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愉快な命蓮寺一家02

一条さんが東方で1時間SSやろうぜ! って言ってので。

お題は
・酒
・家族
・バクチ
・保存食
だそうです。

というわけで1時間で書いてみました。
お題を全部使う、百霖を書く。
それが俺の命題だってゴーストが囁くので。
(追記)白霖を百霖と書き間違えたが大丈夫だ、問題無い。


霖之助 白蓮






「いらっしゃい、霖之助さん」
「ご招待にあずかり恐悦至極、ってところかな」


 白蓮の出迎えを受け、霖之助は人里にある命蓮寺の門をくぐった。

 この寺が出来た当初、家具や消耗品の多くを香霖堂で買っていったため、すっかり寺の面々が常連になっていた。
 それに霖之助自身、配達で何度も訪れたこともあるからか、もう慣れたものだ。


「何か僕に見せたいものがあるとか?」
「見せたいというか、参加していただきたいというか……」


 白蓮のあとに続き、寺の廊下を歩く。
 人里の中にあるにも関わらず、周囲は静謐な雰囲気に包まれていた。


「先日、収穫祭があったでしょう?」
「ああ。随分盛大にやったみたいだね」
「霖之助さんも来て下さればよかったんですけど」
「騒がしいところは苦手でね」


 誘われはしたのだが、結局行かなかった。
 どちらにしろ人里が苦手な魔理沙が香霖堂にやってきて、宴会はしたのだが。


「だろうと思いました。
 でも、皆さん感謝していたみたいですよ?」
「肥料を売っただけさ」


 それと農具もだろうか。
 当然ながら、外の世界のものは幻想郷でも効果覿面である。


「おかげで豊作だった、と皆様が」
「それは僕の手柄じゃないよ。
 道具屋に出来ることは手助けだけだからね」
「ええ。でも、伝えておきたくて」


 豊穣の神もいるわけで、収穫についてはほとんど心配していなかった。
 もっとも、ただ祈っただけでどこまで効果があるかは不明なのだが。


「それで収穫祭の時、お寺の庭を一部開放したんですけど」
「里中あげてのお祭り騒ぎだからね。
 こんな宴会に適した場所を見落とすはずがないか」
「ええ。それは構わないんですけど。それで……」


 白蓮の言葉を聞きながら、霖之助は廊下に目を落とす。
 どこにもチリひとつないその廊下は、まるで鏡のように磨き上げられていた。


「ああ、それですか?
 毎日一輪が掃除してくれてるんです」
「ほう。大変だろうに」
「いえ、雲山がこう……ムニっと」
「……なるほどね」


 確かに雲は水蒸気であり、押さえつければ拭き掃除と同じ……。

 いや、外の世界にはスチームなんとかという掃除道具があるらしい。
 綺麗になるのも無理はないだろう。

 それでいいのか、と言う疑問はあるが。


「で?」
「はい?」
「いや、収穫祭で、どうなったのかなと」
「ああ、すみません。ええと……」


 歳を取ると忘れっぽくなりますね、と彼女は笑い、言葉を続ける。


「そのお礼にと、保存食を大量に頂きまして」
「ほう?」


 確かに収穫が済んだ今、去年の保存食は必要無い。
 むしろこれから今年の分の保存食を作るわけで。

 もちろん本当に飢饉になった場合でも妖怪の賢者がなんとかしてくれるだろうが……。
 それはそれ。

 外の世界に様々なものを依存している幻想郷だと言っても、出来る限り自分の力でなんとかしようとしていた。
 このあたりは、流石人間といったところだろう。


「その保存食でちょっとした酒宴をと思ったのですわ」
「……それは僕も参加していいのかい?」
「ええ」


 当然と言わんばかりに、白蓮は頷く。


「だって、命蓮寺に来る人はみんな家族ですから。
 いつもお世話になっている霖之助さんなら尚更です」
「……そうか」


 しかしそこで、彼女はため息を吐いた。


「ですが……」
「が?」
「少し、準備が遅れてるみたいで」


 白蓮は困ったように肩を竦めると、扉に手をかける。


「ちょっとぬえ、イタズラしないでよ!
 もうちょっとで終わるところだったのに!」
「へへーん。無防備に置いておくムラサが悪いよー」


 静かな寺の一室は、まさに戦場と化していた。


「少しは働いたらどうだい、一輪君」
「働いているわよ。雲山が」
「君も働け、と言っているのだがね」
「ナズーリン、私のお皿知りませんか?
 一枚足りな……いえいえ無くしたわけではないのですが」


