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嘘吐きの墓場 Aルート

yamotoさんと会話してたら出てきた小町霖ネタ、そのいち。
映姫様は王者。主に井戸端会議的な意味で。

そしてこまっちゃんはおんなのこ。


霖之助 小町







「酒が不味くなる」


 霖之助はそう言ってため息を吐いた。
 口に運ぼうとしていた盃を、コトリと戻す。

 その言葉に、彼の正面に座っていた少女……小町は驚いた声を上げた。


「あたい、そんなにひどい顔してたかい?」
「自分で気づかないなら深刻だ。
 ……何かあったか、聞いていいものかね」
「いや、大したことじゃないよ」
「とてもそうは見えないが……」


 首を振る小町に、霖之助は苦笑を漏らす。

 酒飲み仲間が心配事を抱えているなら、愚痴を聞くことくらい出来るだろう。
 たまにはそういう酒の席もいいと思う。

 ……次の時にまで持ち越されても困るわけだし。


「あたい、今度結婚することになりそうでさ」
「…………」


 おめでとうと言っていいものか、霖之助は逡巡していた。
 そんな彼の様子を察してか、小町があわてた声を上げる。


「あ、いやいや。
 まだ見合いを勧められただけなんだけど」
「見合い……。
 なんでまた、そんなことに?」
「映姫様がね」


 自分の上司のことだからだろうか。
 彼女はなにやら言いにくそうに言葉を濁す。


「なんて言えばいいのかね……その」


 やがて言葉を選び……ただ一言。


「見合い写真を、山ほど」
「ああ、なるほど」


 それだけで理解できてしまった。


「その気持ちはよくわかるよ。
 ……僕もね」
「旦那もかい?」


 小町が疲れた笑いを浮かべる。
 霖之助はその表情に応えるように、棚の隅へと目をやった。

 あそこには見合い写真の山が大量に押し込まれている。
 見もせずに。

 どれも映姫が持ってきたものだ。
 曰く、所帯を持つことが貴方に出来る善行です、らしい。


「100%善意だから、余計きついんだよねぇ」
「断っても聞かないしな……」


 揃ってため息を吐くふたり。
 そしてふと、霖之助は疑問を口にした。


「しかし候補はどんな顔ぶれなんだい?」
「気になるのかい?」
「ああ、どんな物好き……いや」


 コホン、と咳払い。

 小町はしばらく半眼で睨んでいたが……。
 はぁ、と吐息を漏らし、苦笑を浮かべた。


「十王の縁者らしいんだけど。
 よく見てないからわからないよ」


 そのあたり、霖之助と同じようだ。
 なんと言うか……遠い言葉なのだ。見合いも、結婚も。


「なんかね、元々閻魔様に話が行ったみたいなんだけど、
 それをそのままこっちにスルッと」
「……なるほど」
「パワハラもいいとこだよ、まったく」


 憤慨する小町に、霖之助は肩を竦める。

 しかしまあ、ようやくいつもの小町らしくなってきたので一安心だ。
 ……こう言うと彼女は怒るかもしれないが。


「独身の部下で最年長が貴方なのです。
 見合いを受け、今の生活に節目をつけること。
 それが今の貴方にできる善行です。
 ……だってさ。酷いよね」


 唇を尖らせ、小町が漏らす。
 宴会芸にも使えそうなな物真似だった。
 長い付き合いの賜かもしれない。


「しかし十王の縁者ともなると、それなりの地位にあるものばかりじゃないのかい?
 だとしたら、かなりの出世とも言えるんじゃ……」
「あー……。
 確かに出世かもしれないけどさ。
 今の仕事を辞める気はないし……それに」


