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太陽の休憩所

天然エロ娘っていいよね!
ってはみゅさんが言ってた。

なんだかんだで出会いの話を書くのが好きです。


霖之助 お空








 究極のエネルギーが幻想郷にある。
 その噂を聞いたのは、間欠泉の異変が解決してしばらくのことだった。

 話によると、外の世界でも実現できていない未来のエネルギーらしい。

 道具屋である霖之助が興味を持つのは必然だった。
 もしかしたら外の世界の道具が動くようになるかもしれない。
 そして動きさえすれば、使い方を知るのも容易いことだろう。

 野望と希望、そして願望を胸に、霖之助は究極のエネルギーの在処を探した。
 しかし。


「あんな暑くて熱いところ、もう行きたくないぜ」


 妹分に聞いても、つれない答え。


「あやや、その答えなら私の新聞に!」


 読んでもわからなかったから聞いているというのに。


「究極~? ニャハハ、私に勝ったら教えてやるよ」


 鬼に聞いたのが間違いだったかもしれない。


「究極のエネルギー、それは愛です!」


 現人神の言葉だが、漫画を読みながら言われても説得力に欠ける。


「究極のエネルギーより、私はお茶が欲しいわ。
 そうそう、猫飼い始めたの。餌、貰っていくわね」


 博麗の巫女にいたっては、そもそも興味がないようだ。


「あ、猫暖房なんてどうかしら。
 究極よ。ある意味で」


 おまけにありがたい提案まで頂いた。

 それからしばらく探してみたものの、一向に見つかる気配がない。
 諦めかけていた霖之助にその情報が入ったのは、UFO騒ぎが収まってしばらくのことだった。


「究極のエネルギー?」


 河童のバザーが開催されると言うことで、にとりは香霖堂にやってきていた。
 外の世界の道具から、インスピレーションを得たいらしい。
 確かにそれなら、使い方はわからずとも見た目と目的だけで何とかなるだろう。


「あー……もしかして、あの子のことかな?」
「知っているのかい?」


 試しに聞いてみて正解だったようだ。
 思わず身を乗り出しかける霖之助に、しかしにとりは難しい表情を浮かべる。


「知っているというか、仕事仲間というか……」
「そうか、ならば話が早い」


 霖之助はにとりの湯飲みにお茶を入れながら、言葉を続ける。


「究極のエネルギーをぜひこの目で確認したくてね。
 よかったら紹介して貰えないかい?」
「ん~……」


 にとりは変わらず困ったように、なにやら考え込んでいる。


「何か不都合でもあるのかい?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど」


 霖之助の言葉に、彼女はパタパタと手を振った。


「あんまり霖之助と話が合うタイプには思えなくてさ。
 こう……いろいろと特別な子だから」
「そうかい?」


 話から察するに、究極のエネルギーを持っているのは少女のようだ。
 それだけの力を持っているのなら、多少特別でも仕方がないだろう。
 それにどこかのスキマ妖怪より特殊だとは思えない。


「とはいえ半盟友の頼みだからね。まあ、あとは実際に本人に聞いてみるといいよ」
「じゃあ……」
「とりあえず明日あたり来るように言ってみるよ。
 その子の名前は空と言ってさ……」








 人と会うのに緊張するのは、どれくらい振りのことだろう。
 にとりから説明を受けてから、霖之助は珍しく落ち着かない時を過ごしていた。

 太陽神と言えば一番有名なのが女神……天照大御神だろう。
 生命に欠かせない太陽。しかし同時に日照りなどといった荒ぶる一面も持っている。
 また、スサノオの横暴に怒り天岩戸に篭ったという逸話から、霖之助は細心の注意を払っていた。


