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子悪魔シリーズ15

夏コミ前に東方人形劇を徹夜でクリアしたことを思い出しつつ。


霖之助 パチュリー 小悪魔









「やっぱり霖之助さんの特性はものひろいでしょうか。
 だけど収集家でもありますからねぇ。
 でも鈍感も捨てがたいですけど」


 気にしたら負けな気がする。
 例えそれが、自分に対する話題であっても。


「でも鈍感だとメロメロにならないからなぁ。
 だってお母様のメロメロボディにメロメロなんですから。
 鈍感だけど鈍感じゃない……あ、でも鈍感であることには変わらないし」


 鈍感鈍感と連呼しないでいただきたい。
 そもそも鈍感である自覚はカケラもないのだから。


「お母様はメロメロボディじゃなければなんでしょうねぇ。
 厚い脂肪……ただし胸だけ、とか」


 それについては同意出来る。
 なんてことを考えていたら、パチュリーに睨まれた。


「お父様のメガホーンにお母様のアンコール……何回戦までイケるんでしょうね。
 確かこの前は……」


 もう限界だった。
 これ以上喋らせてはダメだ。

 主に霖之助のプライバシー的な意味で。


「小悪魔、何を言っているんだい」


 地下図書館のいつもの席で、仕方なく……目の前に座る小悪魔に声をかける。


「あらま、聞いてたんですか?
 私の秘密のひとりごと」
「聞こえるように言っていたんだろう」


 わざとらしく小悪魔は驚いて見せた。
 いや……白々しく、だろうか。


「一体何をしているのかな?」
「いえ、ちょっと図鑑を作ることになりまして」
「図鑑だって?」
「そうなんですよ。
 人間の中でもあるでしょう、妖怪図鑑が」
「ああ、阿求の幻想郷縁起か」


 妖怪図鑑と言われると何か違う気がするが。
 あの中には霊夢や魔理沙、霖之助だって載っているのだし。


「ええ。つい先日見せていただきまして。
 それでレミリア様が、うちでも作ろうと」
「……なるほどね」


 確かにあの吸血鬼の考えそうなことだ。
 人間に負けていられない、ということだろう。

 他の妖怪ならまず考えないことだ。
 普通は人間のやることなど、大して気にしていないのだから。


「んで、妖怪の視点から書いてみようかなーと」
「なるほど、それはなかなかいい考えじゃないか」
「でしょう?」


 得意げに小悪魔が胸を張った。

 とはいえ、鴉天狗の新聞記者を始めとして、人間に関わる妖怪もこの近年で随分増えたように思う。
 人間が妖怪に影響を与えたのか、単に物好きな妖怪が増えたのかはわからないが。


「で、私が図鑑を作成することになったわけですよ」
「君がかい?」
「先入観のない公平な視点でですね」
「……前言撤回だ。
 今聞き捨てならないことがあったんだが」


