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嘘の見分け方

『はるのあしおと』の続きかも知れないしそうでないかもしれない。
見た目幼女に迫られる霖之助っていいよね、と言うてゐ霖。


霖之助 てゐ 鈴仙









「ウサウサ」
「ウサ? ウサ……」
「そうそう。
 嘘を吐くとき必ず語尾にウサを付けるといいよ」
「ウサ……こうウサ?」
「そんな感じそんな感じ」


 よくわかっていない様子の鈴仙に、しかし満足げに頷くてゐ。
 そして彼女は続けて口を開く。


「そうすることによって最初から嘘だとバラし、ほのぼのとしたやりとりが楽しめるウサ」
「そこの詐欺兎。
 君は同僚に何を吹き込んでいるんだい」


 霖之助はふたりのやりとりに、大きくため息を吐いた。

 初めは黙って聞いていたのだが、口を挟まざるを得なくなった、と言うのが正しい。
 店内で怪しい勧誘をされては困る。


「えー、霖之助が言ったんじゃない。
 鈴仙にもっと気を抜くべきだって」
「確かにストレス解消をするべきだとは言ったがね」


 第2回目の月都万象展があったのがつい先日のこと。
 鈴仙はその時、酔った勢いでハメを外してしまったらしい。

 所用で永遠亭に行った際、永琳がそう零していた。
 そんなわけで、霖之助はストレス解消を勧めてみたのだ。


「嘘を吐くことがストレス解消になるとは思えないな」
「えー? なるでしょ、普通」


 てゐがきょとんとした表情を浮かべる。
 そんな顔をされても、あまり同意は出来ないが。


「そうだ、あの店主は嘘吐くの得意だから嘘の付き方を教えてもらうといいよ」
「人聞きの悪いことを言わないでもらおうか」


 そんな不名誉な評価を受けた覚えも受けるいわれもない、
 しかし霖之助の言葉に、てゐはニヤリと笑みを浮かべた。


「だって骨董とかいうただ古いだけの道具を高値で売ってるじゃない。
 嘘吐きでしょ?」
「君は骨董を馬鹿にしているのかい」


 大きく肩を竦める霖之助。
 まあ確かに、千年以上生きている妖怪からしてみれば数百年の器の価値などそう無いのかもしれないが。


「えー、だって、そんな茶碗がそんな値段なわけないじゃん」
「だってじゃないよ。
 古美術品というのは歴史を含んだ価値があるからね」
「でも偽物でしょ、それ」
「う……」


 てゐに指摘され、霖之助は言葉を詰まらせる。

 贋作には2通りある。
 金儲けのための贋作と、本物に近づけようとした贋作。

 これは後者の方なので物自体はいい。
 だから置いているのだ。

 決して金儲けのためではない。決して。


「それに古いだけで価値が出るのなら、うちの師匠なんて並ぶ物のないくらいの価値が……」
「て、てゐ!」


 鈴仙の言葉に、てゐは思わず口を押さえた。
 彼女は驚いたように身を震わせると、慌てて言葉を続ける。


「……あるウサ」


 そして周囲を見渡し……ため息。


「と、こんな風に使うといいウサ」
「取って付けただろう、それ」


 本人に聞かれたらどうなっていたことやら。
 まあてゐのことだ。
 なんとかして切り抜けただろうが……。


「なるほどー」


 鈴仙は感心した声を上げていた。
 変なところで素直だ。

 ……少々、心配になってくる。


「ほら、鈴仙も何か嘘吐いてみるといいよ」
「うーん」


 てゐに言われ、鈴仙は首を捻る。
 ややあってトコトコと霖之助に歩み寄り、口を開いた。


「お、おなかすいた……ウサ」


 じっと霖之助を見つめる鈴仙。
 霖之助はため息を人つつくと、カウンターの上にあったせんべいを取り、彼女に手渡す。
 せんべいを受け取った鈴仙は首を傾げながら……てゐの前へと戻っていった。


「もらっちゃった」
「……よかったね」


 もむもむとせんべいをかじりつつ、鈴仙が呟く。
 自分は嘘を言ったはずなのに、とでも思っているのだろう。

 てゐも呆れ顔を浮かべていた。
 そんな彼女に、霖之助は言葉を投げる。


「てゐ、人には向き不向きがあると思うんだが」
「まるで私が嘘吐くのに向いてるみたいな言い方じゃない」
「…………」


 答える代わりに、霖之助はため息を吐いた。
 その様子に、てゐは不満そうな表情を浮かべる。


「何か言いたそうだね、霖之助」


 てゐが霖之助ににじり寄って来た。
 いまだ幸せそうにせんべいをかじっている鈴仙を一瞥すると、耳元に口を寄せる。


「わかってないね。
 嘘はいけないことでしょ?」
「ああ、そうだな」


 嘘も方便、とあるがそれはあくまで場合によってだ。
 基本的にはつかないほうがいい。


「そのいけないことをあえて言って、相手に受け入れてもらえたらさ。
 つまり自分が許されてるってことだから」
「ふむ……?」
「つまり嘘を吐くということがストレス解消になるウサ」
「そこでそれを使うのかい、君は」


 語尾ひとつで途端に胡散臭くなってしまった。
 しかも彼女の場合、狙ってやっているから困る。


「それに霖之助、言ってたじゃん」
「……何をだい?」
「女の嘘は許すもんだって」
「言った覚えがないぞ、そんなこと」


 まったくひどい捏造である。
 そんな事を軽々しく口にすれば、どう利用されるかわかったものではない。


「ほえ~」


 なにやら感心した様子の声に、霖之助は振り向いた。
 見ると、鈴仙が驚いたようにこちらを見ていることに気付く。


「てゐ、霖之助さんと仲良かったんだねぇ」
「ん?」
「なに?」


 霖之助とてゐは同時に顔を見合わせた。
 確かにこの距離で話し込んでいれば、そう見えるのかもしれないが……。


「あれ、鈴仙は知らなかったっけ?」


 瞬間、てゐは笑みを浮かべる。
 いつもの表情。
 ……イタズラの前兆だ。


「私とこの嘘吐き店主は恋人同士ウサ」
「えっ……ああ」


 一瞬驚きの表情を浮かべる鈴仙だったが、てゐの語尾に気付き苦笑いを浮かべる、
 そんな彼女の様子を確認してか、てゐはゆっくりと口を開いた。


「鈴仙、レッスン2だよ」
「あ、うん」


 せんべいを食べて忘れてたのだろう。
 そのまま忘れていれば、まだ幸せだっただろうに。


「嘘ウサに慣れてきたら、本当のことにもウサを付けるといいよ。
 そうすることで揺さぶりをかけて、相手を翻弄できるから」


 そう言って、てゐは霖之助に唇を寄せた。


「こういう風に、ね」


 少しだけ赤い顔で、てゐは微笑む。

 目を丸くする鈴仙。
 口をぱくぱくさせている。
 言葉が見つからないのだろう。


「……まあ、そういうわけで。
 嘘は吐かない方がいいと思うよ。うん」


 霖之助は困ったように、てゐの頭に手を置いた。

 いまだ感触の残る頬、そして腕の中に、温かいものを感じながら。

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No title

とりあえず結婚しようか
そのあと優曇華もまねしててゐがあわてだしたてゐをみて
「嘘ウサ」って言うんですねw
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