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迷いを探して

妖霖を増やすということになったので。
霖之助に頭を撫でられている妖夢をイメージした結果。

みょふんでも未熟でも成長しても、どれもいいと思います。
兄妹みたいな関係もいいよね!

『100年後の恋心』の続きかもしれないしそうでないかもしれない。


霖之助 妖夢







 白刃が光を反射し、怪しく煌めいた。
 霖之助はその光に吸い込まれるように、紙で刀身を拭っていく。


「この刀は正宗と言ってね。
 日本刀の名前は刀工の名前で呼ばれるんだが、正宗という名前の刀工は何人かいるんだが……。
 一番有名なのは五郎入道正宗で、鎌倉時代末の人物だよ」


 店の看板は準備中になっている。
 つまり営業時間外であり、その時間をこうやって道具の手入れに費やしているという


「しかし名刀と言われるもの……特に正宗、村正には偽物が多くてね。
 鑑定するときには、まず偽物じゃないかと疑ってかからなければならないほどだよ」
「……その刀は本物なんですか?」
「さぁ、どうかな」


 その言葉を聞いて、今まで黙って話を聞いていた妖夢が口を開いた。

 後ろで正座したまま霖之助の動作を見ている彼女に、振り返らないまま答える霖之助。


 お願いがあるから、と彼女やって来たのが少し前のこと。
 刀の手入れをしようとした霖之助は一瞬迷ったのだが……。
 思うところがあって、彼女を招き入れた。

 作業が終わるまで邪魔はしないという妖夢に、霖之助は刀の説明をしていたのだ。


「じゃあ、偽物ですか?」
「いや、そうとも限らない」
「……どういうことです?」


 妖夢はわからない、と言うように首を傾げる。
 もちろん霖之助からはその仕草を見ることは出来ないが、雰囲気でわかる。


「少なくともこれは最強の刀になるべくして生み出されたものだよ。
 正宗、と言う名前とともにね。
 その点で言えば……確かに本物と言えるだろう」


 自分の背丈よりも長いそれを、霖之助は丁寧に手入れしていく。
 刀身には珠をはめ込めるようないくつかの穴が空いており、特別な用途があるだろうと言うことが推察できた。


「すごく長い刀ですね。人間に扱えるんですかそれ?」
「君が言うかね」


 ため息を吐きながら、霖之助は初めて妖夢を振り返る。

 彼女が持つのは、楼観剣……阿求の書物によれば、長すぎて並の人間には扱えない、妖怪の作った剣らしい。
 幽霊10匹分の殺傷力を持つというが……。


「この刀の名前正宗であることには変わりないよ。
 正解はひとつではないのだからね」
「はぁ……そういうものですか」


 妖夢はよくわかっていないようで、曖昧な顔で頷いた。

 霖之助は苦笑しながら刀の手入れを続けていく。


「それで、君は何の用で来たんだったかな」
「あ、そうなんですよ」


 妖夢は姿勢を正し、コホンと咳払い。


「実は、お願いがありましてですね」


 ……しかし、そこで口を噤んだ。
 なにやら言い出しにくそうにしている妖夢を、霖之助は黙って待つ。

 ようやく彼女が口を開いたのは、10分ほどが経過してのことだった。


「あの……ですね。
 剣に認められるには、どうしたらいいでしょうか?
 ……どうしました?」
「いや、なんでもない」


 ちょうどお茶を飲もうとしていた霖之助は、妖夢の言葉で思い切りむせてしまった。
 珍しく慌てた様子の彼に、妖夢は首を傾げる。


「……どこかで聞いた話だと思ってね」
「はい?」
「いや、なんでもないよ」


 霖之助は刀を鞘に仕舞うと、妖夢に向き直った。


「……どうして認められたいんだい?」


 呼吸を整え、霖之助は口元を拭う。
 訝しげな表情のまま、妖夢は口を開いた。


「えっと、最近幽々子様が真面目に剣の稽古をしてくれなくてですね」


 そう言えば、彼女は幽々子の剣術の指南役だったことを思い出した。


「それでですね、理由を考えてたんですよ。
 どうやったら剣術に打ち込んでくれるかとですね。
 剣に認められたら私も……」


 妖夢は白楼剣を眺めながら、ぽつりと呟く。


「おじいちゃんがこの剣を使ってたころは、すごかったんです。
 もっと一体感があったというか……。
 鬼気迫るって言うのはああいうのを言うんだなって今にして思います」