「やあ、いらっしゃい。香霖堂へようこそ」


 ドアのカウベルを合図に、霖之助は声をかける。

 店に入ってきたのは、ひとりの少女だった。
 艶やかな黒髪をリボンでまとめ、そして深く吸い込まれそうな色合いのマントの下に畳まれた……漆黒の翼。


「君が空君……だね?」
「うにゅ? おにーさんが私を呼んだの?」
「あ、ああ。そう……だが」


 空は子供のように目を輝かせながら、パタパタと羽根を動かした。
 なるほど、と霖之助は考えを改める。
 太陽神といえ、彼女は漆黒の鳥……八咫烏のほうらしい。


 それにしても彼女が口を開いた瞬間、なにやら威厳や緊張感といったものがどこかに飛んでいった気がする。
 ……いいことかもしれないが。

 自信の勝手なイメージとのギャップに苦笑いを浮かべつつ、霖之助は彼女に席を勧めた。


「僕は森近霖之助。この通り、古道具屋を営んでいるよ。
 空君が、究極のエネルギー……太陽の力を手にしたのかな?」
「うん、山の神様にね、こうピカーって……。
 あ、私のことはお空って呼んで。みんなそう呼ぶから」
「わかったよ、お空」


 お空はお茶に手を伸ばし、息を吹きかけた。
 太陽神とはいえ、それはそれ、これはこれらしい。


「にゅ? それでおにーさんは私に何の用があるの?」
「……にとりから何も聞いてないのかい?」
「うん、お菓子をくれるからこの店に行っておいで、って」


 霖之助は河童の顔を思い浮かべ、頭を抱える。
 もう少し説明してくれてもいいと思うのだが、そんな事を言っても始まらない。


「ちょっと君の力に興味があってね。
 よければ、究極のエネルギーと称されるほどのものを調べさせて欲しいんだが」
「私の力? 調べたいの?」
「ああ。見ての通り香霖堂には外の世界の道具が数多あるんだが、
 いかんせん動力がなくて動かないものが多いんだ。
 それで、君の力がその動力になれば……と思っていてね」


 お空は霖之助の説明を聞き、なにやら考え込む。、


「ん~、さとり様にももっと力の使い方を勉強しなさいって言われてるから、私は構わないんだけど。
 でも、一応さとり様にやっていいか聞いてみないと……」
「さとり?」
「私の飼い主だよ。とっても優しいの。たまに怖いけど」


 飼い主という言葉に少し驚くが、すぐに思い直した。
 そう言えば、彼女は元々動物だったのだ、とにとりは言っていた。
 見た目ではあまりそう見えないため忘れがちになるが。


「それに今日はお菓子を貰うだけの予定できたから、すぐにお仕事に戻らないといけないし
「そうか……いや、それなら仕方ないな」」


 どれだけお菓子が欲しいのだろうか。
 だがまあ、素直なことはいいことだ。

 思わず霖之助は笑みを浮かべた。
 忘れていた感覚。

 にとりは霖之助とお空が合わないのではないか、と言っていた。
 最近の彼しか知らない彼女にはそう思えるかもしれない。

 しかし何となく、お空と話していると懐かしい気分になった……。
 昔の魔理沙を相手にしていた時のことを思い出すからだろうか。


「じゃあ、君の主人に伝えてくれないか?
 僕も無理に手伝ってもらいたいわけじゃないからね」
「うん、いいよー。えっと、お菓子くれるって言った男の人に店の中で私を調べられそうになって……」
「……やめてくれ、ひどい誤解を生みそうだ」
「うにゅ?」


 可愛らしく首を傾げるお空に、霖之助はため息を漏らす。
 彼女に任せていたら、まとまるものもまとまりそうにない。


「手紙を書くから、少し待っていてくれないか。
 それくらいの時間はあるかな?」
「うん、大丈夫だよー」


 さて、と霖之助は便箋と筆を用意した。
 幸いなことに先日拾った、上質なものがある。
 外の世界では手紙を出す風習も薄れてきたのだろうかと心配になったが、こういう時にはかえってありがたい。


「あは、なんだろうこれ。おもしろーい」


 筆を走らせている間、お空は商品棚を興味深そうに眺めていた。
 霖之助が時折、彼女が興味を持ったものに対して説明をしていく。

 手紙に書く用件は簡潔で、明確だ。
 こういう場合、いろいろ言い訳するよりもストレートに言ったほうがいいだろう。
 ……お空の説明で、変に話がこじれるよりも。


「じゃあ、これを君の主人に渡してくれ。それと、お菓子だったね」


 手紙と一緒に、いくつかのお菓子を手渡した。
 これも外の世界のもので、いわゆる駄菓子というやつだ。
 彼女の好みがわからなかったので、甘いものとしょっぱいものを両方。

