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緑眼の君

SAGさんの絵にSSを書かせていただきました。
ぱるりぱるられ

pixivの小説機能にて先行公開済。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25302

pixivの小説機能使ってみるのもこれで一段落。
次回からはいつも通りに戻ります。


霖之助 パルスィ









「一生の不覚だわ」


 ぽつりと呟き、パルスィはため息を吐いた。
 カウンターの向かい側で、霖之助は苦笑を浮かべる。


「別にいいじゃないか、スカーフを引っかけたことくらい。
 他に被害もないようだし」


 そう言う彼の手には、パルスィのスカーフと裁縫道具が握られていた。
 先ほど店に入るときに引っかけてしまい、破けてしまったのだ。

 恐る恐る、と言った様子でパルスィは顔を上げる。


「……私のこと、ドジだと思ってる?」
「いや、誰にでも失敗はあるよ。気にすることはないさ」
「本当に?」
「本当だとも」


 破れたものは直せばいい。
 そんな事はわかっている。

 問題は、誰の前でドジを踏んでしまったか、だ。

 ……そこまで考え、そんな思考をしている自分に驚く。


「べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!」


 気付いたときには、叫んでいた。


「……どうかしたのかい?」
「なんでもないです……」


 我に返り、そそくさと腰を下ろす。
 思わず立ち上がっていたらしい。

 しかも外してしまっている。
 ……霖之助の驚きももっともだろう。

 今日は厄日だ。そうパルスィは思った。
 大人しくしておこう……と。


「…………」


 大人しく、パルスィは霖之助の手元を覗き込む。

 普段服も作っているだけあって、手慣れた動きだ。
 迷い無く針を動かしていく。

 もちろんスカーフくらい自分でも直すことは出来る。

 しかし修復を申し出てくれた霖之助に任せることにした。

 彼の好意に甘えることにしたのだ。
 間違っても彼に甘えているわけではない。たぶん。


「ん?」
「へ?」


 視線を感じて、霖之助は振り返る。
 手元を見ていたつもりが、パルスィはいつの間にか霖之助の顔を見つめていたらしい。

 振り返った彼の視線と、見つめ合うこと数秒。


「眼鏡!」


 咄嗟にパルスィは叫んでいた。


「いつも眼鏡かけてるけど、貴方、眼が悪いのかしら?」
「ああ……まあね」


 なんでこんな事を聞いているのだろう、と思いつつ。
 思いつきにしても、もっとマシな質問もあっただろうに。


「無いと駄目ってほどではないがね。
 少し困る、かな」
「へぇ……」


 それきり会話が終了してしまった。
 当然と言えば当然だが、思いつきならこんなものだろうか。

 メガネを取って自分でかける、と言った芸当が出来ればまた違うのかもしれない。
 ……今そんな事をしたら、彼の作業の邪魔になってしまうだろうけど。


「っと、出来たよ」
「ありがと」


 出来上がったスカーフを受け取り、確認する。

 自分でやるより、遙かに上手い。
 むしろ破く前より綺麗になっているかもしれない。

 しかもご丁寧に刺繍まで入っていた。
 首に巻き、呟く。


「……妬ましいわね」
「喜んでいただけたようで何よりだよ」


 霖之助の返事に、パルスィは苦笑を浮かべた。
 この男は橋姫の嫉妬を何だと思っているのだろうか。

 ……まあそんな彼だから、彼女も心置きなく嫉妬できるのだが。


「ああ、眼鏡で思い出した。
 すまないが、少し待っててくれるかな」
「え? うん」


 突然霖之助が立ち上がり、店の奥へと消えていく。
 待つことしばし。

 お茶が半分ほどになったところで、霖之助が戻ってきた。


「お待たせ」
「あら」


 彼の姿を見て、パルスィは声を上げる。


「どうだい?」
「どうって言われても……」


 この姿を見るのは、ひょっとしたら初めてかもしれない。


「眼鏡がなくなったわね」
「ああ」


 シンプルな答えに、頷く霖之助。
 そして少し、笑みを浮かべる。


「他に変わったところはないかい?」
「えー……?」


 問題を出され、パルスィは彼の顔を凝視した。
 霖之助の頬に手を添え、鼻がぶつかる距離まで近づき……声を上げる。


「……あ、眼の色が変わってるわ」
「ご名答」


 彼の返答に、パルスィは自慢げに胸を張った。
 と同時に、霖之助との位置に気付き、そそくさと距離を取る。


「魔法かしら?
 それとも……」
「これはカラーコンタクトと言ってね。
 眼に直接付ける眼鏡みたいなものだ」
「へぇ、そんなのがあるの」
「ああ。外の世界だと、ファッションの一部でもあるようだ」


