはずなのに楽しんでいるようにしか聞こえないのが小悪魔の小悪魔たる所以だろうか。
 ……そこまで考え、頭を抱える。


「ご覧パチュリー。あれが君の娘だよ」
「あなたの娘よ」


 押しつけあうふたりをよそに、小悪魔は何かに気付いた様子で叫び声を上げる。


「はっ、これはチャンスなのでは!
 お母様、ちょっと待ってください。どうせなら私が全裸になりますから!
 そうすると晴れて私はお父様に食べられ……はぅっ!」


 リボンから変化した蛇に噛みつかれた瞬間、小悪魔は大人しくなった。
 毒でも持っていたのだろうか。
 昏睡したように見えるし、痺れているようにも見える。


「ほう、蛇としての属性も備えてるんだね」
「一番力を入れたところだもの。当然よ」


 冷静に観察するパチュリー。
 まあこれくらいでは死にはしないだろう。

 どうせ少し経てばいつの間にか復活しているだろうし。


「まったく、先に言うなんて……」
「ん? 何か言ったかい?」
「いいえ」


 彼女は首を振り……そして霖之助に向き直った。


「……で、いつなのかしら。
 そう言えば、聞いたこと無かったわね」
「いつとは?」
「あなたの誕生日よ」
「ああ」


 彼女の言葉に、霖之助は肩を竦める。


「いや、覚えてないんだよ。
 聞く相手もいなかったしね」
「そう」


 それ以上は何も言わなかった。
 聞いてどうなるものでもない。

 真名や生年月日は魔術において大事な要素だが……。
 いつ生まれたかわからない存在など、この幻想郷では珍しくもない。


「少し待ってて。お茶を入れてくるわ」
「僕がやろうか?」
「いいわよ別に」


 パチュリーは立ち上がり、地下にある簡易キッチンへと向かった。

 本来は小悪魔の仕事なのだが、彼女はそこでいびきを立てて眠っているわけで。
 ……随分気持ちよさそうに。


「……変れば変わるものだな」


 少し前までは、家事はとても苦手だったように思う。
 努力の結果というやつだろう。

 やがて少しして、お盆を手にパチュリーが戻ってきた。
 浮いて移動しているので、躓いてこけたりはしない。


「……すごいな」
「そうかしら」


 皿の上に置かれたティーセット見て、霖之助は感嘆のため息を吐いた。

 ケーキにサンドウィッチ。それからポテトとフライドチキンまである。
 ちょっとしたパーティ料理と言えなくもない。


「咲夜に作り方を教えてもらったのよ。口に合うかはわからないけど」
「え? 君が作ったのかい?」
「そうよ。……まあ、ほとんど小悪魔に手伝ってもらったというか、作ってもらったというか……」


 ゴニョゴニョと言葉を濁すパチュリー。
 お茶をカップに注ぎながら、言葉を続けた。


「それからクッキーもあるから、あとで持ってくるわ」


 カップを受け取りながら、霖之助は感心したように頷く。


「ずいぶんたくさんあるね。
 今日は何か特別な日だったのかい?」
「そうね。そうかもしれないわね。
 ……私にとっては、だけど」


 そう言って、パチュリーはケーキにナイフを当てた。
 手元が危なっかしいが、あえて手を出さない。


「あなたが来る日はいつも特別よ。
 今も、そしてこれからも」


 いつも通りの、特別な日。
 その言葉に、霖之助は笑みを浮かべた。

 霖之助も同じ気持ちである。
 ……ただ何となく気恥ずかしいから、行動には移さなかっただけで。


「僕も何か持ってくるべきだったかな」
「いらないわよ、別に。
 これは私が勝手にやってるだけだし……」


 彼の言葉に、しかしパチュリーは首を振る。


「あなたが来てくれることが、最高のプレゼントだもの」


 微妙に力が入ってしまったからだろうか。
 切り口はちょっとばかり歪んでしまったが……。

 今まで見たどんなケーキより、美味しそうに見えた。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

小悪魔がいない時に限ってデレるパッチェさん。今日はいつもより素直ですねいw
まあ小悪魔の身体をはったボケがあるからこそ、パッチェさんも素直になれるのかと思います。

No title

おめでとうございますッッッッ!!!!

SAGさんがピクにあげて一日と経ってないというのに・・・・・・
音速なんて目じゃねえとしか言いようがないww
しかしこのパッチェさん実に乙女すぎて2828するよ!!^q^ニヨニヨ

あとさりげなく近親狙ってるこあマジ自重wwww

No title

誕生日おめでとうございます。
あなたが美味しいと言ったから今日はサラダ記念日 だったかな? この場合は来訪記念になるんでしょうが。

No title

デレデレばパチュリーキターーーーー!!
なんて2828な話wこのシリーズ好きですねw
貴方のパチュ霖への愛情が好ましいww
今後も素直でかわいいパチュリーをお願いしますw

No title

お誕生日おめでとうございます!

そして相変わらずの光速超え、SUGEEEEE

No title

SAGさんの絵から来ましたー。
なんでも誕生日だったそうで、おめでとうございます!
それにしても、パチュリー…本当にやる気だったんかいw
それと、裸リボンの小悪魔もそれはそれで見たかった気がw
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道草

Author:道草
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