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天に桃、地に桜 01

霖之助と天子が幼なじみだったら、という話をはみゅんさんから聞いて。
よし俺も、ということで。

少しだけ続く予定。


霖之助 天子









「ふぁいっ、起きてます!
 居眠りなんてしてないですっ」


 叫びとともに、美鈴は跳ね起きた。
 慌てて姿勢を正し、防御の姿勢を取る。

 ……しかし、いつもだったらすぐさま飛んでくるはずのナイフが飛んでこない。


「……あれ?」


 よくよく周囲を確認すると、近くには上司はおらず……。
 代わりに、彼女を起こしたらしい銀髪の青年が苦笑を浮かべていた。


「おはようございます、師範。
 よく眠られていたようで」
「……なんだ、霖坊かぁ」


 安堵のため息を吐く美鈴。
 しかし彼女の言葉に、青年……霖之助は肩を竦める。


「その呼び方はやめてよね。
 あと、丁寧口調も。いつも言ってるじゃない」
「じゃあ、僕のもやめてくれないか。
 むず痒くて仕方ない」
「うん、変えてるよ? 寝ボケてただけで」


 開口一番の言葉はどこへ行ったのか。

 美鈴は眠そうにあくびを漏らすと、改めて霖之助に向き直る。


「それに私、霖之助にそれほど教えてないし」
「でも美鈴の言葉が心の師になったのは事実だからね。
 感謝しているよ」


 もう何百年も昔のこと。
 妖怪と人間のハーフとして生まれた幼い頃の霖之助は、美鈴に武術を習っていたことがあった。

 ひとりで生きていく力を得るため。
 自分の身を、自分で守るため。

 しかしある時、冗談交じりで美鈴が漏らした言葉が、霖之助の方向を決めた。
 そもそも戦いに持ち込まないのが最強の戦略だよね、と。


「まあ、霖之助が納得してるならいいけど」


 今の霖之助にとって、武術も武器も戦闘を避けるための手段でしかない。
 矛盾を孕んだそのやり方を、しかし彼は気に入っていた。


「あ、師範で思い出したけど。
 師父、元気かな。もう長いこと会ってないよ」
「ああ、そうだね。
 確か美鈴が『なんかでっかいことやってくる』といって師父の元を出奔して以来だね」
「……そうだったっけ?」


 首を傾げる美鈴に、霖之助は大きくため息を吐く。

 美鈴と霖之助は、かつて天界にいる同じ師の元で学んでいた。
 美鈴に師事したのもその時だ。

 霖之助にとってはふたりが師匠であり、育ての親でもある。

 修行を修了した霖之助は師から真火を分けてもらい、地上を旅していた。
 姉弟子と再会したのは、比較的最近のことだ。


「と言っても僕ももう長いこと会ってないけどね。
 天界を出たのなんて随分昔のことだし」
「まあ、あの方が体調を壊すなんて事はまず考えられないけど」


 霖之助の師父はハーフという境遇の彼を面白がって拾ってみたらしいのだが、
霖之助の世話はもっぱら美鈴がしていた。
 そのせいか、今でもたまに子供扱いされることがある。


「しかしでっかいこと、ねぇ」


 そして紅魔館に視線を移し、口を開いた。


「確かに屋敷と門はでっかいけどね」
「でも、門番だって立派な仕事だよ。
 門に入れるべき人間を選定するわけだから。
 つまり当主に次ぐ権限を持ってると言っても過言じゃないね」
「……まあ、そう言う考え方も出来るかもしれないね。
 けど、寝てたらそれも無理だと思うよ」
「うぐ」


 言葉を詰まらせる美鈴に笑いつつ、霖之助は空を見上げる。

 空はどこまでも澄み渡っていた。
 どこまでも、青く。

 自分がいた場所をここから確認することは出来ない。
 それほどにもう、遠い場所。


「まぁ、眠りたくなる気持ちもわかるけどね」
「だよね、だよね!」
「といっても、師父みたいに眠るためのスーツを作るほどではないけど」
「怠惰に過ごすことが生き甲斐だものねぇ」