 そう言って、霖之助はカウンターに置いてある鏡を覗き込んだ。
 似合わないかな? と言う視線に、慌てて首を振るパルスィ。

 ……彼の素顔を見たのが初めてなこともあってか、なぜだか胸が高鳴っていた。


「それにしても、よく使い方がわかったわね」
「コンタクトはどうやら医療品の一部らしくてね。
 竹林の薬師に聞いてみたんだよ」


 何でも、永琳が昔似たようなものを作ったことがあるそうだ。
 曰く、月の兎の魔眼が暴発しないようにとかなんとか……。


「……そんなの付けて大丈夫なの?」
「まあ、見た目だけのお遊びだからね。
 短時間なら問題無いらしいよ」
「ふぅん。色付いてるけど、視界の色が変わるってこともないの?」
「ああ。どうやら色を感じる場所とは違うところに色が塗ってあるとかで……」


 霖之助がなにやら説明してくれたが、どうせ聞いてもわからないし興味もない。
 だが。


「でも私はいつもの貴方がいいわ」
「そうかい?」
「ええ。
 だって綺麗な金色の……」


 言いかけて、ハッとなった。
 自分が言おうとしたことに気付き、耳まで真っ赤になる。

 霖之助はそんな彼女を見て……肩を竦めた。


「やはり作り物では本物に敵わないね」


 鏡からパルスィへと視線を移す霖之助。
 そして……真っ直ぐに彼女の瞳を覗き込む。


「綺麗な緑色――君の瞳とお揃いかと思ったんだが」


 その言葉に、パルスィはますます顔を朱に染めた。


「こ、こここ、これだから商人は妬ましいわ。つまらないお世辞なんか言って……」


 ピンと立った耳が、ピコピコと動く。
 間違いなく耳の先まで真っ赤だろう。
 自分でもよくわかってしまう。


「うん、まぁ、そうだね。
 見たまま、思ったままを口にしただけでは『お世辞』としては出来損ないで、つまらない」
「え……? それって……?」
「だから今のは――」


 パルスィの問いに、霖之助はそっと彼女の耳元に何事か囁く。


「……ぱ……」


 囁かれた彼の言葉に、パルスィは思わず俯いてしまった。
 湯気が出そうなほど、真っ赤な顔で。


「ぱるぅ……」


 そんな彼女の額に、霖之助はゆっくりと唇を寄せ……。









 乱暴に鳴り響いたカウベルの音に、霖之助は顔を顰めた。
 だいたいこういう音を立てるのは客以外の常連だ。


「いらっしゃい」


 読んでいた本から視線を動かさないまま、霖之助は声を上げる。
 そんな彼に突きつけるように、カウンターに何かが置かれた。


「香霖」
「なんだ、魔理沙じゃないか」
「どういうことなのか、説明して欲しいんだぜ」


 魔理沙が持ってきた見ると、天狗の新聞のようだった。


「……なになに?」


 紙面いっぱいに見出しが踊っている。

 『熱愛発覚! 店主と橋姫の逢瀬! ……か?』

 か? の部分が小さく書かれているのがミソだろう。
 発行人は天狗D……。


「実によく撮れてるね」


 全く、いつの間に撮ったのだろうか。
 霖之助がパルスィに身を寄せているところがバッチリ写されていた。


「ところで魔理沙」
「なんだ香霖」
「君はいつカラーコンタクトを付けるようになったのかな」
「コンタクト?
 何のことだ?」
「え? だって……」


 だってこんなにも。
 魔理沙の瞳は、緑色に輝いて……。

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No title

魔理沙は橋姫にクラスチェンジ! もう寿命の問題で悩むことはなさそうだぞ!(霖之助のが先に死にそうですが)

で、パルスィの額に唇をゆっくり近付けた霖之助は何をしたんですかっ!?

「味も見ておこう」とか「この味は……嘘をついている味だ」とかですか!?
なんかジョジョしか思い浮かばない私。どうしてこうなったんだ……。

それにしても、このサイトにまでDの意志が……!

ぱるぅ(笑)
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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