 そこでひとつ、彼女はため息。


「それでその、道具のことに詳しい霖之助さんに、ちょっと聞いてみようかと思いましてですね」
「なるほどね」


 霖之助は改めてお茶を飲んだ。

 なるほど、だいたいのことはわかった。
 しかし……。


「残念ながら、僕にもその方法はわからなくてね」
「そうですか……」


 肩を落とす妖夢。
 そんな彼女に、霖之助は苦笑を漏らす。


「だが剣に認められる方法を探すのなら、協力してもいい」
「本当ですか?」


 彼女は驚きの声を上げた。
 目を丸くしたその表情は、まるで予想していなかったようで。


「なんでそんなに驚くんだい?」
「いや、その。
 正直協力してもらえるとは……」


 言葉を濁す妖夢に、霖之助は肩を竦める。


「ちょうど僕も探してるところだし……ね」









 特別な道具というのは、能力を使わずとも気配でわかる。
 霖之助の手の中にあるのはまさにその特別な道具だった。


「白楼剣は魂魄家の者しか扱えない刀。
 斬られた者の迷いを断つ事が出来る……そういうことだね?」
「はい、そうです」


 妖夢から預かった白楼剣をじっくりと観察する。
 思いがけないチャンスがやってきたのは僥倖と言っていいだろう。

 いつかじっくり調べてみたい道具のひとつだったのだ。
 楼観剣の方は、妖夢が離さなかったので無理だったが。


「君は剣に認められる、とはどういうことだと思うかい?」
「そうですねえ……」


 う~ん、と妖夢は首を捻る。

 彼女の言うことが本当なら、前の白楼剣の使い手……彼女の祖父は剣に認められていたのだろう。


「やっぱり剣の腕、でしょうか。
 おじいちゃんも、ものすごかったですし」
「剣が使い手を選ぶ、か。
 確かに……」


 確かにその可能性は高い。
 ……だが。


「それだけだ、とは限らないだろうね」
「そうですか?」


 単純に、剣術の腕だけならば妖夢の方が霖之助より遙かにに上だろう。
 ならば妖夢が霧雨の剣に認められるか、と言えばまた別問題である・


「他にも要因があると?」
「ああ、そうだ。
 剣に認められるということは、即ち剣にも意志のようなものがある、と言えるのではないかな。
 そして人間同士、妖怪同士にも相性があるように、剣と使い手の間にも……むしろより顕著にそれが出るのかもしれない。
 例えば君のようにね」


 霖之助は白楼剣を鞘に収めると、妖夢へ手渡した。
 なるほど、彼女が持つことで剣に若干の変化が見て取れる。
 これが魂魄の者しか使えない、ということだろうか。


「……君は迷いを抱いたことはあるかい?」
「剣を振るときに、そんなこと思うはずがありませんよ」
「ふむ」


 妖夢の瞳は真っ直ぐで、心の底から思っているようだった。


「剣術指南のお役目も、庭師の仕事も、私には大事なものです。
 目の前にやるべき事があるんですから、脇道に逸れてる暇なんてありませんよ」


 日々懸命で、前を見て。

 ……迷いも知らないような瞳で。


「……ははぁ、なるほど。
 君が認められていないと感じるのは、もしかしたら……」
「わかったんですか?」
「ああ」


 妖夢は、迷うことがない。
 迷うほどのことをまだ経験していないのだろう。


「どうしてですか? 教えてくださいよ」
「つまり君が、未熟者だということだよ」
「ええー?」


 妖夢は不満そうに唇を尖らせる。


 きっとこの剣は、使う者の『迷いを断ってきた経験』を糧にするのではないか。
 寿命のない幽霊とのハーフたる、半霊の一族。
 その長大な寿命だからこそ扱える剣なのではないか。


