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カラオケシリーズ13

というわけでカラオケシリーズは一段落。
霖之助の選曲はリクエストにより。

個人的趣味全開のシリーズだったと思います。
まあいつも趣味全開なんですがね。









「おぼえてい~ますか~ 目と目が会った時を~
 おぼえてい~ますか~ 手と手が触れあった時~」


 風祝の歌声が博麗神社の境内に響き渡る。
 ある者は聞き、またある者は呑み。

 思い思いに、宴会を楽しんでいた。


「それがはじ~めて~の~ 愛と旅立ちでした~ I love you, so...」


 振り付けも完璧、歌い方も堂に入ったものだ。
 よほど慣れているのだろう。

 ステージ上で歌う早苗を眺めながら、霖之助は盃を傾けた。


「もう、ひとりぼっちじゃない あなたがいるから……」


 歌い終わると、拍手が巻き起こる。
 さすが自分のマイクを持ってくるだけのことはある、と、霖之助はそんなことを考えていた。


「はぁい、楽しんでいるかしら」


 にゅ、とスキマから紫の上半身が現れる。
 霖之助は差して驚いた様子もなく、ゆらり、と盃を揺らした。


「ああ、おかげさまでね」
「そう。それはなにより」


 特設ステージでは歌い終わった早苗が、名残惜しそうな表情で箱に手を突っ込んでいた。
 きっと歌い足りないのだろう。

 歌い終わった者がくじ引きで次の者を選ぶ。
 こうすればスムーズに交代できるらしい。

 マイクを握ったら離さない人もいるのだから、と言って紫は笑う。


「それにしても、来てくれて嬉しいわ」
「せっかくのお誘いだからね」
「断られるかと思っていたけど」
「ただ呑むだけの宴会だったら考えただろうね」


 博麗神社でカラオケ大会が行われる、と聞いたのが少し前のことだ。

 ここ数ヶ月、紫や幽々子たちの歌を聴いてなかったら参加してみようという気にはならなかったかもしれない。

 まあ、カラオケの機材にも興味があるし、それに……。


「それに君から借りたこの音楽プレイヤーの恩もあるしね」
「気に入ってくれたようね」


 紫はそう言うと、胸元から小さな箱を取り出した。
 霖之助の持っているものとお揃いで、色違いの音楽プレイヤーのようだ。

 彼女が持っていると、上品なアクセサリーにも見えてくる気がする。


「駐車場のネコは~あくびをしな~がら~」
「今日も一日を過ごしてゆく~」


 ふと見ると、藍と橙が揃って歌っていた。
 微笑ましい光景だ。

 やや舌っ足らずな橙の歌い方も、妙にらしくて似合っている。


「みんな夏が来たって浮かれ気分なのに
 君は一人さえない顔してるネ~」


 そんな彼女を補助するように、藍がサポート。
 やや子供っぽい声と大人びた声がそれぞれを引き立てている。
 実に理想的な関係だ。


「藍も上手いでしょう?」
「ああ、知ってる。
 彼女も歌が好きなんだね」
「……知ってる……?」


 なにやら紫が首を傾げていた。


「いつか君の泪が、こぼれおちそうになったら、何もしてあげられないけど
 すこしでもそばにいるよ……」


 何か視線を感じ、思わず顔を上げる。
 ……一瞬、ステージ上の藍がこちらを見ていた気がした。


「……霖之助さん?」
「そう言えばもうひとりの姿が見えないな」


 咄嗟にあたりを見渡す霖之助。
 決して話を逸らしたわけではない。決して。

 もうひとり、というのは紫と一緒に霖之助を誘いに来た少女だ。


「…………」


 紫の視線が痛い。

 だがやがて諦めたかのように、ため息を吐いた。


「はぁ、まあいいでしょう。
 幽々子ならもうすぐ来ると思うわよ」
「そうかい?
 それにしても……」


 気が付けば、音楽が止んでいた。
 周囲の喧噪は、そのままだったが。


「ごめんなさいねぇ~。
 妖夢の準備にちょっと手間取っちゃって。
 霖之助さん、楽しんでるかしら?」


 ふわふわと、亡霊少女がやってくるのが見えた。
 なにを考えているかわらかない笑顔は、今日もなにを考えているかわからない。


「……準備?」
「ええ、ちょっと……」


 幽々子の声を遮るように、ノリのいい音楽が響き渡る。


「Get down on your knees
 Get a good head on your shoulders
 If it's for your guys
 Go to the end of the earth」