 あちらこちらで喧噪が巻き起こる。
 その様子を受け……白蓮はぽつりと呟いた。


「お恥ずかしい限りです」
「いや、楽しそうで何よりだよ」


 苦笑混じりに返す霖之助に、ぬえが気が付いた。


「あ、霖之助じゃない。
 何しに来たの?」


 がふよふよと飛びながら、霖之助に近寄ってくる。
 食べているのはイカだろうか。


「聞いてなかったの?」
「聞いてなかったねぇ」


 村紗の質問に、ぬえは知らぬ顔。


「お客が来るって言ってたでしょ。
 だから……」
「お客? まだ準備全然終わってないじゃない」
「誰のせいよ!」


 漫才のようなそのやりとりに、霖之助は肩を竦めた。


「僕も手伝ったほうがよさそうだね」
「え、でも悪いですよ、お客様なのに」
「構わないよ。それに……家族なんだろう?」


 白蓮はひとつ頷き……笑顔を浮かべる。


「……そうですね。
 では、お願いします」









 干し椎茸と棒鱈を使った煮物。
 野菜の漬け物。魚の酒粕漬け。

 様々な保存食を使った料理が、所狭しと並んでいた。


「この焼酎、美味しいと評判なんですよ」
「ほう?」
「豊穣の神に貰ったんですけど、今年は格別に上手くできたらしくて」


 白蓮にお酌をされながら、霖之助は料理に舌鼓を打つ。
 寺と言ってもこの辺は緩いらしい。


「ナズーリン、少しくらい分けてくれたっていいじゃないですか」
「いくらご主人様の頼みでもこればかりは聞けないな」


 チーズの類は……ナズーリンが独占しているようだ。


「一輪、あの料理ってどこ置いたっけ」
「姐さんがさっき……えっと、あ、これかな?」


 村紗と一輪は、いまだにぱたぱたと走り回っている。
 苦労人は大変のようだ。


「ねぇねぇ霖之助、ゲームしよ、ゲーム」
「……ゲーム?」


 嬉々として、ぬえが近寄ってきた。
 両手に抱えた料理に、なにやら不吉な予感を覚える。


「ここに3つの料理があります。
 しかしこの中のどれかは3年前の保存食を使用してしまいました。
 うっかり、星が」
「ちょ、ちょっとぬえ!
 捨ててって言ったじゃないですか!」


 泣きそうな声を上げる星を、ナズーリンはやれやれといった様子で睨み付けた。

 そんな様子を見て、霖之助は首を振る。


「そんなバクチはやりたくないよ」
「えー、いいじゃん。一緒に正体不明の奇病にかかろうよ」
「どう考えても原因が明確だろうに」
「ちぇー」


 鳴り止まぬ声と笑いに、しかし白蓮は申し訳なさそうな顔。


「……すみません。騒がしいのは苦手でしたよね」
「いや、構わないよ」


 霖之助は酒を呷るとため息を吐いた。
 妖怪たちが人里でこんなに楽しんでいる。

 ……少し前までは、考えられなかった光景だ。


「家族、か。いいものだね」
「そうでしょう?」


 嬉しそうに、白蓮が頷く。


「霖之助さんなら、いつでも歓迎ですよ。
 私たちの、家族の一員に」
「……気が向いたらね」


 彼女の笑みに、霖之助もつられて微笑んだ。
 それも悪くない、と思いながら。

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No title

百霖・・・つまり霖之助関連のSSを百個執筆するんですね

>「霖之助さんなら、いつでも歓迎ですよ。
 私たちの、家族の一員に」

白蓮さんそれどう見てもプロポーズです
本当にありがとうございました

No title

百霖・・・すなわち『ももりん』、桃=天子
次は天霖ですね!

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