 そこまで言って、彼女は少しだけ照れたような笑みを浮かべた。


「結婚したら、旦那とこうやって飲む事も出来なくなりそうだしねぇ。
 それはもったいないかなって」
「……そうか」


 長く、息を吐く霖之助。


「何か、僕に出来ることはないかな?」
「え?」


 らしくなかったかもしれない。

 だが、小町の苦悩の解決と一人呑みの寂しさを天秤にかけたとき。
 ──傾いたのは、苦悩の解決の側だった。

 要するに、その程度には得難い時間であり……得難い相手だったのである。


「聞いてくれるかはわからないが、僕から映姫に言ってみようか。
 嫌なんだろう?」
「……うん……そうだけど。
 えっと、それならさ」


 何故か小町はもじもじと口ごもり……ややあって、言葉を発する。


「とりあえず映姫様には、気になる相手がいるってことで逃げてるんだよね。
 だから、その」
「……いや、それは……」


 最後まで言わなくてもわかった。
 確かにこういう場合、有効な手段ではあるだろう。


「この通り! この通り!! フリだけでいいからさ!」
「……はぁ……」


 だがそれは相手による。
 特に今回は、嘘が通じない相手というのに。

 だが、言ってしまったものは仕方ない。


「……今回だけだよ」


 無謀な賭けだ、と思いつつ。
 霖之助は大きくため息を吐いた。









「言うことはわかってるね?」
「何とかなる……とは思う。
 少なくとも、僕と小町がふたりだけで会ってるのは嘘ではないし」


 数日後、三途の川のほど近く。
 霖之助は小町と向き合い、打ち合わせをしていた。


「本当のことじゃないけど嘘ではない。
 これではぐらかすしかないと思うんだ」
「白黒はっきり付けようにも、どうとでも取れる答えをするしかないからね」


 まったく、あの裁判官は相手にすると本当に厄介な相手である。
 向かってくる相手には手加減皆無というところが、なんともはや。


「しかしもしそれでもばれた場合はどうするんだい?」
「えっ、そのときはほら……なんとかなるよ」


 相手が相手だというのに、その先のことは考えていないらしい。
 何とかなるのだろうか。
 ……心配になってきた。


「小町。なんですか、こんな所に呼び出して」
「きゃんっ」


 後ろから声をかけられ、小町が悲鳴を上げた。
 条件反射だろうか。

 振り向くと、小柄な少女の姿があった。
 件の裁判官、映姫だ。


「映姫様、あの、見合いのことなんですけど」
「ようやく決心しましたか。
 まかせてください、しっかりセッティングしますから」


 満面の笑みで、心底嬉しそうに彼女は言う。


「そ、それがですね」


 小町は慌てながら、ぐっと霖之助の腕を掴んだ。
 自分の胸に押しつけるように抱き、身体を寄せる。


(こ、小町……)
(いいから、旦那は話を合わせて)


 小声で囁き、映姫に向き直る。


「すみません、映姫様。
 あたい、今付き合ってる人がいるんです」
「…………」
「なので、映姫様の組んだ見合いは無効、と言うことに……」


 小町の言葉を聞き、映姫はじっと視線を向けてきた。
 すべての罪を見透かすような、その瞳。


「嘘はいけませんね、小町」
「えっ、あ、あたい嘘なんて……ね、旦那」


 断言する映姫に、小町は慌てて首を振る。


「ああ、一応ふたりだけで会っても……」
「一応は余計だよ!」


 やはり嘘は通じないのだろうか。
 そう思っていると、映姫が再び口を開いた。


「貴方と貴方、ふたりが付き合うと言いましたね。
 私が選んだ組み合わせの通りなのに、それがどうして私の見合いが無効になるのですか?」
「へ?」
「え?」


 映姫の言葉に、ふたり同時に声を上げる。


「……まさかふたりとも。
 私が渡した写真をまったく見てないとでも?」


 今度は揃って顔を見合わせた。


「はぁ……」


 その様子に、ため息を吐く映姫。

 ……つまり。


「旦那がちゃんと調べておけばよかったんじゃ……」
「君が言うかね、それを」


 写真を開いてもいないのだし、知らないのも無理はないではないか。
 ……しかしそれは、小町も同じようだった。


「でも、映姫様は十王の縁者って」
「縁者も、と言ったでしょう。
 人の話は最後まで聞くものですよ」


 ジロリとふたりを睨む映姫だったが、すぐに相好を崩した。


「……まあ、結果オーライと言ったところでしょう。
 しかしセッティングするのは見合いではなく結婚式でしょうか?
 ふふ、忙しくなりそうですね」


 そう言ってあっという間に飛び去っていく閻魔の姿を見送りながら……。
 ふたりはただ、呆然としていた。


「余計逃げられなくなったね、旦那」
「……ああ」
「どうする?」
「どうするも何も……どうしようか」
「ん~、あたいは今の仕事も続けられそうだし、今の関係も続きそうだし」


 彼女はひとつだけ吐息を漏らす。
 照れたような、安堵したような。


「……悪くない、かな」


 小町はそう言うと、霖之助の腕をもう一度強く抱きしめた。


 ──結婚は人生の墓場だという。死神と閻魔に誘われては逃げ場などあろうはずもなく。


「聞こえてるよ旦那」
「……口に出してないと思ったが」
「顔がそう言ってたんだって」


 笑いながらもしっかり腕に押し当たる胸の感触に、霖之助は逃れられない甘露な感情を思い抱く。

 どうせ死ぬなら確かに、こういうのも……。


「──悪くない、かな」

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No title

なんだかんだで相思相愛だった二人、よいものですね。
そしてどういう意図で映姫様が霖之助さんの写真を混ぜたのかが気になりますね。

・・・まさかこうなる事を見越して仕組んだのか?

結婚初夜がみたいな~なんて思ってませんよ全然(チラ
まぁそれはともかくこまっちゃんかわいいよこまっちゃん

No title

悪くないな。ああ、悪くない。

No title

四季さまのおせっかいがこんなことにw
…ってか、幽香ってなんでかグラマーなイメージが定着してますよねw
そんな中で僕のイメージはといえば、

幽香:T164-B78(66B)-W57-H79 CV:観村咲子
小町:T175-B90(70E)-W61-H91 CV:深雪さなえ
                                  (単位㎝、敬称略)

…と、雲泥の(おっぱいに至っては3カップもw)差があったりしますw
僕の中で小町は数少ない(わずか5人w)むっちり担当の1人で、他は魔理沙、小悪魔、神奈子、白蓮の4人ですw
ちなみに後の2人は

霖之助 :T178-B71-W62-H82 CV:水橋かおり
四季さま:T178-B89(71D)-W62-H85 CV:久川綾

となって…って、腰から上のラインが変わってねぇw

…とまぁ、こんな感じですw

それとその前の咲霖、咲夜ちゃんが相変わらずの天然乙女で安心しましたw
天然乙女な咲夜ちゃんかわいいですよねー
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道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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