酔い旅夢気分
グリマリを見て降ってきたネタ。
萃香にとって霖之助は酒のような存在。
「霖之助? ん~、嗜むくらいかな」
「私は舐めるくらい」的なウフフ。
霖之助 萃香
鬼の目にも涙。
心の冷たい者も、時には情け深い心で涙を流すことがあるという意味のことわざだ。
もちろんここでの鬼というのは比喩であり、実際の鬼とは関係がない。
そのことを霖之助はよく知っていた。
……理由は簡単。
「りんのすけぇ~……。
グスッ……魔理沙ったらひどいんだよぉ~」
霖之助がよく知っている鬼は、泣き上戸で、笑い上戸で、怒り上戸だった。
自分に正直というか、酒を呑むのを楽しんでいるというか。
「ひどいのは突然現れて人のつまみを奪う君の方だと思うが。
……で、どうしたんだい、萃香」
「だからさ-、ひどいんだって」
酔っぱらいの介抱というのも酒の醍醐味である。
酒の席でしか聞けない本音というのは貴重なものだ。
心置きなく語り合う。
もっとも、彼女はいつも酔っているし本音で生きているように見えるけれど。
「魔導書をさ、見せて貰ったんだよ」
「魔導書……ああ」
そう言えば、魔理沙がそんなものを書いていると言っていた気がする。
霖之助は見たことはなかったが、今まで見た弾幕についていろいろ書いたらしい。
実にいい考えだ、と思う。
文字にしてみることで、また別の見方が出来るようになるわけで。
「グスッ……それにね。
私のこと、ただの化物とか弾幕じゃないとか時代遅れとか。
スペルカードがわかってないとか書いてあってね」
「……まあ、魔理沙も本気でそう思ってるわけじゃないだろうし。
あんまり気にしても仕方ないだろう」
スペルカードは遊びである。
相手が勝てない弾幕は遊びでなく、つまりスペルカードではない。
逆に、名前が付いた時点で弾幕はスペルカードという遊びになる。
……霊夢の夢想天生について、魔理沙がそう語っていたことを思い出した。
まあ、だからこそ人間が妖怪に勝てるのだろうが。
「でも勇儀のことは褒めてたんだよぅ」
「ほう、彼女をね」
一度だけ、霖之助は勇儀と会ったことがあった。
いろいろと規格外な人物だったが、豪快の割に細かいところまで気の効く彼女を霖之助は気に入っていた。
「まあ、わかる気はするかな」
もっとも、その時は呑みすぎて記憶が無くなったので、どうやって別れたか思い出せないのだが。
お手柔らかに頼めるなら、もう一度呑みたい相手でもある。
「ううう、霖之助までそんなことを言う~」
「別に君のことを悪く言ったわけじゃないだろう」
「そうだけど……ヒック」
泣いているのか酔っているのか。
おそらく両方だろう。
……やがて静かになった萃香を尻目に、霖之助は空を見上げた。
いい月だ。
もうそろそろ外で呑むのも厳しい季節になるだろう。
この時間の月も、今年は見納めかもしれない。
「あーすっきりした。
で、何呑んでるの?」
いつの間にか復活したらしく、萃香が背中に抱きついてきた。
先ほどまで泣いていたのが嘘のようだ。
とはいえいつものことなので、慌てることではない。
「なにこれ、甘っ!」
「これはスクリュードライバーといってね。外の世界の酒だよ。
缶で落ちてたので呑んでみたんだが……」
「ふ~ん」
持っていたグラスも、萃香に奪われてしまった。
彼女は霖之助の説明を聞きながら、グラスを傾ける。
「甘いのは果汁が入ってるからかな。
度は結構あるはずだが」
「ふーん。じゃあもう一口。
……やっぱり甘いよこれ。はい、返す」
ちびちびとやっていたのにあっという間に半分になって帰ってきたコップに、霖之助は苦笑する。
在庫はあるので惜しくはない。
しかしどうやら、あまり彼女の口には合わなかったようだ。
「物の本によると、口当たりの良さと度数の高さで女性を……。
まあ、君には関係のない話だな」
「ん~、なんか言った?
