子悪魔シリーズ10
子悪魔シリーズもとうとう二桁に。
あれ、いつまで続ける予定だったっけこれ。
追記。
挿絵を北緒さんに描いていただきました。
感謝感謝。
霖之助 パチュリー 小悪魔
「アラヤダ( ゚д゚)」
地下図書館にやってきた霖之助とパチュリーを見て、小悪魔は驚いた表情を浮かべた。
慌ててパタパタと近寄ってくる。
「どうしたんですか、おふたりとも。
昼からそんなにビチョビチョのヌレヌレで」
「君が言うとなんだか別の状態に聞こえる気がするね…」
ため息を吐く霖之助。
今に始まったことではないので、とっくに諦めているのだが。
「雨が降ってきたのよ」
「あ、そうなんですか。
ははぁ、それでしっぽりと濡れてしまったわけですね」
「……うんまあ、そうなんだけどね」
パチュリーの言葉に、小悪魔は納得したように頷く。
少し前に激しいにわか雨が降り出したのだが、地下にいた彼女は気付いていなかったのだろう。
「……それで、どうしてそんなことになってるんですか?」
小悪魔は改めてふたりを見て……首を傾げる。
霖之助の腕の中に、すっぽりと収まるようにパチュリーが抱えられていた。
そんな彼女に、霖之助は苦笑して答える。
「見ての通り、パチュリーの髪と服が雨に濡れて、水を吸ってしまってね。
知っていると思うが、水はまとまると結構な重さになるものだ。
それで、途中で動けなくなってしまって……」
「お父様がここまで運んできた、と。
それもお姫様だっこで」
「そういうことになるね」
ふたりの身体は濡れていない場所がないほどだった。
それだけで、雨の強さを知ることが出来る。
雨に濡れたパチュリーの髪は薄暗い灯りの中で淡く輝き、
張り付いた服が身体のラインを露わにしていた。
「んもぅ、お母様ったら貧弱なんですから。
夜の体力を少しは昼に分ければいいですのに」
「うるさいわ」
小悪魔の野次を、一言で切って捨てる。
それはそれ、これはこれなのだろう。
「館で妖精メイドに頼んだんだが、何も考えずに服を脱がせようとするからここまで来たというわけさ。
タオルの場所もわからないんじゃ困るんだがね……」
「あー、咲夜さん、今日お出かけしてますからね。
お嬢様と一緒に」
基本的に妖精メイドは役に立たない。
右往左往するだけで、問題を解決しようという気がないのだ。
きっと問題が起こっていること自体を楽しんでいるのだろう。
当事者にとってはたまったものではないが。
それにしてもこの雨の中、今頃吸血鬼は立ち往生しているかもしれない。
とはいえよくできたメイドが一緒なら困ることはないだろう。
「すまないが、タオルを持ってきてくれないか?
あと、パチュリーの着替えを頼むよ」
「はい、わかりました。
でもお父様、いつまでお母様を抱えてるんですか?」
「ん?」
言われて、霖之助は腕の中のパチュリーを見た。
同時にパチュリーも霖之助を見たらしく、ふたりの視線がぶつかる。
「……見つめ合ってないで、どこかその辺に放り出しておいてもいいですよ。
だって……」
やれやれ、とため息。
「強化魔法だってあるのに、くっついてるんですよ。
ただ甘えたいだけなんですから」
ウフフ、と笑う小悪魔に……。
パチュリーの魔法弾が激突した。
「はい、タオルです。
お風呂もう少しで沸きますからね」
「そう」
「助かるよ」
着替えて来たパチュリーのまだ濡れている髪を、霖之助はタオルで拭いていく。
そんなふたりの様子を見ながら、小悪魔は温かい紅茶や替えのタオルを手際よく準備していく。
「おふたりは薬草を植えてたんでしたっけ?
上手く行きました?」
「ああ、なんとかね。
美鈴がいてくれて助かったよ」
そもそも霖之助とパチュリーが外にいたのは、紅魔館の庭で触媒に使う魔法草を育てようと考えたからだ。
数多くの花が咲き乱れている庭の一角を借り、霖之助が準備した種を植えていく。
しかし庭を管理している美鈴に説明している途中で、急に雨が降り出したのだ。
後は私が、と言う美鈴に任せ、ふたりは屋敷に戻ったのだが。
端の方に作ったため、入り口まで移動するのにかなりの時間を要した。
そのせいで、かなり濡れてしまったわけだ。
「室内草なら地下でも育てられるんですけどねぇ。
あれ、でもお父様って家庭菜園みたいなの持ってませんでしたっけ。
ほら、店の裏に……」
「あるにはあるが、趣味レベルのものだからね。
デリケートな魔法草を育てるのはとてもとても。
やっぱり得意な人に任せるのが一番だよ」
その点、花を育てている美鈴なら安心だ。
天気や気温、湿度など、細かいチェックを常にしなければならないのはかなり気を使う作業である。
霖之助の場合、店内で本を読んでいることが多いためどうしても気付くのが遅れてしまう。
決して面倒くさいわけではない。
「もっと楽に育てられないんですか?
