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奉仕の心得

twitterなんかをはじめてみたり。

そして咲夜さんはかなり天ry
改め、無自覚両思いシリーズ。
去年末に書いたやつだけど。


霖之助 咲夜








 頑張った自分へのご褒美に週末隠れ家的お店でスイーツ。

 外の世界の情報誌に、そんな見出しが踊っていた。
 女性に人気の雑誌のようで、内容もやはり女性向けだ。


「ふむ……興味深いな」


 ひとり呟く。
 特集されているのは甘味処のようだが、つまりは客商売だ。
 ジャンルこそ違えど、やはり何かしら通じるものはあるだろう。
 霖之助は道具屋の参考にと、その雑誌を読みふけっていた。

 家計を任されているのはやはり圧倒的に女性が多い。
 つまり裏を返すと、ある程度自由に金を使えるのもやはり女性だと言うことだ。

 何も無理に要らないものを買わせようというわけではない。
 必要なものを必要なときに提供する。

 それにはやはり、店に足を運んでもらうのが一番の近道だ。

 つまり、女性客の関心を惹くのが道具の売り上げアップに繋がると言っても過言ではない……のかもしれない。


「一考の余地はある、か」


 霖之助はさらに読み進めていく。

 ある見出しに、自分だけのオリジナルメニューが人気、と書いてあった。
 ここでひとつ、道具屋的に考えてみよう。

 自分だけのメニュー、つまり必要な道具を選んでくれることと考えてみてはどうだろうか。

 なるほど、これだけ魅力的な商品の中から選べというのも考えてみれば酷な話かもしれない。
 そんなとき、そっと背中を押してやる。
 古道具屋の店主に求められている役割というのはそういうものではないだろうか。


「勝ったな」


 何と勝負しているかはわからなかったが、勝利への方程式が見えた気がした。
 そうと決まればあとは動くだけだ。

 方法は……山の風祝が言っていた外の店を参考にするとしよう。
 上手い具合に、昔戯れに作った服もある。


「……こんなものか」


 滞りなく準備は完了した。
 最初のお客様が来たら、こう言うとしよう。


「お帰りなさいませ、お嬢様」







「全然ダメですね」
「辛辣な評価をありがとう、咲夜」


 スーツに身を固めた霖之助は、ため息を漏らした。
 最初に来た客……紅魔館のメイドにサービスを受けてもらったのだが、この結果である。

 きっちりすべてのサービスを受けた後でこの評価。
 いや、受けたからこその評価なのか。


「発想は悪くないと思うのだけど」


 いつの間にか、咲夜の手の中には霖之助が読んでいた女性向け雑誌が収まっていた。

 彼女のやることにはいちいち驚いていられないが……まさかピンポイントで見抜かれるとは思わなかった。
 まあ、机の上に置きっぱなしにしていたせいもあるかもしれない。


「……なるほど、だいたいのことはわかりました」


 咲夜は机の上に本を広げ、あの見出しを指さす。


「霖之助さん、隠れ家ってどういう意味だと思います?」
「ふむ。隠れ家というからにはやはり、静かな落ち着ける空間だろう」
「違うわね」


 首を振り、そしてじっと霖之助の瞳を見つめてくる。


「隠れ家というのは、世の中の喧噪から隠れる……つまり、日常を忘れさせてくれる場所のことよ。
 そうして初めて、本当に落ち着いてくつろげる空間になるわけです」
「なるほど……」


 そこでふと、霖之助は首を傾げた。


「しかし、くつろぐのは自分の家で十分なのではないかい?」
「自宅で商売をやっている人も多いでしょうし、住み込みで働いている人もいるわね。
 そうでなくても、隣近所はおろか家族にも気を使ってくつろげない人もいると思うわ」
「……ううむ」


 人の中で暮らすということは、つまりはそういうことかもしれない。

 ここ数十年ひとりで生活していたため、すっかり忘れていた。
 まあ、ひとりとはいえ、騒がしいネタには事欠かなかったのだが。


「だからとは言いませんが、女性はこう言うのが好きなんだと思います。
 自分を特別扱いしてくれる場所とか、日常の上にある非日常とか。
 こう見えてもいろいろ大変なですから」
「そうか……。
 君にはいろいろと教えて貰っているね」


 言って、霖之助は苦笑を漏らした。
 あまり自分には向いてないのかもしれない。


「最初の客が君でよかった。
 それに、最後の客も」
「最後だなんてとんでもない」


 肩を落とす霖之助に、しかし咲夜は首を振る。


「言ったでしょう、目の付け所はいいと思いますと」
「……どういうことだい?」
「幸いにして、私は奉仕の心得に少しばかり自信があります。
 霖之助さんに教えてあげることもできるかと」