 ステージ上では、妖夢が流暢な英語で歌っていた。
 ……意外な特技だ。


「Do what you think
 Give it with dedication
 I'll put out your misery」


 大方、歌うのを渋った妖夢が幽々子に呑まされ、乗せられたのだろう。
 我に返った時、羞恥と二日酔いでうずくまる彼女の姿が容易に想像でき……霖之助は思わず同情してしまった。


「あら、なんかわかったような顔してる」
「そうねぇ、妬けちゃいそう」
「……何を言ってるんだ、君たちは」


 肩を竦める霖之助に、ふたりは楽しそうに笑う。


「それにしても、随分はしゃいでるじゃない」
「う~ん、ちょっと効き過ぎたかもしれないわ」


 妖夢の身になにが起こったのだろう。
 ……あまり知りたくはないが。

 そんな彼女の普段見られない一面に、喝采が巻き起こる。


「みんな、楽しんでるな」
「ええ、そうでしょう」


 霖之助の言葉に、紫が頷く。


「歌が上手でも下手でも、楽しく歌えたらいいの。
 それって素敵なことだと思わない?」
「目の前に犠牲になった人物がいるんだが」
「あらあら、私は楽しいわよ」


 妖夢はもう少し肩の力を抜いたらいいのよ、と幽々子は笑った。
 だからと言って強制的に抜かせればいいと言うものでもないと思うのだが。


「Hey! リンノスケサーン!
 Youの出番デスYOー!」


 歌い終わったのだろう。
 クジの紙を手に、妖夢が叫んだ。

 ……悪酔いもほどほどにして貰いたいところだ。
 彼女は肩の力の抜き方より先に酒の飲み方を覚えるべきのような気がする。


「あら、本命の登場ね」
「霖之助さんは、どの曲を歌うのかしら」
「茶化さないでくれ」


 ため息とともに、肩を竦めた。
 紫に貰った曲は、だいたい覚えている。

 ……妙に偏った選曲だった気がするが。


「歌う曲は、もう決めてあるんだ」


 言って、霖之助はステージに上がる。
 なるほど、照明が強くて観客の姿があまり見えない。

 よほど注意して見ればわかるだろうが、これならそう緊張せずに済むというものだ。


「……ふぅ」


 ゆっくりと、息を吐き出した。
 頼んでいた曲の伴奏が始まる。


「歩き疲れ 立ち止まった
 僕は何処へ行こうとしてるの」


 歌には力がある。
 霖之助はそれを知っていた。いや、学んだというべきか。


「目の前に 広がった
 この道は何処へ続くの」


 歌には想いがある。
 いつかそれに、応えなければならないと。

 そう、思いながら。


「分からないまま 歩き出せばいい
 歩き出さなきゃ 何も分からないから」

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非公開コメント

No title

ちょ!?wwww
そこで洋夢とはwww

No title

洋夢になってるー!?
ああ、洋楽を歌ってたのってそういう・・・・・・

うたわれですか、いいですね。
しかしさっきまでぶるらじを見てた所為で、小山さんの変態イメージg(ry
ともあれ、このシリーズはひとまず終了ですか。
また続きを書く事がありましたら、期待させていただきます。

No title

…くだらないけどここまでくだらないと贖罪のために逆に書き込みたい。


洋夢は胸が大きい。
酒を飲むと洋夢になった。

結論 妖夢は酒を飲むと胸が大きくなる。


すっきり^^

No title

まさか、こんなトコで洋夢を見ることになるとはwwwあのAAが頭に浮かびます。個人的に霖之助はアОカンみたいな声なんじゃないかなと想像しながら見させて貰いました。

No title

ちょ、妖夢がブラクラだと!?
シリーズ通して雰囲気あって良いもの読ませてもらいました。

No title

藍に嫉妬するゆかりんが可愛いなあ
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Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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