 霖之助はため息を吐き、振り返る。


「言いたいことはわかるわ」


 視線の先で、パチュリーが同じようにため息を吐いて見せた。
 本から顔を上げないまま、肩を竦めてみせる。


「でも仕方ないでしょう、私は忙しいんだから」


 全く忙しそうに見えないのだが、それもいつも通りだろうか。

 霖之助は小悪魔に向き直ると、手元の図鑑に視線を向けた。


「しかし小悪魔がこれほど絵が上手いとは知らなかったよ」
「何十年も写生とか続けてれば誰だってこうなりますよ」


 小悪魔の手元では、霖之助の絵らしきものが描かれていた。
 なかなかの腕前だ。
 彼女の言う通り、練習したのだろう。それこそ、何十年も。


「でも筆の使い方ならお父様だってすごいでしょう?」
「ん?」


 小悪魔が笑っていた。
 その顔を見た瞬間、嫌な予感がよぎる。


「だって何十年も射精とか続けてますからね。
 筆おろしだってきっと」


 最後まで喋ることなく、小悪魔の身体は石と化した。

 石化魔法、だろうか。
 対象の属性を土属性に置き換える高等魔法。
 詠唱が聞こえなかったところを見ると……圧縮したのか、詠唱破棄したのか。


「……ま、こんなものよね」


 術者を振り返ると、パチュリーが肩を竦めていた。
 大したことではない、と言わんばかりに。


「ところでお父様は、絵の腕前はどんな感じなんですか?」


 そして霖之助が向き直ると……既に小悪魔が復活していた。

 レジストしたのだろうか。
 それとも解呪したのか。

 こんな高レベルで、かつ低レベルな争いを見るのは初めてだった。


「……製図なら、人並みに。
 あいにく絵画の心得はないよ」
「そうなんですか?」
「直線や円は道具を使って描けるからね」


 ものによっては曲線を書ける道具もある。
 だが絵画と制作図では、全く別のカテゴリなのだ。


「でも、絵画とかも売ってると思ってましたけど」
「あるにはあるが、見るのと描くのは必要なスキルが違うからね。
 僕は道具屋だから、鑑定できればそれでいいんだよ。
 それにあまり売れないから、それほど仕入れないしね」
「売れないんですか?」
「ああ。幻想郷の人間には絵を飾って鑑賞するなんて余裕はなかったし、
 妖怪はそもそも感性が違うからね」


 ただ上手い絵なら、人間は妖怪にかなわない。
 妖怪はそれこそ百年単位で修行出来るのだから。

 もっとも、妖怪のやる気はそれほど長く続かない。
 まれに剣士や新聞記者と言った例外もいるにはいるが。


「お嬢様がよく買ってくるから人気があるんだと思ってました」
「変わり者もいるということさ。贔屓にしていただいて感謝しているよ」


 そして同時に、人間の絵を好む妖怪もいる。
 人間の絵は感情がこもっているから好きなのだとか。

 とはいえ、レミリアが人間の絵画を買うのは、人間に対して余裕を見せるためだろう。
 レミリア自身が絵画に何か思うところがあるかというと、霖之助は首を傾げざるを得ない。


「今は写真もあるから、絵が描けなくても困ることはないのさ」
「そうなんですか」
「騙されちゃダメよ、小悪魔」


 霖之助の解説に、しかし横からストップがかかった。


「フィールドワークは魔法の基礎。昔そう教えたはずよね?
 薬草の詳細なスケッチをすることはは、自分で魔導書を書くときの基本になるのよ」
「君がどの口でフィールドワークなんて言うのかな。
 外に出たとしても紅魔館の庭だろうに」
「あら、事実は事実でしょう?
 あなたのそれは、上手い絵を描けないからって言い訳して、動かない理由付けているだけよ」
「……そんなつもりはないよ。
 そう言えば君もあまり絵が上手くはなかったね」
「スケッチはイメージを頭の中で具体化するための補助よ。
 巧拙はあまり関係ないわ」
「言い訳かい?」
「なんのことかしら。昔と今は違うのよ。
 ……小悪魔もいることだし」
「結局絵は使い魔任せで君が描くわけじゃないんじゃないか」
「あら、使い魔も魔女の能力のうちよ?」
「コホン!」


 ふたりの言い争いに、小悪魔は大きく咳払い。


「なるほど、わかりました」


 そう言って、ペンを手に図鑑になにやら書き込み始める。


「お父様は絵が下手……と」
「あまり余計なことは書かなくていいんじゃないかな」
「図鑑だもの。ちゃんと正確な情報を載せておく必要があるわね」



 霖之助の苦い表情に、おかしそうにパチュリーは笑う。


「じゃあ小悪魔、パチュリーの欄にも描いておいてくれよ。
 絵が苦手だとね」
「誰もそんな事は言ってないわ。
 幾何学模様は得意よ。魔方陣とか……」
「それは僕も得意だよ」