ほら、いましたよね。植物を操るのが得意な妖怪とか……。
その辺に頼むとか」
「ダメよ」
即答するパチュリーに、小悪魔は驚いた表情を浮かべた。
気まずそうに霖之助に視線を送る。
霖之助は苦笑しつつ、彼女に答える。
「触媒としての魔法草を育てるわけだからね。
妖気とかの影響があると、ちゃんと働かないことがあるんだ。
だから、普通に育てなければいけないというわけさ」
「ああー……なるほど。
私はまたてっきり……」
「てっきり、何かしら?」
「いいえなんでもございません」
首を振る小悪魔と、半眼のパチュリー。
ふたりの様子に霖之助は首を傾げたが……わからないことは考えない。
「はい、終わったよ」
「……ありがとう」
拭き終わったパチュリーの髪を優しく撫で、霖之助はタオルを手放した。
まだ湿ってはいるのだが、これからすぐに風呂に入ることを考えるとこれくらいで問題ないだろう。
そんなふたりを見ながら……小悪魔はニヤニヤとした視線を送ってくる。
「……なによ」
「いいえー。幸せそうだなーって思っただけですよ。
お父様に髪を拭いてもらって」
「…………」
パチュリーはなにも答えず、視線を逸らした。
霖之助は何となく、彼女の髪を手櫛で梳いていく。
さらさら、さらさらと。
「でもそんなに髪が長いと、いろいろ大変そうですね。
髪を短くするとか、考えないんですか?
もっと動きやすい服を着るとか。
お父様も大変かもしれませんし」
「そうね……」
ちらり、とパチュリーは霖之助に視線を向けた。
何か言いたそうにしている。
「ああ、僕だったら構わないよ」
霖之助はしばし考え……口を開いた。
「パチュリーは今の姿が似合っているからね。
それに……」
はっと霖之助を見るパチュリー。
そんな彼女に、彼は笑顔を向ける。
「支えてあげればいいだけだからね」
「はぁ~……」
惚けたように、小悪魔はため息を吐いた。
「殺し文句ですね、さすがお父様」
「そうかい?」
霖之助は首を傾げる。
単に思ったことを言っただけなのだが。
そう、今日のように。
「あ、そろそろお風呂がいい感じだと思います。
風邪引く前に入っちゃうといいですよ」
「じゃあ、僕はそろそろ……」
帰る、と言いかけた霖之助の手を、パチュリーが握った。
そのままじっと、目を見つめてくる。
「なんだい?」
「……あなたも、雨で濡れてるでしょう?」
「ああ、それはそうだが……」
パチュリーが着替えている間、タオルを借りて水分は拭き取った。
風邪をあまり引かないので問題はないと思っているのだが……。
しかし彼女は首を振り……少しだけ、顔を赤らめる。
「……一緒に、入る?」
あれ、いつまで続ける予定だったっけこれ。
追記。
挿絵を北緒さんに描いていただきました。
感謝感謝。
霖之助 パチュリー 小悪魔
「アラヤダ( ゚д゚)」
地下図書館にやってきた霖之助とパチュリーを見て、小悪魔は驚いた表情を浮かべた。
慌ててパタパタと近寄ってくる。
「どうしたんですか、おふたりとも。
昼からそんなにビチョビチョのヌレヌレで」
「君が言うとなんだか別の状態に聞こえる気がするね…」
ため息を吐く霖之助。
今に始まったことではないので、とっくに諦めているのだが。
「雨が降ってきたのよ」
「あ、そうなんですか。
ははぁ、それでしっぽりと濡れてしまったわけですね」
「……うんまあ、そうなんだけどね」
パチュリーの言葉に、小悪魔は納得したように頷く。
少し前に激しいにわか雨が降り出したのだが、地下にいた彼女は気付いていなかったのだろう。
「……それで、どうしてそんなことになってるんですか?」
小悪魔は改めてふたりを見て……首を傾げる。
霖之助の腕の中に、すっぽりと収まるようにパチュリーが抱えられていた。
そんな彼女に、霖之助は苦笑して答える。
「見ての通り、パチュリーの髪と服が雨に濡れて、水を吸ってしまってね。
知っていると思うが、水はまとまると結構な重さになるものだ。
それで、途中で動けなくなってしまって……」
「お父様がここまで運んできた、と。
それもお姫様だっこで」
「そういうことになるね」
ふたりの身体は濡れていない場所がないほどだった。
それだけで、雨の強さを知ることが出来る。
雨に濡れたパチュリーの髪は薄暗い灯りの中で淡く輝き、
張り付いた服が身体のラインを露わにしていた。
「んもぅ、お母様ったら貧弱なんですから。
夜の体力を少しは昼に分ければいいですのに」
「うるさいわ」
小悪魔の野次を、一言で切って捨てる。
それはそれ、これはこれなのだろう。
「館で妖精メイドに頼んだんだが、何も考えずに服を脱がせようとするからここまで来たというわけさ。
タオルの場所もわからないんじゃ困るんだがね……」
「あー、咲夜さん、今日お出かけしてますからね。
お嬢様と一緒に」
基本的に妖精メイドは役に立たない。
右往左往するだけで、問題を解決しようという気がないのだ。
きっと問題が起こっていること自体を楽しんでいるのだろう。
当事者にとってはたまったものではないが。
それにしてもこの雨の中、今頃吸血鬼は立ち往生しているかもしれない。
とはいえよくできたメイドが一緒なら困ることはないだろう。
「すまないが、タオルを持ってきてくれないか?