 ふと、そう思った。
 もちろん、確証も根拠も希薄なものだ。

 ……なら、これから確認していけばいい。


「なに、まだまだ先は長いのだからね」


 霖之助の言葉に、なおも妖夢は食い下がる。


「教えてくださいよー」
「それを教えると僕が君の主人に怒られてしまうからね」


 安易に答えを教えるものではない。

 ……まあ、迷いを教えるということは脇道に導くということだ。
 彼女にとって無駄なことではないとしても、やはり彼女の主に怒られてしまうだろう。
 たぶん。


「しかし、あまり参考にはならなかったな」
「なにがですか?」
「こちらの話さ」


 そもそもそれが正解なのかもわからないのだし。

 霖之助は霧雨の剣が仕舞ってある場所を横目で見ながら、苦笑を漏らした。


「いろいろ経験を積むといい。
 それが多分、近道だよ。
 ……まあ、違ったらまた考えればいい」
「よくわかりませんけど……霖之助さんがそう言うなら」


 妖夢は撫でられた頭を押さえ、少し顔を赤らめる。


「じゃあ、霖之助さん。
 一緒に探してくださいよ、私が剣に認められる方法」
「僕がかい?」
「はい、えっと。
 とりあえず、剣の稽古を一緒にやるとか……」
「剣の、ね」


 ふむ、と考える。
 確かにそれも悪くないかもしれない。

 剣の腕があるには越したことがないのだから。


「じゃあ、気が向いたときにでも」
「そうですか?」


 霖之助の返事に、妖夢の顔がぱっと明るくなった。
 それほど嬉しかったのだろうか。


「じゃあ、明日の朝4時に白玉楼で……」
「それは断る」


 即答する彼に、妖夢はがっくりと肩を落とすのだった。

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非公開コメント

No title

初コメ失礼します。  

新作ktkr! といつもワクワクしながら毎日拝見させて頂いてます^^
ほんとここの霖さんの絡み、大好きです。 妖夢も可愛いですし(゚ー゚ )←
これからも頑張ってください、応援してます。

あと、たぶん誤字・・・? 「刀の手入れを仕様とした霖之助は一瞬迷ったのだが……。」  「仕様」・・・「しよう」?これが仕様でしたらすみません←

No title

某2次創作動画の妖忌さんの若いころの姿がセフィロスそっくりだったの思い出しちゃったよ。
そうか、正宗は幻想入りしていたのか・・・近い内にバスターソードも幻想入りするんだろうな。

携帯から失礼します

この後りんのすけが妖夢を悩ましい感じにするんですね! 恋の迷路に迷い込ませるんですね!

自分もフランの恋の迷路で右手中指をつったことがあります

No title

>妖霖を増やすということになったので。
>妖霖を増やすということになったので。
>妖霖を増やすということになったので。
ひゃっほーい! 流石道草さんだっ!俺たちに出来ない事を平然と(ry
これからは何時も以上にワクワクしながら更新を待たせて頂きますっ!

No title

スレでも叫んでいましたが、こんな零細の要求に応えて頂き誠にありがとうございます。
言い出しっぺの私の思い付いたネタが、先ず幽々霖を書かなければ成立しないとは……情けない限りです、ハイ。
それにしても、私の思う以上に妖霖って需要あるんですねぇ……気合入れ直しますか。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

このお話は読んでなかったので、読んでみたら・・・まさかのマサムネ幻想入りwww
人には扱えない代物ですよねwww
3メートル以上ある長さの刀・・・無理ですねww

妖夢と剣術の稽古をする霖之助さんも見てみたいです(´∀`)
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