 再び始まった言い争いに、小悪魔は身をよじりながら呟いた。


「ああ、夫婦のじゃれ合いに巻き込まれるかわいそうなわ・た・し♪」


 その言葉に、霖之助とパチュリーは顔を見合わせ……手元の本に視線を落とす。


「ちょっと、もうちょっとイジってくださいよ!」
「断る」
「御免被るわ」


 きっぱりと言い放つふたりに、小悪魔はさすがにショックを受けたようだった。


「ふーんだ。
 じゃあひとり寂しく図鑑を書き続けますよーだ。
 あることないこと」
「あることだけ書きなさい」
「ないことを書かれたら困るな」


 拗ねる小悪魔を見て、霖之助は思わず苦笑を浮かべた。

 阿求にもあることないことを書かれて困ったことがあった。
 ……もちろん、阿求に対して失礼な態度を取った記憶はないのだが。


「えーと、主な出現場所は魔法の森の香霖堂と、紅魔館の地下図書館っと」
「ん?」


 詳細を聞いて、霖之助は首を傾げる。
 そんな彼に……パチュリーが尋ねた。


「何か問題でも?」
「いや、なんでもないよ」


 現状を思い返し、霖之助はゆっくりと首を振る。
 思えば随分長い間この地下図書館に入り浸っている気がする。


「出現時間は……ああそうそう、時間で思い出しました」


 突然筆を止め、小悪魔が顔を上げた。

 いつも通りの笑顔。
 とても悪い予感がする。


「特に予定がないときは、お父様っていつも決まった時間にいらっしゃるじゃないですか」
「ああ、その方が対応しやすいだろうと思ってね」


 配達など、事前に予約がある場合はその通りに来るのだが、
本を読み終わったりして急に立ち寄ったりすることもある。

 その時はだいたいいつも昼下がりの時間にしていた。
 昼間は紅魔館の主がだいたい寝ているか出掛けているため、メイド長に気を使わせる必要が無い。
 それにパチュリーとレミリアの会話を邪魔することも少ない。

 魔法使いたるパチュリーはよっぽどのことがない限りいつも起きているので、そちらは気にしていないのだが。


「そうそう、それでですね。
 最近のお母様ったら、お父様が来そうな時間のそわそわ感と来なかったあとの時間のガッカリ感が見ていて面白」


 小悪魔は言葉のカケラを残し、姿を消した。
 なんと言うことはない、彼女がいた場所の足下に落とし穴のようなものが出来たせいだ。


「余計なことは言わなくていいのよ。
 やっぱり基本が一番かしら」
「……まあ、なんだ」


 言いかけて……やめた。
 この件に関してはこれ以上突っ込まないほうがいいだろう。

 小悪魔の手元にある図鑑に視線を向け、尋ねる。


「もしかしてこれを全部作る気かい?」
「まさか」


 しかしパチュリーは首を振った。


「レミィのことだもの。
 どうせすぐに飽きるわよ」


 パチュリーが自分でやらない理由の大部分だろう。
 親友のことはよくわかっているらしい。


「紅魔館の主要な人妖だけ書けば満足するでしょう」
「そうか」


 そこでふと、霖之助は首を捻った。


「……ん? 紅魔館の?」
「あら、何か問題でもあるのかしら?」


 そんな彼に、パチュリーは笑みを向ける。

 霖之助は少し考え……首を振った。


 何も問題はないよ、と。

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非公開コメント

No title

いつもお疲れ様です。
今回はなんというかまとも?な感じでしあがりましたね~w
地味に紅魔館の一員になっている霖之助w
小悪魔からのパチュリー裏情報がかわいくて辛いw
これからも頑張ってくださいw応援していますw

No title

パチュリーの、さりげなさが可愛いですね。また、小悪魔の下ネタテクニックがどんどんスキルアップしてることに笑ってしまいました。あと最近の特性には、「そうしょく」なんてのもあるみたいですよ

No title

図鑑のパチュリーと霖之助の欄にはおしどり夫婦と書いてあるのでしょうね。
霖之助は完全に紅魔館メンバーですねw

メガホーンを食らった後ミルク飲みで体力回復するパチュリーを幻視ry

厚い脂肪からもミルクが出る日を待ち望むのは罪ですか

小悪魔のレジストスキルが並の妖怪では太刀打ちできないレベルにw こんだけ定期的に来てるのだから紅魔館も出現地域で問題ありませんね。あ、霖之助とパチュリーの欄にそれぞれハイドロポンプとのみこむを追加してですね(

No title

もう霖之助が紅魔館に嫁入りすればいいと思いますw

No title

霖之助のメガホーン、パチュリーのアンコール・・・思いっきり吹きましたwww
下ネタスキルと耐久力、回復力の上昇率が著しい小悪魔といつもどおりな夫婦の二人ですね(´∀`)

このシリーズはいつまでも続いてほしいと思いますwww
プロフィール

道草

Author:道草
霖之助がメインのSSサイト。
フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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