 あとは何となく、彼女が好きそうなものを。
 ……昔の魔理沙を、思い出しながら。


「ありがとう、おにーさん。じゃあ、ちゃんと渡すからね」
「ああ、よろしく頼む」


 満面の笑みで去っていくお空を、霖之助は少し心配そうに見送っていた。








 地霊殿の主から返答が来たのは、その次の日だった。


 ――拝啓。香霖堂様。
  お空の力の件、了承しました。
  本人も未だに使い方がわかっていない所もあるようなので、いい機会だと思います。
  よろしければ、調べてわかったことをお空と、それから私にも教えてください。

  くれぐれも、本人の嫌がることはしないように。
  お空の心を読めば、何をされたかくらいわかります故――


「ふむ、なるほど」


 お空の主人……さとりの手紙には、だいたいそんな事が書いてあった。
 あとはお空への気遣い、等々。

 親心、というやつだろうか。
 ……わかる気がする。


「さとり様、なんて書いてたの?」
「君のことを頼む、らしいよ。読むかい?」
「ううん、おにーさんがそう言うならそうなんだと思うよ」


 霖之助が差し出した手紙に首を振り、お空は笑った。

 見知らぬ相手だというのに、信頼しているのだろうか。
 それとも単に、読むのが面倒なだけか。

 とはいえ、さすがに手紙の内容くらいは口頭で伝えられているのだろう。


「さとり様がね、休憩時間はここで過ごしなさいだって。美味しいご飯も出る?」
「ああ、それも書いてあったよ。食事はまぁ、希望するなら出してもいいが……。
 ところで、今がその休憩時間なのかい?」
「うん」


 満面の笑みで頷くお空。

 間欠泉地下センターはその名の通り、地下にある。
 地下からやって来るお空が仕事終わりに地上の香霖堂に行くのは確かに非効率的だろう。
 つまり休憩所代わりに使う、ということだ。

 彼女には伝えなかったが、さとりの手紙では休憩時間にひとりにするのは心配だと書いてあった。

 お互いの利点が一致すれば、断る理由もない。


「ね、ね。それより昨日貰ったお菓子、とっても美味しかったよ!
 とっても美味しかったから、我慢してお燐たちにもあげたの」
「ほう、それは……偉いね」
「えへへ。そうかな?」


 霖之助は何となく、お空の頭を撫でた。
 目を細め、されるがままになる彼女に、思わず懐かしい感情が湧き上がる。


「しかし地下センターか。どんな仕事をするんだい?」
「すごいこと!」


 彼女は誇らしげに胸を張り、即答した。
 ……もしかしたら、本人もよくわかっていないのかもしれない。


「あとねぇあとねぇ。侵入者を排除するお仕事とか!」


 余計に仕事内容がわからなくなった。
 ……わからないことは考えない。


「じゃあ、休憩時間が無くならないうちに早速本題に入ろうか。
 それとも、先に食事をするかい?」
「んーん、今日は食べてきたからいい」


 なんでも、地下センターでも一応弁当は出るらしい。
 ただし作業員の河童向けらしく、きゅうり尽くしのようだ。

 ……それで、お空は食事を頼みたいのだろう。


「なら話は早いね。まずは君の能力を……」
「うん。こう?」


 あ、と言う間もなく。
 お空は頭の上に指を伸ばした。

 瞬間、圧倒的な光量が店内を包む。
 地下の太陽とはよく言ったものだ。


「……ちょっと、待ってくれ、お空」
「うにゅ?」


 霖之助の声に、お空は手を下ろした。
 同時に光も消える。


「……頼む。店の中では、能力を使わないように」
「はーい」


 幸いにも、光だけで店の中への被害はないようだ。

 素直なことはいいことだが……。
 まずはそこから、らしい。
 霖之助は長い道のりを思い、深いため息を吐いた。

 とりあえず。
 地霊殿の主への手紙で、今日のことを報告しようと思いながら。

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これからどう進展していくのかwktkっす!
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道草

Author:道草
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同好の士は大ウェルカムだよね。
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