 そう言って、美鈴も空を見上げた。


「こんな日は、ゆっくり読書に限る」
「こんな日は、ゆっくり昼寝に限る」


 そしてどちらからともなく、言葉を漏らす。


「同じ流派だと、考え方も同じになるのかしら」
「ん?」
「え?」


 声がした方に、同時に振り向いた。

 銀色の髪のメイド長。
 咲夜は呆れた顔で、ふたりを見る。


「……やあ、咲夜」
「あ、咲夜さん」
「約束の時間は過ぎてるわよ。
 いつから道具屋から油売りに転職したのかしら」
「それはすまなかったね。
 それにしてもさすが、時間に正確だな」


 時間に遅れたので、探しに来たのだろうか。
 霖之助はばつの悪そうな表情を浮かべると、咲夜について紅魔館へと向かった。

 その背中に、美鈴が声をかける。


「あ、霖坊……じゃなかった霖之助。
 昔の話してたら思い出したんだけど、あの子は元気?」
「あの子?」


 霖之助は立ち止まり……咲夜の顔を確認する。

 咲夜は何も言わなかった。
 構わない、ということだろう。


「ほら、霖之助と一緒にいた女の子。
 幼なじみがいたじゃない」
「ああ……」


 天界は霖之助のような一部の例外を除き、天人の領域である。

 その中に、幼くして天人になったひとりの少女がいた。
 年の近かったふたりはよく一緒に遊んだものだ。

 いわゆる幼なじみ、で間違いはないだろう。


「もう長らく会ってないからね。
 ちゃんと天人の修行をしてるといいんだが」
「会ってない? なんで?」
「なんでって……」


 美鈴の言葉に、霖之助は首を傾げる。
 そんな霖之助の様子に、美鈴も首を傾げた。


「幼なじみなのに?」
「幼なじみだろう?」


 ふたり、同時に言葉を放つ。


「向こうももう忘れているんじゃないかな」
「えー、でもたまに天界から様子を見てたりして」
「ははは、まさか」


 首を振る霖之助に、咲夜が声をかける。


「もういいかしら」
「あ、はい。
 すみません」
「じゃあまた」
「じゃあね」


 美鈴は紅魔館へと向かうふたりを見送り、大きく伸びをする。


「忘れてる……?
 ……そうかなぁ」


 そしてひとり空を見上げながら、霖之助の言葉を思い返し……首を捻っていた。









「あら、お出かけですか?」
「うん。ちょっと出かけてくる」
「地上ですか?」
「決まってるじゃない」


 頷く少女に、彼女は首を傾げた。


「なんだか随分気合いが入っておられるようですね。
 とうとう決着を付けに行くおつもりで?」
「なんでそうなるのよ。
 ……ちょっと、友達に会いに行くだけよ」
「友達、ですか?」
「……そこで驚いた顔されると何か腹立つんだけど」


 そう言って…そっと、ため息。


「……そうよ。
 友達なのよ」

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非公開コメント

No title

>師父みたいに眠るためのスーツを作る
え?まさか太上老君!?

めーりんが姉弟子で師匠なうえに天子と幼馴染とは・・・・・
続きに期待!

No title

怠惰スーツktkr

まさかの新シリーズ+キャラ関係。次回も楽しみにしております。

No title

天美霖…だと…しかも美鈴のほうがお姉ちゃん!?
このカプは予想外すぎる…楽しみです!

…それにしても、天霖はそこそこあるのに美霖は少なすぎ ><
もっと増えるべきだと思うのです!

天には桃 地には桜
中間の山には椛ガイル

それにしてもまさかのめーりん師匠お姉ちゃん
_, ._ ∩
(; ゜Д゜)彡 支援支援メーリン支援
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