 咲夜は微笑み、一歩、霖之助に近づいた。


「霖之助さんに足りないのは愛です。
 奉仕に必要な無償の愛ですよ」


 彼女の口から零れるその言葉は、とても温かいものだった。


「特訓しましょう、霖之助さん」
「特訓ね……」


 ふむ、と考える。

 彼女の言うとおり、女性の間にそういう店の需要があるのは確かなのだろう。
 需要があるとすれば、人が集まると言うことだ。

 ……つまり道具が売れる。
 やってみる価値はあるのかもしれない。


「ちなみに特訓と言っても、どんなことをするんだい?」
「そうですね、とりあえずは私相手に練習するとして……。
 つまりお客様がお嬢様なわけですから」


 咲夜は目を閉じ、考え込んだ。
 彼女がお嬢様と言う人物は、ひとりしかいない。


「まず礼儀作法、それからお茶の入れ方ですわね」
「確かにそのあたりは必要だね」


 礼儀はすべての基本である。
 もっとも霖之助の場合、礼には礼を、非礼には非礼で返すことが多いのだが。


「あとは一目でお嬢様の機嫌を判断したりとか。
 機嫌によって出すお茶を選ばないといけませんからね」
「細かく見ないといけないわけか」


 単に紅茶を入れればいいというわけでもない。
 茶葉選びから、既におもてなしという名の勝負は始まっているのだ。

 ……それに、紅茶に関する蘊蓄も喋れて一石二鳥ではないだろうか。


「それにどうやってお嬢様を怒られないようにかわいがるかとか」
「ああ、それも確かに必……うん……?」


 思わず頷きかけ……考え直す。
 しかし咲夜の表情は真剣そのものだった。


「私としては精一杯愛情を注いでるのに、何故だか怒られたりしたときのフォローの方法とかも重要ですよね。
 えーと、他にはほっぺたをぷにぷにしても怒られない方法とか……」


 メイドの言葉を遮って、霖之助は首を振った。
 ……まとめると、こうだ。


「よくわからないが、つまり僕は君に愛を注げばいいのかい?」
「へっ?」


 霖之助の言葉に、咲夜は思わず素っ頓狂な声を上げた。
 いつの間にか無関係なことを喋っていたことにようやく気が付いたようだ。


「あと、君のほっぺたを……いや、なんでもない」


 しばらく無言で咲夜は考えていたようだが……。
 突然真っ赤になって捲し立てる。想像したのだろうか。


「ちちち、違いますよもう!
 そうなったら嬉し……じゃなくて、そうじゃなくてああもう」


 わたわたと慌てる咲夜に、霖之助は苦笑を浮かべる。


「わかったわかった。
 とにかく特訓すればいいんだね」
「んもう……そうです。
 ビシバシいきますからね」
「お手柔らかに頼むよ」
「そうもいきません」


 ふたりは笑みを交わし……やがて霖之助は恭しく一礼してみせた。


「では、ご教授賜りますよ、お嬢様」
「ええ、覚悟して下さいね」









 教え方の上手い人間は努力の仕方を教え、教え方の下手な人間は答えを教える。
 咲夜は幸いにも前者だった。
 本人が努力型ということもあるのだろう。
 もっとも、忠誠心やその他に関しては間違いなく天才型の方だったが。


「うん、まあまあですわね」
「そうか、それはよかった」


 直立不動のまま、霖之助は笑みを浮かべた。
 メガネの縁を軽く持ち上げる。


「これでいつでもお嬢様のお世話が出来ますね、私と一緒に」
「ああ……ん?」


 頷きかけた霖之助は、慌てて動きを止めた。
 いつからそういう話になったのだろうか。


「いやいや、僕は道具屋のためにやっているわけで、君の主のためにやっているわけじゃないよ」
「あれ、そうでしたっけ」


 不思議そうに首を傾げる咲夜。

 最初のやりとりはすっかり忘れていたようだ。
 彼女の中で、どういう流れになっていたのだろう。


「だがこれで、道具を勧める自信が付いたよ。
 少々惜しいが、使い方のわかるものの在庫品から売り始めるとしよう」
「勧める……ああ、そういえば」


 ようやく思い出したらしい。


「試しに霊夢や魔理沙あたりにやってみるのもいいかもしれないな。
 ひょっとしたら、早苗の方がいいお客になってくれるかもしれないが……」
「霊夢、魔理沙、早苗……」