ひどいこと言った?」
「いいや。
とりあえず、降りてくれないかい」
「ぶーぶー」
萃香は抱きつくようにして身を寄せていた霖之助の背中から離れると、自前の瓢箪を取り出した。
……やはり彼女にはそれが一番似合う気がする。
「甘いもの飲むと喉渇くよねー」
「飲み物で喉が渇くのかい?」
「ものによりけりさ。
辛いほうが上手く酔える気がするね」
「上手くも何も、君は酔っているのが普通だからな……」
霖之助の言葉に、しかし萃香は怒ったような表情を浮かべる。
……今度は怒り上戸らしい。
「失礼な。私だって酔いが醒めることはあるよ」
「本当かい? 想像も付かないが」
「えっとねー」
うーん、と彼女は考え込む。
「つまらない時とか……さめそうになるかな」
「それは醒めるかい? 冷めるのかい?」
「どっちでもいっしょでしょー」
ニャハハ、と萃香は笑い声を上げた。
今度は笑い上戸のようだ。
つまり気分がいい=酔いという図式なのだろうか。
「素面の君はどんな風なのかな」
「どんな風ねぇ。
自分のそんなところ、よく考えてみることもないしなー。
ほら、酔ってるのが普通だし?」
先ほどの言葉はどこへやら。
萃香は楽しそうに笑う。
「一度酔っていない萃香を見てみたいものだな」
「霖之助が? 私の?」
首を傾げる萃香。
そして、笑顔とともに断言した。
「あはは、絶対無理だよ。
だって、霖之助といるとね……」
萃香にとって霖之助は酒のような存在。
「霖之助? ん~、嗜むくらいかな」
「私は舐めるくらい」的なウフフ。
霖之助 萃香
鬼の目にも涙。
心の冷たい者も、時には情け深い心で涙を流すことがあるという意味のことわざだ。
もちろんここでの鬼というのは比喩であり、実際の鬼とは関係がない。
そのことを霖之助はよく知っていた。
……理由は簡単。
「りんのすけぇ~……。
グスッ……魔理沙ったらひどいんだよぉ~」
霖之助がよく知っている鬼は、泣き上戸で、笑い上戸で、怒り上戸だった。
自分に正直というか、酒を呑むのを楽しんでいるというか。
「ひどいのは突然現れて人のつまみを奪う君の方だと思うが。
……で、どうしたんだい、萃香」
「だからさ-、ひどいんだって」
酔っぱらいの介抱というのも酒の醍醐味である。
酒の席でしか聞けない本音というのは貴重なものだ。
心置きなく語り合う。
もっとも、彼女はいつも酔っているし本音で生きているように見えるけれど。
「魔導書をさ、見せて貰ったんだよ」
「魔導書……ああ」
そう言えば、魔理沙がそんなものを書いていると言っていた気がする。
霖之助は見たことはなかったが、今まで見た弾幕についていろいろ書いたらしい。
実にいい考えだ、と思う。
文字にしてみることで、また別の見方が出来るようになるわけで。
「グスッ……それにね。
私のこと、ただの化物とか弾幕じゃないとか時代遅れとか。
スペルカードがわかってないとか書いてあってね」
「……まあ、魔理沙も本気でそう思ってるわけじゃないだろうし。
あんまり気にしても仕方ないだろう」
スペルカードは遊びである。
相手が勝てない弾幕は遊びでなく、つまりスペルカードではない。
逆に、名前が付いた時点で弾幕はスペルカードという遊びになる。
……霊夢の夢想天生について、魔理沙がそう語っていたことを思い出した。
まあ、だからこそ人間が妖怪に勝てるのだろうが。
「でも勇儀のことは褒めてたんだよぅ」
「ほう、彼女をね」
一度だけ、霖之助は勇儀と会ったことがあった。
いろいろと規格外な人物だったが、豪快の割に細かいところまで気の効く彼女を霖之助は気に入っていた。
「まあ、わかる気はするかな」
もっとも、その時は呑みすぎて記憶が無くなったので、どうやって別れたか思い出せないのだが。
お手柔らかに頼めるなら、もう一度呑みたい相手でもある。
「ううう、霖之助までそんなことを言う~」
「別に君のことを悪く言ったわけじゃないだろう」
「そうだけど……ヒック」
泣いているのか酔っているのか。
おそらく両方だろう。
……やがて静かになった萃香を尻目に、霖之助は空を見上げた。
いい月だ。
もうそろそろ外で呑むのも厳しい季節になるだろう。
この時間の月も、今年は見納めかもしれない。
「あーすっきりした。
で、何呑んでるの?」
いつの間にか復活したらしく、萃香が背中に抱きついてきた。
先ほどまで泣いていたのが嘘のようだ。
とはいえいつものことなので、慌てることではない。
「なにこれ、甘っ!」
「これはスクリュードライバーといってね。外の世界の酒だよ。
缶で落ちてたので呑んでみたんだが……」
「ふ~ん」
持っていたグラスも、萃香に奪われてしまった。
彼女は霖之助の説明を聞きながら、グラスを傾ける。
「甘いのは果汁が入ってるからかな。
度は結構あるはずだが」
「ふーん。じゃあもう一口。
……やっぱり甘いよこれ。はい、返す」
ちびちびとやっていたのにあっという間に半分になって帰ってきたコップに、霖之助は苦笑する。
在庫はあるので惜しくはない。
しかしどうやら、あまり彼女の口には合わなかったようだ。
「物の本によると、口当たりの良さと度数の高さで女性を……。
まあ、君には関係のない話だな」
「ん~、なんか言った?
ひどいこと言った?」
「いいや。
とりあえず、降りてくれないかい」
「ぶーぶー」
萃香は抱きつくようにして身を寄せていた霖之助の背中から離れると、自前の瓢箪を取り出した。
……やはり彼女にはそれが一番似合う気がする。
「甘いもの飲むと喉渇くよねー」
「飲み物で喉が渇くのかい?」
「ものによりけりさ。
辛いほうが上手く酔える気がするね」
「上手くも何も、君は酔っているのが普通だからな……」
霖之助の言葉に、しかし萃香は怒ったような表情を浮かべる。
……今度は怒り上戸らしい。
「失礼な。私だって酔いが醒めることはあるよ」
「本当かい? 想像も付かないが」
「えっとねー」
うーん、と彼女は考え込む。
「つまらない時とか……さめそうになるかな」
「それは醒めるかい? 冷めるのかい?」
「どっちでもいっしょでしょー」
ニャハハ、と萃香は笑い声を上げた。
今度は笑い上戸のようだ。
つまり気分がいい=酔いという図式なのだろうか。
「素面の君はどんな風なのかな」
「どんな風ねぇ。
自分のそんなところ、よく考えてみることもないしなー。
ほら、酔ってるのが普通だし?」
先ほどの言葉はどこへやら。
萃香は楽しそうに笑う。
「一度酔っていない萃香を見てみたいものだな」
「霖之助が? 私の?」
首を傾げる萃香。
そして、笑顔とともに断言した。
「あはは、絶対無理だよ。
だって、霖之助といるとね……」