あと、パチュリーの着替えを頼むよ」
「はい、わかりました。
でもお父様、いつまでお母様を抱えてるんですか?」
「ん?」
言われて、霖之助は腕の中のパチュリーを見た。
同時にパチュリーも霖之助を見たらしく、ふたりの視線がぶつかる。
「……見つめ合ってないで、どこかその辺に放り出しておいてもいいですよ。
だって……」
やれやれ、とため息。
「強化魔法だってあるのに、くっついてるんですよ。
ただ甘えたいだけなんですから」
ウフフ、と笑う小悪魔に……。
パチュリーの魔法弾が激突した。
「はい、タオルです。
お風呂もう少しで沸きますからね」
「そう」
「助かるよ」
着替えて来たパチュリーのまだ濡れている髪を、霖之助はタオルで拭いていく。
そんなふたりの様子を見ながら、小悪魔は温かい紅茶や替えのタオルを手際よく準備していく。
「おふたりは薬草を植えてたんでしたっけ?
上手く行きました?」
「ああ、なんとかね。
美鈴がいてくれて助かったよ」
そもそも霖之助とパチュリーが外にいたのは、紅魔館の庭で触媒に使う魔法草を育てようと考えたからだ。
数多くの花が咲き乱れている庭の一角を借り、霖之助が準備した種を植えていく。
しかし庭を管理している美鈴に説明している途中で、急に雨が降り出したのだ。
後は私が、と言う美鈴に任せ、ふたりは屋敷に戻ったのだが。
端の方に作ったため、入り口まで移動するのにかなりの時間を要した。
そのせいで、かなり濡れてしまったわけだ。
「室内草なら地下でも育てられるんですけどねぇ。
あれ、でもお父様って家庭菜園みたいなの持ってませんでしたっけ。
ほら、店の裏に……」
「あるにはあるが、趣味レベルのものだからね。
デリケートな魔法草を育てるのはとてもとても。
やっぱり得意な人に任せるのが一番だよ」
その点、花を育てている美鈴なら安心だ。
天気や気温、湿度など、細かいチェックを常にしなければならないのはかなり気を使う作業である。
霖之助の場合、店内で本を読んでいることが多いためどうしても気付くのが遅れてしまう。
決して面倒くさいわけではない。
「もっと楽に育てられないんですか?
ほら、いましたよね。植物を操るのが得意な妖怪とか……。
その辺に頼むとか」
「ダメよ」
即答するパチュリーに、小悪魔は驚いた表情を浮かべた。
気まずそうに霖之助に視線を送る。
霖之助は苦笑しつつ、彼女に答える。
「触媒としての魔法草を育てるわけだからね。
妖気とかの影響があると、ちゃんと働かないことがあるんだ。
だから、普通に育てなければいけないというわけさ」
「ああー……なるほど。
私はまたてっきり……」
「てっきり、何かしら?」
「いいえなんでもございません」
首を振る小悪魔と、半眼のパチュリー。
ふたりの様子に霖之助は首を傾げたが……わからないことは考えない。
「はい、終わったよ」
「……ありがとう」
拭き終わったパチュリーの髪を優しく撫で、霖之助はタオルを手放した。
まだ湿ってはいるのだが、これからすぐに風呂に入ることを考えるとこれくらいで問題ないだろう。
そんなふたりを見ながら……小悪魔はニヤニヤとした視線を送ってくる。
「……なによ」
「いいえー。幸せそうだなーって思っただけですよ。
お父様に髪を拭いてもらって」
「…………」
パチュリーはなにも答えず、視線を逸らした。
霖之助は何となく、彼女の髪を手櫛で梳いていく。
さらさら、さらさらと。
「でもそんなに髪が長いと、いろいろ大変そうですね。
髪を短くするとか、考えないんですか?