 まずは知り合いの少女から広げていけばいい。
 霖之助はそう考えていた。
 なんだったら文あたりに頼んで記事にして貰うのもいいかもしれない。


「まあ、まずは足を運んでもらうのが目的だからね。
 外の道具の便利さを知れば、たちまち大繁盛というわけさ」
「霖之助さんのまわりに……」


 何事か考え込んでいた咲夜だったが、突然大声を出した。


「だ、ダメです!」


 無意識だったのだろう。
 彼女自身、自らの発言に驚いた表情を浮かべていた。


「どうしたんだい? いきなり……」
「え、えっと……」









「霖之助さんが奉仕していいのは私かお嬢様だけです。
 だって私は霖之助さんのことが好きですから。
 そうか。実は僕も君のことが……。
 こうしてふたりは結ばれ、末永く幸せに暮らしました。
 よかったわね、咲夜」
「うぅぅぅぅ」


 パチュリーは読んでいた本をパタンと閉じた。
 その表紙には、『裏香霖堂日誌~メイドの妄想だいありぃ~』と刻まれている。

 ……ベッドの中央、盛り上がったシーツの中からは泣き声とも呻き声ともつかない哀愁漂う音色が流れてきた。


「咲夜さん、よかったですね。幸せになれて。
 ……パチュリー様のお話の中では」
「そうね。まあ、どう考えてもこんな上手く行くはずはないけど」


 相手はあの男だしね、とパチュリーは含み笑いを漏らした。
 この魔女に目をつけられたのが最大の不幸ではないか、と小悪魔は思ったりもする。

 もちろん、どうしようもないのが本人のせいなのは間違いないのだが。


「でも現実はもっと斜め下なのよね」


 レミリアはテーブルにカップを置くと、ため息を漏らす。
 いつものことなので今更文句をつけても始まらないが、言わずにはいられない。


「どうでもいいけど、咲夜がヘコむたびに咲夜の部屋でお茶するのはどうなのよ」
「いいじゃない、どうせ暇なんだし」
「それはそうだけど。
 ひょっとしたらひとりになりたいかもしれないじゃない」
「そうね、そうかもね。
 でも見てたほうが面白いわ」
「趣味が悪いわね、パチェ」


 まあ、なんだかんだで付き合っている自分も同類だろう。
 ふと、そんなことを考える。


「で、なんだっけ。今日の失敗談」
「相変わらず聞いてなかったのね。
 ま、聞いてたとも思ってなかったけど」
「進展がなかったことだけは理解していたわ。最初からね」


 その言葉に、さらに部屋の中を漂う哀愁が大きくなった。
 ぽんぽん、とベッドのシーツを小悪魔が優しく叩く。


「免許皆伝を言い渡さなかったのよ。
 技術がまだまだだ、ってことでね」
「ははぁ、それで次また咲夜が教えに行くことにしたのね。
 たまにはやるじゃない」
「そうよね、普通そう思うわよね。
 そしてそうしたらこんなにヘコんでないわよね」
「……それもそうね」


 レミリアは改めて、斜め下の現実を聞くことにした。
 どうでもいいが、そんなにヘコんでいるのになぜ咲夜は律儀に喋るのだろうか。


「君のために入れたお茶がお気に召さなかったかい? って言われたんだって」
「うん……それで?」
「恥ずかしくなって逃げてきた」
「そう……んん?」


 そうすると、咲夜がヘコんでいるのは失敗したからではなく……。
 次どんな顔をして会ったらいいか悩んでいると言うことなのだろうか。


「なんとまあ……」


 レミリアはたまにこう思うときがある。

 ひょっとしたら、もうくっついているのではないだろうか。

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No title

砂糖を吐く!
だがそれが良い!

「お帰りなさいませ、お嬢様」

スーツではなくメイド服のこーりん頭に浮かびました

………………

…………

……
_,._
( ゜A゜)!?


なんだろう、この新しい世界は……

相変わらず咲霖はいい……
咲霖は俺のももいろ!!!






余談なんですが、某格闘ゲームに先代巫女が参戦してました。
しかも横乳だよ!

No title

この霖之助のまま霊夢たちの反応が見たいっす

メイドガイこーりんと聞いて!そしてフォークを投げる咲夜さん・・・うたわれは別のサクヤがいるから駄目か

これが霖之助執事シリーズの始まりである
プロフィール

道草

Author:道草
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フラグを立てる話がメインなのでお気を付けください。
同好の士は大ウェルカムだよね。
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