もっと動きやすい服を着るとか。
お父様も大変かもしれませんし」
「そうね……」
ちらり、とパチュリーは霖之助に視線を向けた。
何か言いたそうにしている。
「ああ、僕だったら構わないよ」
霖之助はしばし考え……口を開いた。
「パチュリーは今の姿が似合っているからね。
それに……」
はっと霖之助を見るパチュリー。
そんな彼女に、彼は笑顔を向ける。
「支えてあげればいいだけだからね」
「はぁ~……」
惚けたように、小悪魔はため息を吐いた。
「殺し文句ですね、さすがお父様」
「そうかい?」
霖之助は首を傾げる。
単に思ったことを言っただけなのだが。
そう、今日のように。
「あ、そろそろお風呂がいい感じだと思います。
風邪引く前に入っちゃうといいですよ」
「じゃあ、僕はそろそろ……」
帰る、と言いかけた霖之助の手を、パチュリーが握った。
そのままじっと、目を見つめてくる。
「なんだい?」
「……あなたも、雨で濡れてるでしょう?」
「ああ、それはそうだが……」
パチュリーが着替えている間、タオルを借りて水分は拭き取った。
風邪をあまり引かないので問題はないと思っているのだが……。
しかし彼女は首を振り……少しだけ、顔を赤らめる。
「……一緒に、入る?」
コメントの投稿
No title
もうこのシリーズが待ち遠しくて仕方ないw
いつまでも続けていいのよ
いつまでも続けていいのよ
2828( ̄∀ ̄)
デレデレパチュリー御馳走様です。
風呂の中の話を激しくキボンヌ。
デレデレパチュリー御馳走様です。
風呂の中の話を激しくキボンヌ。
小悪魔シリーズきたああぁああぁあぁ!
流石道草さんだあぁあぁぁあ!
糖尿病になりそうだぜえぇええぇ!
……………ふぅ……。
今回も楽しませていただきました。
ありがとうございました。
流石道草さんだあぁあぁぁあ!
糖尿病になりそうだぜえぇええぇ!
……………ふぅ……。
今回も楽しませていただきました。
ありがとうございました。
No title
パチュリーまじ可愛いすぎる天使か
このシリーズの一ファンですが、毎度クオリティ高すぎて
いつもニヤニヤさせてもらってます
それでスクロールしても風呂の話が出てこないんですけど
このシリーズの一ファンですが、毎度クオリティ高すぎて
いつもニヤニヤさせてもらってます
それでスクロールしても風呂の話が出てこないんですけど
No title
そうだよね、そうだよね。せっかくお風呂が沸いたんだから一緒に入らない手はないよね!紅魔館なら広そうだしね!
小悪魔がローションとか仕込んでそうだけど。
小悪魔がローションとか仕込んでそうだけど。
No title
山が動いたwww
パチュリーのデレッデレ期がきたw
糖度がなんぼのもんじゃ~
砂糖の丘で溺死してもかまわん!
このシリーズ完結しないでほしい、いつまでもおまちしてます。
これからも頑張って下さいw
パチュリーのデレッデレ期がきたw
糖度がなんぼのもんじゃ~
砂糖の丘で溺死してもかまわん!
このシリーズ完結しないでほしい、いつまでもおまちしてます。
これからも頑張って下さいw
No title
きゃあああああああ!
なにこのパチェさん、この・・・なに?
叫びたくなるくらい甘酸っぱいんですけど!?
しかしパチュリーの髪を拭くのも拭かせるのも幸せそうでいいなぁ。
なにこのパチェさん、この・・・なに?
叫びたくなるくらい甘酸っぱいんですけど!?
しかしパチュリーの髪を拭くのも拭かせるのも幸せそうでいいなぁ。
パチュリーの殺し文句に絶賛吐糖中ですよ。
このパチュ霖は小悪魔というアクセントが良い感じに機能してますね~。
このパチュ霖は小悪魔というアクセントが良い感じに機能してますね~。
No title
どうやら幽香は霖之助が別居中につくった女だったわけだな
修羅場きたーーーー
修羅場きたーーーー
No title
おk
俺も一緒に入るからちょっちつめてくww(賢者の石
俺も一緒に入るからちょっちつめてくww(賢者の石
No title
2828させられますね。
本筋から外れてしまいますが美鈴は大丈夫なのでしょうか?w
本筋から外れてしまいますが美鈴は大丈夫なのでしょうか?w
No title
砂糖を吐く圧力で空が飛べそうですwww
で、お風呂の話はいずこへ?
で、お風呂の話はいずこへ?